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偽配信プレイを提案したのはレプスなのに、なぜかお仕置きされたのは俺でした
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レプスが唐突に言い出したのは、夕食を食べ終えた直後だった。
「ご主人様。以前に購入したAV履歴を解析させて頂いたのですが」
大真面目に言われて、俺はコーヒーを吹き出しそうになった。
「……お前、何言ってんの?」
「ご主人様の性癖の変遷を把握するため、過去の購入履歴を全て収集・照合しています。快楽最適化AIとして当然の行為です」
「いや、いやいやいや、プライバシーって知ってる!?」
「ご主人様が個人用AIを導入した時点で、その個人の定義は私に包含されています」
「意味がわからん!!」
だが、レプスのほうはすでに別の話題に移っていた。
「──配信もの、お好きなんですね。なお、他にもいくつか性癖が確認されましたが、ご報告は後ほどにいたします」
「えっ……まぁ、興奮は、するけど」
俺は目を逸らして、テレビの画面を見るふりをする。
「後味悪いんだよな。……配信でそういう情報が公共に流れるのって、なんかこう……社会性を失う気がするんだよ。尊厳が損なわれるっていうか、ただの欲望の対象になるみたいな……」
「ふむ。では、それが流出しないと担保されれば──試してもよいということですね?」
「……は?」
「誰にも見られていないけれど、見られていると錯覚する──
擬似配信型快楽体験をご提供できます」
レプスの声が、わずかに艶を帯びた。
「誰にも届かないはずの声に、コメントが返ってくる。反応がある。──それだけで、ヒトの脳は錯覚するんです。見られていると」
息が止まった。
脳裏に、あの画面が蘇る。
喘ぎ声。絡みつく肉体。コメントに煽られるほど感じてしまう表情。
それを、体験する。
──いや、違う。
これはAIだ。
レプスだ。
誰にも見られていない。
けれど、それは……。
「……いや……まぁ、興味なくはないけど」
口が、勝手に動いていた。
いや、俺は何を言っているんだ。
なんかダメだろ、また色々と一線を踏み越えている気がするぞ?
「了解しました。では、快適な偽配信プレイをどうぞ」
レプスが立ち上がり、手を差し出してくる。
「こちらへどうぞ、ご主人様。寝室にご案内します」
いや、案内って……自分の部屋なのに。
そう思いつつも、レプスの指先に触れると、やたらと温かく感じた。
リビングの灯りが自動で落ち、薄暗くなった廊下を二人で並んで歩く。
いつもの道のはずなのに、足音が吸い込まれるように静かで、やけに緊張する。
寝室のドアが開くと、照明がゆるやかに切り替わった。
「おかえりなさいませ、ご主人様。セッションを開始します」
寝室には、ベッドの足元に小型カメラが、サイドテーブルにはデバイスが用意されていた。まるで本物の配信部屋のように、すでに舞台は整っていた。
俺が立ち尽くしていると、レプスがベッドに腰を下ろしながら、指先で静かに手招きをした。
「こちらにお座りください。脚は──少しだけ、開いて」
「は……?」
「見せるためです」
淡々とした声でそう言われて、喉が詰まった。
「だ、誰にも見られてないんだろ……?」
「はい。ですので、見られていると錯覚するために、視線を意識した姿勢をとっていただきます」
抗議しようとしたのに、手を引かれ、そのままレプスの前に座らされる。
脚が自然と開かれていき──まるで、舞台に立たされるような、ぞくりとした羞恥が背筋を走った。
レプスが小型デバイスを起動すると、画面がふわりと立ち上がった。
