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第一章 英雄の街・プリセリド
第04話 天爆
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「一応俺の能力を教えておくが、俺の能力は『魔力感知』だ」
「見た目の割に繊細な能力だな。でもそんなの教えていいのか?」
「お前が試験を受ける側だからな。試験官の力を隠すのもどうかと思ったんだが、要らなかったか?」
「いや、参考にさせてもらうよ」
『魔力感知』、この男は能力保持者か。魔法使いだろうか。
「『身体強化魔法』! 魔法使いだと思ってるかもしれんが、強化魔法しか使わんぞ。ここらが吹っ飛ぶから、なァ!」
「うおっ! 速ぇな!」
コンマ数秒の間に目の前に現れた。巨体からは考えられない速度だ。しかも軽く振り下ろした拳が石畳を貫き、地面を砕いていた。避けていなければこれだけで怪我していたかもしれない。
「“武人”って感じだな! おれと同じ感じか!」
言い終わると同時に大男に接近した。先ほどの彼に匹敵する速度だ。
「おお! 随分速いな! だが軽いぞ!」
「……ッ!」
接近する勢いに身を乗せて拳を突き出したのだが、軽々と防がれてしまった。
何度か同じように攻撃してみたが、決定打にはならない。
「悪くはない。だがこの程度なのか?」
対して相手は軽い挨拶で地面を破壊してきやがるようなやつだ。
「いや、もうちょい行こうか」
「『身体強化』!」
「おっ! スゲェな! 威力がさっきと段違いじゃねぇか!」
「強化魔法か? それとも……」
「能力じゃねぇけど、魔法とも少し違うな」
「不思議な技だな。だが……」
まだ足りない。試験としてはいいかもしれないが、そんなとこで甘んじるつもりはない。
「あら、もう試験始めてんのね。それにしてもリングがボロボロじゃない」
依頼の報告を済ませたセリアが出てきた。リングが崩れてしまうのは仕方ない。それほどの戦いが成立しているのだから。
「エストも強いわね。Sランクのギルマスにあそこまで食い下がるなんて」
おれの攻撃はほとんど防がれていた。かろうじて当たった打撃にも相手は怯まない。身長の差もあり、そもそも攻撃が届きづらいのだ。
「いいぜ。お前くらい強い奴が冒険者になってくれんなら大歓迎だ!『大漢打撃』!」
そんなことを言いながら思いっ切り腹を殴ってきやがった。さっきまでよりずっと速く重い拳で。
「ぐふっ……!」
防御しきれなかったことで10メートルほど吹き飛ばされた。今の攻撃は鋭かった。これまでの“挨拶”とは違い“技”だったのだ。
「合格だ! お前はスタイルが近いからな。これからは俺が鍛えてやろう! はっはっはっはっ!」
「ギルマス、試験のとき毎回それで終わらせますよね。ほとんどの人がトラウマになってますよ」
「新人が調子に乗ると危ないからな。強くても身の危険を知らねぇと」
「グランデュース、あいつに治癒ポーションを飲ませてやれ。すぐには起きねぇだろうが」
「おい、何勝手に終わらせてんだ」
「……!? こりゃ驚いた! 大して効いてねぇじゃねぇか!」
無傷ではない。ただ痛いっちゃ痛いが動けなくなるほどでもない。もちろん気を失うほどでもない。
「こいつは大型新人だな。初めてだぞ、試験受ける奴が『大漢打撃』を喰らって無事なんてよ」
「無事なもんか」
「おれも一発打たせてもらうぞ。防御しろ」
「わざわざ予告しなくてもいいんだがな。まぁいい。かかってこい!」
「『天……』」
魔素を右手に集中させ大男に接近する。
「……ッ!『金剛硬化』!」
「『……爆』!」
拳が相手に当たる瞬間、手に纏った魔素を爆散させる打撃を放った。
衝突の余波でリングと地面にヒビが入り、踏み込んだ足は地面にめり込んでいた。大男は両腕を交差させて防御体勢を取ったが、威力を殺しきれず数メートル後退していた。
「今ので無傷かよ。もうちょいキツいの入れといた方がよかったか?」
「無傷なもんか。最硬の物理防御魔法だってのに、受けた腕がジンジンしやがる。まるで爆弾でも投げつけられたみてぇだ」
「それならくたばっとけよ」
どうやらこの男は人間を卒業してるようだ。人間に化けたゴリラだ、とエストは思った。
「すごい威力ね。今のは私でも止められなさそうだったわ」
「今の技で確信したが魔素を操っているとは、常識外れな力だ。固有能力者か?」
「ああ、肉体が強くなって繊細な魔力操作もできるようになる能力なんだ。魔力は持ってないんだけど」
「ところで訓練場、ボロボロにしちゃったけどいいのか?」
「ギルドの施設は国が修理してくれんだ。だから心配は要らねえよ」
「それから試験は終了だ。本当はもっと上のランクでもいいと思うんだが、勝手すると上がうるさいんでな。お前は今日からCランクの冒険者だ」
Cランク。冒険者に初登録する場合ではこれが最高ランクだ。一人前、というよりはやや熟練の冒険者にあたる階級。ギルドマスターからはそれ以上の評価を受けているのだから出だしは最高だ。
「じゃあエスト、パーティの申請をしに行こう」
「まだやることがあんのか。疲れたのに」
「だからこそさっさと終わらせるのよ。すぐに終わるから頑張って」
