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「サラン⋯」
「殿下⋯」
やっと君に会えた。
あの日から一度も言えなかった言葉を、やっと君に伝えることができる。
僕はセネシス王国の第一王子、レイヴィン、今年10歳になった。
僕の父上はこの国の王様だから、この国で一番偉い人なんだ。
僕には姉様が三人いて、僕はやっと生まれた男の子だから、皆とっても可愛がってくれる。
今日は父様から大事な話があるって言われて、部屋で父様が来るのを待っていると、入り口の扉を叩く音が聞こえた。
すぐに扉が開いたと思ったら、そこには父様と一緒に、三組の親子連れらしい人物が立っていた。
僕がぽかんとしていると、父様が三人の子供を僕の前まで連れてきて、いつもみたいに優しく頭を撫でてくれた。
「レイヴィン、今日からこの三人はレイヴィンの友人だよ」
「友人⋯?」
「ああ、そうだ。まず、エース公爵家のオリバー、スペット侯爵家の コルトン、そしてガナー伯爵家のサランだ。みんなレイヴィンと同い歳だから、仲良くするんだよ。仲良くなれたら、大人になった時に皆レイヴィンを助けてくれるからね」
「は、はい!オリバー、コルトン、サラン、よろしく!」
「「「よろしくお願いします!」」」
僕達四人は父様達から見守られ、照れくさそうにもじもじしながら笑い合った。
今日は月に一度の友人を集めてのお茶会だ。
「ねえ、三人とも大きくなったら、僕の側近になるんだって。だから、今から仲良くしなきゃいけないんだ」
「殿下は何でもご存知なんですね。すごいです」
「そうだろう、オリバー」
僕がオリバーに得意げな態度をとると、今度はコルトンが僕を褒める。
「殿下の側近なんて光栄です」
「うんうん、そうだろう、コルトン」
オリバーとコルトンはさすが高位貴族の子息で、見目も麗しく、おしゃべりもきちんと教育されていて、一緒にいるととても僕をいい気分にしてくれる。
でも、いつも僕とオリバーとコルトンと三人でおしゃべりしていると、サランはいつも決まって下を向いて黙り込んでいる。
それにサランは身なりこそ貴族令息らしくきちんとしてるけど、かなり太っていて顔の肉で目が潰れてよく見えない。肌も荒れていて、少し食べ過ぎなんじゃないかと思うけど、お茶会のお菓子にはいつも手を付けないで、お腹が鳴るのを何度も聞いたことがある。
「殿下、サランはあれで殿下の側近が務まると思ってるんでしょうか」
「僕もオリバーの言う通りだと思います。殿下もそう思いますよね?」
二人とも僕と同じ事考えてたみたいだ。
でも、僕は王族だから、思った事をそのまま言ってはダメだって分かってる。
「オリバー、コルトン、そんな事言ったらダメだよ。僕たちはまだ子供なんだから、これからいくらでも変われるだろう?」
「殿下は優しいですね」
「オリバー、ありがとう。でも、これ位普通だよ」
「いいえ、殿下はお優しいです」
「ははっ、コルトンもありがとう」
僕が何か言う度に、友人や周りの大人は大きく頷いて褒めてくれる。
だから僕がやりたいって言った事は、きっと皆も賛成してくれると思うんだ。
「ねえ皆、今度こっそり城下に行かないか?」
「えっ!?四人でですか?」
「そうだよ、オリバー。そっちの方が楽しいと思うんだ」
「でも、殿下⋯、父上から危ない事は絶対にするなと言われています」
「大丈夫だよ。人通りが多い大きな通りにちょっと行くだけだから」
「殿下、僕も王城からは絶対出たらダメだと言われています」
「コルトンもそんな事言うのか?街までは馬車で行くし、心配いらないよ。それに僕達もうすぐ二次性の検査を受けるだろ?結果次第ではもう皆で会えないかもしれないよ。例えばこの中の誰かがΩだったら?」
「そ、そっか⋯。でもきっと皆αですよ、殿下。だって僕たち皆、家を継ぐ嫡男ですから」
「まあ、コルトンの言う通りだとは思うけど⋯」
少しの沈黙が流れた後、オリバーとコルトンが目を合わせて頷き合った。
「ふぅ、分かりました、行きます。確かに殿下のおっりゃる通り、ちょっと冒険みたいでわくわくしますね」
「そうだろう、オリバー!よし、じゃあ早速計画を立てよう!」
皆で話し合って、僕達の小さな冒険は、次のお茶会の時と決まった。
僕とオリバー、コルトンが話し合う中、サランは一言もしゃべる事はなく、肉に埋もれて見えない目のせいで、どんな表情をしているのかも分からなかった。
