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本編
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周囲の喧騒が凪いだ隙を伺って、話題転換を試みます。
「マコちゃん。こっちで何をするの?」
ルルから逃げたと言われましたが、聞かなかったことにします。
「えっと、特に決めてなくて。どうしようかな」
「桜華さんの処に居れば、何でもやるチャンスがあるよ」
「そうそう。今は何をしているんだっけ?」
最近ミッケさんと行動を共にしているルルが首を傾げているのと同時に、周囲の人達も知りたそうな顔をしています。
「今ですか? 今は、家具作りが一段落したので、織布に縫製。村の防護柵――塀? の要作り、指名依頼のコンロ作り。後は……テラスの改良もやりたいですね」
やっていることと、やりたいことを思い出していると、周囲の皆さんの視線が呆れていることに気が付きました。
一体、何に呆れているのでしょうか。不思議に思っていると、頭に何かが乗っかって目の前に鋭利な爪が現れました。
「ラウルさん、ですか?」
「おう。明日の朝、公衆浴場の営業開始予定だ。お前も来い」
「それは分かりましたけど、爪が出ていますよ?」
手入れが行き届いているようで、大きさと鋭さが一段階は上のように感じます。
「出してんだよ。もう少し申請する間隔を伸ばしてくれ。忙しくてやってられん。それと、塀の方だが、明日の昼には素材が来るから建設を始める。覚えておけ」
「早くないですか?」
「知り合いの走竜を集団で借りることができてな。こっちも見に来い」
「分かりました。家にいるので教えてください」
ラウルさんの手が退いて視界が晴れたと思えば、こちらを向かずに近くの席に座ってエールを飲み始めました。仕事は終わりですか。皆さん今日は飲む気のようですね。
「ゆっくりとしますか」
奥の方で一際賑やかな声が聞こえてきます。声からすると、誰かが飲み勝負を始めたようですね。ミッケさんも声を聞きつけて向こうへ行ってしまいました。
空いた席にはレガードさんがやってきました。
「マコちゃん。こっちも美味しいよ」
「はい。……あ、美味しい!」
マコちゃんも雰囲気を楽しみながら食べているようです。
「妹か?」
「そうです。武器屋のレガードさん」
「マコと言います」
「ふっ。お前さんと違って大人しそうな可愛い子じゃねえか」
「鼻で笑う必要性はどこにあるのですか」
「ラウルは飲み友達だからな。色々と聞いてる」
ラウルさんですか。それだったらどうしようもないですね。
「俺は関りが少ないから、どうでもいいがな。これも旨いぞ」
「ありがとうございます」
「桜華ちゃんの妹? 可愛いね。あ、桜華ちゃんそれ少し頂戴。代わりにこれあげる」
背後から狩猟者の小父さんが来たのでお皿を交換します。
「良いですよ。あっと。お酒出したらエレノアさんと奥さんに色々と吹き込みますよ」
「か、勘弁してくれよ」
どっと沸く周囲の人達。あれ、ルルがいない。どこに?
「ルル見ませんでした?」
「それなら、ラウルさんの前に、あ、戻ってきた」
小父さんの声の後に机の上に戻ってきた影は二つ。一つはルルで、もう一つはルルと同じ大きさの妖精族の女の子。
本来は愛くるしい姿をしている様ですが、今はルルと同じようにお酒に酔ってふらふらしていて、ポッコリとお腹を膨らませていて片鱗もありません。これはこれで可愛いと思うのは末期でしょうか。
「ルル、お友達ですか?」
「はふ。もう入らないよう」
駄目ですね。もう一人の方も酔っていてほとんど眠っているので、返事は期待できそうもありません。
「仕方ないですね。マコちゃん食べた?」
「うん」
代金を机の上に置くと、妖精二人をマコちゃんに抱えてもらい、私は潰れる寸前のミッケさんのところへ。
「ミッケさん、それ以上飲んで帰れます?」
「うん? かえれるろもうろ」
舌が回っていない上に目が虚ろです。明らかに限界ですね。
「帰りましょうか」
「や。まらのむ」
ミッケさんはコップに残っているお酒を流し込むと、もう一杯と注文をしています。仕方ありませんね。
ミッケさんの背後に回ると、首筋に一撃を加えます。倒れそうになるミッケさんを支えると、一気に背負い上げます。
「落とした!」
「えげつねぇ!」
周囲にいた人達が騒めいている間に笑顔で挨拶して撤収です。
帰宅するとミッケさんを部屋に放り込み、妖精二人は一緒にルルのベッドへ。
「酔っぱらいはあれでいいとして。マコちゃん、お風呂入る?」
「え、お風呂あるがあるの?」
「準備しておくから、着替え取ってきて」
「うん!」
お風呂をさっと掃除してお湯を張ります。着替えを持ってきたマコちゃんと入れ替わりでリビングへ。
マコちゃんがお風呂から上がるまでに明日の朝食の準備。それを終えると照明作り。屋根裏用は取り付け用の足を長くして六個の予定ですが、三個作り終えたところでマコちゃんが上がってきました。
「お風呂、あがりました」
「ん。今日は疲れたでしょ。先に寝ていいよ」
「うん、そうする。おやすみなさい」
「おやすみ」
マコちゃんが部屋に戻っていくのを見送ってから、作業の再開。程なく作業を終えると後片付けをしてから屋根裏に設置していきます。
設置が終わった後、日課になっている文字探しを行ってからお風呂に入って就寝。