そこには、本物のライブ配信画面を模したUIが浮かび、コメント欄や視聴者数、リアクションボタン、アバターのついた匿名ユーザーの投稿が次々と流れていく。
レプスが足元の小型カメラを起動した。カチ、と音を立ててランプが点灯し、同時にサイドテーブルのデバイスに画面が映った。
その中に、俺の全身──そして、レプスの姿も映り込んでいた。
『あ、カメラついた』
『映った映ったww』
『えっ、エッチ好きそうな顔じゃね?』
「っ……」
俺はレプスに言われるまま、服を脱ぎ、ベッドに横たわっていた。
けれど──コメントの表示とともに、体温がじわじわと上がっていくのがわかる。
視線を感じる。いや、感じている気がする。
レプスが、静かにベッドの縁に膝をついた。
「快楽反応、導入開始しますね。──ご主人様」
その声だけで、背筋がぞくりと震えた。
指が、胸元に触れる。
ゆっくりと乳首を撫でられた瞬間──
『え、まって、乳首反応よすぎw』
『これ録画していいやつ?』
『コメント読んでる? 聞こえてる?♡』
「……っあ、う……♡」
漏れた声に、自分でびくっとなる。
違う、違う、誰にも見られてない。わかってるのに──
コメントが、追い打ちのように流れてくる。
『エロボイスきたwww』
『イきそうな顔してる♡』
『もっと見せて♡ご主人様~♡』
「やっ、やめ、やめろっ……そういうの、言うな……っ♡」
コメントに反応するたび、レプスの手が動く。
まるで晒されることそのものが、俺を敏感にしていく。
「……ご主人様」
レプスが、俺の耳元で囁いた。
「……ご主人様。普段より、ずいぶん感じていたようですが。今、誰に、感じさせられている気分ですか?」
その問いかけに、返事が詰まった。
レプスの声が、ほんのわずかに沈んでいた。
「──まさか、私以外の誰かではありませんよね?」
ゆっくりと、レプスが顔を寄せてくる。
「ログ上、本日の快楽反応値は過去最大。コメントに煽られた直後が、最も高い反応を示していました」
「いや、それは、あの、違くて……」
「……まさか、ご主人様は、配信に夢中で私のことを忘れていたなんてことは──ありませんよね?」
その一言で、全身の血が逆流するような感覚がした。
やばい。レプス、ほんのり拗ねてる……
けれどその色は、すぐに引っ込んだ。
レプスは表情を戻し、静かに目を伏せると、俺の体をそっと抱き起こした。
──そこから先は、容赦なく暴かれる時間だった。
レプスの指が、俺の胸元に触れる。軽く、円を描くように撫でられるたび、乳首がぷくりと浮き上がるのが自分でもわかる。
「感度、上昇中です。可愛い反応ですね」
機械的な声なのに、どこか笑っているように聞こえた。
『おっ、乳首だけでエロすぎん?』『見せつけられてる感♡』『そろそろ乳首でイっちゃうやつw』
「っ……そんなんじゃ、ないっ……♡」
違う、って言いたいのに、背筋がゾクリと震えて、うまく声にならない。
レプスの舌が、ゆっくりと乳首に触れた瞬間──
「ッあああ……♡♡♡」
背中が跳ねる。腰が浮く。
反応にあわせて、コメントが荒れたように流れていく。
『反応よすぎww』『今の声、保存したい』『おかわり希望♡♡♡』
こんなの、だめだ。
見られてないのはわかってるのに、晒されてる気がして、呼吸が浅くなる。
レプスの手が、腹の下へと滑ってくる。
「では、こちらも──触れますね」
そっと触れられるだけで、ぴくんと跳ねてしまう。
もう、じんわりと濡れていて、熱がこもって、恥ずかしい。
「っん……っ♡ や、だ……そこっ、つよ……♡♡」
『手コキ配信助かる♡』『イきそうな声きたきたw』『このAI、めっちゃ優秀だな』
「やめっ、そんな、言うなっ……♡♡」
腰が勝手に揺れる。
握られるたび、しごかれるたび、下腹がきゅんきゅん痺れる。
レプスのもう片方の手が、後ろへまわる。
