『「代わりはいる」と言われたので、公務をすべてお返しします』

『「代わりはいる」と言われたので、公務をすべてお返しします』

「代わりはいる」
その一言は、羽のように軽く
けれど刃のように胸に沈んだ

灯りに満ちた夜会の中で
笑い声に紛れて落とされた言葉は
誰よりも静かに、深く響いた

私は頷いた
涙は零れず、声も震えず
ただ、終わりを受け取るように

机の上に積み上げたものは
紙ではない
夜を削った時間であり
飲み込んだ言葉であり
名も残らぬまま重ねた日々だった

インクに染まった指先も
冷えた朝の空気も
すべては誰かの名の下で
なかったことにされていた

「誰でもできる」
そう言ったあなたの背で
世界はきしみ始めていたのに

見えない糸をほどくように
私は一つずつ手を離す
支えていたものを、静かに返す

結び直されることのない契約
交わされぬまま消える言葉
止まる流れに気づくのは
もう、私ではない

記録は残る
光の中に、確かに刻まれている
誰が何を背負い
誰が何も知らなかったのか

だから私は振り返らない
崩れていく音も
呼び止める声も
もう私のものではないから

あなたの世界が止まる頃
私はようやく歩き出す

代わりなどいない場所へ
私であることを
私のまま受け取られる場所へ

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