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僕達は湯浴みを済ませると、部屋に戻ってソファに座った。
僕が何か話をしようとしているのをアルは気付いているのか、今は僕の向かい側に座っている。
「アル、僕の話を聞いてもらえる?」
「ああ、何を聞いても驚かないから、ノアも気を遣わずに話してくれ」
「うん、ありがとう、アル」
僕はずっと一人で抱えてきた秘密を、アルに打ち明ける覚悟を決めた。
「アル、声に出さずに心の中で、何でもいいから僕に話しかけてみて」
「⋯?ただ頭で思うだけでいいのか?」
「そうだよ」
「分かった。いくぞ」
(ノア、愛してる)
「アル、僕も愛してる」
アルの驚愕で見開いた目が、僕を見てゆらゆらと揺れている。そして、ゴクッと唾を飲んで、また話しかけできた。
(ノア、体のどこか辛いところはないか?)
「アルが気を遣ってくれたから平気だよ。アル、とっても優しかった」
僕が照れながらアルの心の声に答えると、アルは更に大きく目を見開いた。
「ノア⋯どういう事だ?」
「アル、驚かないでね。僕ね、人の心の声が聞こえるんだ。子供の頃から、ううん、多分生まれた時からずっと」
「本当か⋯?」
「うん。アル、黙っててごめんなさい⋯」
僕はアルの目を見れずに、下を向いてしまった。
「じゃあ、今までも私が思っていることが聞こえていたということか?」
「ずっとじゃないけど⋯」
僕はそこまで言って、首をこくんと縦に振った。
重い沈黙に押し潰されそうになる。
先に口を開いたのはアルだった。
「ノアは自分の瞳の色を知ってるか?」
突然アルは何を言い出すんだろう?
僕はアルの質問の意図が分からず、すぐに答えられなかった。
そんな僕を見て、アルはいつものように僕に微笑みかけた。
「ノアの瞳は右は王家の伝統的な青色だが、左は少し紫がかっているのを知ってるか?王妃の瞳の色を引いているんだろうね。陽の光が入ると、それがはっきり分かるんだ」
「うん、気付いてた⋯けど⋯」
「昔、私がまだ幼い頃、お気に入りの絵本があったんだ。異国の話だったんだけどね、左右の瞳の色が違う男の子の話で、その国ではオッドアイと呼ばれていて、その瞳を持つ者は不思議な力を持つという伝説があるそうなんだ。きっとノアもオッドアイの不思議な力を持って生まれたのかもしれないね」
アルは言い終わると、向かい側に座る僕の隣に来て、優しく抱き締めてくれた。
「ノア、ずっと一人で悩んできたんだね。苦しかったろ?」
そうか、僕は苦しかったんだ。
誰にも言えずに、一人で抱え込んで、人と会う時もいつも下を向いて、誰も僕を見ないでと祈っていた。
僕は気付かなかいうちに涙が溢れていた。
「うっ⋯うっ⋯、アルは僕のこと、気持ち悪くない?嫌いにならない?」
「私がノアを嫌いになる訳ないだろ」
「ううっ⋯、うっ、うっ、アルぅ⋯」
アルは僕を膝の上に横抱きにして、泣き止むまでずっと頭を撫でてくれた。
「ノア、落ち着いたか?」
「うん、こんなに泣いてしまってごめんなさい」
「そんなこと気にすることはない。⋯ノア、一つ聞いていいか?」
「うん、何?」
「もしかして、さっきの、その、ベッドの上でなんだか、私の思ってることが聞こえたか?」
僕はついさっきまで愛し合っていたことを思い出して、顔が真っ赤になってしまった。
「ああ、その反応、やはり聞かれてたか⋯」
「アル、ごめんなさい」
「いや、謝るのは私の方だ。引いただろ?」
「引くわけない!アルから愛されて嬉しかった。でも⋯ちょっと言葉責めみたいで恥ずかしかったけど」
僕は自分で言って頭から湯気が出る程真っ赤になるのが分かった。
アルは目を見開いて口をパクパクと動かし、そのまま固まってしまった。
僕はアルの膝に乗せられたまま、街の皆の悩みを解決してあげたくて占いを始めたことや、力の調節ができることを話した。アルは頷きながら黙って聞いてくれた。
「それじゃあ、集中すれば聞こえなくもできるんだな」
「うん、でもずっとは疲れてしまって」
「⋯逆ならいいのにな」
「逆?」
「ああ、必要な時だけ聞ければって思ったんだが」
「必要な時だけ⋯」
「どうした?私が言ったことなら気にするな。それに、私の心の声などいつ聞いても構わないぞ。どうせいつもノアのことしか考えてないからな」
アルはそう言って照れながら笑った。
アルに全てを打ち明けて、僕は驚くほど気持ちが楽になった。
状況は何も変わらないのに、何だか悩みが解決したような気分だった。
侯爵家での生活もだいぶ慣れてきた頃、僕はふと気付いた。
周りの声はいつも聞こえてるのに、それが全然気にならなくなっていた。
今までは一人一人の声が全部頭に入ってきて辛かったけど、今は上手く聞き流せてる感じがする。
これも全部アルのお陰だな。
仕事から帰ってきたらお礼を言わないと。
アルなら、お礼なんていらないって言うかな。
アルの言ってた聞きたい時だけ聞く練習もしてみようかな。
そんな事を考えていたら、部屋の扉を叩く音が響いた。
何だろうと思って扉を開けると、そこには珍しく慌てた執事長が立っていた。
「ノア様、お伝えしたいことがあります」
「執事長、何かありましたか?」
「たった今、ノア様と会わせてくれとサミエル王子が見えられました」
「えっ⋯?」
僕が何か話をしようとしているのをアルは気付いているのか、今は僕の向かい側に座っている。
「アル、僕の話を聞いてもらえる?」
「ああ、何を聞いても驚かないから、ノアも気を遣わずに話してくれ」
「うん、ありがとう、アル」
僕はずっと一人で抱えてきた秘密を、アルに打ち明ける覚悟を決めた。
「アル、声に出さずに心の中で、何でもいいから僕に話しかけてみて」
「⋯?ただ頭で思うだけでいいのか?」
「そうだよ」
「分かった。いくぞ」
(ノア、愛してる)
「アル、僕も愛してる」
アルの驚愕で見開いた目が、僕を見てゆらゆらと揺れている。そして、ゴクッと唾を飲んで、また話しかけできた。
(ノア、体のどこか辛いところはないか?)
