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Ⅱ.謎多き小さな君
新隊員
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長く艷やかな黒髪と、短く輝き揺れるプラチナブロンドの髪。
仲良さげに談笑しながら廊下を歩いてゆく二人の少女。他の少女らから羨望の視線が向けられている。彼女らは輝きに満ちた表情で囁きあう。
「あっ見て見て。ハンナ先輩とエリン先輩よ!」「今日も素敵……!」「オーラが違うな……」
ハンナ先輩、エリン先輩と呼ばれた二人はプレートがかかったドアを開けて入る。プレートには【no,1 AGEHA】とある。
「……なんだか、照れちゃうわ……。」
ドアを閉めた金髪の少女____ハンナ____私は頬を染めて呟いた。
「だね。いまだに慣れないなぁ、憧れの視線、声。もう五年も経つけど。」
艶のある黒髪をツインテールにした、やや三白眼気味の美少女____エリンは、あはは、と頭を掻く。
選ばれた者たちのみが集い、主に戦闘に関するあらゆる教育を受ける、【ヴィクトワール女子学園】選りすぐりのエリートを結集した部隊である【第一部隊】。通称『アゲハ隊』、また『エンジェルズ』とも呼ばれる。隊員たちが持つ美貌、頭脳明晰さ。そして桁外れの圧倒的強さ。非の打ち所の無い完璧少女に嫉妬など無駄。彼女らに向けられるのは尊敬の眼差しだけだった。
しかし、彼女らは傲慢にならずに誰もに分け隔てなく接した。それにさらに他生徒の尊敬は募る。
さて、今二人が入ったこの部屋。ソファと机、本棚やロッカー、ストーブなどがあり、なんとも快適そうな部屋である。【作戦室】と言われ、各部隊に一部屋与えられているが、作戦を立てることは少ない。部隊で集まって談笑なり宿題の教え合いなり、思い思いに過ごす、談話室的な役割だ。
二人はソファにぼすん、と腰を沈める。エリンは制服のブレザーを脱いで背もたれに掛けた。
「……で、今日なのよね?」
「ええ。お父様にはそう聞いたわ。」
私はふぅん、と素っ気なく返すが、楽しみなのだ。何度もドアの方を見たり、せわしなく体を揺らしてしまう。
「……エイミーは?今日も遅いわね」
少しして、エリンが問う。
「また後輩の指導じゃないかしら?あの子も熱心ね」
肩をすくめて答える。呆れたような口調ではあったが、頼もしいな、と笑う。
「ごっ、ごめん!今日も遅れちゃった……!」
長い茶髪をボサボサにして、息を切らしながら入ってきた少女____エイミー。
「今日は新隊員が来るっていうのに……。
でも後輩の指導、お疲れ様。いつも後輩の面倒見て、頼もしいわね。」
エリンがため息をつくが、次に褒めて頭をぽんと叩く。すると、たれ目を細めて照れくさそうに笑う。
複数のバイブ音が重なって部屋に響く。個人が持つ端末に、メールが受信されたようだ。
ディスプレイに表示された差出人はどの端末も同じ。受信ボックスを開いて私は目を細める。
「……来たわね。」
*
From:中枢管理部
To:第一部隊員
戦闘式制服に着替え、至急中央ホールに集合せよ。
*
作戦室を出て東棟から中央棟へ。エントランスの奥へ進めば仄暗いホールに出る。白い柱と正面にステージ。集会などの予定がないため椅子もない。表開きのドアを開けて入れば、キャーとも似た、黄色い声。他の生徒も集められたのだ。部隊長であるエリンに続いて副隊長の私、エイミーと続く。
エリンは黒のマントに部隊長の印であるバッヂ。前が開いた紫のスカートの下に黒いショートパンツ。
私は黒のジャケットと左右に編み上げがある青いスカート。ブローチの付いたベレー帽。腰には二本のサーベル。
エイミーは白を基調にした服で、赤のスカートが裾から覗く。後ろに足首程まである深緑の布を付けている。
滅多に見られない戦闘式制服に輝きが増して見えるのか、歓声はものすごい。
中央を進んでステージの前に跪く。
ステージのライトが点くと、歓声が収まった。
ステージに軍服姿の若い男が歩み出る。中枢管理部の者だろう。
「……第一部隊、新隊員を発表する。」
第一部隊員だけでなく、生徒たちも固唾をのんで次の言葉を待っている。
私は緊張で頭の中が痺れる感覚がした。どんな恐ろしい奴がやってくるのか。
「高等部一年クラスA、シャルロッテ」
「ふふ、はぁーい」
この場の空気に不似合いな間延びした返事。全員が目を丸くするのがわかる。ステージに立った男さえも。
そして舞台袖から登場したその者の姿に、生徒らは驚きのあまり口を開けた。
「ふふふ。皆さんごきげんよう、私が新隊員のシャルロッテ。第一部隊の皆さん、よろしくお願いしますわ。」
新隊員は、フリルがふんだんにあしらわれた、薄いピンクのワンピースに身を包んだ、少女だった。生徒らの驚きを上手く表現するのは難しいが、シャルロッテという少女は、小柄も小柄。童顔でとても今年で十七になるとは思えない子供っぽさだったのだ。言うならば、十二、三歳の初等部の子供らに混じっていてもおかしくないほどなのだ。そんな少女が、最強の部隊である、第一部隊の新隊員?という心境なのだろう。
また、隊員たちも、恐ろしさの欠片も感じさせない、くりくりとした薄紫の瞳の少女に困惑気味であった。
新隊員シャルロッテは、階段を使って舞うようにステージから降り
「よろしくお願いしますね!先輩方!」
