24 / 61
本編
22
しおりを挟む
朝のあれこれを済ませると、昨夜のうちに運び込まれた煉瓦の中から窯の口にあたる部分の石材を選び出して、石窯用として作った魔方陣を張り付けます。
一通り加工を終えて、二人が起きてきたら笹熊亭で朝ご飯です。
「いやぁ、美味しいねぇ。そういえば、桜華は料理するの?」
「今日で一通りの台所用の家具ができる予定なので、明日あたりからですね」
「お~。遂に桜華の料理! 料理もできるの?」
少し浮き上がったルルが目を輝かせています。その様子にミッケさんが不思議そうにしています。
「ルルちゃん、どうしたの?」
「桜華の世界の料理が楽しみなの。きっと美味しい物が沢山あるんだろうなぁ」
想像しているのか、うっとり顔のルルに思わずといった感じで苦笑するミッケさん。
「私は料理できないからなぁ。桜華さんはどうなの?」
「趣味でやる範囲ですね。あ、今日のお昼はどうしますか?」
「どうしようかな。昼前には終わりにするって言ってたし……」
「みんなで一緒に食べようよ」
「それなら、家で待っていてください。市で何か買って帰ります」
「は~い。ルルちゃん、お風呂入れてね」
「了解です!」
ルルがビシッと敬礼します。どうやら、ルルもお風呂を気に入ってくれたようです。
朝食を賑やかに食べ終えると、あるものを大将にお願いしておいて、訓練に向かう二人と別れてギルドに立ち寄り、幾らかのお金を下してから雑貨屋に向かいます。
「おはようございます、カームさん」
「おはようございます。今日はよろしくお願いしますね」
暫くカームさんと雑談していると、数人の人が荷馬車とともに現れて、太めの男性がカームさんと挨拶を交わします。
私は他の男性と共に馬車の荷物を下ろします。
「いやあ、助かるよ。最近、家で買ってくれる人が多くてね」
カームさんが朗らかに笑うと、ここまで荷を持ってきたふくよかな商人も嬉しそうに笑います。
「それは何よりです。そういえば、フェナンでの渡来人達はどうですか?」
「あれこれと問題を起こしたりしていますね。ただ、良い子もいますよ。そこで手伝ってくれている子も渡来人だけど、家の商品整理やこうして人手が欲しい時には手伝ってくれたりしています」。
「ほほう。そうでしたか」
なにやら値踏みするような視線が来ましたが、一向に気にすることなく商品を運んでいきます。最後の一個を運び終えると、運び忘れがないことを確認して話し込んでいた二人に近づいていきます。
「カームさん、運び終わりましたよ」
「おお。すまないね。ありがとう。こちらは商隊の責任者でもあるロームさんだ」
「ロームです。以後お見知りおきを」
「渡来人の桜華と申します。こちらこそ、よろしくお願いします」
笑顔を浮かべて挨拶を交わすと、ロームさんの視線が私を頭から足先まで往復します。
「桜華さんですか。狩猟者ですかな?」
「いえ、修行中の魔具職人です」
仕事として作った魔具は魔獣避けの柵だけという事を伝えると、大きく頷きます。
「そうでしたか。しかし、魔具職人ですか」
「ありがとうございます。あの、不躾で申し訳ないのですが、お聞きしたいことがありまして」
「なんでしょうか」
「魔石を購入したいと思っているのですが、市では取り扱いあるでしょうか?」
「ええ。最近、渡来人達が持ち込むことが多くて、余っていますよ」
なんでも、迷宮に籠って大量に持ち込むことが多いそうな。
「魔石をどのように使うのか、宜しければ教えて頂けませんか」
「もちろん魔具に使います」
「それは、町で購入した魔具でしょうか。それとも遺物の魔具ですか?」
「大部分は自作の魔具です」
「魔具をお作りになったのですか!」
「まだ分からないことだらけです」
餌をねだる金魚や鯉のように口を開閉させている二人の様子が、不謹慎ではありますが面白いです。
「すみません。本当に未熟でして。お恥ずかしい限りですが、魔石についても、名前ぐらいしか知らなくて」
「……そうでしたか。いやはや。思わぬ大きな出会いだったようですね。では、道中お話しいたしましょう。カームさん、次もまた良い商談ができますように」
「ええ。ロームさん、また良い商談ができますように」
