11 / 32
11
いよいよ今日、僕とアリウスは結婚する。
王族の僕と、現侯爵であり、王宮騎士団団長を務めるアリウスの立場もあって、披露宴は盛大にする事になった。
でも結婚式は、落ち着いた雰囲気の中で愛を誓いたくて、極々身近な人達だけを呼ぶ事にした。
コンコン
ちょうど僕の支度が終わった時、自室の扉が軽やかに叩かれた。
僕が小さくうなずいて侍女に目配せをすると、侍女が扉を開けてくれた。
「シルティ、お迎えに上がりました」
「アリウス!」
僕は、扉から入ってきたアリウスに飛びついた。
ふぁっ、アリウス、かっこいい。
アリウスは、騎士団の正装である白い騎士服を身に纏い、漆黒の髪を凛々しく後ろに流していた。
こんなかっこいいアリウスが、今日から僕の夫になるなんて、まるで幸せな夢を見てるみたいだ。
「アリウス、迎えに来てくれて、ありがとう」
僕は、ぎゅっとアリウスを抱き締めた。
でも、アリウスは背筋をぴんと伸ばしたまま、何も言わずに立ち尽くしている。
「アリウス?どうしたの?わわっ!」
僕がアリウスの顔を覗き込もうとすると、アリウスは慌てて僕の背中に腕を回して、離れかけた僕を抱き寄せた。
「はぁ、シルティが美しすぎて、今、目を合わせたら、私は何をするか分かりません」
「へっ?」
「私が贈った婚礼衣装を身に纏い、私が選んだ私の瞳の色の宝石を身に付け、色白の肌を存分に活かした淡い化粧を施し、全身から甘い香りを漂わせ、ああっ、くそっ、私の想いの半分も言葉にできん!」
「アリウス!もう充分、しゃべってるよ!」
「ああ、見せたくない。結婚式はやるとして、披露宴は、無駄に人を呼んでしまったからな」
アリウスはぶつぶつと、僕の頭の上で独り言を呟いている。
「ア、アリウス、あんまりくっつくと、僕のお化粧が付いちゃうよ。結婚式は今からなのに」
「私は、そんな事は気にしません」
「僕が気にするのっ!」
僕はアリウスの胸に両手を当てて、ぐっと腕を伸ばした。
「アリウス、早く神殿に行こう」
僕はアリウスを見上げて、わざと瞳を潤ませた。
「ぐうっ、し、仕方ない」
アリウスは渋々僕から離れ、腰に腕を当てて、エスコートの形を取った。
僕は自分の腕を、するりとアリウスの腕に絡ませ、逞しい二の腕にもたれかかった。
「僕だって、こんなにかっこいいアリウスを、誰にも見せたくないよ。あっ、声に出ちゃった」
思わず心の声が漏れて、僕は慌てて空いている手で口を塞いだ。
アリウス、聞こえてないよね?
歩きながら、そっとアリウスの顔を見上げると、アリウスは前も見ずに、僕の顔を穴が開く程見つめていた。
「わわっ、アリウス、もしかして、聞こえた?」
アリウスは何も言わずに、ぴたりと歩みを止め、僕をいきなり横抱きにした。
「わあっ!アリウス、何するの!?」
「シルティ、結婚式も披露宴も、さっさと済ませましょう」
「ええっ!?」
アリウスは僕を抱えたまま、広い王城の中を駆け抜け、そのまま馬車に乗り込むと、御者に急いで神殿に向かわせた。
「アリウス・キーファ、シルティ・フレア、汝ら、富める時も、病める時も、生涯、互いを愛する事を誓いますか?」
「「はい、誓います」」
「それでは、誓いの口づけを」
神官長の合図で、僕とアリウスは互いに向き合い、視線を絡ませた。
アリウスとの口づけは初めてじゃないけど、やっぱり今日は、特別な気持ちが込み上げてくる。
アリウスの顔がすっと近づいてきた。
僕は静かに目を閉じた。
チューーーッ
⋯⋯長くない?
