白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる

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「シルティ殿下、狼が来たら走っ⋯」
「アリウス、それ毎日言ってるけど、どういう意味なの?」
「殿下はもうすぐご卒業ですよね?」
「うん、そうだよ」
「まさかこの3年間、私の心配が全く通じていなかったのですか?」
「え、えっと、そう⋯なる⋯の⋯かな?」

僕はこてんと首を傾げた。

「はあぁぁ⋯」

アリウスは盛大な溜め息をきながら、僕をふわりと抱き締めた。

僕とアリウスの結婚が決まってから、アリウスは毎日馬車で、僕を学園まで送ってくれるようになった。
アリウスと出会って11年、長く会えない期間ときもあったけど、アリウスはずっと変わらず、僕を包み込むように甘やかして、その腕の中で守ってくれる。

僕は、アリウスの腕の中が大好きだ。
いつも温かくて、硬いのになぜか柔らかくて、僕にとって、アリウスの腕の中が、この世で一番安心できる場所だ。
幼い頃からの刷り込みと言われれば、そうかもしれないけど、アリウスが務めとしてではなく、愛情を持って僕に接してくれているのは、さすがの僕でも気づいている。

でもその愛情が、恋愛の愛なのかは、僕には分からない⋯。

アリウスから甘やかされる度、むずがゆい程の愛を感じると同時に、こうも思うんだ。

「殿下は何もしなくていい。ただ、守られていればいい」

そう思われているんじゃないかと。
僕はアリウスにとって、まだ幼い子供のままではないかと。


「シルティ殿下?」
「あっ、えっと、ちょっとぼやっとしちゃった」
「私がおかしな事を言ったから、気にされているのではないですか?」
「おかしな⋯、ああ、狼がどうとか?」
「ええ、そうです。殿下、学園には狼がたくさんいるんです。まあ、もうご卒業される殿下にとっては、関係のない事ですが。ふぅ、だが、殿下が3年間、ご無事で良かった」

アリウスは、僕を抱き締めている腕に力を込めた。

「アリウス、狼って何?」

僕はアリウスの胸に頬を寄せながら、さっきから疑問に思っていることを聞いてみた。

「⋯シルティ殿下」

アリウスは僕の肩に手を置いて、ほんの少し体を離した。

「殿下、これを見てください」
「えっ?」

アリウスからあごをくいっと持たれ、上を向かされた僕の目に飛び込んできたのは、アリウスの鋭く尖った2本の犬歯だった。

ふぁっ、かっこいい⋯。

「もしかして、これが狼なの?」

アリウスは歯を見せたまま、微笑みながら大きくうなずいた。

ドキンッ

その時、僕の心臓が大きく跳ねた。
いけないと頭では分かっていても、体が言うことを聞かない。

「殿下?どうされました?」

僕の異変に気づいたアリウスが、僕の顔を覗き込んできた。

「アリウス⋯」

僕はアリウスの唇に、そっと手を伸ばした。

「殿下、どうされ⋯っ!?」

僕はアリウスの唇を押し上げ、もう隠れてしまって見えないアリウスの犬歯をき出しにして、尖った先端にチュッと口づけをした。

恥ずかしい。でも、どうしても、目の前のαが欲しい。
僕のΩの本能が、そう叫んでいる。

「はぁ、はぁ、アリウス、アリウス」

アリウスは驚いた顔で、これでもかと目を見開いて僕を見ている。

チュッ チュッ チュッ

「くそっ!」

アリウスは僕の後頭を両手で包み込み、口を大きく開けて、僕の唇に食らいついた。

「ふぁっ、ふっ⋯ん⋯、はぁ⋯ん、アリウスぅ」

「甘い、シルティ、どうしようもなく、甘い。可愛い、シルティ、俺のシルティ」

アリウスは僕の唇を貪りながら、僕の名前を呼び続けた。



「殿下、自分を抑えきれず、申し訳ありませんでした」

ようやく唇を解放してくれたアリウスは、僕を抱き締めて、申し訳なさそうに謝った。

「アリウス、さっきみたいに名前で呼んで」
「いいのですか?」
「だって僕たち、結婚するんだよ」
「⋯っ!」

僕がアリウスの胸にすりっと頬擦りをすると、アリウスの体が小刻みに震え出した。

「シルティ、今日はもう、王城に戻りましょう」
「ええっ!?駄目だよ、アリウス」
「この時期、学園は自由登校ですよね?」
「そうだけど、せっかくここまで来たのに」

僕が言うのと同時に、馬車が学園に着いた。

「くっ、仕方ない。こんな可愛いシルティを、狼どもに見せるわけにはいかない」
「へっ?」

僕はふわりと抱き抱えられ、騎士服のマントに包み込まれた。
 
「アリウス!これじゃあ、前が見えないよ!」
「シルティ、私に身を任せて」
「また、これ⋯?」


結局アリウスは、僕を離さないまま、教室まで入っていった。
ざわざわと級友たちが騒ぐ中、アリウスは僕を膝に乗せて、どっかりと椅子に腰を下ろした。

「うわあ、団長、ここまでするか?」

ダレルの呆れた声が聞こえてきた。

「まあっ!シルティ殿下、大丈夫ですの!?キーファ団長、これはちょっとやりすぎですわっ!でもわたくし、いつかはやるとは思ってましたわっ!」

「ぷふっ」

フィーネの遠慮知らずな言葉を聞いて、おかしくて堪らくなり、僕はマントの中で、抵抗するのを諦めた。

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