右手を左胸に当ててお辞儀し合う。商人特有の挨拶でしょうか。
それが済むと、ロームさんに連れられて歩き出します。
「魔石は、ランク分けがなされています。ランクは内包する魔力によって分けられていまして、下から順番に四級、三級、二級、一級、特級となっています。魔石は、武器や防具に属性を付加するときに使うのと魔法用の杖に使うのが現在の主流となっていまして、ごく一部で魔具に使われています。この時、発現する現象――例えば、火を纏う剣を作る場合、四級なら少し熱い程度の火となりますが、一級なら鉄を溶かすことができる火となります」
「つまり、等級が上がると魔力の質と内包する魔力量も良くなるという事でしょうか」
「然様でございます」
となると、魔具として使う場合はその辺も考える必要性があると。
「市には、何級の魔石があるのでしょうか」
「フェナンでは三級以上の魔石は売れたことがないので、四級しか出していません。ですが、三級も持ってきていますよ」
商機がなければ、そのスペースを他の物にした方がいいのは商売の鉄則ですね。
ロームさんに案内されるままに、市の中央にある店の後ろへ。馬車の荷台に積まれた山の中から大きめの箱を手前に移します。
「そこに売られているのは四級で、こちらが三級の魔石になります。今回はこちらが最高の品になります」
箱の蓋を外すと、様々な色の魔石が日の光を浴びて煌めく。綺麗ですが、きらきらしすぎて目が痛いです。
「四級の魔石は一つ百カーナ。三級は五百カーナになります。どれほど入用でしょうか」
属性が違っても等級が同じであれば値段は同じ。ただ、値段が安いのはここまで。二級以上はもっと値が張るとのこと。
魔石の事は分からないことだらけ、なので、ここは大きめに考えておきましょう。
「……火の三級を六個。水属性の三級を三個、光属性の三級を一個お願いします」
本当はもっと欲しいのですが、お金が足りません。五千カーナを手渡すと、ロームさんが笑顔で受け取ります。
「確かに受け取りました」
硬貨を馬車の中に置いてある頑丈そうな箱の中に仕舞うと、私が購入した魔石を袋に移しながら、ふと思いついたという表情になりました。
一通り加工を終えて、二人が起きてきたら笹熊亭で朝ご飯です。
「いやぁ、美味しいねぇ。そういえば、桜華は料理するの?」
「今日で一通りの台所用の家具ができる予定なので、明日あたりからですね」
「お~。遂に桜華の料理! 料理もできるの?」
少し浮き上がったルルが目を輝かせています。その様子にミッケさんが不思議そうにしています。
「ルルちゃん、どうしたの?」
「桜華の世界の料理が楽しみなの。きっと美味しい物が沢山あるんだろうなぁ」
想像しているのか、うっとり顔のルルに思わずといった感じで苦笑するミッケさん。
「私は料理できないからなぁ。桜華さんはどうなの?」
「趣味でやる範囲ですね。あ、今日のお昼はどうしますか?」
「どうしようかな。昼前には終わりにするって言ってたし……」
「みんなで一緒に食べようよ」
「それなら、家で待っていてください。市で何か買って帰ります」
「は~い。ルルちゃん、お風呂入れてね」
「了解です!」
ルルがビシッと敬礼します。どうやら、ルルもお風呂を気に入ってくれたようです。
朝食を賑やかに食べ終えると、あるものを大将にお願いしておいて、訓練に向かう二人と別れてギルドに立ち寄り、幾らかのお金を下してから雑貨屋に向かいます。
「おはようございます、カームさん」
「おはようございます。今日はよろしくお願いしますね」
暫くカームさんと雑談していると、数人の人が荷馬車とともに現れて、太めの男性がカームさんと挨拶を交わします。
私は他の男性と共に馬車の荷物を下ろします。
「いやあ、助かるよ。最近、家で買ってくれる人が多くてね」
カームさんが朗らかに笑うと、ここまで荷を持ってきたふくよかな商人も嬉しそうに笑います。
「それは何よりです。そういえば、フェナンでの渡来人達はどうですか?」
「あれこれと問題を起こしたりしていますね。ただ、良い子もいますよ。そこで手伝ってくれている子も渡来人だけど、家の商品整理やこうして人手が欲しい時には手伝ってくれたりしています」。
「ほほう。そうでしたか」
