47 / 61
本編
45
しおりを挟む明るくなる前に起き出すと、一通り済ませてからラウラに挨拶するためにテラスへ移動します。
「ラウラ、おはよう」
「しゅ~」
「ご飯食べられていますか?」
「しゅ~」
前脚を上げて挨拶してくれるラウラ。巣で待ち構える方法と、投げ縄のように粘着糸を投げて捕まえたりしてちゃんと食べているそうです。
ちゃんと食べられていることに安心していると、ディンさん達がやってきました。
「おはようございます」
「おはようございます、ディンさん、ルーナさん。後……グレンさん?」
「おう。夜、テラスの事言っていただろ」
「確かに言いましたけど」
確かにテラスの改良も予定に入れましたが、近くにグレンさんいたかな。
「暇だからやらせろ」
「暇って、家造りとかあるのでは?」
「場所の選定を今日やる。その後工程を話し合うから、今日は昼まで暇だ」
腕を組むグレンさんの視線は、既にテラスに向けられています。
「……はぁ。テラスの四隅にある柱を床から二メートル半程延長して、横木を井形に組んでくれませんか」
「屋根はどうする」
「屋根は蔦を編み込む形にするつもりなので、自分でやります」
「そうか。やらせろ」
「分かりました。蔦は出しておきます」
「よし」
満足そうに頷くグレンさんと、編み方について打ち合わせしていきます。
「グラァァァァァ!」
「ぴゃ!」
唐突に聞こえてきた重低音の唸り声に、ディンさんは身構え、ルーナさんは奇声を上げて尻尾を膨らませ、グレンさんは目を見開いて固まる。
「な、なんだ?」
「トトですね。ディンさん。卵を盗もうとした人がいるみたいです」
「あの子達の卵ですか」
呆れたと言わんばかりの顔をしながら構えを解いたディンさんが、懐から笛を取り出して吹きます。高めの音が鳴るそれは、異常を発見した際に他の人を呼ぶためのものだとか。
「おい。トトってなんだ」
「ココットですよ」
「……あんな鳴き声だったか?」
「私はあれしか知らないです」
他の子達が鳴いているところ見ていないので、判断のしようがありません。イアンさんも何も言わないので標準だと思っています。
「そうかい。じゃ、準備してまた来る」
グレンさんを見送り、中へ戻ると朝食の準備を始めます。少しするとマコちゃんが起きてきたので、他の人を起こしに行ってもらいます。
料理を運んでいると、ディンさんがテラスの方から顔を出して壁を軽く叩いています。
テラスに移動すると、数人の衛兵とそれに囲まれた男性が花壇の傍に立っていました。
「桜華さん。この人が牧場に居ました。ですが、牧場主に頼まれたと言っていまして」
「初対面です。それに、イアンさんから移住者で働く予定の方がいるとは聞いていますが、まだ挨拶に来られていません」
「それは俺だ」
囲まれている男性が声を上げながら前に出ようとして、衛兵の人に止められます。
「イアンさんが挨拶に連れてきていないので、不審者です」
「分かりました」
警邏の人達が男性を引き連れていったので、中へ戻って起きてきた皆と朝食を食べます。
朝食を食べ終えると、青い顔して元気がない三人に水の入ったコップを差し出します。
「頭痛いよう。あ、桜華。さっきすごい声が聞こえたけど、何かあったの?」
「トトが卵泥棒を見つけました」
「無謀だねぇ」
ルルのつぶやきにミッケさんとルーナさんが頷いています。
「ところで、宿酔いは大丈夫ですか?」
「きつい」
「寝てていい?」
「良いですけど、ルル、その人は友達ですか?」
「う~。知らない人~」
飲みに行った店で偶然知り合いになり、仲良くなるという話はそこそこ聞く話なのでいいとしましょう。
「あ……挨拶が遅れ……てす……みません。あう。ノノと言……います」
机の上で息も絶え絶えに自己紹介するノノさん。ルルとミッケさんも似たような状況ですが、何故そこまで呑むのか理解に苦しみます。
「テラスで作業予定があるので煩いかもしれませんが、ゆっくり休んでください」
「そうする~」
マコちゃんと一緒に後片付けを終わらせると、リビングに敷いた熊の毛皮に川の字になって寝転ぶ三人にお留守番をお願いして外に出ます。
出かける前に、テラスの邪魔にならない場所に蔦を山積みにしてから広場に向かいます。途中で木材を担いだグレンさん達がいたので、挨拶と家の中にミッケさん達がいることを伝えておきます。
広場に入ると、そのまま公衆浴場の前にラウルさんがいたので挨拶しながら近寄ります。
「まだ来ていないが、じきに来るだろう」
「そうですか」
ラウルさんと話している間、マコちゃんは公衆浴場の方を熱心に見つめています。
「妹だったか。大人しそうだな」
「大人しくていい子ですよ」
「そうかい。朝っぱらに牧場の方から咆哮が聞こえたが、何だ」
「トトが卵泥棒を見つけただけです」
「……馬鹿な奴だ」
ラウルさんがどこか遠くを見つめています。トトを知っている人からすればそうですよね。
「お姉ちゃん、ここが公衆浴場?」
「おう。お前の姉ちゃんが色々とやらかしたうちの一つだ」
「ラウルさん、言い方に悪意を感じるのですが」
「気のせいだろ」
二カッと笑う姿は肉食獣の獰猛な笑顔。近くにいた子供がわざとらしい悲鳴を上げながら逃げていきました。
そんな雑談をしていると、随分と久しぶりに村長のコリンズさんと執事の方が来られました。
「おはようございます。桜華さん、お久しぶりですね」
「おはようございます。お久しぶりです」
「桜華さんのお陰で、色々と変わり始めました。ありがとうございます」
「いえ、沢山の方が協力してくれたおかげです」
「そうですか。これからもよろしくお願いします」
コリンズさんと話している間に数人の男女が集まってきました。何やら話が始まるようなので、マコちゃんと一緒に少し脇に避けます。
「皆さん、おはようございます。村長をやっているコリンズと申します。今回は村の新しい施設で働いてくださるということで、ありがとうございます。何かと大変かもしれませんが、よろしくお願いします」
コリンズさんの挨拶が終わると、次はラウルさんが前に出ます。
「ギルドマスターのラウルだ。ギルド側の担当者はこいつだ。何かわからないことや要望があればこいつに行ってくれ」
いつの間にか来ていた、ギルドで働く誠実そうな青年が手を軽く振っています。
「それじゃ、営業を開始してくれ」
「分かりました」
答えたのは公衆浴場の責任者の男性。その後は皆さんが中に入っていって営業の開始です。早速、村のお爺ちゃん、お婆ちゃんが中へ入っていきました。
その後はそれぞれの仕事へ。私とマコちゃんは、食材屋に寄って食材と獲れたての角兎を購入して帰宅します。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる