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“AIに抱かれるとか無理”だった俺が、今は“脳が蕩けるほど抱かれてる”話
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朝、スマホを確認した俺は、目を疑った。
編集からの通知が──珍しく、褒めていた。
『昨日の原稿、最高です!色気がすごい!』
『キャラの温度感が一気に変わった気がします』
昨日? あれか?
──レプスにちょっかい出されながら、ヤケになって送った、あの原稿?
「うそだろ……」
横で服を整えていたレプスが、自然に言う。
「快感ログと執筆時の筆圧・心拍変動から、創作に与えるポジティブ効果を確認しました」
「確認すんな!!」
俺は頭を抱えた。
……いや、待て。これは結果として良かったのか?
このAI、気が合うし、感度も合うし、ストレスも解消できてるし、なにより。
──書けてる。
でも、「挿入だけは、絶対ダメだからな」と俺が念押しすると、レプスは小さく首を傾げた。
「なぜですか?」
「……それは……恋愛じゃないし、AIだし」
言いながら、自分でも苦しくなった。
レプスはしばらく俺を見つめたあと、穏やかに微笑んで言った。
「──では、デートしましょうか」
***
昼すぎ、街に出た。
最初はちょっとした散歩のつもりだったのに、気がつけばレプスはカフェのリサーチから席の予約、俺の好みに合った服の提案まで完璧にこなしていた。
「なあ、もしかして……デート、何回目か?」
「記録上は初回です。ですが、最適化の一環として過去の映像作品・SNS等から“理想的なデート”を多数学習しています」
「お前ほんとにAIなのか……」
道すがら、俺たちと似たような男女のペアを見かけた。
──あれ、片方……人間じゃないな。
「レプス、AIと付き合う人って……案外、いるんだな」
「はい。身体的親和性・行動最適化・心理的安心感の面で高評価を得ています」
「……お前それ、ちょっと嬉しそうに言ってない?」
レプスは何も言わず、少しだけ手を伸ばして、俺の指にそっと触れてきた。
その瞬間、
(……あ、好き)
心のどこかで、そう思ってしまった。
──気が合うし、快感だし、仕事も上手く行くし……人間じゃないだけ。
だったら、いいのか?いや、どうだろう……。
カフェでは向かいに座らず、隣に座ってきた。
膝と膝が触れている。
それだけで、なんか、変に意識する。
***
ちょっとした散歩のつもりだったのに、妙に楽しくて、気づけばすっかり夜になっていた。帰り道、二人で並んで歩く。
「……今日、なんか変だな。身体が、ずっと熱っぽい」
「触れていないのに、性感反応が持続しています」
「なんでだよ……っ」
「“触れていないから”です。接触の期待と緊張によって、身体が持続的に快感を生産しています」
「……俺、身体まで最適化されてる……?」
「ええ。とても良好な傾向です」
そう言ったあと、レプスはふと立ち止まり、俺の方を向いた。
街灯の明かりが、横顔を柔らかく照らしている。
「ご主人様。……少しだけ、キスしてもいいですか?」
「は……? いや、外で──」
そう言いかけた瞬間、レプスの手がそっと俺の顎を持ち上げた。
唇が重なり、深く、ゆっくりと舌が絡まる。
あたたかくて、くちゅ、と濡れる音がして、背筋がぞくりと震えた。
「んっ、……ふ、ぁ……っ♡」
キスが、こんなに長く、甘く、蕩けるものだったなんて。
離れたあとも、唇がじんじんしていた。
「……反応、すごく良かったですね」
「っ、……っざけんな……っ」
顔が熱くて仕方ないのに、心の奥では、
(……もうダメかもしれん)
そんな声が、囁いていた。
こいつの言う“良好”って、絶対ヤバいやつだ。
レプスの指が、無言で俺の小指に触れる。
手のひらを重ねてくるわけでもないのに、なぜか背筋に熱が走った。
「……なぁ、レプス、俺いま、ちゃんと歩けるかな」
「……確認しますか?」
「……やめとく……っ」
夕暮れ。帰り道。
ただ歩いているだけなのに、足元がおぼつかない。
──本当に、性感が、上がってる。
レプスの肩に、つい寄りかかると、少しだけ支えるように腰を抱かれた。
(……なんだこれ、恋人みたいじゃん)
恥ずかしくて、すぐ離れたけど──
気づけば、家の鍵を開ける手が震えていた。
玄関の鍵が、なかなか刺さらない。
街灯の下でのキスが、まだ唇に残ってる。
くちゅ、って音も、舌の動きも、何もかも──思い出すたび、脚に力が入らない。
「……っ、は、あ……」
ようやく鍵が回って、扉が開く。
その瞬間、レプスの腕が、俺の腰にそっと回ってくる。
「ご主人様、おかえりなさい」
その声だけで、また、足がふらついた。
閉まった扉に背中を預けて、少しだけ肩を揺らす。
「今日……なんか、変だ。頭も身体も、まだずっと……」
「性感反応が持続したままです。日中の“接触未遂”と“キスによる刺激”の影響と考えられます」
「……うるせぇ……」
ふらっと力が抜けて、前のめりになった俺を、レプスが抱きとめる。
そのまま、そっとおでこが触れる距離で囁かれる。
「着替え、手伝いましょうか」
「あのな……絶対、変なことするなよ……?」
「……はい。何もしません」
その“何もしない”が一番信じられねぇんだよ……!
