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6年振りに四人揃って笑い合った。
「さてと、会場に戻るか」
ひとしきり懐かしい顔ぶれで話した後、四人揃って会場に戻った。
「殿下ぁ、私と踊ってくださいませ」
「サラン殿、私と1曲お願いできますか?」
会場に入るとすぐ、婚約者がまだ決まっていない私とサランの前にはダンスを申し込む者が列を成し、我先にと争って押し寄せてきた。
二人で呆気にとられていると、一人の男がサランの腕を無理矢理掴もうとしてきた。
私は咄嗟にサランを自分の背中に庇うと、その男の手首を掴んだ。
「殿下!?」
私に手首を掴まれた男が驚いて大声を上げると、会場が水を打ったような静けさに包まれ、皆が私と背中に庇われているサランを見て息を飲んだ。
もう、私の気持ちは決まっている。
私はできるだけ柔らかな笑顔を作り、こちらを見ている老若男女の貴族達を見渡すと、くるりと後ろを振り向いて、困惑しているサランの肩に手を置き顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?サラン」
「は、はい、レイヴィン様。こんなにたくさんの人に囲まれるのは初めてなので、少し驚いてしまって⋯」
「可哀想に、怖かったよな。⋯サラン、私は決めたよ」
「えっ⋯?」
「これからは、私がサランを必ず守る。サラン、私についてきてくれるか?もし、私が間違った道に進もうとした時は、サランに止めて欲しいんだ」
サランは私がこれから何を言おうとしているのかおそらく気付いたのだろう、不安で揺れていた瞳にじわじわと熱が籠ってきて頬が赤く色付いた。
「はい、ずっとレイヴィン様のお傍にいます」
覚悟を決めてそう言ったサランの笑顔は、目映ゆい程に美しかった。
私はサランを高く抱き上げると、そのまま力いっぱい抱き締めた。
「わわっ、レイヴィンさま!」
「「「えええぇぇぇ!!??」」」
「「「いやあああぁぁぁ!!??」」」
溜め息混じりの悲鳴を上げながら驚く令嬢令息達をよそ目に、私はサランを抱き上げたまま、まるでダンスを踊るようにくるくると回った。
私に高く抱き上げられて、サランは驚きながらも花が綻ぶように笑った。
会場が騒然となる中、私がサランを床に降ろしてサランの腰を抱き寄せると、貴族達が固唾を飲むのが分かった。
「皆、聞いてくれ!今日、私の告白をサランが快く受けてくれた」
「「「きゃっ!!」」」
「皆の前で誓わせてくれ!私はサランを生涯守る!サランを絶対幸せにする!!」
「「「わあああぁぁぁ!!!」」」
会場が割れんばかりの歓声に包まれ、私は驚いて固まるサランを力いっぱい抱き締めた。
会場の端の方を見やると、オリバーとコルトンが呆れ顔で拍手をしていて、玉座に座る母上は跳び跳ねて喜んでいた。母上の隣で父上は、やれやれと、今にも聞こえてきそうな顔でこちらを見ていた。
「サラン、伯爵邸まで送らせてくれ」
「⋯レイヴィン様のお手を煩わせる訳には」
「サラン、お願いだ、離れたくないんだ⋯」
「レイヴィン様⋯では、お願いします」
いつまでも伯爵邸に着かなければいいと願いながら、馬車の中で私はサランをずっと抱き締めていた。
「サラン、膝に乗せていいか?」
「えっ!?だ、だめです⋯」
「何故だ?」
サランは真っ赤になって、恥ずかしそうに首を横に振った。その仕草が可愛くて、結局サランを膝に乗せて、ぎゅっと抱き締めてしまった。
サランは一瞬ぴくりと体を強ばらせたが、すぐに私に身を預けてくれた。
「サラン、今日はサランの気持ちも聞かずに、あんなふうに皆に宣言して、ごめん。オリバーとコルトンにも、独占欲丸出しで見ていられなかったって言われたよ」
私が許しを乞うようにサランを見つめると、サランは私の目を見つめ返して優しく微笑んでくれた。
「僕はずっとレイヴィン様のお傍にいると約束しました。だから⋯嬉しかったです」
目の前で頬を赤らめるサランを見て、理性が吹き飛びそうになった。
「サラン⋯」
私はサランの名前を呼びながら、柔らかな頬を手の平で包み込み、揺らめくサランの浅緑色の瞳をじっと見つめた。
少しずつ、少しずつ、顔が近付いていく。
そしてサランの柔らかな唇に触れそうになったその時、ガタンっと馬車が揺れた。
ふにっ
えっ⋯?
