白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる

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「ん⋯、えっ⋯?アリウス?」
「シルティ、目が覚めたか?体は大丈夫か?すまない、また無理をさせてしまった」

ん?また?
そんな事より、本当にアリウス?アリウスが僕を抱きしめてるの?

「アリウス、会いたかった」

僕がぼんやりしながら、アリウスの胸にすりっと頬ずりをすると、アリウスの体がカタカタと震え出した。

「シルティ、なんて愛おしいんだ。ああ、仕事に行きたくない。そうだ、仕事なんて今すぐ辞めてしまおう」
「えっ!?アリウス、だめだよ!」

僕が思わずアリウスの胸の中で叫ぶと、寝室の扉が叩かれる音がした。
アリウスは素早くガウンを羽織り、扉を開けて訪ねてきた執事から用件を聞いた。

「ふぅ、シルティ、行かないといけない」
「うん、僕は大丈夫だよ」
「シルティ、今日はゆっくり過ごすんだよ」

アリウスは着替えながら、僕を気遣って何度も抱き締めようとしてくる。

「うん、でも、申し訳ないよ。アリウス、少し痩せたんじゃない?」
「私の事なら心配いらない。シルティ不足以外、健康そのものだ。それよりシルティ、1週間も無理をさせたんだ。体が辛いだろ?」
「えっ⋯?」

僕、また1週間も気を失っていたの?
一体どうなってるの?

そんな事を考えているうちに、アリウスはマントを羽織り、身支度を整えてしまった。

「シルティ、行ってくる」
「うん、アリウス、無理しないでね」
「くっ、いい」
「ふふっ、行ってらっしゃい、アリウス」

僕はひと月分の思いを込めて、アリウスを抱きしめた。
アリウスもカタカタと震えながら、僕を力いっぱい抱きしめてくれた。

「くそっ、今日こそは捕まえてやる!よくも私とシルティの蜜月を邪魔してくれたな!怪盗団め!許さん!」

アリウスは名残惜しそうに、僕の唇を何度も味わうと、マントを翻して颯爽と部屋を出て行った。

僕はアリウスの遠ざかる足音を聞きながら、懸命に記憶を辿った。でも、どんなに思い出そうとしても、この1週間にアリウスと何があったのか、何も思い出す事はできなかった。

僕が頭を抱えていると、上機嫌なハナが入ってきて、おしゃべりを始めた。

「シルティ様、お体は大丈夫ですか?」
「う、うん。ねえハナ、僕の体ってどうなっ⋯」
「ふふん、シルティ様、聞いてください。旦那様ったら、どうしてもシルティ様と一緒に湯浴みをするとおっしゃって、抱き抱えたまま入られたんですよ。あっ、そうだ!シルティ様っ、お庭が出来上がったんですよ。手伝ってくれた造園業者も、今日引き上げるそうです。シルティ様、もしお辛くないなら、後で見に行きませんか?あっ、絶対、無理はなさらないでくださいね。これからは、いつでも見られますから」

ハナは素早く僕の支度を整えながら、一気におしゃべりをして、満足気な顔をしている。
そんなハナを見ていたら、分からない事をいくら考えても、仕方がないなと思えてきた。
アリウスの仕事が落ち着いたら、今度こそ、ちゃんと話そうと心に決めた。

「行ってみようかな」
「本当ですか!」
「うん、僕も早く見てみたい」
「よかった!」


午後からは日差しが強くなるからと、僕が朝食を取り終わるのを待って、庭に向かう事にした。

朝食を済ませ、早速外に出ると、ハナが急に立ち止まり、申し訳なさそうに、僕に頭を下げた。

「シルティ様、申し訳ありません、慌ててしまって、大事な日傘を忘れてしまいました。すぐにお持ちしますので、ここでお待ちください」

ハナは全速力で、屋敷に向かって走っていった。

「ふふっ、元気だなぁ」

僕がハナの背中を目で追っていると、ふいに後ろから名前を呼ばれた。


「シルティ様ですか?」

「えっ?あなたは⋯」


振り向いた先にいたのは、どこか見覚えのある男だった。
男は気持ちの悪い作り笑いを顔に貼り付け、1歩ずつ、僕に近づいてきた。


ぞくっ


その時、以前感じたあの得体の知れない冷たい感覚が、ぬるりと首筋を撫でた。





◇◇◇◇◇

「団長っ!どこに行くんですか!」


くそっ!なぜ気づかなかったんだ!

どうか間に合ってくれ!

シルティ、無事でいてくれ!

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