アルファ王子ライアンの憂鬱 〜敵国王子に食べられそう。ビクンビクンに俺は負けない〜

五右衛門

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 アルファとは、生まれつき強い肉体と精神を持ち、リーダーシップを発揮する存在だ。しかし、そのアルファにも試練がある。

 それが、「ベータになりかける時期」である。

 俺たちアルファは通常、強く、揺るぎない意志を持っている。しかし、十八歳になると一度だけ、その強さが揺らぐ瞬間が訪れる。

 まるで自分の中の「弱さ」が具現化したように、ベータになってもいいんじゃないかという誘惑に襲われるのだ。この誘惑に屈してしまうと、アルファからベータへと変わってしまう。恐ろしい試練だ!

 ベータ――それはアルファとは正反対の存在。ベータは物静かで、従順な性質を持つが、アルファのようなリーダーシップはない。だから、俺にとっては絶対に選んではならない道なんだ。

 俺はこの国の王子だ。次期王様となり、民を導く存在になる。
 そんな俺が、こんな所で、ベータに屈して言い訳がない!

 でも誘惑すごぃいいいいいいいい!
 きもちぃいいいいいいいいいいい!
 ビクンビクンする! もうすっごいする!

「ぐおおおおおおおぉぉおぉおおっ!」

 床を転がり、布団を握りしめながら再び雄叫びを上げた。今の俺の姿、まるでトイレで踏ん張ってる時のそれだ。いや、トイレで必死こいているよりも、もっと壮絶かもしれない……何せかけがえのないアルファのプライドがかかってるんだからな!

「負けねぇ、俺は負けねぇ……!」

 全身に汗がにじみ出る。顔は真っ赤で、今にも目から星が飛び出しそうだ。体の中から何かとんでもない圧力が押し寄せてきて、それを耐え抜こうとする俺の姿は、誰が見てもトイレで便秘に苦しんでる男だろう。

 だけど違う! 
 これは、ベータになりかけるアルファの試練なんだ! 

「こんな……のに、負けてたまるか……!」

 拳を固く握りしめる。その姿は完全に、便器の前で苦しんでいる男の図そのものだ。
 でも、便秘どころか今の俺が押し出されそうなのは、自分の尊厳だ! 我ながら上手いこと言ったな! 

 アルファの誇りが、今まさに危機的状況にあるんだ!

『ライアン、ベータになっちゃえよ……』
「黙れええええええええええ!」
『でも気持ちいいでしょ?』
「そうだけどぉおおおおおお!」

 頭の中の甘い囁きが聞こえるたびに、俺はさらに強く踏ん張る。
 何かが今にも押し出されそうになる感覚を全力で耐え抜くのは、トイレにいるのと変わらないのかもしれない……。

 いや、むしろこれの方が数倍辛い! くそ、さっきからトイレのことばっか考えちまう! 

「俺は、まだ……!」

 全力で耐え続ける。
 俺の人生最大の試練が、今、トイレじゃないこの部屋の中で繰り広げられているんだ! 

「もうちょっとだ……!」

 負けるな俺! ビクンビクンに負けるな俺!

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