「アルが気を遣ってくれたから平気だよ。アル、とっても優しかった」
僕が照れながらアルの心の声に答えると、アルは更に大きく目を見開いた。
「ノア⋯どういう事だ?」
「アル、驚かないでね。僕ね、人の心の声が聞こえるんだ。子供の頃から、ううん、多分生まれた時からずっと」
「本当か⋯?」
「うん。アル、黙っててごめんなさい⋯」
僕はアルの目を見れずに、下を向いてしまった。
「じゃあ、今までも私が思っていることが聞こえていたということか?」
「ずっとじゃないけど⋯」
僕はそこまで言って、首をこくんと縦に振った。
重い沈黙に押し潰されそうになる。
先に口を開いたのはアルだった。
「ノアは自分の瞳の色を知ってるか?」
突然アルは何を言い出すんだろう?
僕はアルの質問の意図が分からず、すぐに答えられなかった。
そんな僕を見て、アルはいつものように僕に微笑みかけた。
「ノアの瞳は右は王家の伝統的な青色だが、左は少し紫がかっているのを知ってるか?王妃の瞳の色を引いているんだろうね。陽の光が入ると、それがはっきり分かるんだ」
「うん、気付いてた⋯けど⋯」
「昔、私がまだ幼い頃、お気に入りの絵本があったんだ。異国の話だったんだけどね、左右の瞳の色が違う男の子の話で、その国ではオッドアイと呼ばれていて、その瞳を持つ者は不思議な力を持つという伝説があるそうなんだ。きっとノアもオッドアイの不思議な力を持って生まれたのかもしれないね」
アルは言い終わると、向かい側に座る僕の隣に来て、優しく抱き締めてくれた。
「ノア、ずっと一人で悩んできたんだね。苦しかったろ?」
そうか、僕は苦しかったんだ。
誰にも言えずに、一人で抱え込んで、人と会う時もいつも下を向いて、誰も僕を見ないでと祈っていた。
僕は気付かなかいうちに涙が溢れていた。
「うっ⋯うっ⋯、アルは僕のこと、気持ち悪くない?嫌いにならない?」
「私がノアを嫌いになる訳ないだろ」
「ううっ⋯、うっ、うっ、アルぅ⋯」
アルは僕を膝の上に横抱きにして、泣き止むまでずっと頭を撫でてくれた。
「ノア、落ち着いたか?」
「うん、こんなに泣いてしまってごめんなさい」
「そんなこと気にすることはない。⋯ノア、一つ聞いていいか?」
「うん、何?」
「もしかして、さっきの、その、ベッドの上でなんだか、私の思ってることが聞こえたか?」
僕はついさっきまで愛し合っていたことを思い出して、顔が真っ赤になってしまった。
「ああ、その反応、やはり聞かれてたか⋯」
「アル、ごめんなさい」
「いや、謝るのは私の方だ。引いただろ?」
「引くわけない!アルから愛されて嬉しかった。でも⋯ちょっと言葉責めみたいで恥ずかしかったけど」
僕は自分で言って頭から湯気が出る程真っ赤になるのが分かった。
アルは目を見開いて口をパクパクと動かし、そのまま固まってしまった。
僕はアルの膝に乗せられたまま、街の皆の悩みを解決してあげたくて占いを始めたことや、力の調節ができることを話した。アルは頷きながら黙って聞いてくれた。
「それじゃあ、集中すれば聞こえなくもできるんだな」
「うん、でもずっとは疲れてしまって」
「⋯逆ならいいのにな」
「逆?」
「ああ、必要な時だけ聞ければって思ったんだが」
「必要な時だけ⋯」
「どうした?私が言ったことなら気にするな。それに、私の心の声などいつ聞いても構わないぞ。どうせいつもノアのことしか考えてないからな」
アルはそう言って照れながら笑った。
アルに全てを打ち明けて、僕は驚くほど気持ちが楽になった。
状況は何も変わらないのに、何だか悩みが解決したような気分だった。
侯爵家での生活もだいぶ慣れてきた頃、僕はふと気付いた。
周りの声はいつも聞こえてるのに、それが全然気にならなくなっていた。
今までは一人一人の声が全部頭に入ってきて辛かったけど、今は上手く聞き流せてる感じがする。
これも全部アルのお陰だな。
仕事から帰ってきたらお礼を言わないと。
アルなら、お礼なんていらないって言うかな。
アルの言ってた聞きたい時だけ聞く練習もしてみようかな。
そんな事を考えていたら、部屋の扉を叩く音が響いた。
何だろうと思って扉を開けると、そこには珍しく慌てた執事長が立っていた。
「ノア様、お伝えしたいことがあります」
「執事長、何かありましたか?」
「たった今、ノア様と会わせてくれとサミエル王子が見えられました」
「えっ⋯?」
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