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「アルフ、もうすぐ剣術大会だな。学年関係なく戦えるなんて、この時くらいだ。3年のザヴィル侯爵家のオルドー様が優勝に絡んでくるだろうけど、今年もアルフの優勝で決まりだな。リオもそう思うだろ?」
「うん、絶対アルフが優勝するよ」
「レイル、リオ、自分たちも出場するのを忘れてないか?人の事はいいから、練習に集中しろ」
「「はぁい」」
「そう言えば僕聞いたんだけど、ニコはオルドー様の婚約者最有力候補なんだって。いつもアルフに気のある素振りしてるのに、ちゃっかり高位貴族の婚約者候補がいるなんて、いくら綺麗でも欲張りすぎだよね。アルフもそう思わない?」
「リオ、いい加減にしろ。俺には関係ない」
ニコの名前を聞いただけで、あの甘い香りが脳裏に過る。
あいつに婚約者がいても、俺にはどうでもいいはずなのに、何でこんなにイライラするんだ。
どれだけ剣を振っても振り払えない甘い香りに、全身が侵食されていくような感覚がした。
いよいよ明日が剣術大会という日、訓練場は騎士科の生徒でごった返していて、俺は空いている場所でいつもの様に剣を振っていた。
しかし、どこか集中出来ていなかったのが悪かった。近くで打ち合いをしている者達がいて、一人が受け止め損ねた剣が、俺の右の肩に当たった。
ゴッ!
「うわっ!大丈夫か!?すまん!!」
「くっ⋯、だ、大丈夫だ。訓練用の剣だから、大した怪我じゃない。医務室に行ってくるから、気にせず訓練を続けてくれ」
まずいな⋯。さすがに切れてはいないが、思い切り骨に当たったな。明日の大会、もしかしたら右腕が使い物にならないかもしれない。
父上にも、明日の結果は耳に入るだろう。
不注意で利き腕を怪我したなんて知られたら、叱責を受けてしまう。
「痛み止めと貼り薬で、なんとか誤魔化すしかないな⋯」
くそっ、思ったより痛みが酷い。
俺は痛み止めが効くまで、しばらく医務室のベッドで横になる事にした。
俺は痛み止めを飲んで、医務室のベッドに右肩をかばいながら横になった。
薬が効いたのか、しばらくすると深い眠りに落ちていた。
「うっ⋯」
あのまま眠っていたのか。
「あっ!アルフっ!目が覚めた?大丈夫?」
「リ⋯オ?」
「うん、アルフが怪我したって聞いて、心配で見に来たんだ。よく眠ってたね。怪我は大丈夫?」
「リオ、ずっとここにいてくれたのか?」
「う、うん⋯」
「ありがとう、リオ。俺肩に剣が当たって⋯」
肩⋯んっ?
あれだけ酷かった肩の痛みが、まるで何事もなかったかのように引いているのに気づいた。
痛み止めが効いたか?いや、最悪骨まで痛めてたかもしれない怪我だぞ。有り得ない。
ふわっ
この香りは⋯。
ドクンっ
くっ、何だこの胸を締め付けられる感覚は⋯?
「どうしたの?アルフ」
「リオ、ここにあいつがいなかったか?」
「えっ?あいつってニコの事?僕ずっとここにいたけど、誰も来てないよ」
「そうか⋯」
「何でそんな事聞くの?」
「いや、何でもない」
「それよりアルフ、肩の具合はどう?」
「それが⋯、痛みが無くなっているんだ」
「⋯あ、あのね、アルフが苦しそうにしてるの見て、僕、心配でアルフの肩に触れたんだ。そしたら、アルフの肩の怪我が、治ったんだ⋯」
「えっ?どういう事だ?」
「分からない⋯、もしかしたらだけど、運命の番の言い伝えって知ってる?」
「運命の番⋯。出会った瞬間強く引かれ合い、お互いの傷をも癒す絆があるって言うやつか?あれは迷信だろ?」
「だ、だよね。ははっ⋯、変な事言ってごめん」
「変な奴だな。でも、リオ、心配してくれて、ありがとな」
鼻腔の奥に微かに残る甘い香りが、あいつの顔を思い出させる。
また胸が締め付けられるような、微かな痛みが走った。
◇◇◇◇◇
「リオ!大変だ!アルフが訓練場で肩に怪我したみたいだ」
「えっ!?僕見に行ってくる!」
レイルからアルフが訓練中に怪我をしたって聞いて、心配で医務室まで来た。医務室からは物音が聞こえなくて、もしかしたら眠っているかもしれないと思い、そっと扉を開けてみた。
「あれは⋯ニコ?」
中には何故かニコがいて、眠っているアルフの前に立っていた。
僕は思わず扉に隠れて、少し開いた扉の隙間から中を覗いた。
何でニコがここに?
アルフから疎ましく思われてるって、まだ気づいてないの?
いい加減、僕が一言言って、追い返してやる。
僕が思い切り扉を開けようとした時だった。
えっ?な、何?どういう事⋯?
