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本編
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しおりを挟む武具屋の中に入ってみれば、店主のレガードさんがカウンターでボディービルダーのポージングをしていました。一度扉を閉めて、再度開けると別のポージングになっています。。
ちなみに、レガードさんは大将と同じくらい筋骨逞しい体をしている。頭髪はある。あると言ったらある。
「らっしゃい。どうした?」
「クロークはありますか? できれば、フード付きの」
「あるぞ。しかし、コートの方が動きやすいが良いのか?」
案内してもらって現物を確認します。結局、フード付きのコートと肩掛け鞄を購入。残念なことにルル用のサイズがなかったため、それは見送り。
武具屋なのに衣類と鞄があるのは専門店がないためであり、それほど売れる者でもないので、種類もほとんどないと言っていい状態です。
「他はいらないのか?」
「ん~。鉈とナイフ、包丁ありますか?」
「こっちだ」
鉈と解体用の少し肉厚の片刃のナイフ、料理用の包丁で一千カーナ。全部肩掛け鞄に入れておく。
武具屋を出ると丁度雨が降り始め、思わず空を見上げる。
「雨が降ってきましたね」
隣に浮かんでいるルルを見ると、何故か嬉しそうにしている。
それにしても、雨のせいか少し肌寒い。よし、決めました。風呂を作りましょう。
木材屋でベッド、風呂とシンクに必要な木材を購入。厚めの大きな板を選んだので八百六十カーナになりました。やはり、飛ぶような勢いでお金が減っていきます。
木材を一緒に運んで家に戻ると、今日はリビング(テラスのすぐ横)でルルに見守られながら木材加工をします。
ある程度加工を進めると、玄関の方からノックの音が聞こえてくることに気がついて作業を中断。ドアを開けてみれば、フード付きのクロークを着たピエナさんが立っていました。
「こんにちは。どうしました?」
「こんにちは、桜華さん。昨日のお礼をしたいと思いまして」
そういって、クロークの中からバスケットを出して見せてくれる。
「気を遣わなくてよかったのに」
それだと納得ができないからと、少し頬を赤くする。
「中へどうぞ。あ。お茶とか出せないけど良い?」
「お茶も持ってきました」
バスケットには小さなテーポッドとカップも入っていたらしい。素晴らしいです。
色々と話しながらのんびりご飯を食べ終えると、仕事に戻るピエナさんを途中まで送り、鍛冶場に寄り道してガラスと舟釘を受け取ってから家に帰ると、家の前で隣家のイアンさんが待ち構えていました。
「こんにちは、イアンさん」
「こんにちは、桜華さん。実はね、カウルベル四頭とメリちゃん二頭を捕獲してきたから、飼育を始めるよ」
お世話の話を再確認して、牧場へと向かうイアンさんと楽しそうという理由で様子を見に行くルルを見送る。
家に入るとガラスを食器棚に嵌め込んでから、木材の加工を再開します。
最初にベッドを作り上げると、次は重要な部品でもある蛇口に取り掛かる。
背中にあたる部分に魔方陣を貼り付け、指物の業を利用して筒状に仕上げて横に魔晶石を嵌め込む場所を作る予定。魔方陣は、魔石を使って水とお湯を段階調整で作り出すタイプにする。
夢中になって加工を続けていると、実に幸せそうなルルが帰ってきました。
「ただいま。メリちゃん可愛いよ」
「モコモコ?」
「モッコモコ、フワッフワだった!」
かなり触り心地が良いらしい。近いうちに見に行こうと決心しながら外を見ると、いつの間にか雨もやみ、夜がそこまできていた。
「暗くなってきましたね。ミッケさんも戻ってきていませんが、笹熊亭に行きましょう」
手早く水浴びをしてから後片付けと戸締りを行い、笹熊亭に向けて歩きはじめる。広場まであと少しといった処で、広場の方から真っ赤な顔をした兵士が走ってくる。
「そこの家の住人か!」
異様に大きな声に思わず仰け反る。ルルも縮こまって耳を抑える。
「そうですけど、何か?」
「聞くことがある故、詰所にこい!」
「一体何事ですか?」
「良いから来い!」
腕を取って無理やり引っ張って歩きはじめる。抵抗してもよかったけど、大人しく引かれるまま歩く。
詰所に着くと、その勢いのまま中に入って奥の部屋へ。部屋の中央にあった机に体を押し付けられ、後ろ手に縄で縛られる。ルルの方はさっと捕まえて鳥籠のようなものの中へ。それらが終わると兵士は部屋から出ていこうとする。
大人しているのも馬鹿馬鹿しくなって縄を魔法で焼き切ると、丁度閉まった扉に攻撃力特化型の強化魔法を使いながら蹴りを繰り出し、ここまで連れてきた兵士諸共打ち抜く。
蝶番が吹き飛んで倒れた扉の残骸(下に例の兵士)に乗って周囲を観察すると、詰所にいた兵士全員が少し腰を浮かして呆然とした顔をしていました。
「さて、話があるという事で来ましたけど、誰か分かりますか?」
「あ……えっと、その……」
「ぐう。う。お、おも……誰か乗っているのか、どかんか!」
近くにいた人がしどろもどろになっていると、下から抗議の声が聞こえてくる。なので、今度は踏みつけると同時に、扉と足が接触の瞬間に小規模の爆裂系魔法を使用。
雀の涙ほどしかない魔力だったにも拘らず、扉は破砕音とともに砕け散り、下にいた兵士は腹部への強烈な一撃に白目を向いて静かになる。
「一体何事だ!」
カイゼルさんが武器を構えたまま部屋に入って来る。背後には抜身の剣を構えた人達に驚いた様子のミッケさん。
「あ、桜華さん。一体……何事?」
声を掛けようとしたミッケさんだったけど、詰所内の兵士達が私を見つめているという状況から尻すぼみになっていきます。
「話があるから詰所に来いと強引に引き立てられ、そこの部屋で縄を掛けられたので反撃しました」
「あ~。確かに話はあったが……少し待ってくれるか?」
「分かりました」
「誰か茶を淹れてくれ。それから、誰か大工を呼んでくれ。後、そいつ引き取りたいんだけど良いか?」
足元に転がった物を申し訳なさそうに指差すので、部屋の中に戻ると鳥籠の扉を抉じ開ける。その間に、近くにいた人が転がっている物を素早く回収してどこか別の部屋へ運んでいきました。
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