白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる

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「はあ、風が気持ちいいなぁ」

僕は晩餐の後、夜風に当たりたくて、護衛に無理を言って、露台バルコニーに出た。
しばらく爽やかな早春の風を感じていたら、切なかった胸が、ほんの少し軽くなった気がした。


「無理言ってごめんね、もう部屋に戻るから」

僕は振り向いて、わがままに付き合わせてしまった護衛に声を掛けた。

「えっ⋯?どうして⋯ここに」

「シルティ殿下、お久しぶりです。5年ぶりでしょうか。殿下⋯、お美しくなられましたね」

振り向いた先にいたのは、僕がただひたすら恋焦がれて止まない、アリウスだった。
アリウスの、あの頃よりも一回り大きくなった背中には、団長だけに羽織ることを許された、騎士団の漆黒のマントが、夜風に遊ばれるように、ひらひらとはためいていた。

そのあまりの美しい光景に、僕は一瞬、これは夢ではないかと思った。
でも、まるで愛おしい者を見るようなサファイアブルーの瞳が、僕を現実に引き戻してくれた。

「アリウス⋯本物?」

「はい、アリウスです、シルティ殿下」

「アリウス⋯、アリウスっ!」

僕はアリウスに駆け寄り、思わず抱きつきそうになって、寸前で我に返った。

「あっ、ごめんなさい、もう子供じゃないのに」
「ええ、もう立派な王子ですね、シルティ殿下」
「えっ!?アリウス!?」

アリウスは、そっと僕の手に触れたかと思ったら、マントをひらりと翻し、僕の前にひざまずいた。

「シルティ殿下、またあなたを守らせて下さい」

アリウスはそう言って、僕の手の甲に、柔らかな唇を落とした。

「ふぁっ」

僕は突然のことに驚き、全身を真っ赤に染めて、ただただ震えることしかできなかった。

「シルティ殿下、そのお顔は、反則です。はぁ、こんな殿下を一人学園に放り込むなど、私は一体どうすればいいのだ」

アリウスは、何かぶつぶつと呟いていたけど、僕はそれどころではなかった。

「ひゃっ!ア、アリウス!手に口づけしたまま、しゃべらないでっ!」

僕は頭から湯気を出しながら、ふらふらとアリウスにもたれかかった。

「殿下、失礼します」
「わわっ!アリウス!?」

僕はアリウスに横抱きに抱き上げられ、マントでふわりと包み込まれた。

「殿下、どうか私に身を任せてください。ふっ、あの頃もよくこんなふうに、マントに殿下を隠して歩きましたね」

アリウスの腕の中で、ゆらゆらと揺られながら、のぼせた頭を夜風が撫でていった。

「アリウス、あの頃は、抱っこなんてしてもらってないよ」

僕が恥ずかしさを誤魔化すように、ぽつりと零すと、アリウスは、あの優しい笑顔を僕に向けた。


「私のシルティ殿下、このまま腕の中に閉じ込めておけたなら」


アリウスの囁いた声は、一際強く吹いた春風に絡め取られ、僕の耳には届かなかった。

僕は温かなマントの中で、あの頃よりも厚く男らしくなった胸に、気づかれないように、そっと頬擦りをした。

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