騎士団長の初恋を実らせるつもりが、うっかり恋に落ちました~心の声が聞こえる第五王子は街で人気の占い師~

まんまる

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僕とアルバートは父様に呼ばれ、謁見の間ではなく、父様の執務室に通された。


「二人共、来たか⋯。ん?二人共、何やら雰囲気が変わったな」
「「⋯⋯」」
「まあよい。二人をここに呼んだのは、急ぎ知らせる事があったからだ。良い知らせが一つと、悪い知らせが一つある」

「陛下、何でしょうか」

アルバートが瞬時に引き締まった騎士団長の顔になった。

「その前にノア、王城に引き籠っていると思っていたお前が街に出て占い師をしていると聞いた時は、肝が冷えだぞ」
「すみません、父様」
「窃盗団に攫われたと聞いた時は生きた心地がせんだった」
「ごめんなさい⋯」
「3年前も、街で騒ぎに巻き込まれたと聞いた時は心配したんだぞ」
「父様、ぐすっ、心配かけてごめんなさい」
「だが、全てノアが民を思っての事だろう?私はお前が誇らしいぞ」

(本当に無事で良かった)

「うっ⋯、うっ⋯、父様ぁぁ!」
「私のお前に対する態度もいけなかった。私はこれでも子供達全員を愛しているんだぞ」
「はいぃ、ぐすっ、ぐすっ」

「アルバートもよくやった。よくぞノアを助けてくれた」
「陛下、あの事件はノア殿下が機転を利かされたお陰で解決できました。私も騎士の務めと言うより、私情で動きました。申し訳ございません」
「わっはっはっ、はっきり言いおって。それで、話と言うのはな、今回の騒動でノアが我が国にいるのがサミエル王子に伝わった」

父様が一変して険しい顔になった。

「やはりそうですか。サミエル王子はまだノア殿下を諦めていないようですね」
「蛇のようにしつこい奴だ。そのサミエル王子が早速こっちに向かっていると知らせが来た」

「ノア、サミエル王子がお前に執着しているのを黙っていてすまなかった。お前の性格では気に病むだろうと思ってな」
「父様⋯いいえ、僕の為にありがとうございます」 

「うむ、さて、良い知らせと言うのは⋯」

父様は意味ありげに僕とアルバートを見て笑った。

「お前達には今すぐ婚姻を結んでもらう」

「「ええぇっっ!!」」

「時間がないぞ。クレイン侯爵には許しを得ている。跡継ぎなら次男の子がいるから心配するなと言付かった。それにお前達も好き合っているのであろう?」

「「えっ!?」」

「驚く事はあるまい。お前達、自分の手を見てみてみなさい」

「「あっ⋯」」

「気づいてなかったのか?ここに来た時からずっと、手を握り合っておったぞ」

「失礼しました⋯」
「ごめんなさい⋯」


僕達は父様が既に用意していた婚姻届けにサインをして、あっという間に夫夫になってしまった。


「よし、これで、ノアをあの男に渡さずに済む。はぁ、お前達が好き合っていなければ別居でもよかったんだが⋯」

父様がちょっと拗ねた顔をすると、アルバートがピクっと反応して、僕の腰を引き寄せた。

「陛下、一つよろしいですか」
「何だ?」
「私とノア様は夫夫になったんですよね?」
「ああ、間違いない」
「では、ノア様を侯爵家に連れて帰ります」
「なっ!?アルバート!それはまだ気が早いぞ!そのような、あれは⋯結婚式の後だ!」
「ですが陛下、それでは不測の事態が起こった時、私がノア様を護れません」
「ぐっ⋯」
「よろしいですね?」
「くっ⋯」
「陛下」
「分かった!お前の好きなようにしてよい!」
「ありがとうございます」
「その代わり、ノアを必ず護れ。それと絶対幸せにするのだぞ」
「お任せ下さい」

(上手くいった)

アルバート⋯。


何だか寂しそうにする父様の執務室を後にして、僕はアルバートと一緒に自室に来た。
どうやら僕は今日からクレイン侯爵家で暮らす事が決まったみたいで、取り急ぎ必要な物を準備する事にした。

「アルバートと夫夫だなんて、まだ実感が湧かないです。それに今日は色んな話を聞いて、頭の整理がまだ追いつきません。サミエル王子の事も気になるし⋯」
「ノア様、私の前で他の男の名前を出すなんて、私を煽ってますか?」

僕が否定をする前に、アルバートから激しく唇を奪われていた。

「ふっ⋯んっ、あっ、んん⋯」

「ノア様、本当に私の伴侶になってくれたんですよね。陛下に言われたからとかでしたら」
「違う!はぁはぁ、僕がアルバートを好きだから、アルバートと結婚したかったから、ちゃんと好き、ぐすっ、アルバート、愛してる。だからそんな泣きそうな顔をしないで」

僕に言われて初めて、アルバートは自分がどんな顔をしているのか気付いたようだった。

「あっ、私⋯申し訳ありません。今日ノア様とやっと気持ちが通じたばかりで、不安になってしまって。こんな歳にもなって、少しばかり初恋を拗らせすぎましたね」

アルバートがそう言って切なそうに笑うから、僕はアルバートの頬を両手で包み込んで、チュッと触れるだけの口付けをした。

(ノア様から口付けを!?はぁ⋯柔らかい)

ふふっ

「アルバート、今日から僕達は夫夫でしょ?」
「はい」
「じゃあ、今から、二人共敬語はなし!僕の事もノアって呼んで。いい?」
「はい⋯ノア」
「なぁに?アルバート」

(ああ、ここは天国か)


僕達は微笑みながら、自然と引き寄せ合い、啄むような口付けをした。



「ノア、荷物は私が持つから」
「ありがとう。じゃあ、こっちが重いから頼んでいい?」
「いや、全部持つよ。おっ、こっちの重いのは何が入ってるんだ?」
「水晶だよ。あっ⋯」
「ノア⋯まさかまだ占いをしようなんて」
「違う。流石にもう、アルバートが心配するような事はしないよ。でもたまにはね。その時はアルバートがついてきてね」
「ああ、それならいいが⋯しかし、何で占いなんだ?」


これはもう、誤魔化せないかもしれない。

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