いつまで経っても、アリウスが離れてくれない。
僕は、アリウスの背中を何度も叩いた。
さすがに、招待客がざわざわと騒ぎ始めた。
「んんん!んん!」
チューーーッ
「ごほん、キーファ団長、いい加減に⋯」
チューーーッ
「いい加減に、しなさいっ!!」
神官長はそう叫ぶと、アリウスの後ろに回り込み、脇の下から肩に腕を回して、ぐいぐい引き離しに掛かった。
それでもアリウスは、僕の唇から離れようとしない。
「キーファ団長、いい歳して、みっともないですよっ!」
「いい歳して⋯」(小声)
神官長の言葉の何がアリウスに刺さったのか分からないけど、アリウスはようやく僕を解放してくれた。
僕が肩で息をしながら恐る恐る招待客を見ると、皆、一様に口をぽかんと開けて、呆然としていた。
結婚式も無事(?)に終わり、披露宴は慌ただしく挨拶だけ済ませると、僕はアリウスに攫われるように、侯爵邸に連れてこられた。
それから、あれよあれよと侍女から体を磨かれ、僕はアリウスの自室に放り込まれた。
ごくっ
これからいよいよ、初夜が始まるのか。
王族の僕と、現侯爵であり、王宮騎士団団長を務めるアリウスの立場もあって、披露宴は盛大にする事になった。
でも結婚式は、落ち着いた雰囲気の中で愛を誓いたくて、極々身近な人達だけを呼ぶ事にした。
コンコン
ちょうど僕の支度が終わった時、自室の扉が軽やかに叩かれた。
僕が小さくうなずいて侍女に目配せをすると、侍女が扉を開けてくれた。
「シルティ、お迎えに上がりました」
「アリウス!」
僕は、扉から入ってきたアリウスに飛びついた。
ふぁっ、アリウス、かっこいい。
アリウスは、騎士団の正装である白い騎士服を身に纏い、漆黒の髪を凛々しく後ろに流していた。
こんなかっこいいアリウスが、今日から僕の夫になるなんて、まるで幸せな夢を見てるみたいだ。
「アリウス、迎えに来てくれて、ありがとう」
僕は、ぎゅっとアリウスを抱き締めた。
でも、アリウスは背筋をぴんと伸ばしたまま、何も言わずに立ち尽くしている。
「アリウス?どうしたの?わわっ!」
僕がアリウスの顔を覗き込もうとすると、アリウスは慌てて僕の背中に腕を回して、離れかけた僕を抱き寄せた。
「はぁ、シルティが美しすぎて、今、目を合わせたら、私は何をするか分かりません」
「へっ?」
「私が贈った婚礼衣装を身に纏い、私が選んだ私の瞳の色の宝石を身に付け、色白の肌を存分に活かした淡い化粧を施し、全身から甘い香りを漂わせ、ああっ、くそっ、私の想いの半分も言葉にできん!」
「アリウス!もう充分、しゃべってるよ!」
「ああ、見せたくない。結婚式はやるとして、披露宴は、無駄に人を呼んでしまったからな」
アリウスはぶつぶつと、僕の頭の上で独り言を呟いている。
「ア、アリウス、あんまりくっつくと、僕のお化粧が付いちゃうよ。結婚式は今からなのに」
「私は、そんな事は気にしません」
「僕が気にするのっ!」
僕はアリウスの胸に両手を当てて、ぐっと腕を伸ばした。
「アリウス、早く神殿に行こう」
僕はアリウスを見上げて、わざと瞳を潤ませた。
「ぐうっ、し、仕方ない」
アリウスは渋々僕から離れ、腰に腕を当てて、エスコートの形を取った。
僕は自分の腕を、するりとアリウスの腕に絡ませ、逞しい二の腕にもたれかかった。
「僕だって、こんなにかっこいいアリウスを、誰にも見せたくないよ。あっ、声に出ちゃった」
思わず心の声が漏れて、僕は慌てて空いている手で口を塞いだ。
アリウス、聞こえてないよね?
歩きながら、そっとアリウスの顔を見上げると、アリウスは前も見ずに、僕の顔を穴が開く程見つめていた。
「わわっ、アリウス、もしかして、聞こえた?」
アリウスは何も言わずに、ぴたりと歩みを止め、僕をいきなり横抱きにした。
「わあっ!アリウス、何するの!?」
「シルティ、結婚式も披露宴も、さっさと済ませましょう」
「ええっ!?」
アリウスは僕を抱えたまま、広い王城の中を駆け抜け、そのまま馬車に乗り込むと、御者に急いで神殿に向かわせた。
「アリウス・キーファ、シルティ・フレア、汝ら、富める時も、病める時も、生涯、互いを愛する事を誓いますか?」
「「はい、誓います」」
「それでは、誓いの口づけを」
神官長の合図で、僕とアリウスは互いに向き合い、視線を絡ませた。
アリウスとの口づけは初めてじゃないけど、やっぱり今日は、特別な気持ちが込み上げてくる。
アリウスの顔がすっと近づいてきた。
僕は静かに目を閉じた。
チューーーッ
⋯⋯長くない?
いつまで経っても、アリウスが離れてくれない。
僕は、アリウスの背中を何度も叩いた。
さすがに、招待客がざわざわと騒ぎ始めた。
「んんん!んん!」
チューーーッ
「ごほん、キーファ団長、いい加減に⋯」
チューーーッ
「いい加減に、しなさいっ!!」
神官長はそう叫ぶと、アリウスの後ろに回り込み、脇の下から肩に腕を回して、ぐいぐい引き離しに掛かった。
それでもアリウスは、僕の唇から離れようとしない。
「キーファ団長、いい歳して、みっともないですよっ!」
「いい歳して⋯」(小声)
神官長の言葉の何がアリウスに刺さったのか分からないけど、アリウスはようやく僕を解放してくれた。
僕が肩で息をしながら恐る恐る招待客を見ると、皆、一様に口をぽかんと開けて、呆然としていた。
結婚式も無事(?)に終わり、披露宴は慌ただしく挨拶だけ済ませると、僕はアリウスに攫われるように、侯爵邸に連れてこられた。
それから、あれよあれよと侍女から体を磨かれ、僕はアリウスの自室に放り込まれた。
ごくっ
これからいよいよ、初夜が始まるのか。
あなたにおすすめの小説
既成事実さえあれば大丈夫
ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
長年仮番として務めてきましたが、王子は正式な番を娶るそうです
けふ
BL
王都を守る巨大結界は、王族の魔力によって維持されている。
第二王子アデルの傍らには、常に一人の騎士がいた。
近衛騎士レオン。
彼は長年、王子の「仮番」として特別な任務を担っている。
しかし王子は、他国の王女との正式な番契約が決まってしまった。
仮番の役目は、そこで終わるはずだった。
だが結界塔で行われる儀式の中で、
二人の関係は次第に変わり始める。
王族と騎士。
主と臣下。
越えてはならない境界を前にしても、
王子は騎士の手を取る。
「共に立て」
※オメガバースではありません
※ふんわり読んでください
※なんでも許せる方向け
※イラストはChatGPTさん
番に囲われ逃げられない
ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。
結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。