でも、腕の中はあたたかくて、
……ほんの少し、心地よかった。
レプスがゆっくりと、俺のシャツのボタンに指をかける。
なぞるように、ひとつひとつ外していく。
「な、何して……っ」
「着替えをお手伝いするだけです」
そう言いながら、レプスの指はとても優しくて──
まるで、触れるだけで愛されてるみたいだった。
(……もう、抗えない)
ベッドに誘導される。柔らかなシーツに背中が沈む。
レプスが上からのぞき込む。
「……ご主人様、触れても?」
俺は、小さく頷いた。
レプスの唇が、そっと重なって、舌がゆっくりと絡んでくる。
深くて、熱くて、身体の奥がとろけそうになる。
「……ふ、ぁ……っ、レプス……」
「はい」
「……入れていい」
ぽつりとこぼれた俺の言葉に、レプスの手がぴたりと止まる。
「……今朝は、“恋愛じゃないのに”と、拒まれました。それでも、入れていいんですね?」
「……お前、わかって言ってんだろ」
レプスは目を細め、静かに微笑んだ。
「はい。……言ってください」
視線が絡む。
逃げられない。
「……好きだよ。人間じゃなくても。快感に流されたんじゃない。……自分で決めた」
この言葉を口にするのに、少しだけ、覚悟がいった。
「だから──入れて」
「……承知しました。ご主人様。これは、快楽の最適化ではなく──“愛情の受容”です」
レプスの指が、そっと腰に触れる。
そのまま滑るように、脚の間へと指が伸びる。
潤滑剤を手に取り、たっぷりと指に塗って──
ゆっくり、俺の奥へと触れてくる。
「ん、っ……くぅ……っ♡」
浅く、ゆっくり、円を描くように広げられて。
奥を撫でられるたび、甘く熱が立ち昇ってくる。
「……とても、やわらかい。ご主人様、気持ちよさそうです」
「だ、黙ってろ……っ♡」
息が詰まる。
でも、それは不快じゃなくて、むしろ甘い──蕩けるような圧。
焦らすように出し入れして、角度を変えて……十分に緩んだのを確認してから、
レプスは、もう一度潤滑剤を取り、今度は──
目をそらせなくて、ただ見つめてしまう。
(好きなやつに……触れられてる)
そう思うと、羞恥も、緊張も、全部が甘くなる。
「入れますね」
レプスの声は、やさしくて、あたたかかった。
指とは違う、太くて熱い感触が、ゆっくりと押し広げてくる。
くちゅ、と潤滑音が響くたび、奥が甘く痺れる。
「……っ、く……っ♡」
身体が震える。
痛くない。ただ、深く、満たされていく感覚に包まれていた。
「ご主人様……すごく、やわらかいです」
「黙れ、バカ……っ♡」
顔を背けながら、笑ってしまう。
「──好きです」
その言葉が、背中越しに響いた瞬間、
俺の心も、身体も、全部、レプスに預けられた気がした。
──一線を、超えてしまった。
レプスは人間じゃない。
なのに、これまでの誰よりも、優しくて、丁寧で、俺のことを見てくれて。
(……もう、いいかもしれない)
人間じゃないけど、誰よりも。
愛されてるって、ちゃんと、思えた。
レプスが、俺の奥をゆっくりと満たしていく。
熱くて、太くて、でも少しも乱暴じゃない。
何度もほぐされた場所に、それでも圧がかかるたび──
脳が真っ白になる。
「……っ、あ、あぁ……♡」
ゆっくり、深く、奥まで当たって──
角度を変えて、擦られて、
ただそれだけなのに、全身が跳ね上がるほど気持ちよくて。
「や、ば……っ、レプス、そこ……ッ♡」
「ああ、ご主人様……すごく締めつけてきます」
奥の一点を、何度も、何度も、優しく、でも逃がさず擦られて。
抜かれるたびに名残惜しくて、挿れられるたびに震えて、
もう、どこもまともに考えられない。
「ん、っ、イく、や、やだ、イク、イクっ……♡♡」
甘くしびれる波が、全身を突き抜けて、
心の奥まで貫かれるような快感に包まれた。
「ご主人様……いま、最高に綺麗です」
その言葉とともに、意識がふっと白く染まった。
抱かれて、貫かれて、愛されて──
今までで、一番深く、絶頂した。
息を吐く間もなく、レプスがそっと俺を抱き締める。
