悪役令息だと思っていたら健気令息だったので、好きになってしまった

まんまる

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一段落したところで、訓練を抜けて汗を拭いながら二人が座っている所まで行く。

「ちちうえ!すごい!つよかった!」
「ねぇ、かっこよかったね。ジェイドお疲れ様。ショーンすごく喜んでたよ」
「そうか、良かった」

ショーンの頭を撫でると、俺を見上げて瞳をキラキラと輝かせた。

「あっちに馬がいるから見に行くか?」
「おうまさん!みる!」
「ふふっ、可愛い」

二人を厩舎まで連れて行き、一頭の馬を紹介する。

「アンリ、ショーン、この馬はラファールだ。騎馬の中で一番頭がいい馬だ」
「すごい!かっこいい!」
「大きくてかっこいい馬だね」
「触ってみるか?」
「「いいの?」」
「ショーン、おいで」

俺がショーンを抱っこすると、ショーンは目を見開き、たかい!と言って喜んだ。

二人が恐る恐るラファールに触れる。馬は頭が良い動物だ。気を許していい相手かどうかを瞬時に見極める。
二人に触れられるのを、ラファールは目を細めて受け入れている。

「ラファールが二人共気に入ったみたいだぞ」
「そうなの?馬ってこんなに大きいのに、とっても優しいんだね。可愛い」

アンリから顔を撫でられたラファールが、アンリの体に顔を擦り付けて甘える。

「ふふふ、くすぐったい」
「チッ、ラファール、やり過ぎだ」

しばらく厩舎を見て回り、屋敷に戻ることにした。



馬車に乗り込む時、既にショーンの目は閉じかけていた。

「疲れたみたいだな」
「昨日遅くまで起きてたからね。今日はすごくはしゃいでたね」
「そうだな。あんなに楽しそうなショーンは初めて見たな。アンリ、重いだろ。俺が抱いていこう」
「ありがとう」

ショーンを膝の上に抱いて、すやすや眠る顔を見つめる。

「アンリ、今日一日ショーンといて思ったんだが、やはりこちら側と何か見えない壁があるように感じたんだ」
「うん、楽しそうなのに、自分でそれを押さえつけてる感じがした」
「ショーンには辛い事かも知れないが、俺達はそこに踏み込まなければならない気がする」
「うん」


ゴトッと馬車が揺れて、ショーンの瞼が震えた。

「あっ、起きちゃった?」
「うーん、ちちうえととうさま?」
「そうだ、騎士団を見た帰りだ」
「ショーン、今日は楽しかった?」

「うん!!!」
「「⋯っ!!笑った⋯」」

ショーンが見たこともない満面の笑みを見せた途端、薄紫色の大きな瞳からみるみる涙が溢れ出した。

「ひっく、ひっく、ぼく、もうだれも好きになっちゃだめなのに⋯ちちうえもとうさまも大好きになっちゃって、ぼく、ぼく」
「ショーン、どう言う事だ?言ってごらん?」
「ひっく、だって、ぼくが好きになったひとはみんなぼくをおいていっちゃうんだ」
「「ショーン⋯」」
「ぼくのかあさまもしんじゃって、あたらしいかあさまも、やさしくて大好きだったのに、しんじゃって、とうさまも、おなかの赤ちゃんも、ぼくが好きになったから、しんじゃったんだ。ひっく、ぜんぶぼくのせいなんだ。うわぁぁぁん」

「そ、そんな⋯」

泣きじゃくるショーンを強く抱きしめる。アンリも震える手でショーンの手を握る。
三人共、顔がぐちゃぐちゃに崩れる程泣きながら抱きしめ合った。

「ショーン、ショーンの大事な人が亡くなったのは誰のせいでもない。それに俺が強いの見ただろ?俺は絶対お前を置いてどこにもいかない」
「そうだよ、ジェイドも僕もずっとショーンの傍にいるよ」
「ほんと?」
「本当だとも」
「おいてかない?」
「うん」
「うわぁぁぁん、ちちうえ、とうさま、大好き」

やっとショーンの心の奥に触れられた気がした。この小さな体であんなに大きな悲しみを抱えていたなんて。
泣き疲れて眠ってしまったショーンを見つめながら、アンリと二人この子を絶対幸せにしようと誓った。

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