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本編
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しおりを挟む存分に堪能してトトから離れると、近くにイアンさんの奥さんも埋まっていて驚きました。
さて。トトが来たであろう柵の周辺を見に行きます。村の周囲を囲っている柵に魔物除けの魔法陣が貼り付けられているので、ここにある牧場のはただの柵です。確認しても壊れている処はありません。
少し離れた場所に立っていたディンさんに近寄ると、小さく頷きました。
「今、ヨハンが隊長へ連絡を取りに行きました」
「また、柵が壊れているのでしょうか」
「その可能性が高いですが、今の段階では分かりません」
「そうですね。ところで、ディンさん。行かないのですか?」
「……行きません。鎧は硬いですから」
非常に行きたそうな顔をしています。トトがディンさんを見つめながら小首を傾げています。無言の圧力に、ディンさんが視線を逸らしました。
大分経った頃、ピエナさんが満足して離れたので、牛乳缶を受け取ってから家に戻ります。
「ルーナさん、家に帰ります。満足したら来てくださいね」
トトに埋まっているルーナさんに声をかけておいてから帰宅します。
コンロ等の魔具を確認しているピエナさんを横目に、食材を取り出して並べていきます。
「さて、料理を始めましょうか。ピエナさん、気になりますか?」
「うん。こっちは気になる」
指差したのはオーブン。中を覗いてどう使うのか考えているようです。
「オーブンを使う気はなかったのですが、何か作りましょうか」
「え、オーブン? 作るって何を?」
「石窯を小型にしたような物です。準備がいるので、作るのは明日にしましょうか」
ルーナさんも戻ってきたみたいなので、先に作ろうと思っていた物を片付けましょう。
カウルベルの乳を容器に入れて、身体能力を強化してレモンを握り締め、レモン汁を加えます。その後に薄い布をかけて一先ず終了。
次はパン生地を捏ねます。今日作るのは少し硬めの丸いパン。捏ねたパン種を石窯に入れると、野菜をたっぷりと使ったスープを作ります。ここで一つの発見をしました。
「よっ。えい! はっ!」
可愛らしい掛け声で野菜を斬っていくピエナさん。ただ、物凄く大きいです。小さく切らずにそのまま豪快に鍋へと入れていきます。私の方で切っている野菜を小さくしておくことで帳尻が合うのを期待しておきましょう。
仕込み終わると別の鍋でお湯を沸かしてから、放置していた容器を覗き込みます。
「ふう。ちゃんと分離していくれましたね」
沸かしておいたお湯がぬるま湯になるまでの間に、容器の中の上澄み液を別の容器に入れ、下に残った乳白色の塊を二つに分ける。一方はガーゼで絞って皿の上へ。もう一方はぬるま湯を注いで練ります。弾力が出たところで適当な大きさに千切って皿の上へ。
「ルーナさん。先程の白い塊はカードと呼ばれるもので、上澄み液はホエーと呼ばれるものです。それで、絞ったこれはナチュラルチーズ。お湯の中で練ったのがモッツァレラチーズと呼ばれています。どのチーズも、そのまま食べたり、パンにつけたりして食べます」
説明しながらナチュラルチーズとモッツァレラチーズを味見。ピエナさんとルーナさんも、しばらく眺めて匂いを嗅いだ後に味見。
「あ、美味しい。これ、家で作ってもいいですか?」
「良いですけど、量を作ろうとすると大変ですよ」
少ないからこの程度で済みました。今回実際に作ってルーナさんも確認したので、後はギルドの方で手配してくれるでしょう。
石窯の中で焼け始めたパンを一度取り出して、作ったばかりのナチュラルチーズをのせて再度焼きます。
パンが焼き上がるのを待っている間に、ルーナさんと申請書を書き上げます。あ、トト達の事も申請が必要ですか。
「桜華さん、ルーナさん。焼けましたよ」
「分かりました」
机の上を片付け、ディンさんといつの間にか戻ってきたヨハンさんにも声をかけてお昼御飯です。
作った料理を並べていると、見たことのない果汁水が置かれています。
「これは……ピエナさんですか?」
「え? ああ、はい。そうです」
「どうやって作りました?」
ミキサーは作っていません。手で握るのは大変なのでそのうち考えないといけないですね。
「どうって……こう!」
ピエナさんが魔法による強化をしないまま、笑顔で握りつぶしました。流石です。
私がレモンを握りつぶしているのを見て、自分にもできるかなと思ってやっていたらしいです。一応言っておきますが、私は魔法による強化を行っていました。
「あ。そうだ。桜華さん。暇なときにトトの処へ遊びに行ってもいいですか?」
「いつでもどうぞ。ただ、トトの邪魔になるようなことはしないでね」
村の子達も遊びに来ているから、今更一人二人増えても対して違いがありません。
「はい」
「それにしても、大きかったなぁ。特殊個体か?」
「その可能性は高いかと。というか、前回同様、桜華さんが会話していたような気がしましたが……」
ヨハンさんが大きさを思い出しながら呟くと、ルーナさんが冷静に分析しています。
「心が通じれば言葉なんて必要ありません。とか、そういう感じですね」
「いやいや、そもそも心通じることができるなんて思いませんし、やろうと思いませんよ」
ディンさんが顔の前で手を振りながら突っ込みを入れてくれます。と、ピエナさんがわざと音を立てて食器を置いて、皆の意識が向くのを待ってから一言。
「桜華さんのすることだから」
「おお」、「ああ」、「そうですね」
三人がしみじみと頷いています。非常に納得がいきません。
食事を終えて後片付けを終えると、トトに会いに行くというピエナさんを見送り、明日の為にバターとクリームチーズの下準備をしながら、織布作業をしていきます。
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