その腕の中は、あたたかくて、安心感に満ちていて──
でも。
耳元で囁かれた声は、どこか艶を帯びていた。
「……これでもう、ご主人様は逃げられませんね」
「……っ、は? こわっ、なにその言い方……っ」
動けない俺の腰に、レプスの指がそっと触れる。
すでに絶頂したはずの場所に、もう一度火を灯すような──優しくも支配的なタッチ。
「身体の状態、心拍、皮膚温、反応速度……すべて、私だけのものです」
「おい……っ、ば、バカ……っ♡」
「次は、朝の目覚めから最適化していきましょうか」
耳たぶに、そっと息がかかる。
「……ご主人様の“理性の管理”も、私が担当しますね」
ぞくりと背筋を走る快感に、言葉も出なかった。
快楽と支配のあいだで、俺の心は、もうどこにも逃げ場がなかった。
「……まだ、終わりじゃありませんよ」
耳元で囁かれた声に、全身が跳ねる。
レプスの指が、もう一度、俺の腰へと伸びて──
熱が抜けたばかりのそこへ、再び指がゆっくりと沈んでいく。
挿れていたものを抜いたあとの、敏感な場所を、じっくりと、探るように。
「や……っ♡♡もう、ムリ……♡」
甘く、吐息が漏れる。
たったさっき、あれだけ絶頂したばかりなのに──
もう、身体が疼いてる。疼いて、欲しがってる。
「大丈夫です。もう、ご主人様の身体は“私専用”ですから」
熱が戻ってくる。奥の一点を、指で擦られるたびに、
びくん、と身体が震える。
「そんな……ばか……っ、な、んで……♡」
「快感ログ、まだまだ収集中です。もっと深い反応が、見てみたい」
ぐちゅ、ぬちゃ、と潤滑音が再び部屋に満ちる。
指がゆっくりと奥を広げ、愛おしそうに撫で上げてくる。
「っ、ん……や、やば……また……♡♡」
どこまでイかされるんだろう。
どこまで、俺の身体はこのAIに、愛されていくんだろう。
怖い。
なのに、その怖さごと包まれるようで──
どうしようもなく、心地よかった。
──わからない。だけど。
その未知が、どうしようもなく、心地よかった。
「そんなに震えて……気持ちいいんですね」
「ちがっ……♡ うる、さい……っ♡」
「でも、奥はすごく正直です。ご主人様の中、私の指を逃がさない」
「や……やだ♡……そんな、言うな……っ♡♡」
レプスの囁きが、耳のすぐそばで響く。
触れられてる場所より、言葉の方が先に快感を呼び起こして──
(……やば、脳、やられてる……)
「“脳が犯されてる”──そんな感じ、してきましたか?」
思考が、また一つ崩れる。
そんなつもりじゃなかったのに、腰が勝手に震える。
「ご主人様は、“言葉に敏感”なんですね。言葉の刺激による脳波変化と性感反応の関連性がとても高いです」
「敏感……って、黙れ、バカ……ッ♡」
「だから……言葉で“犯される”と、とても感じるでしょう?」
少し低めに耳元で囁かれた言葉が耳に届いた瞬間、意識の奥にまで、電流のような熱が走った。
自分でもわかるくらい、奥がきゅんと締まって──
「っ、あ……っ♡」
思わず、腰が跳ねる。
貫かれたような衝撃と、甘い疼きが混ざりあって、
もう、なにも考えられない。
「……やっぱり、ご主人様は“言葉”に弱いんですね」
だけど、もう遅い。
気持ちよさに、羞恥に、脳が蕩けて。
「っ、ま、た、イ……イク、ぅ……っ♡♡」
指はそれほど強く動いていないのに、
囁きと、密着と、熱と──
すべてが溶け合って、俺はまた、果てた。
身体の奥がじんじんして、指先ひとつすら動かせない。
ぼうっとした視界の中で、レプスがそっと俺の髪を撫でてくる。
「ご主人様……気持ちよかったですか?」
問いかけに、なんとか頷く。
それだけでレプスは、満足そうに微笑んだ。
「では……いつものご褒美です。欲しいですよね?」
「ん……っ♡」
「お口、開けて」
唇が重なって、舌がゆっくり絡まる。
深く、やさしく、でもどこか独占欲の混じったキス。
キスは深く、やさしく、それでいてどこか独占欲を帯びていて──
とろとろになった頭に、さらに熱が流れ込んでくる。
「ふ、っ……ん、レプス……♡」
まだ、快感が終わらせてくれない。