今、サランの唇に触れた⋯か?
私はほんの少しサランから体を離すと、サランの顔を覗き込んだ。
「サラン⋯、可愛い」
私の目に飛び込んできたのは、真っ赤になりながら、今にも泣き出しそうに瞳を潤ませ、小刻みに震えているサランだった。
そんなサランを見て、私の理性はあっという間に消えてなくなってしまった。
片手でサランの頭を、もう片方の手で腰を強く引き寄せ、私の膝の上で身動きが取れないサランの唇を強引に貪った。
唇に吸い付き、そのまま割り開いて舌を絡ませた。サランの小さな舌が驚いたように引っ込められたけど、どこまでも追っていってしつこく絡ませ合った。
気付くと馬車は伯爵邸の前で止まっていて、私の腕の中のサランは、息も絶え絶えに、今にも気を失いそうになっていた。
「サラン、大丈夫か!?ごめん、つい、夢中になってしまって⋯。サランの唇が甘すぎて」
「はぁはぁ、レイヴィン様、もう少しお手柔らかにお願いします」
「ごめん、サラン」
「レイヴィン様⋯」
「サラン⋯」
コンコン
馬車の窓が軽く叩かれ、サランと抱き合いながら二人で窓に目をやると、そこに立っていたのはサランの父上のガナー伯爵だった。
「さてと、会場に戻るか」
ひとしきり懐かしい顔ぶれで話した後、四人揃って会場に戻った。
「殿下ぁ、私と踊ってくださいませ」
「サラン殿、私と1曲お願いできますか?」
会場に入るとすぐ、婚約者がまだ決まっていない私とサランの前にはダンスを申し込む者が列を成し、我先にと争って押し寄せてきた。
二人で呆気にとられていると、一人の男がサランの腕を無理矢理掴もうとしてきた。
私は咄嗟にサランを自分の背中に庇うと、その男の手首を掴んだ。
「殿下!?」
私に手首を掴まれた男が驚いて大声を上げると、会場が水を打ったような静けさに包まれ、皆が私と背中に庇われているサランを見て息を飲んだ。
もう、私の気持ちは決まっている。
私はできるだけ柔らかな笑顔を作り、こちらを見ている老若男女の貴族達を見渡すと、くるりと後ろを振り向いて、困惑しているサランの肩に手を置き顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?サラン」
「は、はい、レイヴィン様。こんなにたくさんの人に囲まれるのは初めてなので、少し驚いてしまって⋯」
「可哀想に、怖かったよな。⋯サラン、私は決めたよ」
「えっ⋯?」
「これからは、私がサランを必ず守る。サラン、私についてきてくれるか?もし、私が間違った道に進もうとした時は、サランに止めて欲しいんだ」
サランは私がこれから何を言おうとしているのかおそらく気付いたのだろう、不安で揺れていた瞳にじわじわと熱が籠ってきて頬が赤く色付いた。
「はい、ずっとレイヴィン様のお傍にいます」
覚悟を決めてそう言ったサランの笑顔は、目映ゆい程に美しかった。
私はサランを高く抱き上げると、そのまま力いっぱい抱き締めた。
「わわっ、レイヴィンさま!」
「「「えええぇぇぇ!!??」」」
「「「いやあああぁぁぁ!!??」」」
溜め息混じりの悲鳴を上げながら驚く令嬢令息達をよそ目に、私はサランを抱き上げたまま、まるでダンスを踊るようにくるくると回った。
私に高く抱き上げられて、サランは驚きながらも花が綻ぶように笑った。