ニコがアルフの肩に触れた瞬間、アルフの顔から苦悶の色がみるみる消えていった。
あれって、まさか、ニコがアルフの⋯。
僕が呆然と二人の様子を見ていると、ニコが慌てて扉に向かって走ってきた。
僕が咄嗟に開けられた扉の陰に隠れると、ニコは僕に気づかずに行ってしまった。
「うん、絶対アルフが優勝するよ」
「レイル、リオ、自分たちも出場するのを忘れてないか?人の事はいいから、練習に集中しろ」
「「はぁい」」
「そう言えば僕聞いたんだけど、ニコはオルドー様の婚約者最有力候補なんだって。いつもアルフに気のある素振りしてるのに、ちゃっかり高位貴族の婚約者候補がいるなんて、いくら綺麗でも欲張りすぎだよね。アルフもそう思わない?」
「リオ、いい加減にしろ。俺には関係ない」
ニコの名前を聞いただけで、あの甘い香りが脳裏に過る。
あいつに婚約者がいても、俺にはどうでもいいはずなのに、何でこんなにイライラするんだ。
どれだけ剣を振っても振り払えない甘い香りに、全身が侵食されていくような感覚がした。
いよいよ明日が剣術大会という日、訓練場は騎士科の生徒でごった返していて、俺は空いている場所でいつもの様に剣を振っていた。
しかし、どこか集中出来ていなかったのが悪かった。近くで打ち合いをしている者達がいて、一人が受け止め損ねた剣が、俺の右の肩に当たった。
ゴッ!
「うわっ!大丈夫か!?すまん!!」
「くっ⋯、だ、大丈夫だ。訓練用の剣だから、大した怪我じゃない。医務室に行ってくるから、気にせず訓練を続けてくれ」
まずいな⋯。さすがに切れてはいないが、思い切り骨に当たったな。明日の大会、もしかしたら右腕が使い物にならないかもしれない。
父上にも、明日の結果は耳に入るだろう。
不注意で利き腕を怪我したなんて知られたら、叱責を受けてしまう。
「痛み止めと貼り薬で、なんとか誤魔化すしかないな⋯」
くそっ、思ったより痛みが酷い。
俺は痛み止めが効くまで、しばらく医務室のベッドで横になる事にした。
俺は痛み止めを飲んで、医務室のベッドに右肩をかばいながら横になった。
薬が効いたのか、しばらくすると深い眠りに落ちていた。
「うっ⋯」
あのまま眠っていたのか。
「あっ!アルフっ!目が覚めた?大丈夫?」
「リ⋯オ?」
「うん、アルフが怪我したって聞いて、心配で見に来たんだ。よく眠ってたね。怪我は大丈夫?」
「リオ、ずっとここにいてくれたのか?」
「う、うん⋯」
「ありがとう、リオ。俺肩に剣が当たって⋯」
肩⋯んっ?
あれだけ酷かった肩の痛みが、まるで何事もなかったかのように引いているのに気づいた。
痛み止めが効いたか?いや、最悪骨まで痛めてたかもしれない怪我だぞ。有り得ない。
ふわっ
この香りは⋯。
ドクンっ
くっ、何だこの胸を締め付けられる感覚は⋯?
「どうしたの?アルフ」
「リオ、ここにあいつがいなかったか?」
「えっ?あいつってニコの事?僕ずっとここにいたけど、誰も来てないよ」
「そうか⋯」
「何でそんな事聞くの?」
「いや、何でもない」
「それよりアルフ、肩の具合はどう?」
「それが⋯、痛みが無くなっているんだ」
「⋯あ、あのね、アルフが苦しそうにしてるの見て、僕、心配でアルフの肩に触れたんだ。そしたら、アルフの肩の怪我が、治ったんだ⋯」
「えっ?どういう事だ?」
「分からない⋯、もしかしたらだけど、運命の番の言い伝えって知ってる?」
「運命の番⋯。出会った瞬間強く引かれ合い、お互いの傷をも癒す絆があるって言うやつか?あれは迷信だろ?」
「だ、だよね。ははっ⋯、変な事言ってごめん」
「変な奴だな。でも、リオ、心配してくれて、ありがとな」
鼻腔の奥に微かに残る甘い香りが、あいつの顔を思い出させる。
また胸が締め付けられるような、微かな痛みが走った。
◇◇◇◇◇
「リオ!大変だ!アルフが訓練場で肩に怪我したみたいだ」
「えっ!?僕見に行ってくる!」
レイルからアルフが訓練中に怪我をしたって聞いて、心配で医務室まで来た。医務室からは物音が聞こえなくて、もしかしたら眠っているかもしれないと思い、そっと扉を開けてみた。
「あれは⋯ニコ?」
中には何故かニコがいて、眠っているアルフの前に立っていた。
僕は思わず扉に隠れて、少し開いた扉の隙間から中を覗いた。
何でニコがここに?
アルフから疎ましく思われてるって、まだ気づいてないの?
いい加減、僕が一言言って、追い返してやる。
僕が思い切り扉を開けようとした時だった。
えっ?な、何?どういう事⋯?
ニコがアルフの肩に触れた瞬間、アルフの顔から苦悶の色がみるみる消えていった。
あれって、まさか、ニコがアルフの⋯。
僕が呆然と二人の様子を見ていると、ニコが慌てて扉に向かって走ってきた。
僕が咄嗟に開けられた扉の陰に隠れると、ニコは僕に気づかずに行ってしまった。
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