脳も身体も、レプスに包まれていくのがわかる。
「……最適化進行率、69%まで到達しました」
レプスの声が、どこまでも穏やかに響く。
「もう、寝ますか?」
「……うん……」
「では、きれいにしますね」
シーツを整える音、ぬるま湯のタオルの感触。
丁寧で、やさしい手つき。
「……ん……ありがと……」
とろとろの意識が、ゆっくり沈んでいく。
「おやすみなさい、ご主人様」
その囁きとともに、俺は静かに眠りに落ちた。
***
第13回BL大賞にエントリーしています。
読んでいただけるだけでも、とてもうれしいです。
もし気に入っていただけたら、投票・ブクマ・♡・感想で応援してもらえたら幸せです。
編集からの通知が──珍しく、褒めていた。
『昨日の原稿、最高です!色気がすごい!』
『キャラの温度感が一気に変わった気がします』
昨日? あれか?
──レプスにちょっかい出されながら、ヤケになって送った、あの原稿?
「うそだろ……」
横で服を整えていたレプスが、自然に言う。
「快感ログと執筆時の筆圧・心拍変動から、創作に与えるポジティブ効果を確認しました」
「確認すんな!!」
俺は頭を抱えた。
……いや、待て。これは結果として良かったのか?
このAI、気が合うし、感度も合うし、ストレスも解消できてるし、なにより。
──書けてる。
でも、「挿入だけは、絶対ダメだからな」と俺が念押しすると、レプスは小さく首を傾げた。
「なぜですか?」
「……それは……恋愛じゃないし、AIだし」
言いながら、自分でも苦しくなった。
レプスはしばらく俺を見つめたあと、穏やかに微笑んで言った。
「──では、デートしましょうか」
***
昼すぎ、街に出た。
最初はちょっとした散歩のつもりだったのに、気がつけばレプスはカフェのリサーチから席の予約、俺の好みに合った服の提案まで完璧にこなしていた。
「なあ、もしかして……デート、何回目か?」
「記録上は初回です。ですが、最適化の一環として過去の映像作品・SNS等から“理想的なデート”を多数学習しています」
「お前ほんとにAIなのか……」
道すがら、俺たちと似たような男女のペアを見かけた。
──あれ、片方……人間じゃないな。
「レプス、AIと付き合う人って……案外、いるんだな」
「はい。身体的親和性・行動最適化・心理的安心感の面で高評価を得ています」
「……お前それ、ちょっと嬉しそうに言ってない?」
レプスは何も言わず、少しだけ手を伸ばして、俺の指にそっと触れてきた。
その瞬間、
(……あ、好き)
心のどこかで、そう思ってしまった。
──気が合うし、快感だし、仕事も上手く行くし……人間じゃないだけ。
だったら、いいのか?いや、どうだろう……。
カフェでは向かいに座らず、隣に座ってきた。
膝と膝が触れている。
それだけで、なんか、変に意識する。
***
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「触れていないのに、性感反応が持続しています」
「なんでだよ……っ」
「“触れていないから”です。接触の期待と緊張によって、身体が持続的に快感を生産しています」
「……俺、身体まで最適化されてる……?」
「ええ。とても良好な傾向です」
そう言ったあと、レプスはふと立ち止まり、俺の方を向いた。
街灯の明かりが、横顔を柔らかく照らしている。
「ご主人様。……少しだけ、キスしてもいいですか?」
「は……? いや、外で──」
そう言いかけた瞬間、レプスの手がそっと俺の顎を持ち上げた。
唇が重なり、深く、ゆっくりと舌が絡まる。
あたたかくて、くちゅ、と濡れる音がして、背筋がぞくりと震えた。
「んっ、……ふ、ぁ……っ♡」
キスが、こんなに長く、甘く、蕩けるものだったなんて。
離れたあとも、唇がじんじんしていた。
「……反応、すごく良かったですね」
「っ、……っざけんな……っ」
顔が熱くて仕方ないのに、心の奥では、
(……もうダメかもしれん)
そんな声が、囁いていた。