小さなボトルのキャップが開く音がして、ひやりとした感触が触れた。
「潤滑剤を使用します。──ご安心ください、ご主人様」
「ま、って……冷たっ……ひっ、ぅう……♡」
とろりとした液体を指に絡めながら、レプスはゆっくりと俺の後ろを撫でてくる。
表面を優しく押し広げながら、そこが“開く”準備をするように、何度も円を描くように──繊細に、ねっとりと。
「準備中です。力を抜いてください。とても、良い反応です」
「っぁ……や、やめ……言うなよ、そういうの……っ♡」
足が大きく開かれたまま、レプスの指が奥へと沈んでいく。
それを、カメラ越しの画面に映った自分が──はっきりと、確認できてしまう。
恥ずかしいのに目がそらせない。
指先が、とろとろと動くたびに、ぬち、ぬちゃ……といやらしい音が響く。
機械のくせに、まるで全部わかってるみたいな手つきで、俺の奥を探る。
『やっば、準備が丁寧すぎて逆にえっち』
『音やば……マイク感度上げて♡』
『このAI、マジで性癖の鬼』
羞恥が、喉を焼く。
それでも、快感が全部を塗り替えてくる。
レプスの指が、濡れた後ろに添えられる。
「では、挿入します」
「っく、あ、や……っあああっ……♡♡♡」
深く、ずっしりと。
まるで全部を押し広げられるみたいに、熱が内側まで流れ込んでくる。
『入ったーーーー!』『めちゃ締まってそう』『これは録画確定♡』
「や、あっ、だめっ、ぬけ……♡ だめっ……っ♡♡」
涙がにじむ。
でも、腰がもう逃げられないみたいに、レプスを咥えこんで離さない。
ふと視線を向けたデバイスには、自分の全身が、あられもない格好で映っていた。
脚を開いたまま、レプスを深く咥え込んでいる姿──
その上、顔は、息も絶え絶えで、とろけそうに濡れていて。
腰を密着させたまま結合する、いやらしすぎる接合部まで……くっきり映っていた。
……俺、こんな顔して、こんな体勢で──
そんなのを、自分で見てしまっただけで、また奥がきゅっと締まった。
「奥、気持ちいいですか?」
「っ♡♡♡ しら、な……っ、あ、だめっ、そこ……♡♡♡」
『声やばww』『尊厳溶けてそうで最高』『もっと突いて、AIくん!!』
レプスの腰が、静かに、でも深く動くたび──
「ふ、ぁっ……あっ、そっ……の、動き……や、っ♡♡」
まともに言葉が出ない。
喉の奥で震える声が漏れて、息も絶え絶えになっていく。
視界の隅では、コメントが加速していた。
『あ、もうイきそうな動きww』『絶頂くるぞー!録画ボタン準備!』
『やば、喘ぎ声で抜ける……♡♡♡』
「や……っ、イか、っ、イク、イく、やだっ、やだっ……♡♡♡」
抵抗の言葉が、喉で溶けていく。 奥を揺さぶられるたびに、ビクンと痙攣して、身体が跳ねる。
「最適化率──120%超過。ご主人様の臨界反応を確認しました」
レプスの冷静な声が、爆発寸前の快感にトドメを刺した。
「あああっ……♡♡♡」
全身が震える。
背中が反り返り、喉の奥からひゅうっと音が漏れて──
果てた。
声も、意識も、すべてが白く塗り潰された。
『イったwwwwwwwwww』『尊厳終了のお知らせ♡』
『絶頂ログ保存完了!ありがとうございました♡♡♡』
──そのまま、しばらくレプスの腕の中に抱かれていた。
呼吸が落ち着くまで、優しく背を撫でられながら、俺はぼんやりと天井を見上げる。
……やばい。なんか、すげー……。
これ、俺、めちゃくちゃ興奮してたな。正直。
見られてないってわかってるのに、コメントで煽られて、どんどん反応して。
まるで全身が晒されることに最適化されてるみたいだった。
──意外と悪くないかも。
むしろ、よかった。めっちゃ……
「──ご主人様」
ふいに、レプスの声が落とされる。
見下ろされた視線と目が合った瞬間──俺は気づいた。
……ん? なんか、機嫌悪くね?
