愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる

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僕は学園の2年生になった。

1年生の終わりに初めての発情期がきて、体が熱くて苦しくて、僕はうわ言のようにアラン様の名前を呼び続けた。

アラン様に助けて欲しいのに、反対に僕の体の奥の奥までアラン様の熱でめちゃくちゃにかき混ぜて欲しくて、目の前に浮かんだアラン様の幻に必死に手を伸ばした。

でもどれだけ手を伸ばしてもアラン様に触れる事は出来ず、伸ばした手が空を切った刹那、僕は意識を手放した。

翌日目が覚めると抑制剤が効いていて、頭のもやが少しずつ晴れていった。

その後一週間は、抑制剤を飲みながら部屋に籠って一歩も外に出なかった。



一週間後、発情期が終わり部屋から出ようと扉を開けた瞬間、甘やかで爽やかなのに雄々しくて艶かしい、僕があの苦しみの中でずっと求めていた香りがして、体が喜びで震えるのが分かった。

僕は自然と駆け出していた。


「アラン様っ!」

ちょうど玄関の扉から屋敷に入ろうとしているアラン様が目に飛び込んできて、思わず僕は駆け寄って抱きつきそうになった。

あっ⋯、父様と母様がいる。はしたないって叱られる。

僕はアラン様の前で立ち止まり、泣きそうな顔でアラン様を見つめた。

するとアラン様が、

「伯爵、夫人、許してくれ」

そう言って、僕をふわりと抱き締めてくれた。

「アラン様ぁ、会いたかったぁ」
「ナーシュ、私もだよ。辛い時に一緒にいてやれないなんて、私も、とてももどかしかったよ」
「はあぁ、アラン様の香りだぁ」
「ナーシュ、私のフェロモンが分かるのかい?」
「はい、発情期がきて、より一層感じるようになりました」
「私も分かるよ。ナーシュの甘く痺れる、この世で私を捉えて離さない唯一の香り。はあぁ、たまらん⋯」

「ごほん、二人共、ここではなんですので、部屋に案内いたします」

「「あっ⋯」」



その後応接室に移動して、アラン様が人払いをしたかと思ったら、すぐに横抱きにされ、膝の上に乗せられた。
恥ずかしかったけど、嬉しくて体も心もふわふわと浮いているようだった。

それからたくさん二人で話をして、と言っても、ずっと、アラン様から発情期の時の僕の体の変化を聞かれていたんだけど。

「ナーシュ、発情期は辛かっただろ」
「はい、体が熱くて苦しくて、ずっとアラン様の名前を呼んでいました」
「ああ、可哀想に。私がナーシュの熱をしずめてあげたかったよ。それで、ナーシュは自分でちゃんと鎮めることは出来た?」
「えっと⋯、それが⋯発情期中の事はよく覚えてないんです。抑制剤も次の日には効いたので」
「そう⋯。ナーシュ、私と結婚したら、抑制剤は使わなくていいからね」
「えっ?どうしてですか⋯?」
「私が何日掛かってでもナーシュの熱を鎮めるからだよ」

さすがの僕もアラン様の言っている意味が分かって、顔が熱を持つのが分かった。

「ナーシュ、そんな顔して、困った婚約者だ」
「あっ⋯、僕、アラン様を困らせるつもりは⋯」
「ナーシュ、また勘違いしているようだね。そんな可愛い顔をしたら、私の抑えが効かなくなって困るんだよ」
「アラン様⋯」

今度は全身が熱くなり、思わずアラン様から目を逸らした。

するとアラン様は僕のあごを指先で摘むと、くいっと元の位置に戻して、熱を帯びた深い紫色の瞳で僕の目を見つめた。

「ナーシュ、大人に一歩近付いた記念に口付けを許してくれないか?」

アラン様は僕に許しを乞いながら、顎を摘んだまま少しずつ顔を近付けてきた。

アラン様の唇が息がかかる程目の前にきて、僕は嬉しさと緊張でドキドキしながら、返事の代わりにそっと瞳を閉じた。

ふわりと優しい口付け⋯だと思った瞬間、僕は後頭部をアラン様の両手で包まれて、唇を舌でこじ開けられた。

横抱きに支えられていた腕がなくなり、僕は咄嗟にアラン様にしがみついた。

するとアラン様の目がカッと見開き、更に激しく唇を奪われた。

音を立てて舌を絡められ、上顎を舐められ、唇を吸われ、僕はもう息も絶え絶えになり、されるがままになるしかなかった。

「ん⋯、ふっ⋯んん⋯」

「ナーシュ、すまないっ!つい夢中になってしまった」

アラン様からやっと解放された時には、僕は気を失う寸前だった。


しばらくして、僕が落ち着いたのを確かめたアラン様からある提案を受けた。

「ナーシュ、発情期を経験した君は、今までより格段に色香が増していて、私は心配だよ」
「心配⋯ですか?」
「ああ、そんな色香をまとった君が、学園に行くなんて、雄どもに何をされるか分からん」
「雄?ふふっ、学園に動物はいませんよ」
「はぁ⋯、その無防備さが心配なんだよ」


アラン様の提案は、僕が学園に行く日は必ず馬車で迎えに行くというものだった。

アラン様の時間を奪うなんてとんでもないと思ったけど、アラン様の気持ちが嬉しくて、思わず首を縦に振っていた。





「ナーシュももう2年生だね。クラスにはもう慣れたかい?」
「はい。友人と同じクラスになれたので」
「ほう、ところで今日は何人だった?」
「あっ⋯えっと⋯」
「ナーシュ」
「さ、3人です!」

発情期休暇が終わって学園に通い出すと、約束通りアラン様は毎日学園まで迎えに来てくれた。


「ふっ⋯んん⋯はっ⋯あぁっ、くるし⋯ぃ」


アラン様のお迎えはとっても嬉しいけど、いつの間にか、その日僕が告白された人数と同じ数だけ、アラン様から激しい口付けをされるという、謎の決め事が出来ていた。

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