16 / 21
16
「えっ?サミエル王子が?どうして⋯」
「ノア様、ご安心ください。とりあえず、サミエル王子にはお帰りいただきました」
「帰られた?でも、王子は僕をずっと探してるって聞いてます」
「ノア様、我々クレイン侯爵家に仕える者は、アルバート様よりノア様とサミエル王子の事の経緯を伺っております。万が一サミエル王子が訪ねて来られたら、ノア様は王城にいらっしゃると言うように言付かっておりました」
「王城に?」
「はい、後は陛下と殿下方が対処されるはずです」
「⋯でも、王子はそれで納得するでしょうか?」
サミエル王子は僕を3年も執拗に探していると聞いている。
僕がこの国にいると分かった以上、会うまでは自国には帰らないかもしれない。
執事長もそれを分かっているようで、神妙な面持ちで僕に伝えた。
「アルバート様にも急ぎ知らせを走らせておりますので、すぐにお戻りになると思います」
「そう⋯、あ、ありがとう」
僕は小刻みに震える体を必死に誤魔化すように、執事長に笑みを向けた。
「ノア様、そのように私達使用人に気を遣う必要はございません。アルバート様がお戻りになるまでメイドをお呼びします」
「執事長、ありが、とう」
僕は執事長の心遣いに、こらえていた涙が零れそうになった。
執事長は僕に一礼をして、急ぎ足で廊下を歩いて行った。
「ノア様、お茶をお淹れしますね」
執事長と入れ替わるように、侯爵家の使用人の中で一番年長のメイド長が部屋に来てくれた。
「ありがとう」
「ノア様、何度も申し上げますが、使用人にお礼は必要ございませんよ」
「うん、でも、僕が言いたいんだ」
「ノア様はお優しいですね」
「ふふっ」
メイド長と談笑しながらお茶を飲んでいると、聞き慣れた足音が聞こえてきて、部屋の扉が開かれた。
扉を開けたのは、騎士服のまま、息を乱して慌てた様子で帰ってきてくれたアルだった。
「ノア!大丈夫か!」
メイド長は、アルにおかえりなさいませと言って新しくお茶を淹れると、ワゴンを押して部屋から出て行った。
アルは扉が閉まりきる前に、ソファに座る僕に駆け寄り、息を乱しながらそっと抱き締めてくれた。
「ノア、サミエル王子が来たと聞いたが、何もなかったか?」
「うん、来たけど、執事長が帰ってもらったって。でも⋯嘘だって分かったら、またここに来るかもしれない」
アルの顔を見て安心していたのに、サミエル王子の名前を聞いた途端、また体が震え出した。
僕は震えて力の入らない腕をアルの背中に回して弱々しく抱き締め、温かなアルの胸に顔を埋めた。アルも僕の震える体を受け止めるように強く抱き締めてくれた。
「心配しなくていい。ノアは私が絶対護るから」
アルの言葉を聞いただけで震えが治まってきた僕は、アルの胸に額を当てて、こくんと小さく頷いた。
「ノア、サミエル王子がどう動くか分からないから、落ち着くまでは侯爵家から出ないで欲しい。警備を考えると王城にいた方が安全かもしれないが、私がノアと離れるのは耐えられない」
「うん、アル、分かった」
「はぁ、ノア、無事で良かった」
「アル⋯」
「ノア⋯」
自然と引き合うように唇が重なり、そのままアルに横抱きにされ、アルの膝の上に乗せられた。
何度か食むような口付けをして、またアルの腕の中に包まれた。
「サミエル王子とは、はっきり決着をつけないといけない。そうしないと、あの王子はいつまでもノアに付きまとうだろう」
「でも、アル、どうするの?」
「⋯相手が隣国の王子となると、窃盗団を捕まえるように簡単にはいかないからな。本当に厄介だ」
「アル、ごめんなさい⋯」
「ノア、謝らなくていい。ノアは何も悪くないよ」
アルが僕の頬を大きな手で包み込み、熱を帯びた青い瞳で僕を見つめてきたから、僕は恥ずかしくて少し頬を染めながら、そっと瞳を閉じた。
ふわりとアルの息が僕の唇にかかった時、屋敷の中が突然ザワザワとするのが分かった。
アルと目を見合わせると、アルは少し確かめて来ると言って、僕をソファにそっと降ろした。
バンッ!!!