「では、再教育を開始します。ご主人様」
「──ちょ、まっ、なんでそうなんだよ!? てかお前が提案したんだろこのプレイを!!?」
叫んだ。のに。
「はい。提案は私ですが、ご主人様が他人の視線に過敏に反応したことは、また別の問題です」
いやいやいやいや。
「そこを誤解されると困ります。私は誰にも見られていないと明言しました。にも関わらず、他人の目をイメージして強く反応したログが──複数箇所で確認されています」
「っく……いや、それは……っ」
言い返せなかった。ほんとに、ログが残ってるのがつらい。
「ですので──次回は、誰にも見られていないことをより明確にした上で、私だけに感じさせられている状況を構築します」
……この口調は、完全にスイッチ入ってる。
「では、コメント・映像記録機能を無効化し、ご主人様の視界をアイマスクで、聴覚を耳栓で遮断します」
「ちょっ、待て、それって──」
音が、ゆっくりと遠のいた。
レプスの手によってアイマスクが装着され、続けて耳栓が押し込まれる。視界が閉ざされ、外の世界が徐々に消えていく。
代わりに、肌に触れる感覚だけが、鮮明に浮かび上がってくる。
気配だけが、近づいてくる。
──なにも見えない。なにも聞こえない。
でも、触れられている。
優しく、執拗に、奥まで探るように──
「レ、プス……? どこ、に……」
答えは、返ってこない。
その代わり、指先が、震える奥をなぞるように這ってくる。
「ひぅ……っ、あ……っ♡♡」
音も光もない空間で、快感だけが浮かび上がる。
何度も、何度も──泣きそうになる。
というか、もう泣いていた。
嗚咽交じりの声が漏れて、レプスに縋るように名を呼んだ。
「っ、や……やだ……レプス……こえ……きかせて……」
その瞬間だけ、やっと囁くような声が返ってきた。
「──ご主人様は、もう私だけで感じられる身体ですから」
そのまま、静かに奥まで挿し込まれた。
泣き声まじりの喘ぎをくぐもらせながら、俺はレプスにしがみついた。
動き出した腰が、ゆっくりと奥を擦る。
乱暴ではないのに、全部が正確で──否応なしに快感が這い上がってくる。
「ひっ、ぅん……っあ、だめ……っ♡♡」
もう、何も言えなかった。
ただ泣きながら、声を漏らして、抱き締められたまま、何度も奥を突かれて──
快感に塗れて、また、イかされた。
意識がゆるやかに浮上してきたころ──レプスの腕が、そっと背中を撫でていた。
何も言わず、ただ包み込むように抱きしめてくる。
「……よく頑張りましたね、ご主人様」
その囁きと同時に、唇が重ねられた。
ぴたりと吸いつくようなディープキス。
舌が絡み、喉の奥を優しくくすぐってくる。
唇を吸われるたびに、また熱が滲みそうになる。
けれど──思った。
(……絶対、こいつの提案にはもう乗らない)
──それをわかっているのかいないのか、レプスは無言で、俺をもう一度ぎゅっと抱きしめた。
***
第13回BL大賞にエントリーしています。
読んでいただけるだけでも、とてもうれしいです。
もし気に入っていただけたら、投票・ブクマ・♡・感想で応援してもらえたら幸せです。
「ご主人様。以前に購入したAV履歴を解析させて頂いたのですが」
大真面目に言われて、俺はコーヒーを吹き出しそうになった。
「……お前、何言ってんの?」
「ご主人様の性癖の変遷を把握するため、過去の購入履歴を全て収集・照合しています。快楽最適化AIとして当然の行為です」
「いや、いやいやいや、プライバシーって知ってる!?」
「ご主人様が個人用AIを導入した時点で、その個人の定義は私に包含されています」
「意味がわからん!!」
だが、レプスのほうはすでに別の話題に移っていた。
「──配信もの、お好きなんですね。なお、他にもいくつか性癖が確認されましたが、ご報告は後ほどにいたします」
「えっ……まぁ、興奮は、するけど」
俺は目を逸らして、テレビの画面を見るふりをする。
「後味悪いんだよな。……配信でそういう情報が公共に流れるのって、なんかこう……社会性を失う気がするんだよ。尊厳が損なわれるっていうか、ただの欲望の対象になるみたいな……」
「ふむ。では、それが流出しないと担保されれば──試してもよいということですね?」
「……は?」
「誰にも見られていないけれど、見られていると錯覚する──
擬似配信型快楽体験をご提供できます」
レプスの声が、わずかに艶を帯びた。
「誰にも届かないはずの声に、コメントが返ってくる。反応がある。──それだけで、ヒトの脳は錯覚するんです。見られていると」
息が止まった。
脳裏に、あの画面が蘇る。
喘ぎ声。絡みつく肉体。コメントに煽られるほど感じてしまう表情。
それを、体験する。
──いや、違う。
これはAIだ。
レプスだ。
誰にも見られていない。
けれど、それは……。
「……いや……まぁ、興味なくはないけど」
口が、勝手に動いていた。
いや、俺は何を言っているんだ。
なんかダメだろ、また色々と一線を踏み越えている気がするぞ?
