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第四章 九月
第20話 最高に危険
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「2つの魔力がこっちに向かって来てる!」
「何!? バレたのか!?」
「離れてたんでしょ!? 気にしなければ気付けないでしょ!?」
「強いやつならこの距離でも普通に気付くってことだろ。迎え撃つしかないぞ! 準備しろ!」
「そうじゃな。エスト! お前はあの技を打てるようにしておけ!」
「分かった!」
おれは指先に魔素を圧縮させ、“白天”の準備をした。本来は打つのに時間がかかる技であるが、敵がここに来るまでは充分な時間がある。
そうしていると魔族の姿が見えてきた。もの凄い速さで空を飛んでいる。飛行魔法であろうが、これほど速く飛べるものなのだろうか。やはり九月というだけあって、魔力量と出力が桁違いなのだろう。
しかしこの勢いならこちらの攻撃を急に躱すのは簡単では無いだろう。恐らくもっとも攻撃しやすいタイミングだ。おれは指を魔族に向けた。
「うぅん? 人間は2匹かと思ったが3匹いるな。おかしいなぁ」
「鈍ったんじゃねーか? まぁ俺も魔力は感じねーから雑魚だろ」
相手はおれのことを気に留めていないようだ。実際やつらからしたらおれ1人くらい変わらないかも知れない。だが……
これから大技を放つ身としては好都合だ。“白天”は気にせずに防げるほど遅い技では無い。しかも、六法帝でも防いだ技だ。防御しなければ無傷では済まないだろう。
おれは照準を魔族、魔力の大きい方の魔族の額に合わせた。
「『白天』!」
「ッ!?」
「おい!? 何だ今のは!?」
光は魔族の脳天を貫いた。やつは防御姿勢を取れていなかった。脳を貫かれては魔族も生きてはいられない。魔族は墜落し、もう1体の魔族もそこに降りてきた。
「良くやったぞ! エスト!」
「ダルカライトってのはどっちだ?」
「あいつがダルカライトよ。エストが撃ち落としたのはハバ。七番よ」
「魔力の無ぇ雑魚かと思ったが、割とやるじゃねーか。今の技は危ないな」
ダルカライトからは余裕が感じられた。今の技を見て、しかも3人を相手にするというのに。今倒したのはこいつよりも上位の魔族だぞ?
そんな不思議な感覚になっていると、どこからか声がした。どこだ? と思って周囲を見回してもおれ達以外に影はない。よく聞くとその声は魔族の死体から発していた。
「痛ったいな。頭を撃たれるなんて初めてだよ。流石に焦ったなぁ」
「……ッ!? 何で……!?」
「不思議でしょ? 何で生きてると思う?」
外していたのか? いや、そんなことはない。確実にやつの脳天を貫いたはずだ。本来なら死んでいるはずだ。生きているはずがない。それなのに……
それなのにやつの額には傷跡一つない。何かが起こったのだ。おれが撃ってから今までの間のほんの一瞬、何かが起こった。不服にも背筋が凍るという感覚を実感した。
「ダルカライト! コイツは俺が貰うぞ!」
「好きにしろ。俺が2人か。面倒臭ぇ」
「よし! ……ッふん!」
「……ッ!?」
視界が遮られ、何も見えなくなった。いや、厳密に言うとやつの掌だけが見えていた。おれの顔を掴まれているのだ。気づいたときにはこうなっていた。
「君は俺と遊ぼうか!」
「エスト! ……!?」
「お前ぇらの相手は俺だ。あの子供を助けてーなら俺を倒してみろ。出来るならな」
おれは顔を掴まれたまま後方に引き摺られていった。もの凄い力と速度で逆らうことができない。セリアとグラの方も気になるが、おれはこっちに集中するしかなさそうだ。
「ぐあ! ……あぁー! 痛ってぇな!」
「痛いで済むのか。人間のくせに頑丈じゃないか!」
さっきの地点から数キロ離れた感じだろうか。一瞬で連れてこられてしまった。たった1人で九月の七番を相手しなければならないとは……。想定外もいいとこだ。
「わざわざこんなとこまで連れてきやがって。秘密の話し合いでもするか?」
「冗談を言う余裕もあるのか。君が1番面白そうだったからね。遊ぶのを邪魔されたくないだろ?」
「遊びか……。油断してくれれば何とかなるか?」
まともに戦り合って勝機はどれくらいだろうか。だが、そんなことを考えるのは無駄だ。とにかく勝つことだけを考えなくては。
「そうだ! 俺の能力を教えてあげよう! 俺の能力はね、『状態操作』っていうものなんだ。自分と触れたものの状態を変えられるのさ」
「とんでもねぇ能力だな。ってことはさっきは……」
「そう! 治したのさ。頭ぶち抜かれたくらいじゃすぐに治しちまうぞ」
つまり即死させない限りはすぐに復活するということか。それか魔力切れを起こさせるしかなさそうだが……。どちらも現実的ではない。どうすればいい……。どうすれば勝てる?