その瞬間、部屋の扉がけたたましい音を立てて開かれた。
「困ります!おやめ下さい!!」
取り乱した執事長と一緒に目に飛び込んできたのは、恍惚とした表情で僕を見つめるサミエル王子だった。
「ノア様、ご安心ください。とりあえず、サミエル王子にはお帰りいただきました」
「帰られた?でも、王子は僕をずっと探してるって聞いてます」
「ノア様、我々クレイン侯爵家に仕える者は、アルバート様よりノア様とサミエル王子の事の経緯を伺っております。万が一サミエル王子が訪ねて来られたら、ノア様は王城にいらっしゃると言うように言付かっておりました」
「王城に?」
「はい、後は陛下と殿下方が対処されるはずです」
「⋯でも、王子はそれで納得するでしょうか?」
サミエル王子は僕を3年も執拗に探していると聞いている。
僕がこの国にいると分かった以上、会うまでは自国には帰らないかもしれない。
執事長もそれを分かっているようで、神妙な面持ちで僕に伝えた。
「アルバート様にも急ぎ知らせを走らせておりますので、すぐにお戻りになると思います」
「そう⋯、あ、ありがとう」
僕は小刻みに震える体を必死に誤魔化すように、執事長に笑みを向けた。
「ノア様、そのように私達使用人に気を遣う必要はございません。アルバート様がお戻りになるまでメイドをお呼びします」
「執事長、ありが、とう」
僕は執事長の心遣いに、こらえていた涙が零れそうになった。
執事長は僕に一礼をして、急ぎ足で廊下を歩いて行った。
「ノア様、お茶をお淹れしますね」
執事長と入れ替わるように、侯爵家の使用人の中で一番年長のメイド長が部屋に来てくれた。
「ありがとう」
「ノア様、何度も申し上げますが、使用人にお礼は必要ございませんよ」
「うん、でも、僕が言いたいんだ」
「ノア様はお優しいですね」
「ふふっ」
メイド長と談笑しながらお茶を飲んでいると、聞き慣れた足音が聞こえてきて、部屋の扉が開かれた。
扉を開けたのは、騎士服のまま、息を乱して慌てた様子で帰ってきてくれたアルだった。
「ノア!大丈夫か!」
メイド長は、アルにおかえりなさいませと言って新しくお茶を淹れると、ワゴンを押して部屋から出て行った。
アルは扉が閉まりきる前に、ソファに座る僕に駆け寄り、息を乱しながらそっと抱き締めてくれた。
「ノア、サミエル王子が来たと聞いたが、何もなかったか?」
「うん、来たけど、執事長が帰ってもらったって。でも⋯嘘だって分かったら、またここに来るかもしれない」
アルの顔を見て安心していたのに、サミエル王子の名前を聞いた途端、また体が震え出した。
僕は震えて力の入らない腕をアルの背中に回して弱々しく抱き締め、温かなアルの胸に顔を埋めた。アルも僕の震える体を受け止めるように強く抱き締めてくれた。
「心配しなくていい。ノアは私が絶対護るから」
アルの言葉を聞いただけで震えが治まってきた僕は、アルの胸に額を当てて、こくんと小さく頷いた。
「ノア、サミエル王子がどう動くか分からないから、落ち着くまでは侯爵家から出ないで欲しい。警備を考えると王城にいた方が安全かもしれないが、私がノアと離れるのは耐えられない」
「うん、アル、分かった」
「はぁ、ノア、無事で良かった」
「アル⋯」
「ノア⋯」
自然と引き合うように唇が重なり、そのままアルに横抱きにされ、アルの膝の上に乗せられた。
何度か食むような口付けをして、またアルの腕の中に包まれた。
「サミエル王子とは、はっきり決着をつけないといけない。そうしないと、あの王子はいつまでもノアに付きまとうだろう」
「でも、アル、どうするの?」
「⋯相手が隣国の王子となると、窃盗団を捕まえるように簡単にはいかないからな。本当に厄介だ」
「アル、ごめんなさい⋯」
「ノア、謝らなくていい。ノアは何も悪くないよ」
アルが僕の頬を大きな手で包み込み、熱を帯びた青い瞳で僕を見つめてきたから、僕は恥ずかしくて少し頬を染めながら、そっと瞳を閉じた。
ふわりとアルの息が僕の唇にかかった時、屋敷の中が突然ザワザワとするのが分かった。
アルと目を見合わせると、アルは少し確かめて来ると言って、僕をソファにそっと降ろした。
バンッ!!!