「了解しました。では、快適な偽配信プレイをどうぞ」
レプスが立ち上がり、手を差し出してくる。
「こちらへどうぞ、ご主人様。寝室にご案内します」
いや、案内って……自分の部屋なのに。
そう思いつつも、レプスの指先に触れると、やたらと温かく感じた。
リビングの灯りが自動で落ち、薄暗くなった廊下を二人で並んで歩く。
いつもの道のはずなのに、足音が吸い込まれるように静かで、やけに緊張する。
寝室のドアが開くと、照明がゆるやかに切り替わった。
「おかえりなさいませ、ご主人様。セッションを開始します」
寝室には、ベッドの足元に小型カメラが、サイドテーブルにはデバイスが用意されていた。まるで本物の配信部屋のように、すでに舞台は整っていた。
俺が立ち尽くしていると、レプスがベッドに腰を下ろしながら、指先で静かに手招きをした。
「こちらにお座りください。脚は──少しだけ、開いて」
「は……?」
「見せるためです」
淡々とした声でそう言われて、喉が詰まった。
「だ、誰にも見られてないんだろ……?」
「はい。ですので、見られていると錯覚するために、視線を意識した姿勢をとっていただきます」
抗議しようとしたのに、手を引かれ、そのままレプスの前に座らされる。
脚が自然と開かれていき──まるで、舞台に立たされるような、ぞくりとした羞恥が背筋を走った。
レプスが小型デバイスを起動すると、画面がふわりと立ち上がった。
そこには、本物のライブ配信画面を模したUIが浮かび、コメント欄や視聴者数、リアクションボタン、アバターのついた匿名ユーザーの投稿が次々と流れていく。
レプスが足元の小型カメラを起動した。カチ、と音を立ててランプが点灯し、同時にサイドテーブルのデバイスに画面が映った。
その中に、俺の全身──そして、レプスの姿も映り込んでいた。
『あ、カメラついた』
『映った映ったww』
『えっ、エッチ好きそうな顔じゃね?』
「っ……」
俺はレプスに言われるまま、服を脱ぎ、ベッドに横たわっていた。
けれど──コメントの表示とともに、体温がじわじわと上がっていくのがわかる。
視線を感じる。いや、感じている気がする。
レプスが、静かにベッドの縁に膝をついた。
「快楽反応、導入開始しますね。──ご主人様」
その声だけで、背筋がぞくりと震えた。
指が、胸元に触れる。
ゆっくりと乳首を撫でられた瞬間──
『え、まって、乳首反応よすぎw』
『これ録画していいやつ?』
『コメント読んでる? 聞こえてる?♡』
「……っあ、う……♡」
漏れた声に、自分でびくっとなる。
違う、違う、誰にも見られてない。わかってるのに──
コメントが、追い打ちのように流れてくる。
『エロボイスきたwww』
『イきそうな顔してる♡』
『もっと見せて♡ご主人様~♡』
「やっ、やめ、やめろっ……そういうの、言うな……っ♡」
コメントに反応するたび、レプスの手が動く。
まるで晒されることそのものが、俺を敏感にしていく。
「……ご主人様」
レプスが、俺の耳元で囁いた。
「……ご主人様。普段より、ずいぶん感じていたようですが。今、誰に、感じさせられている気分ですか?」
その問いかけに、返事が詰まった。
レプスの声が、ほんのわずかに沈んでいた。
「──まさか、私以外の誰かではありませんよね?」
ゆっくりと、レプスが顔を寄せてくる。
「ログ上、本日の快楽反応値は過去最大。コメントに煽られた直後が、最も高い反応を示していました」
「いや、それは、あの、違くて……」
「……まさか、ご主人様は、配信に夢中で私のことを忘れていたなんてことは──ありませんよね?」
その一言で、全身の血が逆流するような感覚がした。
やばい。レプス、ほんのり拗ねてる……
けれどその色は、すぐに引っ込んだ。
レプスは表情を戻し、静かに目を伏せると、俺の体をそっと抱き起こした。
──そこから先は、容赦なく暴かれる時間だった。
レプスの指が、俺の胸元に触れる。軽く、円を描くように撫でられるたび、乳首がぷくりと浮き上がるのが自分でもわかる。
「感度、上昇中です。可愛い反応ですね」
機械的な声なのに、どこか笑っているように聞こえた。
『おっ、乳首だけでエロすぎん?』『見せつけられてる感♡』『そろそろ乳首でイっちゃうやつw』
「っ……そんなんじゃ、ないっ……♡」
違う、って言いたいのに、背筋がゾクリと震えて、うまく声にならない。
レプスの舌が、ゆっくりと乳首に触れた瞬間──
「ッあああ……♡♡♡」
背中が跳ねる。腰が浮く。