「じゃあ始めようか。あ、そうそう。俺は九月の七番・ハバだ。もし俺を殺せたら有名になるんじゃない?」
「思ってもないことを……! おれ史上最高に危機だな。……どっちにしたって戦るしかねぇか」
「『身体強化』!」
「かかって来い! 人間!」
***
「九月の九番・ダルカライトって言えば砂を操ることで有名よね」
「俺の能力を知ってんのか。だが、それがどうした?」
「あんたの力を知ってる分こっちが有利じゃなくって?ねぇグラ、出し惜しみはせずに早く倒すわよ。エストが危ないわ」
「そうじゃな、さっさと始めよう」
「『鉄堅硬剛』!」
「何を勘違いしてやがんだ? 貴様らは俺に殺され、あの小僧はハバに殺されるんだ。夢見てんじゃねーよ!!」
「何!? バレたのか!?」
「離れてたんでしょ!? 気にしなければ気付けないでしょ!?」
「強いやつならこの距離でも普通に気付くってことだろ。迎え撃つしかないぞ! 準備しろ!」
「そうじゃな。エスト! お前はあの技を打てるようにしておけ!」
「分かった!」
おれは指先に魔素を圧縮させ、“白天”の準備をした。本来は打つのに時間がかかる技であるが、敵がここに来るまでは充分な時間がある。
そうしていると魔族の姿が見えてきた。もの凄い速さで空を飛んでいる。飛行魔法であろうが、これほど速く飛べるものなのだろうか。やはり九月というだけあって、魔力量と出力が桁違いなのだろう。
しかしこの勢いならこちらの攻撃を急に躱すのは簡単では無いだろう。恐らくもっとも攻撃しやすいタイミングだ。おれは指を魔族に向けた。
「うぅん? 人間は2匹かと思ったが3匹いるな。おかしいなぁ」
「鈍ったんじゃねーか? まぁ俺も魔力は感じねーから雑魚だろ」
相手はおれのことを気に留めていないようだ。実際やつらからしたらおれ1人くらい変わらないかも知れない。だが……
これから大技を放つ身としては好都合だ。“白天”は気にせずに防げるほど遅い技では無い。しかも、六法帝でも防いだ技だ。防御しなければ無傷では済まないだろう。
おれは照準を魔族、魔力の大きい方の魔族の額に合わせた。
「『白天』!」
「ッ!?」
「おい!? 何だ今のは!?」
光は魔族の脳天を貫いた。やつは防御姿勢を取れていなかった。脳を貫かれては魔族も生きてはいられない。魔族は墜落し、もう1体の魔族もそこに降りてきた。
「良くやったぞ! エスト!」
「ダルカライトってのはどっちだ?」
「あいつがダルカライトよ。エストが撃ち落としたのはハバ。七番よ」
「魔力の無ぇ雑魚かと思ったが、割とやるじゃねーか。今の技は危ないな」
ダルカライトからは余裕が感じられた。今の技を見て、しかも3人を相手にするというのに。今倒したのはこいつよりも上位の魔族だぞ?
そんな不思議な感覚になっていると、どこからか声がした。どこだ? と思って周囲を見回してもおれ達以外に影はない。よく聞くとその声は魔族の死体から発していた。
「痛ったいな。頭を撃たれるなんて初めてだよ。流石に焦ったなぁ」
「……ッ!? 何で……!?」
「不思議でしょ? 何で生きてると思う?」
外していたのか? いや、そんなことはない。確実にやつの脳天を貫いたはずだ。本来なら死んでいるはずだ。生きているはずがない。それなのに……
それなのにやつの額には傷跡一つない。何かが起こったのだ。おれが撃ってから今までの間のほんの一瞬、何かが起こった。不服にも背筋が凍るという感覚を実感した。
「ダルカライト! コイツは俺が貰うぞ!」
「好きにしろ。俺が2人か。面倒臭ぇ」
「よし! ……ッふん!」
「……ッ!?」
視界が遮られ、何も見えなくなった。いや、厳密に言うとやつの掌だけが見えていた。おれの顔を掴まれているのだ。気づいたときにはこうなっていた。
「君は俺と遊ぼうか!」
「エスト! ……!?」
「お前ぇらの相手は俺だ。あの子供を助けてーなら俺を倒してみろ。出来るならな」
おれは顔を掴まれたまま後方に引き摺られていった。もの凄い力と速度で逆らうことができない。セリアとグラの方も気になるが、おれはこっちに集中するしかなさそうだ。
「ぐあ! ……あぁー! 痛ってぇな!」
「痛いで済むのか。人間のくせに頑丈じゃないか!」
さっきの地点から数キロ離れた感じだろうか。一瞬で連れてこられてしまった。たった1人で九月の七番を相手しなければならないとは……。想定外もいいとこだ。
「わざわざこんなとこまで連れてきやがって。秘密の話し合いでもするか?」
「冗談を言う余裕もあるのか。君が1番面白そうだったからね。遊ぶのを邪魔されたくないだろ?」
「遊びか……。油断してくれれば何とかなるか?」
まともに戦り合って勝機はどれくらいだろうか。だが、そんなことを考えるのは無駄だ。とにかく勝つことだけを考えなくては。
「そうだ! 俺の能力を教えてあげよう! 俺の能力はね、『状態操作』っていうものなんだ。自分と触れたものの状態を変えられるのさ」
「とんでもねぇ能力だな。ってことはさっきは……」
「そう! 治したのさ。頭ぶち抜かれたくらいじゃすぐに治しちまうぞ」
つまり即死させない限りはすぐに復活するということか。それか魔力切れを起こさせるしかなさそうだが……。どちらも現実的ではない。どうすればいい……。どうすれば勝てる?
「じゃあ始めようか。あ、そうそう。俺は九月の七番・ハバだ。もし俺を殺せたら有名になるんじゃない?」
「思ってもないことを……! おれ史上最高に危機だな。……どっちにしたって戦るしかねぇか」
「『身体強化』!」
「かかって来い! 人間!」
***
「九月の九番・ダルカライトって言えば砂を操ることで有名よね」
「俺の能力を知ってんのか。だが、それがどうした?」
「あんたの力を知ってる分こっちが有利じゃなくって?ねぇグラ、出し惜しみはせずに早く倒すわよ。エストが危ないわ」
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