白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる

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「まあまあ、おめでとうございます」
「⋯ありがとう」

湯浴みを手伝ってくれている侍女が、僕の体中に残るアリウスの痕跡を見て、滞りなく初夜が済んだと勘違いして喜んでいる。

「旦那様も、さぞお喜びでしょうね。シルティ様が来られるのを、それはそれは首を長くしてお待ちでしたから。ふふっ、旦那様ったら、こそこそと、何やら準備をされていたんですよ」
「そ、そうなんだ⋯」

それ多分、ベッドだよ。
結局、使い心地を試す前に、気を失ってしまったけれど。

「旦那様は普段から、あまり表情を変えられませんが、シルティ様の事を考えておいでの時だけ、何となく分かるんですよ。口元が緩んで、だらしないお顔になられますから。ふふっ、旦那様はきっと、むっつりですね」
「へ、へぇ⋯」

それは、本人に言わない方がいいと思うよ。

「ささっ、体をお拭きしますね」

侍女は慣れた手つきで僕の体を拭き上げると、真新しい、ふわふわのガウンを着せてくれた。

「シルティ様、このガウンも旦那様が用意されたんですよ。ふふっ、ご自分で何度も袖を通して、柔らかさを確認されていました」
「アリウスが?」
「ええ、サイズが全然合わなくて、つんつるてんになっておいででした。ぷふっ、その格好で、口元が緩んでいるんですよ。おかしいですよね」
「⋯⋯」

アリウスの当主の威厳は、どこにいった?

結婚する前、王城で僕に仕えていた侍女は、みんな無口だった。だから、おしゃべりが弾む侯爵家の侍女には驚いたけど、落ち込む僕の気持ちを、ほんの少し、和らげてくれた。

「はい、終わりましたよ」

侍女から声を掛けられ、僕は、はっとして、顔を上げた。

「ありがとう。えっと、チョーカーは?」
「えっ?チョーカーをされるのですか?」
「うん、だって⋯」
「うなじが気になりますか?でも、シルティ様、ちょうど髪で、うなじは隠れますよ」

アリウスに少しでも大人に見られたくて、結婚が決まってから、肩のラインで切り揃えていた髪を伸ばし始めた。
今はもう、肩を覆うくらい伸びて、確かにうなじは見えない。
でも、アリウスと番になれなかった僕は、アリウスではないαから、フェロモンを感じ取られてしまう。
もし万が一、間違いがあっては、取り返しのつかない事になる。

「今までずっとつけていたから、なんとなく、首が寂しい気がして⋯」
「かしこまりました。旦那様から、シルティ様が憂いなく過ごせるようにと、仰せつかっております。今すぐお持ちしますね」

侍女はにこりと笑って、部屋を出ていった。


あの後、チョーカーを持ってきた侍女が、アリウスからまるで尋問のように、僕の様子を事細かに聞かれたと言っていた。
愛されてますね、と言われ、僕は作り笑いを浮かべ、曖昧な返事をした。

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