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腹減り雀

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本編

15

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 気持ちを切り替えてキッチンセットの加工に入ります。

 まずはシンク。湯船の作り方を流用して組み上げると、魔方陣を張り付けた蛇口と一緒にキッチンセットへ取り付ける。
 今回、風呂とシンクの蛇口に使った魔方陣は、温度調整機能付きの混合栓。魔石を手に入れるまで使えないのが残念です。

 その後、キッチンセットの長手に耐火材を敷き詰める。それが終わったところで、漸くキッチンも半分完成になります。

 次は湯船ですが、その前に昼食。
 一応カレンさんにも一緒に食べないか声をかけてみるも、「いらない」の一言だけ。少し離れた所で私を睨みながら持ってきていたらしい弁当を食べています。

 蛇足ですが、ゴミに関してはゴミ箱に捨てるだけで消滅します。排水もどこかへと消えていく不思議な現象だけど、ゲームならではの便利仕様という事で。

 後片付けを終えると、続けて湯船の加工と組み立て。組み上げたところでシンクと同じ魔方陣を張り付け。それが済むと水を使って漏れがないかをシンクと一緒に確認。……問題なし。

 作業と後片付けを終えるとリビングに戻って、端材を加工して角灯のフレーム作り。そのまま新しいガラスを嵌め込む。傘は既存の物を流用して完了。見栄えはよくなりました。

 加工もひと段落したので、魔具の申請をするためにギルドへ向かいます。

 少し歩いたところで、誰かの呼び声が聞こえてきました。何度も聞こえてくるので周囲を見渡して声の主を探してみると、通りの先から小物臭のする若い男性が近寄ってきていました。

「やっと見つけた! 手前ふざけんなよ!」
「どちら様ですか?」
「惚けんなよ。手前が計画通りに動かないから兄貴が捕まっちまったじゃねえか。どうしてくれんだ!」
「どちら様ですか?」

 この男性の用向きが一向に分からりません。まあ、喋っている内容からある程度予想は付くし、何が起きているのかも分かりますが。全くもって頭の痛い話です。
 目の前にいた男は、素早く動いたカレンさんが少し離れた所へと引っ張って行って話し始めました。

「様子見で良いかな。ギルドって何時までだろ」

 思わず出た自分の言葉に苦笑しながら、再び歩き出して村の広場まで辿り着く。

 村の中心にそびえ立つ生命力に溢れた巨木。こうして見上げているだけでも癒されます。ふと、上の方を見れば、植物の精霊が風の精霊とダンスを踊っているのを見つけました。何というか、癒されるというより和む。そんな感じです。

 暫く精霊達を見つめていると、喧しい音が聞こえてくる。振り返ってみれば、全身鎧に抜身の武器を持った人達。先頭にいるのはカレンさんのようで、カイゼルさんの姿はありません。
 カイゼルさんはどうしたのかなと考えていたら、カレンさんが抜身の剣を私の喉元へと突きつけてきました。

「抵抗すれば斬る」

 カレンさんが小さな合図を送り、周囲の人達が私を拘束しようと近づいてくる。
 大人しく連行され、そのまま事情聴取。様々な質問に対し無言を貫きます。大分時間が過ぎた頃、漸く続きは明日にするという事になって牢屋へと案内される。

 案内されている途中、笑い声が聞こえてきたのでそちらを見ると、牢の中に例の五人組がいて、一様ににやけ顔を浮かべていた。
 立ち止まって目を瞑る。隣に立っていた牢番が訝しんで肩に手を置いた瞬間、手縄を火の魔法で一気に焼切り、牢番のお腹に膝蹴りを入れます。
 牢番が呻いている間に鍵を奪い、眼の前の牢の鍵を開けて中へ。手早く施錠して鍵をポケットに仕舞います。

「な、何か用か?」

 少々腰が引けているものの、眼の前に牢屋の鍵を持った人間がいるという事で目をぎらつかせる五人組。

 手前にいる二人が立ち上がった時に一気に距離を詰めると、その勢いのまま右にいた男の顔面を蹴り抜く。呆気にとられた左隣の奴に左手で目潰し。右側の奴が立ち上がったので、股座を蹴り上げる。
 後ろに回ってきた一人を足払いで転がすと、丁度こちらに頭が来たので掴んで、最後の一人に思い切りぶつける。
 それぞれに呻いているが、一切の手加減をせずに順番に目潰し、鳩尾に何度も攻撃を当てていく。

 相手が泣き言を言おうとすれば鳩尾で、謝罪しようとすれば直ぐに目潰しで黙らせる。途中から牢屋の外が騒がしくなるけれど、すべて無視して攻撃を続ける。

 何度目になるのか分からないぐらい集中してやっていると、途中で手を誰かに止められました。向こうも相当力を入れているらしく、びくともしません。
 仕方ないので割って入ってきた人物を見ると、鬼でも逃げ出しそうな物凄い形相のカイゼルさんでした。

「もう十分だ。そこまでにしておけ」

 カイゼルさんと睨みあっていると、足元の奴がカイゼルさんへと手を伸ばします。

「た、助け……て」

 カイゼルさんに手を掴まれたままだったので、思いっきり蹴り飛ばす。

「おい!」

 肩を掴まれて強引にカイゼルさんと向かい合せになる。さっきよりも顔つきが険しくなっています。

「泣き寝入りするぐらいなら、暴れて何が悪い」
「気持ちはわかるが、やり過ぎだ」

 五人組は全員涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をしている。

「頼むから、ここまでにしてくれ」

 小さな子をあやす様に頭を撫でてくる。そのままにしておきながら周囲を見れば、牢屋の中にいるのは五人組と私とカイゼルさん。それから、丁度入ってきたカレン。

「隊長。そいつは罪人です。さっさと牢に……」
「……爆ぜろ」

 撫でられたまま視線を向けて、カレンの鼻先で爆発系の魔法を発動。中心点から放たれた青い炎がカレンに襲い掛かる。

「ギャァァァ!」
「なっ!」

 私の頭に手を載せたまま、そっちを見て呆気にとられたカイゼルさんの手を払いのけます。

「私は聖人ではないので、我慢できない事もあるし、限度もあります」
「だからってなぁ……。とりあえず、ヨハン。カレンを頼む」
「分かりました」

 いまだに地面を転げまわっていたカレンに、ヨハンと呼ばれた若者が近寄り、手を貸してどこかへと連れていきました。

 カイゼルさんの後をついて牢屋から出ると、カイゼルさんが牢屋の中へと向き直る。

「お前らも今回の事で反省したか? 次は嘘のない話を頼む。はっきり言って何度も庇う事はできん」

 今回の騒動は魔法を使えなくする道具を最初から使用すれば未然に防げた筈だけど、そうなれば正面から詰所に乗り込むだけ。カイゼルさんはそういった私の考え方を見抜いたようです。
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