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本編
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いつもより若干早めに起き出して身支度と掃除、洗濯を手早く行うと、荷物を持って公衆浴場の建設現場へ向かいます。
朝の新鮮な空気を思いっきり吸い込んで体操をします。まだ薄暗いですが、気持ちいいですね。
さて、体操も終えたので、建設現場の隅に置いてある岩の前に移動して、杖を取り出します。岩の形状を慎重に確認して無駄がないように考えながら岩を斬っていきます。斬った岩はゴーレムに分かりやすいように置き直してもらっておきます。
一通り斬り終わると、ゴーレムの状態を確認していきます。どの子も精霊石の状態も体の状態も問題なさそうです。
全ての確認を終えると、ゴーレム達はまた待機してもらって笹熊亭へ移動します。
「あ、おはようございます」
「おはようございます」
笹熊亭の前でルーナさんが待っていました。朝食がまだという事なので、一緒に中へ入ります。
笹熊亭の中は開店したばかりなのか、まだお客さんの姿がありません。その代わりというか何というか、エレノアさんとピエナさんが食事をしようとしていました。
「おはようございます」
「あ、桜華さん。おはよー」
「おはようございます、桜華さん。早いですね」
「公衆浴場で私の担当する作業が原因で遅延しそうだったので、今片付けてきました。大将、私達にもお願いします」
「おう。待ってろ」
二カッと笑う大将の言葉に甘えて、エレノアさん達と同じ席に着きます。座ってから気が付きましたが、ルーナさんが緊張しているようです。視線がエレノアさんを見ようとしていませんね。……ごめんなさい。
「公衆浴場はあとどのくらいかかりますか?」
「残作業を考えると、二・三日ぐらいじゃないでしょうか」
正直に言えば、今日のうちに終わりましたと言われても不思議ではない気がします。
「エレノアさんは、今日も二人を鍛えるのですか?」
「昨日で基礎は終えたので、今日はお休みにしようかと。今後は他の狩猟者の方にお願いして、仕事の方を進めていく予定です」
「そうでしたか。あ、ありがとうございます」
「ゆっくり食っていけ」
「そうもいかないですよ」
大将が持ってきてくれた朝食に手を合わせ、自分なりの速さで食べ始めます。
ルーナさんの力なく垂れた耳に気が付いたらしいエレノアさんは苦笑しているのに対し、ピエナさんは大将と一緒に不思議そうにしています。その表情がそっくりです。
「今日の予定は、魔具のコンロ作成を最優先。その後は牧場に作る噴水の計画づくり、魔力があれば作成。後は家で作りたいものがあるので、それの作成もありますね」
「桜華さんはゆっくりしないの?」
「したいです。でも、やらないでいられる状況じゃなくて」
コンロは納期未定とはいえ、魔具職人としての仕事。牧場の件は早めにやっておかないと、毛刈りの時が危険。家で作りたいのは糸繰り車にミシン、他にもいくつか。この辺は割と後回しでも大丈夫ですね。ただ、明日以降なら公衆浴場の仕上げがあるので、そっちもやらないといけません。
「まあ、数日のうちに一区切りつくはずなので、それまで頑張るしかないですね」
「そっか。頑張って」
ピエナさんの笑顔が眩しいです。
お客さんがちらほらとやってくる頃合いに笹熊亭を出ると、どこにも寄らずそのまま帰宅します。
ミッケさん達がまだ眠っているようなので、起こさないように気を付けながら、奥の部屋で糸繰り車と織り機の組み立てを行います。
組み立てを終える頃、表から音が聞こえてきたのでそちらに向かうついでに、ミッケさんとルルを確認します。
……いまだぐっすりと眠っていますね。この二人、何時まで眠るのでしょうか。
二人の事は放っておいて、テラスへ。表にはディンさんとヨハンさん。テラスに荷物を置いているのはダガンさんとセンさんですね。
「おはようございます」
「おう。とりあえず百個だ。それと、これも置いておくぞ」
ついでの様に頼んでおいたミシン用の鋼材と角灯の傘が、コンロの入った箱の横に置かれました。
「ありがとうございます」