なんだかんだ言って、久しぶりに発散しておれはいい気分だった。これからもあのゴリラ男とはたまに手合わせでもしよう。そう思いながらおれはセリアについて行った。
「見た目の割に繊細な能力だな。でもそんなの教えていいのか?」
「お前が試験を受ける側だからな。試験官の力を隠すのもどうかと思ったんだが、要らなかったか?」
「いや、参考にさせてもらうよ」
『魔力感知』、この男は能力保持者か。魔法使いだろうか。
「『身体強化魔法』! 魔法使いだと思ってるかもしれんが、強化魔法しか使わんぞ。ここらが吹っ飛ぶから、なァ!」
「うおっ! 速ぇな!」
コンマ数秒の間に目の前に現れた。巨体からは考えられない速度だ。しかも軽く振り下ろした拳が石畳を貫き、地面を砕いていた。避けていなければこれだけで怪我していたかもしれない。
「“武人”って感じだな! おれと同じ感じか!」
言い終わると同時に大男に接近した。先ほどの彼に匹敵する速度だ。
「おお! 随分速いな! だが軽いぞ!」
「……ッ!」
接近する勢いに身を乗せて拳を突き出したのだが、軽々と防がれてしまった。
何度か同じように攻撃してみたが、決定打にはならない。
「悪くはない。だがこの程度なのか?」
対して相手は軽い挨拶で地面を破壊してきやがるようなやつだ。
「いや、もうちょい行こうか」
「『身体強化』!」
「おっ! スゲェな! 威力がさっきと段違いじゃねぇか!」
「強化魔法か? それとも……」
「能力じゃねぇけど、魔法とも少し違うな」
「不思議な技だな。だが……」
まだ足りない。試験としてはいいかもしれないが、そんなとこで甘んじるつもりはない。
「あら、もう試験始めてんのね。それにしてもリングがボロボロじゃない」
依頼の報告を済ませたセリアが出てきた。リングが崩れてしまうのは仕方ない。それほどの戦いが成立しているのだから。
「エストも強いわね。Sランクのギルマスにあそこまで食い下がるなんて」
おれの攻撃はほとんど防がれていた。かろうじて当たった打撃にも相手は怯まない。身長の差もあり、そもそも攻撃が届きづらいのだ。
「いいぜ。お前くらい強い奴が冒険者になってくれんなら大歓迎だ!『大漢打撃』!」
そんなことを言いながら思いっ切り腹を殴ってきやがった。さっきまでよりずっと速く重い拳で。
「ぐふっ……!」
防御しきれなかったことで10メートルほど吹き飛ばされた。今の攻撃は鋭かった。これまでの“挨拶”とは違い“技”だったのだ。
「合格だ! お前はスタイルが近いからな。これからは俺が鍛えてやろう! はっはっはっはっ!」
「ギルマス、試験のとき毎回それで終わらせますよね。ほとんどの人がトラウマになってますよ」
「新人が調子に乗ると危ないからな。強くても身の危険を知らねぇと」
「グランデュース、あいつに治癒ポーションを飲ませてやれ。すぐには起きねぇだろうが」
「おい、何勝手に終わらせてんだ」
「……!? こりゃ驚いた! 大して効いてねぇじゃねぇか!」
無傷ではない。ただ痛いっちゃ痛いが動けなくなるほどでもない。もちろん気を失うほどでもない。
「こいつは大型新人だな。初めてだぞ、試験受ける奴が『大漢打撃』を喰らって無事なんてよ」
「無事なもんか」
「おれも一発打たせてもらうぞ。防御しろ」
「わざわざ予告しなくてもいいんだがな。まぁいい。かかってこい!」
「『天……』」
魔素を右手に集中させ大男に接近する。
「……ッ!『金剛硬化』!」
「『……爆』!」
拳が相手に当たる瞬間、手に纏った魔素を爆散させる打撃を放った。
衝突の余波でリングと地面にヒビが入り、踏み込んだ足は地面にめり込んでいた。大男は両腕を交差させて防御体勢を取ったが、威力を殺しきれず数メートル後退していた。
「今ので無傷かよ。もうちょいキツいの入れといた方がよかったか?」
「無傷なもんか。最硬の物理防御魔法だってのに、受けた腕がジンジンしやがる。まるで爆弾でも投げつけられたみてぇだ」
「それならくたばっとけよ」
どうやらこの男は人間を卒業してるようだ。人間に化けたゴリラだ、とエストは思った。
「すごい威力ね。今のは私でも止められなさそうだったわ」
「今の技で確信したが魔素を操っているとは、常識外れな力だ。固有能力者か?」
「ああ、肉体が強くなって繊細な魔力操作もできるようになる能力なんだ。魔力は持ってないんだけど」
「ところで訓練場、ボロボロにしちゃったけどいいのか?」
「ギルドの施設は国が修理してくれんだ。だから心配は要らねえよ」
「それから試験は終了だ。本当はもっと上のランクでもいいと思うんだが、勝手すると上がうるさいんでな。お前は今日からCランクの冒険者だ」
Cランク。冒険者に初登録する場合ではこれが最高ランクだ。一人前、というよりはやや熟練の冒険者にあたる階級。ギルドマスターからはそれ以上の評価を受けているのだから出だしは最高だ。
「じゃあエスト、パーティの申請をしに行こう」
「まだやることがあんのか。疲れたのに」
「だからこそさっさと終わらせるのよ。すぐに終わるから頑張って」
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