なにやら値踏みするような視線が来ましたが、一向に気にすることなく商品を運んでいきます。最後の一個を運び終えると、運び忘れがないことを確認して話し込んでいた二人に近づいていきます。
「カームさん、運び終わりましたよ」
「おお。すまないね。ありがとう。こちらは商隊の責任者でもあるロームさんだ」
「ロームです。以後お見知りおきを」
「渡来人の桜華と申します。こちらこそ、よろしくお願いします」
笑顔を浮かべて挨拶を交わすと、ロームさんの視線が私を頭から足先まで往復します。
「桜華さんですか。狩猟者ですかな?」
「いえ、修行中の魔具職人です」
仕事として作った魔具は魔獣避けの柵だけという事を伝えると、大きく頷きます。
「そうでしたか。しかし、魔具職人ですか」
「ありがとうございます。あの、不躾で申し訳ないのですが、お聞きしたいことがありまして」
「なんでしょうか」
「魔石を購入したいと思っているのですが、市では取り扱いあるでしょうか?」
「ええ。最近、渡来人達が持ち込むことが多くて、余っていますよ」
なんでも、迷宮に籠って大量に持ち込むことが多いそうな。
「魔石をどのように使うのか、宜しければ教えて頂けませんか」
「もちろん魔具に使います」
「それは、町で購入した魔具でしょうか。それとも遺物の魔具ですか?」
「大部分は自作の魔具です」
「魔具をお作りになったのですか!」
「まだ分からないことだらけです」
餌をねだる金魚や鯉のように口を開閉させている二人の様子が、不謹慎ではありますが面白いです。
「すみません。本当に未熟でして。お恥ずかしい限りですが、魔石についても、名前ぐらいしか知らなくて」
「……そうでしたか。いやはや。思わぬ大きな出会いだったようですね。では、道中お話しいたしましょう。カームさん、次もまた良い商談ができますように」
「ええ。ロームさん、また良い商談ができますように」
右手を左胸に当ててお辞儀し合う。商人特有の挨拶でしょうか。
それが済むと、ロームさんに連れられて歩き出します。
「魔石は、ランク分けがなされています。ランクは内包する魔力によって分けられていまして、下から順番に四級、三級、二級、一級、特級となっています。魔石は、武器や防具に属性を付加するときに使うのと魔法用の杖に使うのが現在の主流となっていまして、ごく一部で魔具に使われています。この時、発現する現象――例えば、火を纏う剣を作る場合、四級なら少し熱い程度の火となりますが、一級なら鉄を溶かすことができる火となります」
「つまり、等級が上がると魔力の質と内包する魔力量も良くなるという事でしょうか」
「然様でございます」
となると、魔具として使う場合はその辺も考える必要性があると。
「市には、何級の魔石があるのでしょうか」
「フェナンでは三級以上の魔石は売れたことがないので、四級しか出していません。ですが、三級も持ってきていますよ」
商機がなければ、そのスペースを他の物にした方がいいのは商売の鉄則ですね。
ロームさんに案内されるままに、市の中央にある店の後ろへ。馬車の荷台に積まれた山の中から大きめの箱を手前に移します。
「そこに売られているのは四級で、こちらが三級の魔石になります。今回はこちらが最高の品になります」
箱の蓋を外すと、様々な色の魔石が日の光を浴びて煌めく。綺麗ですが、きらきらしすぎて目が痛いです。
「四級の魔石は一つ百カーナ。三級は五百カーナになります。どれほど入用でしょうか」
属性が違っても等級が同じであれば値段は同じ。ただ、値段が安いのはここまで。二級以上はもっと値が張るとのこと。
魔石の事は分からないことだらけ、なので、ここは大きめに考えておきましょう。
「……火の三級を六個。水属性の三級を三個、光属性の三級を一個お願いします」
本当はもっと欲しいのですが、お金が足りません。五千カーナを手渡すと、ロームさんが笑顔で受け取ります。
「確かに受け取りました」
硬貨を馬車の中に置いてある頑丈そうな箱の中に仕舞うと、私が購入した魔石を袋に移しながら、ふと思いついたという表情になりました。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる