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本編
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聞こえてくる音が気になったので門が見える場所へ移動すると、二本足で走る系統の恐竜に似たものが沢山の荷物を引きながら村へ入ってくるところでした。
「ルーナさん、あれはなんでしょうか」
「えーと。あ。あれは走竜です。温厚な竜種の中でも中長距離での荷物の運搬役として扱われることが多いやつです」
近距離ならさらに速く走れるものや、早さより力を得意とするもの等、多様な種類がいるそうです。
「ディンさん、この資材の量でどこまで行けますか」
「恐らくですが、半分はいける量かと」
「半分ですか」
「お。こっちにいたのか」
「こんにちは、ラウルさん」
職員の肩を引き連れてラウルさんがきました。ラウルさんは私の横で止まり、職員さんは走竜を率いる集団の下へ走っていきます。
「今回運んできた分で南側をやる予定だ。北側は少し先になる。工事現場の警戒だが、トトに頼めるか?」
「頼めばやってくれるとは思いますけど」
「頼んでおいてくれ」
「分かりました」
ラウルさんによると、走竜による輸送はあと二回行われ、最後の便が来る頃に避難所の方も完成予定となっているそうです。
避難所が終わればクストース達も塀の方に回るので、それなりに早く終わる見込みだとか。
今後の展開を聞いていると、走竜の集団から四十代ぐらいの男性が荷物を片手にやってきます。
「久しぶりだな、ラウル。大分太ったな。貫禄を通り越して愛嬌になっているぞ」
「うるせぇな。てめぇは枯れ木になってるじゃねえか。嫁に食わせてもらってねえのか」
「ははは。太らせようと必死でさ。参ったよ」
小さな頃から瘦せていたので、体質だと思うんだよなと朗らかに笑っています。
「で、そっちの人は? ラウルの部下か?」
「いや、渡来人で村一番の問題児、桜華だ」
「毎回毎回悪意がありますね。桜華といいます」
「走竜を始めとした動物や魔物を使った輸送用の足を提供しているベックです。問題児って何?」
「エレノアを驚かせたり、怒らせたり、呆れさせたりだな」
「それはすごいね」
納得のされ方に、非常に納得がいきません。
「それじゃあ、桜華さんにこれをあげようかな」
先程から手に持っていた荷物を手渡されました。結構な重さがあります。
「これはなんだ?」
「走竜の卵に交じって見知らない卵があってね。どうせだから土産にしようと思ってね」
「魔獣屋に見てもらってないのか」
「ああ。その方が面白いだろ」
「普段ならそうだが、こいつに渡すときは別だ。村に魔獣屋はいねぇし、どうしたもんか」
「何が駄目なんだい? 得体のしれないのを渡すなってことか?」
「こいつは問題しか起こさないから――」
「あの、孵りそうです」
受け取った少し後から揺れ動いていましたが、今はっきりと揺れ動いています。包んでいた物を取って卵を取り出すと、既に皹が入り始めていました。
卵を地面に下ろして固唾を呑んで見守っていると、皹が少しずつ大きくなっていき、一際大きく揺れてから一気に割れて中身が飛び出しました。
卵から出てきたのは、不思議な光沢をした青い鱗を纏う円らな瞳、可愛い蛇です。きゅ~と鳴くのが堪らなく可愛いです。
「あれ、この瞳。竜でしょうか」
「どれどれ」
手に載せてベックさんに見えるように持ち上げます。
「……ふむ。竜だね。ただ、水竜とは違うような気がするな」
「特殊個体か。どこの竜が托卵なんかしたんだ。たくっ」
ラウルさんの顔が怖いせいか、水竜の子が怯えていしまいました。頭を撫でると、嬉しそうにしています。
「ベックさん、何をあげれば」
「ああ。最初は卵の殻で、後はなんでも。竜って雑食だから。ただ、竜によって好みはあるけどね」
「ありがとうございます」
さっそく卵の殻を口元に持っていくと、嬉しそうに食べ始めました。
「名前は、シエロにしましょう」
「きゅい~」
卵の殻はまだ残っていますが眠くなってきたようなので、腕に抱えて背中を摩ります。
「きゅ。きゅ~」
「ははは。すっかり懐いたな。水竜は水のあるところが好きだから、水場を用意してあげてね」