「殿下⋯」
やっと君に会えた。
あの日から一度も言えなかった言葉を、やっと君に伝えることができる。
僕はセネシス王国の第一王子、レイヴィン、今年10歳になった。
僕の父上はこの国の王様だから、この国で一番偉い人なんだ。
僕には姉様が三人いて、僕はやっと生まれた男の子だから、皆とっても可愛がってくれる。
今日は父様から大事な話があるって言われて、部屋で父様が来るのを待っていると、入り口の扉を叩く音が聞こえた。
すぐに扉が開いたと思ったら、そこには父様と一緒に、三組の親子連れらしい人物が立っていた。
僕がぽかんとしていると、父様が三人の子供を僕の前まで連れてきて、いつもみたいに優しく頭を撫でてくれた。
「レイヴィン、今日からこの三人はレイヴィンの友人だよ」
「友人⋯?」
「ああ、そうだ。まず、エース公爵家のオリバー、スペット侯爵家の コルトン、そしてガナー伯爵家のサランだ。みんなレイヴィンと同い歳だから、仲良くするんだよ。仲良くなれたら、大人になった時に皆レイヴィンを助けてくれるからね」
「は、はい!オリバー、コルトン、サラン、よろしく!」
「「「よろしくお願いします!」」」
僕達四人は父様達から見守られ、照れくさそうにもじもじしながら笑い合った。
今日は月に一度の友人を集めてのお茶会だ。
「ねえ、三人とも大きくなったら、僕の側近になるんだって。だから、今から仲良くしなきゃいけないんだ」
「殿下は何でもご存知なんですね。すごいです」
「そうだろう、オリバー」
僕がオリバーに得意げな態度をとると、今度はコルトンが僕を褒める。
「殿下の側近なんて光栄です」
「うんうん、そうだろう、コルトン」
オリバーとコルトンはさすが高位貴族の子息で、見目も麗しく、おしゃべりもきちんと教育されていて、一緒にいるととても僕をいい気分にしてくれる。
でも、いつも僕とオリバーとコルトンと三人でおしゃべりしていると、サランはいつも決まって下を向いて黙り込んでいる。
それにサランは身なりこそ貴族令息らしくきちんとしてるけど、かなり太っていて顔の肉で目が潰れてよく見えない。肌も荒れていて、少し食べ過ぎなんじゃないかと思うけど、お茶会のお菓子にはいつも手を付けないで、お腹が鳴るのを何度も聞いたことがある。
「殿下、サランはあれで殿下の側近が務まると思ってるんでしょうか」
「僕もオリバーの言う通りだと思います。殿下もそう思いますよね?」
二人とも僕と同じ事考えてたみたいだ。
でも、僕は王族だから、思った事をそのまま言ってはダメだって分かってる。
「オリバー、コルトン、そんな事言ったらダメだよ。僕たちはまだ子供なんだから、これからいくらでも変われるだろう?」
「殿下は優しいですね」
「オリバー、ありがとう。でも、これ位普通だよ」
「いいえ、殿下はお優しいです」
「ははっ、コルトンもありがとう」
僕が何か言う度に、友人や周りの大人は大きく頷いて褒めてくれる。
だから僕がやりたいって言った事は、きっと皆も賛成してくれると思うんだ。
「ねえ皆、今度こっそり城下に行かないか?」
「えっ!?四人でですか?」
「そうだよ、オリバー。そっちの方が楽しいと思うんだ」
「でも、殿下⋯、父上から危ない事は絶対にするなと言われています」
「大丈夫だよ。人通りが多い大きな通りにちょっと行くだけだから」
「殿下、僕も王城からは絶対出たらダメだと言われています」
「コルトンもそんな事言うのか?街までは馬車で行くし、心配いらないよ。それに僕達もうすぐ二次性の検査を受けるだろ?結果次第ではもう皆で会えないかもしれないよ。例えばこの中の誰かがΩだったら?」
「そ、そっか⋯。でもきっと皆αですよ、殿下。だって僕たち皆、家を継ぐ嫡男ですから」
「まあ、コルトンの言う通りだとは思うけど⋯」
少しの沈黙が流れた後、オリバーとコルトンが目を合わせて頷き合った。
「ふぅ、分かりました、行きます。確かに殿下のおっりゃる通り、ちょっと冒険みたいでわくわくしますね」
「そうだろう、オリバー!よし、じゃあ早速計画を立てよう!」
皆で話し合って、僕達の小さな冒険は、次のお茶会の時と決まった。
僕とオリバー、コルトンが話し合う中、サランは一言もしゃべる事はなく、肉に埋もれて見えない目のせいで、どんな表情をしているのかも分からなかった。
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