「忙しいから、暫くは注文してくるなよ」
と、一言告げて帰っていくダガンさん。センさんは軽く頭を下げると無言でダガンさんを追いかけていきました。ダガンさんの背中が少し怒っていますね。何かお礼でも用意した方がいいでしょうか。
悩んでいる間に、ルーナさんが荷車を引っ張りながらやってきました。
さて、皆さんに声をかけるとお仕事の時間です。
まずは箱に入った五徳を確認します。
箱は五箱で、一箱に付き二十個入っています。荷車には同じ大きさの空箱が一つ。できた物から移していく形ですね。
「それでは、始めます」
必要ないですが、一言告げてから作業開始です。
テラスに昨日作った布を敷いてその上に立ち、箱に入った五徳へ魔法陣を張り付けて空箱の方へ移していきます。
そういえば、この魔法陣は複数同時に作れないのでしょうか。パソコンと同じように、左手で魔法陣を摘まんで右手を魔法陣に添わせると、右手を右方向へ動かしてみます。すると、空いた空間分魔法陣が生み出されていく。思い付きでしたがうまくいきましたね。
増えた魔法陣を五徳に合わせて一気に貼り付け。無事、狙った場所に張り付いたことが確認できました。便利です。
そうと分かれば、五個単位で箱に移しては貼り付けの繰り返し。今日はヨハンさんが積極的に手伝ってくれます。何かやましいことでもあるかと考えるのは、失礼でしょうか。
作業が終盤に入ってあと一息と気合を入れ直していると、御寝坊さん二人が起き出してきました。昼までは行きませんでしたね。
「おふぁよ~」
「二人共、おはようございます。今日はお休みだとエレノアさんが仰っていましたよ」
「本当に!」
さっきから二人の声が綺麗に揃っていますね。いいコンビのようです。
「嘘は言いません。朝ご飯食べてくれば?」
「行ってきます!」
全力で走っていく二人を見送っていると、ヨハンさんが声を出して笑いだしました。
「どうしました」
「いや、ルーナさんみたいだなと思ったら、つい」
「ふぇ」
「分からなくもないけど、笑うほどではない気がします」
「ふええ」
「そうですね、笑うほどではないですね」
「そうかなあ」
「皆さん酷いです~」
ヨハンさんは首を捻っている一方、ルーナさん泣きそうなほどに肩を落としています。
朝の新鮮な空気を思いっきり吸い込んで体操をします。まだ薄暗いですが、気持ちいいですね。
さて、体操も終えたので、建設現場の隅に置いてある岩の前に移動して、杖を取り出します。岩の形状を慎重に確認して無駄がないように考えながら岩を斬っていきます。斬った岩はゴーレムに分かりやすいように置き直してもらっておきます。
一通り斬り終わると、ゴーレムの状態を確認していきます。どの子も精霊石の状態も体の状態も問題なさそうです。
全ての確認を終えると、ゴーレム達はまた待機してもらって笹熊亭へ移動します。
「あ、おはようございます」
「おはようございます」
笹熊亭の前でルーナさんが待っていました。朝食がまだという事なので、一緒に中へ入ります。
笹熊亭の中は開店したばかりなのか、まだお客さんの姿がありません。その代わりというか何というか、エレノアさんとピエナさんが食事をしようとしていました。
「おはようございます」
「あ、桜華さん。おはよー」
「おはようございます、桜華さん。早いですね」
「公衆浴場で私の担当する作業が原因で遅延しそうだったので、今片付けてきました。大将、私達にもお願いします」
「おう。待ってろ」
二カッと笑う大将の言葉に甘えて、エレノアさん達と同じ席に着きます。座ってから気が付きましたが、ルーナさんが緊張しているようです。視線がエレノアさんを見ようとしていませんね。……ごめんなさい。
「公衆浴場はあとどのくらいかかりますか?」
「残作業を考えると、二・三日ぐらいじゃないでしょうか」
正直に言えば、今日のうちに終わりましたと言われても不思議ではない気がします。
「エレノアさんは、今日も二人を鍛えるのですか?」
「昨日で基礎は終えたので、今日はお休みにしようかと。今後は他の狩猟者の方にお願いして、仕事の方を進めていく予定です」
「そうでしたか。あ、ありがとうございます」
「ゆっくり食っていけ」
「そうもいかないですよ」