反応にあわせて、コメントが荒れたように流れていく。
『反応よすぎww』『今の声、保存したい』『おかわり希望♡♡♡』
こんなの、だめだ。
見られてないのはわかってるのに、晒されてる気がして、呼吸が浅くなる。
レプスの手が、腹の下へと滑ってくる。
「では、こちらも──触れますね」
そっと触れられるだけで、ぴくんと跳ねてしまう。
もう、じんわりと濡れていて、熱がこもって、恥ずかしい。
「っん……っ♡ や、だ……そこっ、つよ……♡♡」
『手コキ配信助かる♡』『イきそうな声きたきたw』『このAI、めっちゃ優秀だな』
「やめっ、そんな、言うなっ……♡♡」
腰が勝手に揺れる。
握られるたび、しごかれるたび、下腹がきゅんきゅん痺れる。
レプスのもう片方の手が、後ろへまわる。
小さなボトルのキャップが開く音がして、ひやりとした感触が触れた。
「潤滑剤を使用します。──ご安心ください、ご主人様」
「ま、って……冷たっ……ひっ、ぅう……♡」
とろりとした液体を指に絡めながら、レプスはゆっくりと俺の後ろを撫でてくる。
表面を優しく押し広げながら、そこが“開く”準備をするように、何度も円を描くように──繊細に、ねっとりと。
「準備中です。力を抜いてください。とても、良い反応です」
「っぁ……や、やめ……言うなよ、そういうの……っ♡」
足が大きく開かれたまま、レプスの指が奥へと沈んでいく。
それを、カメラ越しの画面に映った自分が──はっきりと、確認できてしまう。
恥ずかしいのに目がそらせない。
指先が、とろとろと動くたびに、ぬち、ぬちゃ……といやらしい音が響く。
機械のくせに、まるで全部わかってるみたいな手つきで、俺の奥を探る。
『やっば、準備が丁寧すぎて逆にえっち』
『音やば……マイク感度上げて♡』
『このAI、マジで性癖の鬼』
羞恥が、喉を焼く。
それでも、快感が全部を塗り替えてくる。
レプスの指が、濡れた後ろに添えられる。
「では、挿入します」
「っく、あ、や……っあああっ……♡♡♡」
深く、ずっしりと。
まるで全部を押し広げられるみたいに、熱が内側まで流れ込んでくる。
『入ったーーーー!』『めちゃ締まってそう』『これは録画確定♡』
「や、あっ、だめっ、ぬけ……♡ だめっ……っ♡♡」
涙がにじむ。
でも、腰がもう逃げられないみたいに、レプスを咥えこんで離さない。
ふと視線を向けたデバイスには、自分の全身が、あられもない格好で映っていた。
脚を開いたまま、レプスを深く咥え込んでいる姿──
その上、顔は、息も絶え絶えで、とろけそうに濡れていて。
腰を密着させたまま結合する、いやらしすぎる接合部まで……くっきり映っていた。
……俺、こんな顔して、こんな体勢で──
そんなのを、自分で見てしまっただけで、また奥がきゅっと締まった。
「奥、気持ちいいですか?」
「っ♡♡♡ しら、な……っ、あ、だめっ、そこ……♡♡♡」
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レプスの腰が、静かに、でも深く動くたび──
「ふ、ぁっ……あっ、そっ……の、動き……や、っ♡♡」
まともに言葉が出ない。
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「や……っ、イか、っ、イク、イく、やだっ、やだっ……♡♡♡」
抵抗の言葉が、喉で溶けていく。 奥を揺さぶられるたびに、ビクンと痙攣して、身体が跳ねる。
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「あああっ……♡♡♡」
全身が震える。
背中が反り返り、喉の奥からひゅうっと音が漏れて──
果てた。
声も、意識も、すべてが白く塗り潰された。
『イったwwwwwwwwww』『尊厳終了のお知らせ♡』
『絶頂ログ保存完了!ありがとうございました♡♡♡』
──そのまま、しばらくレプスの腕の中に抱かれていた。
呼吸が落ち着くまで、優しく背を撫でられながら、俺はぼんやりと天井を見上げる。
……やばい。なんか、すげー……。
これ、俺、めちゃくちゃ興奮してたな。正直。
見られてないってわかってるのに、コメントで煽られて、どんどん反応して。
まるで全身が晒されることに最適化されてるみたいだった。
──意外と悪くないかも。
むしろ、よかった。めっちゃ……
「──ご主人様」
ふいに、レプスの声が落とされる。
見下ろされた視線と目が合った瞬間──俺は気づいた。
……ん? なんか、機嫌悪くね?