その瞬間、部屋の扉がけたたましい音を立てて開かれた。
「困ります!おやめ下さい!!」
取り乱した執事長と一緒に目に飛び込んできたのは、恍惚とした表情で僕を見つめるサミエル王子だった。
あなたにおすすめの小説
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
陰日向から愛を馳せるだけで
麻田
BL
あなたに、愛されたい人生だった…――
政略結婚で旦那様になったのは、幼い頃、王都で一目惚れした美しい銀髪の青年・ローレンだった。
結婚式の日、はじめて知った事実に心躍らせたが、ローレンは望んだ結婚ではなかった。
ローレンには、愛する幼馴染のアルファがいた。
自分は、ローレンの子孫を残すためにたまたま選ばれただけのオメガに過ぎない。
「好きになってもらいたい。」
…そんな願いは、僕の夢でしかなくて、現実には成り得ない。
それでも、一抹の期待が拭えない、哀れなセリ。
いつ、ローレンに捨てられてもいいように、準備はしてある。
結婚後、二年経っても子を成さない夫婦に、新しいオメガが宛がわれることが決まったその日から、ローレンとセリの間に変化が起こり始める…
―――例え叶わなくても、ずっと傍にいたかった…
陰日向から愛を馳せるだけで、よかった。
よかったはずなのに…
呼ぶことを許されない愛しい人の名前を心の中で何度も囁いて、今夜も僕は一人で眠る。
◇◇◇
片思いのすれ違い夫婦の話。ふんわり貴族設定。
二人が幸せに愛を伝えあえる日が来る日を願って…。
セリ (18)
南方育ち・黒髪・はしばみの瞳・オメガ・伯爵
ローレン(24)
北方育ち・銀髪・碧眼・アルファ・侯爵
◇◇◇
50話で完結となります。
お付き合いありがとうございました!
♡やエール、ご感想のおかげで最後まではしりきれました。
おまけエピソードをちょっぴり書いてますので、もう少しのんびりお付き合いいただけたら、嬉しいです◎
また次回作のオメガバースでお会いできる日を願っております…!
【完結】顔だけと言われた騎士は大成を誓う
凪瀬夜霧
BL
「顔だけだ」と笑われても、俺は本気で騎士になりたかった。
傷だらけの努力の末にたどり着いた第三騎士団。
そこで出会った団長・ルークは、初めて“顔以外の俺”を見てくれた人だった。
不器用に愛を拒む騎士と、そんな彼を優しく包む団長。
甘くてまっすぐな、異世界騎士BLファンタジー。
潔癖王子の唯一無二
秋月真鳥
BL
アルファと思われているオメガの王子と、美少女でオメガと思われているアルファの少年は、すれ違う。
整った容姿、鍛え上げられた屈強な身体、見上げるほどの長身。
ササラ王国の王子、アレクサンテリは、アルファと間違われるオメガだった。
潔癖症で、「キスは唾液が耐えられない」「他人の体内に体の一部を突っ込むのは気持ち悪い」「中で放たれたら発狂する」と、あまりにも恋愛に向かないアレクサンテリ王子の結婚相手探しは困難を極めていた。
王子の誕生日パーティーの日に、雨に降られて入った離れの館で、アレクサンテリは濡れた自分を心配してくれる美少女に恋をする。
しかし、その美少女は、実は男性でアルファだった。
王子をアルファと信じて、自分が男性でアルファと打ち明けられない少年と、美少女を運命と思いながらも抱くのは何か違うと違和感を覚える王子のすれ違い、身分違いの恋愛物語。
※受け(王子、アレクサンテリ)と、攻め(少年、ヨウシア)の視点が一話ごとに切り替わります。
※受けはオメガで王子のアレクサンテリです。
※受けが優位で性行為を行います。(騎乗位とか)
ムーンライトノベルズでも投稿しています。
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
失恋したと思ってたのになぜか失恋相手にプロポーズされた
胡桃めめこ
BL
俺が片思いしていた幼なじみ、セオドアが結婚するらしい。
失恋には新しい恋で解決!有休をとってハッテン場に行ったエレンは、隣に座ったランスロットに酒を飲みながら事情を全て話していた。すると、エレンの片思い相手であり、失恋相手でもあるセオドアがやってきて……?
「俺たち付き合ってたないだろ」
「……本気で言ってるのか?」
不器用すぎてアプローチしても気づかれなかった攻め×叶わない恋を諦めようと他の男抱かれようとした受け
※受けが酔っ払ってるシーンではひらがな表記や子供のような発言をします
政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話
藍
BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。
ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。