大将が持ってきてくれた朝食に手を合わせ、自分なりの速さで食べ始めます。
ルーナさんの力なく垂れた耳に気が付いたらしいエレノアさんは苦笑しているのに対し、ピエナさんは大将と一緒に不思議そうにしています。その表情がそっくりです。
「今日の予定は、魔具のコンロ作成を最優先。その後は牧場に作る噴水の計画づくり、魔力があれば作成。後は家で作りたいものがあるので、それの作成もありますね」
「桜華さんはゆっくりしないの?」
「したいです。でも、やらないでいられる状況じゃなくて」
コンロは納期未定とはいえ、魔具職人としての仕事。牧場の件は早めにやっておかないと、毛刈りの時が危険。家で作りたいのは糸繰り車にミシン、他にもいくつか。この辺は割と後回しでも大丈夫ですね。ただ、明日以降なら公衆浴場の仕上げがあるので、そっちもやらないといけません。
「まあ、数日のうちに一区切りつくはずなので、それまで頑張るしかないですね」
「そっか。頑張って」
ピエナさんの笑顔が眩しいです。
お客さんがちらほらとやってくる頃合いに笹熊亭を出ると、どこにも寄らずそのまま帰宅します。
ミッケさん達がまだ眠っているようなので、起こさないように気を付けながら、奥の部屋で糸繰り車と織り機の組み立てを行います。
組み立てを終える頃、表から音が聞こえてきたのでそちらに向かうついでに、ミッケさんとルルを確認します。
……いまだぐっすりと眠っていますね。この二人、何時まで眠るのでしょうか。
二人の事は放っておいて、テラスへ。表にはディンさんとヨハンさん。テラスに荷物を置いているのはダガンさんとセンさんですね。
「おはようございます」
「おう。とりあえず百個だ。それと、これも置いておくぞ」
ついでの様に頼んでおいたミシン用の鋼材と角灯の傘が、コンロの入った箱の横に置かれました。
「ありがとうございます」
「忙しいから、暫くは注文してくるなよ」
と、一言告げて帰っていくダガンさん。センさんは軽く頭を下げると無言でダガンさんを追いかけていきました。ダガンさんの背中が少し怒っていますね。何かお礼でも用意した方がいいでしょうか。
悩んでいる間に、ルーナさんが荷車を引っ張りながらやってきました。
さて、皆さんに声をかけるとお仕事の時間です。
まずは箱に入った五徳を確認します。
箱は五箱で、一箱に付き二十個入っています。荷車には同じ大きさの空箱が一つ。できた物から移していく形ですね。
「それでは、始めます」
必要ないですが、一言告げてから作業開始です。
テラスに昨日作った布を敷いてその上に立ち、箱に入った五徳へ魔法陣を張り付けて空箱の方へ移していきます。
そういえば、この魔法陣は複数同時に作れないのでしょうか。パソコンと同じように、左手で魔法陣を摘まんで右手を魔法陣に添わせると、右手を右方向へ動かしてみます。すると、空いた空間分魔法陣が生み出されていく。思い付きでしたがうまくいきましたね。
増えた魔法陣を五徳に合わせて一気に貼り付け。無事、狙った場所に張り付いたことが確認できました。便利です。
そうと分かれば、五個単位で箱に移しては貼り付けの繰り返し。今日はヨハンさんが積極的に手伝ってくれます。何かやましいことでもあるかと考えるのは、失礼でしょうか。
作業が終盤に入ってあと一息と気合を入れ直していると、御寝坊さん二人が起き出してきました。昼までは行きませんでしたね。
「おふぁよ~」
「二人共、おはようございます。今日はお休みだとエレノアさんが仰っていましたよ」
「本当に!」
さっきから二人の声が綺麗に揃っていますね。いいコンビのようです。
「嘘は言いません。朝ご飯食べてくれば?」
「行ってきます!」
全力で走っていく二人を見送っていると、ヨハンさんが声を出して笑いだしました。
「どうしました」
「いや、ルーナさんみたいだなと思ったら、つい」
「ふぇ」
「分からなくもないけど、笑うほどではない気がします」
「ふええ」
「そうですね、笑うほどではないですね」
「そうかなあ」
「皆さん酷いです~」
ヨハンさんは首を捻っている一方、ルーナさん泣きそうなほどに肩を落としています。
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