New Page on-line

腹減り雀

文字の大きさ
38 / 61
本編

36

しおりを挟む
 冗談はほどほどに切り上げて、ルーナさんを励ましてから話を切り替えます。

「ルーナさん。その荷車って借りることはできますか?」
「壊さなければ問題ないですよ。何をするんですか」
「後で石材の端材を移動させようと思うので、使いたいです」

 ルーナさんに許可をもらっておいて作業を再開します。魔法陣の貼り付けと状態の確認を終えて箱詰めを済ませると、ルーナさんと一緒に荷車を押して広場へ移動します。
 ルーナさんはそのままギルドへ向かい、私は公衆浴場の建設現場へ移動します。

 それほど時間は経っていないのでそれほど変化はない物と思っていましたが、大工の皆さんの作業速度を甘く見ていたようで、既にあらかたの組み上げを終えていました。

「おう、おはようさん。早いな」
「おはようございます。グレンさん達には負けますよ」
「そうかぁ? ま、ゴーレムはもういいぞ。あれのお陰で大分助かった。借りたいときは声を掛ければいいか?」
「正直な話、あのゴーレムをどうしようか考えていなくて」
「おいおい。借りといてなんだけどよ、あんなでかい物どうするんだ。よく考えてから作れよ」

 呆れ顔のグレンさんと職人の皆さん。視線が痛いです。
 そうですね。クストースは護衛代わりとして傍にいてもらうとして、他の子達はどうしましょうか。自我がないので命令したことしかできないし。

「村の警邏とかどうだ」

 考えているとグレンさんが提案してくれました。警邏ですか。

「門のところで待機して、有事に備えることは可能ですね。ディンさん、どうでしょうか」
「心強いけど、どうでしょうか。隊長に相談してみます」

 ディンさんが引き受けてくれた処でルーナさんが手押し車を持ってきてくれたので、ゴーレムにお願いして岩の端材を積み込んでもらいます。

「こいつも持っていけ。すぐに乾くから気を付けろ」

 グレンさんがついでの様に、目地を埋めるのに使っている漆喰の様な物を荷車に載せてくれました。

「ありがとうございます。それでは、失礼します」
「おう。また頼まぁ」

 仕事に戻るグレンさんを見送って出発しようとすると、ルーナさんがアワアワしていました。

「どうしました」
「こ、こ、これ、重くて動かせそうにないなと」
「ああ。大丈夫ですよ。ゴーレムに後ろから押してもらいますから」

 ルーナさんに退いて貰うと、身体強化を行いながら荷車を引きます。ゴーレムに押してもらっているから、結構簡単に動き出しました。

「あ、おねーちゃんだ!」
「え、どこ」
「あそこにいるよ~」

 広場を出ようとしたところで子供達の元気な声。昨日より三人程増えていますね。

「おねーちゃん。牧場で遊んでもいい?」
「いいけど、約束は守ってね」
「は~い」

 子供たちは今日も元気ですね。
 賑やかな子供達と一緒に牧場へ入ると、牧場の中央からやや自宅寄りの位置に荷車を止めます。
 ゴーレムに荷車の端材を下ろしてもらっていると、イアンさんが牛乳缶をもってやってきました。

「桜華さん、今日の分」
「ありがとうございます」
「何か作業?」
「メリちゃん達の毛刈りの為にも水浴び場兼用の噴水を作ろうかと」
「ほほう。面白そうだね」

 端材を下ろし終えたようなので、地面を直径三メートル深さ四十センチぐらいの大きさで掘ってもらいます。
 底面には比較的大きな物を、切断面を上にして平らになるように地面を調整しながら敷き詰めていきます。

 縁も岩を斬って形を整えて並べて、親方に頂いた目地材を使って目地を埋めていく。乾くのを待っている間、他の岩を斬って形を整えていきます。

 岩を斬っていると、子供達が目を輝かせて歓声を上げながら注目してきます。少しやりづらいです。

 ここまで作業を終えると目地が乾いていたので、魔石を利用して一定量の水を生成する魔法陣を底面に張り付け。 次に、整えた石材を水面下に当たる部分は所々隙間を開けた円錐状で、水面より上に当たる部分は円筒状に六十センチ程積み上げて、目地を埋めます。
 一度家に戻って水の魔石を回収してくると、こちらも魔石の魔力を利用して水を吸い上げて、勢いをそのままに吹き上げる魔法陣を張り付けます。

「これでよしっと。後は魔石を付けて」

 先程持ってきた魔石を取り付けようとすると、ディンさんとヨハンさんが子供達と見物していたイアンさんを噴水から遠ざけていき、ルーナさんも大げさとしか言いようのない速さで距離を取ります。

「……皆さん」
「いや、何が起きても対処できるように。ね」

 ヨハンさんが笑顔で返してくれましたが、ディンさんとルーナさんはこちらを見ようとしてくれません。

「別にいいですけど」

 まずは底面側の方に魔石を取り付けて起動させます。勿論魔石には魔力回復促進付です。狙い通り、予定水位まで水が溜まりました。
 次は噴水の方です。こちらにも魔石を取り付けて起動をさせると少し離れます。最初は変化ないように見えましたが、少し時間が経つと勢いよく水が噴き上がりました。

「……三メートルは上がっていますね」

 元気が良すぎる気もしますが、これでも最低値で設定しているはずです。どうしようもないですね。
 一度停止させると、噴水の外側に噴水内へ向けて緩い傾斜になるよう円状に石材を埋めていき、目地を埋めて作業完了です。
 魔力の残量はまだ余裕があるようです。日毎に増えていっているのでしょうか。

「色々とやっていたら、もうお昼ですね」

 子供達も一度お昼ご飯を食べに帰るそうなので、牛乳缶をテラスに置いてから中央広場まで一緒に荷車を押しながら移動します。

 道中、男の子達から岩を斬るコツを教えてとせがまれました。道具のお陰なのですが、そう伝えるとやらせてほしいと言われそうなので、地道な基礎練習を突き詰めたらできると言っておきました。真っ直ぐで輝く瞳がつらいです。

 広場に付けば、賑やかな子供達とは別れてギルドで荷車の返却を行い、食材屋に入って食料の購入をして帰宅すると、買ってきた食材で調理します。ルーナさん達も持ってきていなかったようなので、纏めて作って一緒に食べます。

 ディンさんからお褒めの事を頂き、ヨハンさんからは口説かれ、ルーナさんは夢中で食べてくれました。断ってもしつこいヨハンさんの事は、ルーナさんを通してエレノアさんに報告してもらうことにしましょう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...