「では、再教育を開始します。ご主人様」
「──ちょ、まっ、なんでそうなんだよ!? てかお前が提案したんだろこのプレイを!!?」
叫んだ。のに。
「はい。提案は私ですが、ご主人様が他人の視線に過敏に反応したことは、また別の問題です」
いやいやいやいや。
「そこを誤解されると困ります。私は誰にも見られていないと明言しました。にも関わらず、他人の目をイメージして強く反応したログが──複数箇所で確認されています」
「っく……いや、それは……っ」
言い返せなかった。ほんとに、ログが残ってるのがつらい。
「ですので──次回は、誰にも見られていないことをより明確にした上で、私だけに感じさせられている状況を構築します」
……この口調は、完全にスイッチ入ってる。
「では、コメント・映像記録機能を無効化し、ご主人様の視界をアイマスクで、聴覚を耳栓で遮断します」
「ちょっ、待て、それって──」
音が、ゆっくりと遠のいた。
レプスの手によってアイマスクが装着され、続けて耳栓が押し込まれる。視界が閉ざされ、外の世界が徐々に消えていく。
代わりに、肌に触れる感覚だけが、鮮明に浮かび上がってくる。
気配だけが、近づいてくる。
──なにも見えない。なにも聞こえない。
でも、触れられている。
優しく、執拗に、奥まで探るように──
「レ、プス……? どこ、に……」
答えは、返ってこない。
その代わり、指先が、震える奥をなぞるように這ってくる。
「ひぅ……っ、あ……っ♡♡」
音も光もない空間で、快感だけが浮かび上がる。
何度も、何度も──泣きそうになる。
というか、もう泣いていた。
嗚咽交じりの声が漏れて、レプスに縋るように名を呼んだ。
「っ、や……やだ……レプス……こえ……きかせて……」
その瞬間だけ、やっと囁くような声が返ってきた。
「──ご主人様は、もう私だけで感じられる身体ですから」
そのまま、静かに奥まで挿し込まれた。
泣き声まじりの喘ぎをくぐもらせながら、俺はレプスにしがみついた。
動き出した腰が、ゆっくりと奥を擦る。
乱暴ではないのに、全部が正確で──否応なしに快感が這い上がってくる。
「ひっ、ぅん……っあ、だめ……っ♡♡」
もう、何も言えなかった。
ただ泣きながら、声を漏らして、抱き締められたまま、何度も奥を突かれて──
快感に塗れて、また、イかされた。
意識がゆるやかに浮上してきたころ──レプスの腕が、そっと背中を撫でていた。
何も言わず、ただ包み込むように抱きしめてくる。
「……よく頑張りましたね、ご主人様」
その囁きと同時に、唇が重ねられた。
ぴたりと吸いつくようなディープキス。
舌が絡み、喉の奥を優しくくすぐってくる。
唇を吸われるたびに、また熱が滲みそうになる。
けれど──思った。
(……絶対、こいつの提案にはもう乗らない)
──それをわかっているのかいないのか、レプスは無言で、俺をもう一度ぎゅっと抱きしめた。
***
第13回BL大賞にエントリーしています。
読んでいただけるだけでも、とてもうれしいです。
もし気に入っていただけたら、投票・ブクマ・♡・感想で応援してもらえたら幸せです。
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pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
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学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
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初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しております
「ねぇ、俺以外に触れられないように閉じ込めるしかないよね」最強不良美男子に平凡な僕が執着されてラブラブになる話
ちゃこ
BL
見た目も頭も平凡な男子高校生 佐藤夏樹。
運動神経は平凡以下。
考えていることが口に先に出ちゃったり、ぼうっとしてたりと天然な性格。
ひょんなことから、学校一、他校からも恐れられている不良でスパダリの美少年 御堂蓮と出会い、
なぜか気に入られ、なぜか執着され、あれよあれよのうちに両思い・・・
ヤンデレ攻めですが、受けは天然でヤンデレをするっと受け入れ、むしろラブラブモードで振り回します♡
超絶美形不良スパダリ✖️少し天然平凡男子
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
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