会場が騒然となる中、私がサランを床に降ろしてサランの腰を抱き寄せると、貴族達が固唾を飲むのが分かった。
「皆、聞いてくれ!今日、私の告白をサランが快く受けてくれた」
「「「きゃっ!!」」」
「皆の前で誓わせてくれ!私はサランを生涯守る!サランを絶対幸せにする!!」
「「「わあああぁぁぁ!!!」」」
会場が割れんばかりの歓声に包まれ、私は驚いて固まるサランを力いっぱい抱き締めた。
会場の端の方を見やると、オリバーとコルトンが呆れ顔で拍手をしていて、玉座に座る母上は跳び跳ねて喜んでいた。母上の隣で父上は、やれやれと、今にも聞こえてきそうな顔でこちらを見ていた。
「サラン、伯爵邸まで送らせてくれ」
「⋯レイヴィン様のお手を煩わせる訳には」
「サラン、お願いだ、離れたくないんだ⋯」
「レイヴィン様⋯では、お願いします」
いつまでも伯爵邸に着かなければいいと願いながら、馬車の中で私はサランをずっと抱き締めていた。
「サラン、膝に乗せていいか?」
「えっ!?だ、だめです⋯」
「何故だ?」
サランは真っ赤になって、恥ずかしそうに首を横に振った。その仕草が可愛くて、結局サランを膝に乗せて、ぎゅっと抱き締めてしまった。
サランは一瞬ぴくりと体を強ばらせたが、すぐに私に身を預けてくれた。
「サラン、今日はサランの気持ちも聞かずに、あんなふうに皆に宣言して、ごめん。オリバーとコルトンにも、独占欲丸出しで見ていられなかったって言われたよ」
私が許しを乞うようにサランを見つめると、サランは私の目を見つめ返して優しく微笑んでくれた。
「僕はずっとレイヴィン様のお傍にいると約束しました。だから⋯嬉しかったです」
目の前で頬を赤らめるサランを見て、理性が吹き飛びそうになった。
「サラン⋯」
私はサランの名前を呼びながら、柔らかな頬を手の平で包み込み、揺らめくサランの浅緑色の瞳をじっと見つめた。
少しずつ、少しずつ、顔が近付いていく。
そしてサランの柔らかな唇に触れそうになったその時、ガタンっと馬車が揺れた。
ふにっ
えっ⋯?
今、サランの唇に触れた⋯か?
私はほんの少しサランから体を離すと、サランの顔を覗き込んだ。
「サラン⋯、可愛い」
私の目に飛び込んできたのは、真っ赤になりながら、今にも泣き出しそうに瞳を潤ませ、小刻みに震えているサランだった。
そんなサランを見て、私の理性はあっという間に消えてなくなってしまった。
片手でサランの頭を、もう片方の手で腰を強く引き寄せ、私の膝の上で身動きが取れないサランの唇を強引に貪った。
唇に吸い付き、そのまま割り開いて舌を絡ませた。サランの小さな舌が驚いたように引っ込められたけど、どこまでも追っていってしつこく絡ませ合った。
気付くと馬車は伯爵邸の前で止まっていて、私の腕の中のサランは、息も絶え絶えに、今にも気を失いそうになっていた。
「サラン、大丈夫か!?ごめん、つい、夢中になってしまって⋯。サランの唇が甘すぎて」
「はぁはぁ、レイヴィン様、もう少しお手柔らかにお願いします」
「ごめん、サラン」
「レイヴィン様⋯」
「サラン⋯」
コンコン
馬車の窓が軽く叩かれ、サランと抱き合いながら二人で窓に目をやると、そこに立っていたのはサランの父上のガナー伯爵だった。
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