無邪気な笑顔でペコリとお辞儀をした。
仲良さげに談笑しながら廊下を歩いてゆく二人の少女。他の少女らから羨望の視線が向けられている。彼女らは輝きに満ちた表情で囁きあう。
「あっ見て見て。ハンナ先輩とエリン先輩よ!」「今日も素敵……!」「オーラが違うな……」
ハンナ先輩、エリン先輩と呼ばれた二人はプレートがかかったドアを開けて入る。プレートには【no,1 AGEHA】とある。
「……なんだか、照れちゃうわ……。」
ドアを閉めた金髪の少女____ハンナ____私は頬を染めて呟いた。
「だね。いまだに慣れないなぁ、憧れの視線、声。もう五年も経つけど。」
艶のある黒髪をツインテールにした、やや三白眼気味の美少女____エリンは、あはは、と頭を掻く。
選ばれた者たちのみが集い、主に戦闘に関するあらゆる教育を受ける、【ヴィクトワール女子学園】選りすぐりのエリートを結集した部隊である【第一部隊】。通称『アゲハ隊』、また『エンジェルズ』とも呼ばれる。隊員たちが持つ美貌、頭脳明晰さ。そして桁外れの圧倒的強さ。非の打ち所の無い完璧少女に嫉妬など無駄。彼女らに向けられるのは尊敬の眼差しだけだった。
しかし、彼女らは傲慢にならずに誰もに分け隔てなく接した。それにさらに他生徒の尊敬は募る。
さて、今二人が入ったこの部屋。ソファと机、本棚やロッカー、ストーブなどがあり、なんとも快適そうな部屋である。【作戦室】と言われ、各部隊に一部屋与えられているが、作戦を立てることは少ない。部隊で集まって談笑なり宿題の教え合いなり、思い思いに過ごす、談話室的な役割だ。
二人はソファにぼすん、と腰を沈める。エリンは制服のブレザーを脱いで背もたれに掛けた。
「……で、今日なのよね?」
「ええ。お父様にはそう聞いたわ。」
私はふぅん、と素っ気なく返すが、楽しみなのだ。何度もドアの方を見たり、せわしなく体を揺らしてしまう。
「……エイミーは?今日も遅いわね」
少しして、エリンが問う。
「また後輩の指導じゃないかしら?あの子も熱心ね」
肩をすくめて答える。呆れたような口調ではあったが、頼もしいな、と笑う。
「ごっ、ごめん!今日も遅れちゃった……!」
長い茶髪をボサボサにして、息を切らしながら入ってきた少女____エイミー。
「今日は新隊員が来るっていうのに……。
でも後輩の指導、お疲れ様。いつも後輩の面倒見て、頼もしいわね。」
エリンがため息をつくが、次に褒めて頭をぽんと叩く。すると、たれ目を細めて照れくさそうに笑う。
複数のバイブ音が重なって部屋に響く。個人が持つ端末に、メールが受信されたようだ。
ディスプレイに表示された差出人はどの端末も同じ。受信ボックスを開いて私は目を細める。
「……来たわね。」
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From:中枢管理部
To:第一部隊員
戦闘式制服に着替え、至急中央ホールに集合せよ。
*
作戦室を出て東棟から中央棟へ。エントランスの奥へ進めば仄暗いホールに出る。白い柱と正面にステージ。集会などの予定がないため椅子もない。表開きのドアを開けて入れば、キャーとも似た、黄色い声。他の生徒も集められたのだ。部隊長であるエリンに続いて副隊長の私、エイミーと続く。
エリンは黒のマントに部隊長の印であるバッヂ。前が開いた紫のスカートの下に黒いショートパンツ。
私は黒のジャケットと左右に編み上げがある青いスカート。ブローチの付いたベレー帽。腰には二本のサーベル。
エイミーは白を基調にした服で、赤のスカートが裾から覗く。後ろに足首程まである深緑の布を付けている。
滅多に見られない戦闘式制服に輝きが増して見えるのか、歓声はものすごい。
中央を進んでステージの前に跪く。
ステージのライトが点くと、歓声が収まった。
ステージに軍服姿の若い男が歩み出る。中枢管理部の者だろう。
「……第一部隊、新隊員を発表する。」
第一部隊員だけでなく、生徒たちも固唾をのんで次の言葉を待っている。
私は緊張で頭の中が痺れる感覚がした。どんな恐ろしい奴がやってくるのか。
「高等部一年クラスA、シャルロッテ」
「ふふ、はぁーい」
この場の空気に不似合いな間延びした返事。全員が目を丸くするのがわかる。ステージに立った男さえも。
そして舞台袖から登場したその者の姿に、生徒らは驚きのあまり口を開けた。
「ふふふ。皆さんごきげんよう、私が新隊員のシャルロッテ。第一部隊の皆さん、よろしくお願いしますわ。」
新隊員は、フリルがふんだんにあしらわれた、薄いピンクのワンピースに身を包んだ、少女だった。生徒らの驚きを上手く表現するのは難しいが、シャルロッテという少女は、小柄も小柄。童顔でとても今年で十七になるとは思えない子供っぽさだったのだ。言うならば、十二、三歳の初等部の子供らに混じっていてもおかしくないほどなのだ。そんな少女が、最強の部隊である、第一部隊の新隊員?という心境なのだろう。
また、隊員たちも、恐ろしさの欠片も感じさせない、くりくりとした薄紫の瞳の少女に困惑気味であった。
新隊員シャルロッテは、階段を使って舞うようにステージから降り
「よろしくお願いしますね!先輩方!」
無邪気な笑顔でペコリとお辞儀をした。
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