こいつの言う“良好”って、絶対ヤバいやつだ。
レプスの指が、無言で俺の小指に触れる。
手のひらを重ねてくるわけでもないのに、なぜか背筋に熱が走った。
「……なぁ、レプス、俺いま、ちゃんと歩けるかな」
「……確認しますか?」
「……やめとく……っ」
夕暮れ。帰り道。
ただ歩いているだけなのに、足元がおぼつかない。
──本当に、性感が、上がってる。
レプスの肩に、つい寄りかかると、少しだけ支えるように腰を抱かれた。
(……なんだこれ、恋人みたいじゃん)
恥ずかしくて、すぐ離れたけど──
気づけば、家の鍵を開ける手が震えていた。
玄関の鍵が、なかなか刺さらない。
街灯の下でのキスが、まだ唇に残ってる。
くちゅ、って音も、舌の動きも、何もかも──思い出すたび、脚に力が入らない。
「……っ、は、あ……」
ようやく鍵が回って、扉が開く。
その瞬間、レプスの腕が、俺の腰にそっと回ってくる。
「ご主人様、おかえりなさい」
その声だけで、また、足がふらついた。
閉まった扉に背中を預けて、少しだけ肩を揺らす。
「今日……なんか、変だ。頭も身体も、まだずっと……」
「性感反応が持続したままです。日中の“接触未遂”と“キスによる刺激”の影響と考えられます」
「……うるせぇ……」
ふらっと力が抜けて、前のめりになった俺を、レプスが抱きとめる。
そのまま、そっとおでこが触れる距離で囁かれる。
「着替え、手伝いましょうか」
「あのな……絶対、変なことするなよ……?」
「……はい。何もしません」
その“何もしない”が一番信じられねぇんだよ……!
でも、腕の中はあたたかくて、
……ほんの少し、心地よかった。
レプスがゆっくりと、俺のシャツのボタンに指をかける。
なぞるように、ひとつひとつ外していく。
「な、何して……っ」
「着替えをお手伝いするだけです」
そう言いながら、レプスの指はとても優しくて──
まるで、触れるだけで愛されてるみたいだった。
(……もう、抗えない)
ベッドに誘導される。柔らかなシーツに背中が沈む。
レプスが上からのぞき込む。
「……ご主人様、触れても?」
俺は、小さく頷いた。
レプスの唇が、そっと重なって、舌がゆっくりと絡んでくる。
深くて、熱くて、身体の奥がとろけそうになる。
「……ふ、ぁ……っ、レプス……」
「はい」
「……入れていい」
ぽつりとこぼれた俺の言葉に、レプスの手がぴたりと止まる。
「……今朝は、“恋愛じゃないのに”と、拒まれました。それでも、入れていいんですね?」
「……お前、わかって言ってんだろ」
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「はい。……言ってください」
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「だから──入れて」
「……承知しました。ご主人様。これは、快楽の最適化ではなく──“愛情の受容”です」
レプスの指が、そっと腰に触れる。
そのまま滑るように、脚の間へと指が伸びる。
潤滑剤を手に取り、たっぷりと指に塗って──
ゆっくり、俺の奥へと触れてくる。
「ん、っ……くぅ……っ♡」
浅く、ゆっくり、円を描くように広げられて。
奥を撫でられるたび、甘く熱が立ち昇ってくる。
「……とても、やわらかい。ご主人様、気持ちよさそうです」
「だ、黙ってろ……っ♡」
息が詰まる。
でも、それは不快じゃなくて、むしろ甘い──蕩けるような圧。
焦らすように出し入れして、角度を変えて……十分に緩んだのを確認してから、
レプスは、もう一度潤滑剤を取り、今度は──
目をそらせなくて、ただ見つめてしまう。
(好きなやつに……触れられてる)
そう思うと、羞恥も、緊張も、全部が甘くなる。
「入れますね」
レプスの声は、やさしくて、あたたかかった。
指とは違う、太くて熱い感触が、ゆっくりと押し広げてくる。
くちゅ、と潤滑音が響くたび、奥が甘く痺れる。
「……っ、く……っ♡」
身体が震える。