「はい。分かりました。そういえば、ノノさん大丈夫ですか?」
少し待ってみましたが、未だに反応がありません。ディンさんの方を見れば、無言で首を横に振っているので、未だに硬直しているようです。
「それではトトに頼んできます。あ、誰か一緒の方がいいですか?」
「いや。トトの件は村のみんなが知っているから、単独でも問題ない」
一度村の中を通っているし、女の子達が自慢して回っていたから皆知っているそうです。
「分かりました。ベックさん、色々とありがとうございます」
「困ったことがあったら、いつでも連絡して」
ラウルさんとベックさんにお辞儀して、牧場の方へ向かいます。念のため、ノノさんはルーナさんに持ってもらいましょう。
牧場では朝見かけた子以上の女の子達が、あっちこっちにいるココットを追いかけたり抱きしめたり、メリちゃんを撫でていたりとしていて、非常にほんわかした空気が漂っています。
「わ~。すごい数のココットですね」
いつの間にか復活していたノノさんが、ルーナさんの手の上でにこやかに笑っています。ただ、ルーナさんの体でトトに気が付いていないようですが。
噴水の近くに座って、数人に抱き着かれながらも日向ぼっこをしているトトに近づきます。
「グル?」
「ゆっくりとしている処ごめんね。村の南側の拡張工事をする間、魔物の警戒と対処をお願いしたくて。お願いできる?」
「グル。グル?」
トトが大きく頷いた後、少し傾けています。視線の先は私の腕の中。
「この子はシエロ。生まれたばかりの水竜の子供。牧場は少し大きくなってからね」
「グル」
気のせいと思われるかもしれませんが、トトが優し気に微笑んだように見えます。
「あ、あの、桜華さんは何と話しているのですか? というか、会話しているのですか?」
「ふぇ、えっと、……覚悟は良いですか」
「覚悟ですか? えっと、はい」
意思確認が取れたと判断したルーナさんがゆっくりと体勢を変えて、ノノさんにもトトが見えるようにします。
ところで、覚悟ってなんですか。トトは可愛いので覚悟なんて必要ないですよね。
「ふぇあ!」
「グル?」
奇声を上げて硬直するノノさんと、それを見て首を傾げるトト。
「新しく一緒に住むことになったノノさん。だけど、大丈夫かな」
「そのうち慣れると思います」
ディンさんが苦笑しています。胃のあたりを抑えているのは見なかったことにしましょう。
「ルーナさん、あれはなんでしょうか」
「えーと。あ。あれは走竜です。温厚な竜種の中でも中長距離での荷物の運搬役として扱われることが多いやつです」
近距離ならさらに速く走れるものや、早さより力を得意とするもの等、多様な種類がいるそうです。
「ディンさん、この資材の量でどこまで行けますか」
「恐らくですが、半分はいける量かと」
「半分ですか」
「お。こっちにいたのか」
「こんにちは、ラウルさん」
職員の肩を引き連れてラウルさんがきました。ラウルさんは私の横で止まり、職員さんは走竜を率いる集団の下へ走っていきます。
「今回運んできた分で南側をやる予定だ。北側は少し先になる。工事現場の警戒だが、トトに頼めるか?」
「頼めばやってくれるとは思いますけど」
「頼んでおいてくれ」
「分かりました」
ラウルさんによると、走竜による輸送はあと二回行われ、最後の便が来る頃に避難所の方も完成予定となっているそうです。
避難所が終わればクストース達も塀の方に回るので、それなりに早く終わる見込みだとか。
今後の展開を聞いていると、走竜の集団から四十代ぐらいの男性が荷物を片手にやってきます。
「久しぶりだな、ラウル。大分太ったな。貫禄を通り越して愛嬌になっているぞ」
「うるせぇな。てめぇは枯れ木になってるじゃねえか。嫁に食わせてもらってねえのか」
「ははは。太らせようと必死でさ。参ったよ」
小さな頃から瘦せていたので、体質だと思うんだよなと朗らかに笑っています。
「で、そっちの人は? ラウルの部下か?」
「いや、渡来人で村一番の問題児、桜華だ」
「毎回毎回悪意がありますね。桜華といいます」
「走竜を始めとした動物や魔物を使った輸送用の足を提供しているベックです。問題児って何?」
「エレノアを驚かせたり、怒らせたり、呆れさせたりだな」
「それはすごいね」
納得のされ方に、非常に納得がいきません。
