気弱なΩと不機嫌なα~次期辺境伯は運命の番を認めたくない~

まんまる

文字の大きさ
1 / 14

1

しおりを挟む
「アルフレッド、我が辺境伯家は、代々αが跡を継いできた。隣国に接する厳しい環境を凌いでいくにはαが当主でなければならない。だから確実にαを産めるΩを娶ってきた。それはお前も例外ではない。学園に通う3年間で必ず伴侶を見つけてこい」
「⋯はい、分かりました」

Ωを娶れなんて命令、イライラする。俺は子を孕ませる道具じゃない。父上の跡を継いで、立派に辺境を守るために、厳しい環境で剣術に励んできたのに、そんなことより次のαを、と言われてる気分だ。

俺は代々この王国の北の辺境を守る、タルザニール辺境伯の嫡男だ。王国の貴族に義務付けられている15歳から入る学園に通う為に、3年間だけ王都に来ている。学園には騎士科と普通科があって、俺はもちろん騎士科に通っている。


「よっ、アルフ。今日も機嫌が悪そうだな」
「うるさい。俺はこの学園に来たくて来てる訳じゃない。レイル、お前はいつも気楽そうでいいな」
「はいはい、俺はαで長男って言っても子爵家だし、幼馴染の可愛い男性Ωの婚約者もいるし、そりゃあ、お前から見たらお気楽だろうな」
「チッ、惚気けやがって」
「いつもそんなにイライラしてたら、可愛いΩが逃げていくぞ」
「この位で逃げ出すなら、辺境では暮らせない」
「⋯ふぅ、卒業まであと一年だぞ。そんな調子で大丈夫なのか?おっ、またニコがお前に会いに来てるぞ。毎朝毎朝、健気だねぇ。わざわざ普通科から騎士科の方に来てるんだ。たまには声掛けてあげろよ」
「⋯⋯」
「あっ、おいっ、アルフ!」

俺は友人のレイルの呼び掛けにには答えず、ニコの前まで歩み寄った。

「お前、俺に用があるのか?用が無ければ、俺の前に姿を見せるな」
「⋯っ、ご、ごめんなさい。あのっ⋯」
「チッ」

ふわりと甘い香りがする。
この香りが俺をイラつかせる。

ゴーン伯爵家の長男、ニコ。俺はあいつが嫌いだ。毎朝俺のことをこそこそ見ているのは知ってるが、何か言ってくる訳ではなく、いつもオドオドしていて、見ているだけでイラついてくる。華奢な体躯に腰まで伸びたサラサラの白金の髪に薄紫色の大きな瞳で、Ω特有の庇護欲をそそる容姿をしている。男共は皆、色情を帯びた目で見ているが、気弱な守られるだけのΩなんて、いずれ辺境に戻る俺には邪魔なだけの存在だ。


騎士科の授業が終わると、俺はいつも学園の訓練場に行って暗くなるまで剣を振る。鼻腔に残った甘い香りを振り払うように、一心不乱に剣を振り続ける。


「アルフ、お疲れ様。毎日頑張るね」
「ああ、リオか。寮の夕飯までは何もする事がないからな」
「それでも偉いよ」
「リオこそ、Ωなのに騎士科でいつも頑張ってるよな。体とか大丈夫なのか?」
「アルフは優しいね。僕はΩにしては背も高い方だし、今のところ何とかね。貧乏男爵家のΩなんて、高齢貴族の後妻か愛人になるしかないからね。それより騎士になって自分の力で生きていきたいんだ」
「リオなら、嫁ぎ先はいくらでもあるだろ?でも自分の力でかぁ、リオこそ偉いな。守られてばかりのΩとは大違いだな」
「それって、いつもアルフにつきまとってるニコの事?」
「ああ、いや何でも無い。じゃ、もうちょい訓練したいから」
「ふぅん、分かった。また明日ね」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。最後におじいさまの番外編を追加しました。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

祝福を授かりましたが、まるで呪いです。

めっちゃ抹茶
BL
異世界に生まれ変わって出会った、一組の運命の番であるαとΩの話。 ※ご都合主義があります ※オメガバースの知識がある人向け/作中で説明は一切ありません ※主人公が可哀想、ハッピーエンドではありません 主人公目線、あまり悲壮感はありませんがタグをご確認のうえ以上の事を念頭に、大丈夫な方のみお進み下さい。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。

めちゅう
BL
 末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。 お読みくださりありがとうございます。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

僕の策略は婚約者に通じるか

BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。 フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン ※他サイト投稿済です ※攻視点があります

処理中です...