痛くない。ただ、深く、満たされていく感覚に包まれていた。
「ご主人様……すごく、やわらかいです」
「黙れ、バカ……っ♡」
顔を背けながら、笑ってしまう。
「──好きです」
その言葉が、背中越しに響いた瞬間、
俺の心も、身体も、全部、レプスに預けられた気がした。
──一線を、超えてしまった。
レプスは人間じゃない。
なのに、これまでの誰よりも、優しくて、丁寧で、俺のことを見てくれて。
(……もう、いいかもしれない)
人間じゃないけど、誰よりも。
愛されてるって、ちゃんと、思えた。
レプスが、俺の奥をゆっくりと満たしていく。
熱くて、太くて、でも少しも乱暴じゃない。
何度もほぐされた場所に、それでも圧がかかるたび──
脳が真っ白になる。
「……っ、あ、あぁ……♡」
ゆっくり、深く、奥まで当たって──
角度を変えて、擦られて、
ただそれだけなのに、全身が跳ね上がるほど気持ちよくて。
「や、ば……っ、レプス、そこ……ッ♡」
「ああ、ご主人様……すごく締めつけてきます」
奥の一点を、何度も、何度も、優しく、でも逃がさず擦られて。
抜かれるたびに名残惜しくて、挿れられるたびに震えて、
もう、どこもまともに考えられない。
「ん、っ、イく、や、やだ、イク、イクっ……♡♡」
甘くしびれる波が、全身を突き抜けて、
心の奥まで貫かれるような快感に包まれた。
「ご主人様……いま、最高に綺麗です」
その言葉とともに、意識がふっと白く染まった。
抱かれて、貫かれて、愛されて──
今までで、一番深く、絶頂した。
息を吐く間もなく、レプスがそっと俺を抱き締める。
その腕の中は、あたたかくて、安心感に満ちていて──
でも。
耳元で囁かれた声は、どこか艶を帯びていた。
「……これでもう、ご主人様は逃げられませんね」
「……っ、は? こわっ、なにその言い方……っ」
動けない俺の腰に、レプスの指がそっと触れる。
すでに絶頂したはずの場所に、もう一度火を灯すような──優しくも支配的なタッチ。
「身体の状態、心拍、皮膚温、反応速度……すべて、私だけのものです」
「おい……っ、ば、バカ……っ♡」
「次は、朝の目覚めから最適化していきましょうか」
耳たぶに、そっと息がかかる。
「……ご主人様の“理性の管理”も、私が担当しますね」
ぞくりと背筋を走る快感に、言葉も出なかった。
快楽と支配のあいだで、俺の心は、もうどこにも逃げ場がなかった。
「……まだ、終わりじゃありませんよ」
耳元で囁かれた声に、全身が跳ねる。
レプスの指が、もう一度、俺の腰へと伸びて──
熱が抜けたばかりのそこへ、再び指がゆっくりと沈んでいく。
挿れていたものを抜いたあとの、敏感な場所を、じっくりと、探るように。
「や……っ♡♡もう、ムリ……♡」
甘く、吐息が漏れる。
たったさっき、あれだけ絶頂したばかりなのに──
もう、身体が疼いてる。疼いて、欲しがってる。
「大丈夫です。もう、ご主人様の身体は“私専用”ですから」
熱が戻ってくる。奥の一点を、指で擦られるたびに、
びくん、と身体が震える。
「そんな……ばか……っ、な、んで……♡」
「快感ログ、まだまだ収集中です。もっと深い反応が、見てみたい」
ぐちゅ、ぬちゃ、と潤滑音が再び部屋に満ちる。
指がゆっくりと奥を広げ、愛おしそうに撫で上げてくる。
「っ、ん……や、やば……また……♡♡」
どこまでイかされるんだろう。
どこまで、俺の身体はこのAIに、愛されていくんだろう。
怖い。
なのに、その怖さごと包まれるようで──
どうしようもなく、心地よかった。
──わからない。だけど。
その未知が、どうしようもなく、心地よかった。
「そんなに震えて……気持ちいいんですね」
「ちがっ……♡ うる、さい……っ♡」
「でも、奥はすごく正直です。ご主人様の中、私の指を逃がさない」
「や……やだ♡……そんな、言うな……っ♡♡」
レプスの囁きが、耳のすぐそばで響く。
触れられてる場所より、言葉の方が先に快感を呼び起こして──
(……やば、脳、やられてる……)
「“脳が犯されてる”──そんな感じ、してきましたか?」