「それじゃあ、桜華さんにこれをあげようかな」
先程から手に持っていた荷物を手渡されました。結構な重さがあります。
「これはなんだ?」
「走竜の卵に交じって見知らない卵があってね。どうせだから土産にしようと思ってね」
「魔獣屋に見てもらってないのか」
「ああ。その方が面白いだろ」
「普段ならそうだが、こいつに渡すときは別だ。村に魔獣屋はいねぇし、どうしたもんか」
「何が駄目なんだい? 得体のしれないのを渡すなってことか?」
「こいつは問題しか起こさないから――」
「あの、孵りそうです」
受け取った少し後から揺れ動いていましたが、今はっきりと揺れ動いています。包んでいた物を取って卵を取り出すと、既に皹が入り始めていました。
卵を地面に下ろして固唾を呑んで見守っていると、皹が少しずつ大きくなっていき、一際大きく揺れてから一気に割れて中身が飛び出しました。
卵から出てきたのは、不思議な光沢をした青い鱗を纏う円らな瞳、可愛い蛇です。きゅ~と鳴くのが堪らなく可愛いです。
「あれ、この瞳。竜でしょうか」
「どれどれ」
手に載せてベックさんに見えるように持ち上げます。
「……ふむ。竜だね。ただ、水竜とは違うような気がするな」
「特殊個体か。どこの竜が托卵なんかしたんだ。たくっ」
ラウルさんの顔が怖いせいか、水竜の子が怯えていしまいました。頭を撫でると、嬉しそうにしています。
「ベックさん、何をあげれば」
「ああ。最初は卵の殻で、後はなんでも。竜って雑食だから。ただ、竜によって好みはあるけどね」
「ありがとうございます」
さっそく卵の殻を口元に持っていくと、嬉しそうに食べ始めました。
「名前は、シエロにしましょう」
「きゅい~」
卵の殻はまだ残っていますが眠くなってきたようなので、腕に抱えて背中を摩ります。
「きゅ。きゅ~」
「ははは。すっかり懐いたな。水竜は水のあるところが好きだから、水場を用意してあげてね」
「はい。分かりました。そういえば、ノノさん大丈夫ですか?」
少し待ってみましたが、未だに反応がありません。ディンさんの方を見れば、無言で首を横に振っているので、未だに硬直しているようです。
「それではトトに頼んできます。あ、誰か一緒の方がいいですか?」
「いや。トトの件は村のみんなが知っているから、単独でも問題ない」
一度村の中を通っているし、女の子達が自慢して回っていたから皆知っているそうです。
「分かりました。ベックさん、色々とありがとうございます」
「困ったことがあったら、いつでも連絡して」
ラウルさんとベックさんにお辞儀して、牧場の方へ向かいます。念のため、ノノさんはルーナさんに持ってもらいましょう。
牧場では朝見かけた子以上の女の子達が、あっちこっちにいるココットを追いかけたり抱きしめたり、メリちゃんを撫でていたりとしていて、非常にほんわかした空気が漂っています。
「わ~。すごい数のココットですね」
いつの間にか復活していたノノさんが、ルーナさんの手の上でにこやかに笑っています。ただ、ルーナさんの体でトトに気が付いていないようですが。
噴水の近くに座って、数人に抱き着かれながらも日向ぼっこをしているトトに近づきます。
「グル?」
「ゆっくりとしている処ごめんね。村の南側の拡張工事をする間、魔物の警戒と対処をお願いしたくて。お願いできる?」
「グル。グル?」
トトが大きく頷いた後、少し傾けています。視線の先は私の腕の中。
「この子はシエロ。生まれたばかりの水竜の子供。牧場は少し大きくなってからね」
「グル」
気のせいと思われるかもしれませんが、トトが優し気に微笑んだように見えます。
「あ、あの、桜華さんは何と話しているのですか? というか、会話しているのですか?」
「ふぇ、えっと、……覚悟は良いですか」
「覚悟ですか? えっと、はい」
意思確認が取れたと判断したルーナさんがゆっくりと体勢を変えて、ノノさんにもトトが見えるようにします。
ところで、覚悟ってなんですか。トトは可愛いので覚悟なんて必要ないですよね。
「ふぇあ!」
「グル?」
奇声を上げて硬直するノノさんと、それを見て首を傾げるトト。
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