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腹減り雀

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本編

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 家に帰ってくると、既に編み込みを始めているグレンさんを見て、マコちゃんが目を丸くしています。やはりグレンさんの作業速度は驚くものがあるようです。

「ラウラ、今大丈夫?」

 木に向かって呼びかけると、ラウラが見える位置まで下りてきました。

「しゅ?」
「前と同じ糸の糸球作ってくれませんか?」
「しゅ~」
「ありがとう」

 前回盛で作ってもらった時折大きめの糸球を作ってくれているアウラを見ながら、お礼用に買ってきた角兎を木の根元に置きます。
 ……角兎を見た途端、糸球を作る速さが上がりましたね。喜んでいただけたようです。
 アウラは木の根元に糸球を置いて角兎を回収すると、いそいそと木の上の方に戻っていきました。

 アウラを見送ってから糸球を回収、中へ戻ろうとしたらグレンさんが手を止めずに声をかけてきました。

「今の蜘蛛、おかしくないか?」
「何か変でしたか?」
「いや、体の大きさと、吐き出した糸、角兎の大きさが合わない気がするんだが」
「ラウラは、本来一メートルほどの大きさなのでおかしくないですよ」
「なんで小さく……なんだありゃ」

 グレンさんが驚きのあまり手が止まり、それに驚いた職人の皆さんがグレンさんの見ている方を見て、口を開けた
まま固まります。
 どうしたのかと思えば、イアンさんとトトが歩いてくるところでした。

「おはようございます、イアンさん。トトもおはよう」
「おはよう」
「グル!」
「いつもの乳と、ココットの卵を持ってきました」
「早いですね」

「ああ。驚いたことに、一羽辺り四個ほど生んだのか今日は四十個もあった」
「グルル、グル」
「今日はお礼替わりで、この後は幾つか手元に置くと」

 通訳しながらトトを撫でます。今日もふかふかです。

「イアンさん。卵は五個だけ頂いてもいいですか」
「はいはい」

 卵は一度鞄の中へ仕舞っておきます。今日のお昼はこれを使いましょう。

「そういえば、今日から働く方は?」
「それが、トトを見た瞬間どこかへ走って行っちまったよ」

 早朝の卵泥棒もそうでしたが、トトの愛くるしさが通じないなんて悲しいですね。

「そっちは昨日いた子だよね?」
「妹のマコです」
「妹か。桜華さんの牧場を管理させてもらっている、イアンです」
「よろしくお願いします」

「マコちゃん。折角だから牧場に行ってみる?」
「牧場?」
「私の作業を見ていてもつまらないだろうし、牧場なら村の子供達も遊びに来るから」
「グルル」

 トトも賛成しながら頷いています。丁度良い処に、村の女の子達も通りかかりました。

「それじゃあ、ちょっと行ってみる」
「うん。いってらっしゃい」

 牧場に行く皆を見送ると、ラウラと一緒に家の中に戻って蔦の照明器具を作成します。
 出来上がったものはグレンさんに渡しておいてから、作業部屋で織布作業を始めます。

 暫く作業しているとルーナさんがお昼を教えてくれたので、作業を止めて昼食の準備を行います。
 ラウラは部屋に残ると言っていたので、そのまま。何をするのでしょうか。

 お昼の準備が終わったところで眠っていたミッケさん達が起き出してきました。

「三人とも大丈夫ですか?」
「だいぶ良くなったかな。あ、ありがとう」

 とりあえず三人に水を差し出し、顔を洗ってくるように促してからテラスに出ます。

「……うん。いい感じです」

 作業が完了したテラスは思い描いていた通りに出来上がっています。ここでお茶を飲むのが楽しみですね。
 ポストに入れられていた請求書を回収していると、マコちゃんも帰ってきました。

 全員揃ったのでお昼ご飯。静かに食べ終わると、牧場へ行くミッケさんとルルとマコちゃんを見送って後片付け。
まだ調子の悪そうなノノさんを肩に載せて、避難所の方へ出発します。

「色々とすみません」
「気にしないでください。ノノさんは移住ですか?」
「はい。一族が住んでいる場所から外に出て見たくて。色々な処見てきた中で居心地の良さそうな村に着いて嬉しくなっちゃって」
「羽目を外してしまったと」
「恥ずかしいです」

 肩にいるので表情は窺えないのですが、顔を両手で覆っているような気がします。

「ノノさんさえよければ、家に住んでもいいですよ」
「え、本当ですか!」
「大きいのが一人なら駄目ですが、妖精族なら問題ありません」

 色々と必要になるものがあるけれど、妖精族なら作るのはそれほど手間になるものでもない。

「それじゃあ、宜しくお願いします」
「はい。宜しくお願いします」

 一緒に暮らす人が増えました。一層賑やかになりますね。

「ところで、桜華さん。どちらへ?」
「避難所の様子を確認しに行きます。どうなっているかな」

 すっかり放っていましたが、クストース達は元気でしょうか。
 辿り着いた避難所は現在二階の建築中でした。クストース達も他の人と一緒に仕事を頑張っています。元気そうでよかった。

「……巨人が沢山……」
「あの鎧を着ているのがクストース。他の子は名前を付けていません。一応、皆ゴーレムになるかな」
「ゴーレム……え、術者は誰ですか」
「私です」

 ノノさんの声が聞こえなくなりました。絶句しているようです。後ろにいるディンさん達の方へ振り替えれば、全員が苦笑していました。

『主上。どうされた』

 クストースの声に視線を戻せば、近くで膝をついていました。

「皆の様子を見に来ました。問題はありませんか?」
『ありません。皆、息災です』
「そう良かった。じゃあ、仕事頑張って」
『はっ。行ってまいります』

 一度頭を下げてから仕事に戻っていくクストースを、手を振って見送ります。

「ディンさん、前より騎士っぽくなっている気がします」
「皆で色々と教えていますので、その影響かと」

 ディンさんも何かしたのか、視線を合わせようとしてくれません。

 クストース達の様子も確認できたので、買い物でもして帰ろうかなと思っていると、門の方から大きなものが走る音と振動が響いてきました。今度は何事でしょうか。
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