騎士団長の初恋を実らせるつもりが、うっかり恋に落ちました~心の声が聞こえる第五王子は街で人気の占い師~

まんまる

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「えっ?サミエル王子が?どうして⋯」

「ノア様、ご安心ください。とりあえず、サミエル王子にはお帰りいただきました」
「帰られた?でも、王子は僕をずっと探してるって聞いてます」
「ノア様、我々クレイン侯爵家に仕える者は、アルバート様よりノア様とサミエル王子の事の経緯を伺っております。万が一サミエル王子が訪ねて来られたら、ノア様は王城にいらっしゃると言うように言付かっておりました」
「王城に?」
「はい、後は陛下と殿下方が対処されるはずです」
「⋯でも、王子はそれで納得するでしょうか?」

サミエル王子は僕を3年も執拗に探していると聞いている。
僕がこの国にいると分かった以上、会うまでは自国には帰らないかもしれない。
執事長もそれを分かっているようで、神妙な面持ちで僕に伝えた。

「アルバート様にも急ぎ知らせを走らせておりますので、すぐにお戻りになると思います」
「そう⋯、あ、ありがとう」

僕は小刻みに震える体を必死に誤魔化すように、執事長に笑みを向けた。

「ノア様、そのように私達使用人に気を遣う必要はございません。アルバート様がお戻りになるまでメイドをお呼びします」
「執事長、ありが、とう」

僕は執事長の心遣いに、こらえていた涙が零れそうになった。
執事長は僕に一礼をして、急ぎ足で廊下を歩いて行った。


「ノア様、お茶をお淹れしますね」

執事長と入れ替わるように、侯爵家の使用人の中で一番年長のメイド長が部屋に来てくれた。

「ありがとう」
「ノア様、何度も申し上げますが、使用人にお礼は必要ございませんよ」
「うん、でも、僕が言いたいんだ」
「ノア様はお優しいですね」
「ふふっ」


メイド長と談笑しながらお茶を飲んでいると、聞き慣れた足音が聞こえてきて、部屋の扉が開かれた。

扉を開けたのは、騎士服のまま、息を乱して慌てた様子で帰ってきてくれたアルだった。

「ノア!大丈夫か!」

メイド長は、アルにおかえりなさいませと言って新しくお茶を淹れると、ワゴンを押して部屋から出て行った。

アルは扉が閉まりきる前に、ソファに座る僕に駆け寄り、息を乱しながらそっと抱き締めてくれた。

「ノア、サミエル王子が来たと聞いたが、何もなかったか?」
「うん、来たけど、執事長が帰ってもらったって。でも⋯嘘だって分かったら、またここに来るかもしれない」

アルの顔を見て安心していたのに、サミエル王子の名前を聞いた途端、また体が震え出した。
僕は震えて力の入らない腕をアルの背中に回して弱々しく抱き締め、温かなアルの胸に顔をうずめた。アルも僕の震える体を受け止めるように強く抱き締めてくれた。

「心配しなくていい。ノアは私が絶対護るから」

アルの言葉を聞いただけで震えが治まってきた僕は、アルの胸に額を当てて、こくんと小さく頷いた。

「ノア、サミエル王子がどう動くか分からないから、落ち着くまでは侯爵家から出ないで欲しい。警備を考えると王城にいた方が安全かもしれないが、私がノアと離れるのは耐えられない」
「うん、アル、分かった」
「はぁ、ノア、無事で良かった」
「アル⋯」
「ノア⋯」

自然と引き合うように唇が重なり、そのままアルに横抱きにされ、アルの膝の上に乗せられた。

何度か食むような口付けをして、またアルの腕の中に包まれた。

「サミエル王子とは、はっきり決着をつけないといけない。そうしないと、あの王子はいつまでもノアに付きまとうだろう」
「でも、アル、どうするの?」
「⋯相手が隣国の王子となると、窃盗団を捕まえるように簡単にはいかないからな。本当に厄介だ」
「アル、ごめんなさい⋯」
「ノア、謝らなくていい。ノアは何も悪くないよ」

アルが僕の頬を大きな手で包み込み、熱を帯びた青い瞳で僕を見つめてきたから、僕は恥ずかしくて少し頬を染めながら、そっと瞳を閉じた。
ふわりとアルの息が僕の唇にかかった時、屋敷の中が突然ザワザワとするのが分かった。

アルと目を見合わせると、アルは少し確かめて来ると言って、僕をソファにそっと降ろした。

バンッ!!!

その瞬間、部屋の扉がけたたましい音を立てて開かれた。

「困ります!おやめ下さい!!」

取り乱した執事長と一緒に目に飛び込んできたのは、恍惚とした表情で僕を見つめるサミエル王子だった。

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