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腹減り雀

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本編

45

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 明るくなる前に起き出すと、一通り済ませてからラウラに挨拶するためにテラスへ移動します。

「ラウラ、おはよう」
「しゅ~」
「ご飯食べられていますか?」
「しゅ~」

 前脚を上げて挨拶してくれるラウラ。巣で待ち構える方法と、投げ縄のように粘着糸を投げて捕まえたりしてちゃんと食べているそうです。
 ちゃんと食べられていることに安心していると、ディンさん達がやってきました。

「おはようございます」
「おはようございます、ディンさん、ルーナさん。後……グレンさん?」
「おう。夜、テラスの事言っていただろ」
「確かに言いましたけど」

 確かにテラスの改良も予定に入れましたが、近くにグレンさんいたかな。

「暇だからやらせろ」
「暇って、家造りとかあるのでは?」
「場所の選定を今日やる。その後工程を話し合うから、今日は昼まで暇だ」

 腕を組むグレンさんの視線は、既にテラスに向けられています。

「……はぁ。テラスの四隅にある柱を床から二メートル半程延長して、横木を井形に組んでくれませんか」
「屋根はどうする」
「屋根は蔦を編み込む形にするつもりなので、自分でやります」
「そうか。やらせろ」
「分かりました。蔦は出しておきます」
「よし」

 満足そうに頷くグレンさんと、編み方について打ち合わせしていきます。

「グラァァァァァ!」
「ぴゃ!」

 唐突に聞こえてきた重低音の唸り声に、ディンさんは身構え、ルーナさんは奇声を上げて尻尾を膨らませ、グレンさんは目を見開いて固まる。

「な、なんだ?」
「トトですね。ディンさん。卵を盗もうとした人がいるみたいです」
「あの子達の卵ですか」

 呆れたと言わんばかりの顔をしながら構えを解いたディンさんが、懐から笛を取り出して吹きます。高めの音が鳴るそれは、異常を発見した際に他の人を呼ぶためのものだとか。

「おい。トトってなんだ」
「ココットですよ」
「……あんな鳴き声だったか?」
「私はあれしか知らないです」

 他の子達が鳴いているところ見ていないので、判断のしようがありません。イアンさんも何も言わないので標準だと思っています。
 
「そうかい。じゃ、準備してまた来る」

 グレンさんを見送り、中へ戻ると朝食の準備を始めます。少しするとマコちゃんが起きてきたので、他の人を起こしに行ってもらいます。

 料理を運んでいると、ディンさんがテラスの方から顔を出して壁を軽く叩いています。
 テラスに移動すると、数人の衛兵とそれに囲まれた男性が花壇の傍に立っていました。

「桜華さん。この人が牧場に居ました。ですが、牧場主に頼まれたと言っていまして」
「初対面です。それに、イアンさんから移住者で働く予定の方がいるとは聞いていますが、まだ挨拶に来られていません」
「それは俺だ」

 囲まれている男性が声を上げながら前に出ようとして、衛兵の人に止められます。

「イアンさんが挨拶に連れてきていないので、不審者です」
「分かりました」

 警邏の人達が男性を引き連れていったので、中へ戻って起きてきた皆と朝食を食べます。
 朝食を食べ終えると、青い顔して元気がない三人に水の入ったコップを差し出します。

「頭痛いよう。あ、桜華。さっきすごい声が聞こえたけど、何かあったの?」
「トトが卵泥棒を見つけました」
「無謀だねぇ」

 ルルのつぶやきにミッケさんとルーナさんが頷いています。

「ところで、宿酔いは大丈夫ですか?」
「きつい」
「寝てていい?」
「良いですけど、ルル、その人は友達ですか?」
「う~。知らない人~」

 飲みに行った店で偶然知り合いになり、仲良くなるという話はそこそこ聞く話なのでいいとしましょう。

「あ……挨拶が遅れ……てす……みません。あう。ノノと言……います」

 机の上で息も絶え絶えに自己紹介するノノさん。ルルとミッケさんも似たような状況ですが、何故そこまで呑むのか理解に苦しみます。

「テラスで作業予定があるので煩いかもしれませんが、ゆっくり休んでください」
「そうする~」

 マコちゃんと一緒に後片付けを終わらせると、リビングに敷いた熊の毛皮に川の字になって寝転ぶ三人にお留守番をお願いして外に出ます。

 出かける前に、テラスの邪魔にならない場所に蔦を山積みにしてから広場に向かいます。途中で木材を担いだグレンさん達がいたので、挨拶と家の中にミッケさん達がいることを伝えておきます。
 広場に入ると、そのまま公衆浴場の前にラウルさんがいたので挨拶しながら近寄ります。

「まだ来ていないが、じきに来るだろう」
「そうですか」

 ラウルさんと話している間、マコちゃんは公衆浴場の方を熱心に見つめています。

「妹だったか。大人しそうだな」
「大人しくていい子ですよ」
「そうかい。朝っぱらに牧場の方から咆哮が聞こえたが、何だ」
「トトが卵泥棒を見つけただけです」
「……馬鹿な奴だ」

 ラウルさんがどこか遠くを見つめています。トトを知っている人からすればそうですよね。

「お姉ちゃん、ここが公衆浴場?」
「おう。お前の姉ちゃんが色々とやらかしたうちの一つだ」
「ラウルさん、言い方に悪意を感じるのですが」
「気のせいだろ」

 二カッと笑う姿は肉食獣の獰猛な笑顔。近くにいた子供がわざとらしい悲鳴を上げながら逃げていきました。
 そんな雑談をしていると、随分と久しぶりに村長のコリンズさんと執事の方が来られました。

「おはようございます。桜華さん、お久しぶりですね」
「おはようございます。お久しぶりです」
「桜華さんのお陰で、色々と変わり始めました。ありがとうございます」
「いえ、沢山の方が協力してくれたおかげです」
「そうですか。これからもよろしくお願いします」

 コリンズさんと話している間に数人の男女が集まってきました。何やら話が始まるようなので、マコちゃんと一緒に少し脇に避けます。

「皆さん、おはようございます。村長をやっているコリンズと申します。今回は村の新しい施設で働いてくださるということで、ありがとうございます。何かと大変かもしれませんが、よろしくお願いします」

 コリンズさんの挨拶が終わると、次はラウルさんが前に出ます。

「ギルドマスターのラウルだ。ギルド側の担当者はこいつだ。何かわからないことや要望があればこいつに行ってくれ」

 いつの間にか来ていた、ギルドで働く誠実そうな青年が手を軽く振っています。

「それじゃ、営業を開始してくれ」
「分かりました」

 答えたのは公衆浴場の責任者の男性。その後は皆さんが中に入っていって営業の開始です。早速、村のお爺ちゃん、お婆ちゃんが中へ入っていきました。

 その後はそれぞれの仕事へ。私とマコちゃんは、食材屋に寄って食材と獲れたての角兎を購入して帰宅します。
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