ベッドに寝転ぶと星空が良く見えますね。綺麗です。
「マコちゃん。こっちで何をするの?」
ルルから逃げたと言われましたが、聞かなかったことにします。
「えっと、特に決めてなくて。どうしようかな」
「桜華さんの処に居れば、何でもやるチャンスがあるよ」
「そうそう。今は何をしているんだっけ?」
最近ミッケさんと行動を共にしているルルが首を傾げているのと同時に、周囲の人達も知りたそうな顔をしています。
「今ですか? 今は、家具作りが一段落したので、織布に縫製。村の防護柵――塀? の要作り、指名依頼のコンロ作り。後は……テラスの改良もやりたいですね」
やっていることと、やりたいことを思い出していると、周囲の皆さんの視線が呆れていることに気が付きました。
一体、何に呆れているのでしょうか。不思議に思っていると、頭に何かが乗っかって目の前に鋭利な爪が現れました。
「ラウルさん、ですか?」
「おう。明日の朝、公衆浴場の営業開始予定だ。お前も来い」
「それは分かりましたけど、爪が出ていますよ?」
手入れが行き届いているようで、大きさと鋭さが一段階は上のように感じます。
「出してんだよ。もう少し申請する間隔を伸ばしてくれ。忙しくてやってられん。それと、塀の方だが、明日の昼には素材が来るから建設を始める。覚えておけ」
「早くないですか?」
「知り合いの走竜を集団で借りることができてな。こっちも見に来い」
「分かりました。家にいるので教えてください」
ラウルさんの手が退いて視界が晴れたと思えば、こちらを向かずに近くの席に座ってエールを飲み始めました。仕事は終わりですか。皆さん今日は飲む気のようですね。
「ゆっくりとしますか」
奥の方で一際賑やかな声が聞こえてきます。声からすると、誰かが飲み勝負を始めたようですね。ミッケさんも声を聞きつけて向こうへ行ってしまいました。
空いた席にはレガードさんがやってきました。
「マコちゃん。こっちも美味しいよ」
「はい。……あ、美味しい!」
マコちゃんも雰囲気を楽しみながら食べているようです。
「妹か?」
「そうです。武器屋のレガードさん」
「マコと言います」
「ふっ。お前さんと違って大人しそうな可愛い子じゃねえか」
「鼻で笑う必要性はどこにあるのですか」
「ラウルは飲み友達だからな。色々と聞いてる」
ラウルさんですか。それだったらどうしようもないですね。
「俺は関りが少ないから、どうでもいいがな。これも旨いぞ」
「ありがとうございます」
「桜華ちゃんの妹? 可愛いね。あ、桜華ちゃんそれ少し頂戴。代わりにこれあげる」
背後から狩猟者の小父さんが来たのでお皿を交換します。
「良いですよ。あっと。お酒出したらエレノアさんと奥さんに色々と吹き込みますよ」
「か、勘弁してくれよ」
どっと沸く周囲の人達。あれ、ルルがいない。どこに?
「ルル見ませんでした?」
「それなら、ラウルさんの前に、あ、戻ってきた」
小父さんの声の後に机の上に戻ってきた影は二つ。一つはルルで、もう一つはルルと同じ大きさの妖精族の女の子。
本来は愛くるしい姿をしている様ですが、今はルルと同じようにお酒に酔ってふらふらしていて、ポッコリとお腹を膨らませていて片鱗もありません。これはこれで可愛いと思うのは末期でしょうか。
「ルル、お友達ですか?」
「はふ。もう入らないよう」
駄目ですね。もう一人の方も酔っていてほとんど眠っているので、返事は期待できそうもありません。
「仕方ないですね。マコちゃん食べた?」
「うん」
代金を机の上に置くと、妖精二人をマコちゃんに抱えてもらい、私は潰れる寸前のミッケさんのところへ。
「ミッケさん、それ以上飲んで帰れます?」
「うん? かえれるろもうろ」
舌が回っていない上に目が虚ろです。明らかに限界ですね。
「帰りましょうか」
「や。まらのむ」
ミッケさんはコップに残っているお酒を流し込むと、もう一杯と注文をしています。仕方ありませんね。
ミッケさんの背後に回ると、首筋に一撃を加えます。倒れそうになるミッケさんを支えると、一気に背負い上げます。
「落とした!」
「えげつねぇ!」
周囲にいた人達が騒めいている間に笑顔で挨拶して撤収です。
帰宅するとミッケさんを部屋に放り込み、妖精二人は一緒にルルのベッドへ。
「酔っぱらいはあれでいいとして。マコちゃん、お風呂入る?」
「え、お風呂あるがあるの?」
「準備しておくから、着替え取ってきて」
「うん!」
お風呂をさっと掃除してお湯を張ります。着替えを持ってきたマコちゃんと入れ替わりでリビングへ。
マコちゃんがお風呂から上がるまでに明日の朝食の準備。それを終えると照明作り。屋根裏用は取り付け用の足を長くして六個の予定ですが、三個作り終えたところでマコちゃんが上がってきました。
「お風呂、あがりました」
「ん。今日は疲れたでしょ。先に寝ていいよ」
「うん、そうする。おやすみなさい」
「おやすみ」
マコちゃんが部屋に戻っていくのを見送ってから、作業の再開。程なく作業を終えると後片付けをしてから屋根裏に設置していきます。
設置が終わった後、日課になっている文字探しを行ってからお風呂に入って就寝。
ベッドに寝転ぶと星空が良く見えますね。綺麗です。
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