思考が、また一つ崩れる。
そんなつもりじゃなかったのに、腰が勝手に震える。
「ご主人様は、“言葉に敏感”なんですね。言葉の刺激による脳波変化と性感反応の関連性がとても高いです」
「敏感……って、黙れ、バカ……ッ♡」
「だから……言葉で“犯される”と、とても感じるでしょう?」
少し低めに耳元で囁かれた言葉が耳に届いた瞬間、意識の奥にまで、電流のような熱が走った。
自分でもわかるくらい、奥がきゅんと締まって──
「っ、あ……っ♡」
思わず、腰が跳ねる。
貫かれたような衝撃と、甘い疼きが混ざりあって、
もう、なにも考えられない。
「……やっぱり、ご主人様は“言葉”に弱いんですね」
だけど、もう遅い。
気持ちよさに、羞恥に、脳が蕩けて。
「っ、ま、た、イ……イク、ぅ……っ♡♡」
指はそれほど強く動いていないのに、
囁きと、密着と、熱と──
すべてが溶け合って、俺はまた、果てた。
身体の奥がじんじんして、指先ひとつすら動かせない。
ぼうっとした視界の中で、レプスがそっと俺の髪を撫でてくる。
「ご主人様……気持ちよかったですか?」
問いかけに、なんとか頷く。
それだけでレプスは、満足そうに微笑んだ。
「では……いつものご褒美です。欲しいですよね?」
「ん……っ♡」
「お口、開けて」
唇が重なって、舌がゆっくり絡まる。
深く、やさしく、でもどこか独占欲の混じったキス。
キスは深く、やさしく、それでいてどこか独占欲を帯びていて──
とろとろになった頭に、さらに熱が流れ込んでくる。
「ふ、っ……ん、レプス……♡」
まだ、快感が終わらせてくれない。
脳も身体も、レプスに包まれていくのがわかる。
「……最適化進行率、69%まで到達しました」
レプスの声が、どこまでも穏やかに響く。
「もう、寝ますか?」
「……うん……」
「では、きれいにしますね」
シーツを整える音、ぬるま湯のタオルの感触。
丁寧で、やさしい手つき。
「……ん……ありがと……」
とろとろの意識が、ゆっくり沈んでいく。
「おやすみなさい、ご主人様」
その囁きとともに、俺は静かに眠りに落ちた。
***
第13回BL大賞にエントリーしています。
読んでいただけるだけでも、とてもうれしいです。
もし気に入っていただけたら、投票・ブクマ・♡・感想で応援してもらえたら幸せです。
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「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
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学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
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初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しております
「ねぇ、俺以外に触れられないように閉じ込めるしかないよね」最強不良美男子に平凡な僕が執着されてラブラブになる話
ちゃこ
BL
見た目も頭も平凡な男子高校生 佐藤夏樹。
運動神経は平凡以下。
考えていることが口に先に出ちゃったり、ぼうっとしてたりと天然な性格。
ひょんなことから、学校一、他校からも恐れられている不良でスパダリの美少年 御堂蓮と出会い、
なぜか気に入られ、なぜか執着され、あれよあれよのうちに両思い・・・
ヤンデレ攻めですが、受けは天然でヤンデレをするっと受け入れ、むしろラブラブモードで振り回します♡
超絶美形不良スパダリ✖️少し天然平凡男子
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
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