HAMA

わらびもち

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第五章 エルフの里・ユラトラ

第32話 契約

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 本当に不思議な感覚だ。外はまだ明るいのに木の中にいるだけで一帯が闇の中だ。あまりに壮大な、不自然な大自然を肌で感じていた。

 そしてそのまま奥へ奥へと進んで行くと、そこは明るい空洞になっていた。大量にいる精霊の光でそう見えているのだろうか。

 そしてそこの中央には一際強い白い光を放った人物がいた。いや、人物というより人型の精霊、精霊王だ。

「まったく、随分と待たせおって……。お前のような奴は歓迎したくないのだが、我が母の寵愛を受けし者だ。それ相応に相手をしよう」

「母?」

「我が母は創造神セスフ様だ。お前のことはお前が生まれてからずっと待っていた。まったく……長かったものだ」

 生まれてからずっとだって……? 固有能力者《ネームド》の情報なら持っているということか? しかも15年間も待つなんて。いや、精霊には寿命がないからそう思えば別に長くはないのか。

「待っていたというのは……?」

「別に深い理由はないさ。ただお前がいずれここに来ることは分かっていたってだけだ」

「そうですか……。ところで精霊と契約するにはどうすればいいんですか?」

「契約したいと思って、精霊が許可すればすぐにできるさ。難しいことではない」

「へー。精霊には属性があると聞きましたが、精霊王様は属性あるんですか?」

「我の属性は“陽”だ。だが我は誰とも契約はしないぞ」

 やはり最上位の精霊の司る属性は普通じゃないな。陽の属性は空想上の属性であって人間を始めとしたあらゆる生命は扱えない、神の力だ。

「では好きな子と契約しろ。我はお前のことを見れたからもう寝る。じゃあな」

 そういうと精霊王様は姿を消した。存在が消えたわけではないだろうが、精霊を見れるおれからも姿を隠すことができるようだ。

 さて、おれはどの精霊と契約しようか。基本的には相性のいい精霊と契約した方がより強い力を発揮できるのだが、そもそもおれには得意魔法とかもないので何の属性がいいかは分からない。

「慎重に選ぶんだぞ。一度きりの契約になるからな」

「え!? そうなのか!?」

「そりゃそうだろ。浮気者は嫌われるぞ」

 まぁそう言われればそんな感じもするが……。先に言ってくれてよかった。つまりお試しはできないということか。

 となるとなおのこと困ってきた。どの精霊がおれに合っているのか。おれは何の属性が合っているのか……。

「なぁ、君達は世界中を旅してるんだろ?」

「うん? まぁまだ世界中って言えるほどではないけどそうだな」

「私は200年間ずっとこの里にいたからな。少し憧れがあるよ」

「ふーん? それなら着いてくるか? おれ達からすれば仲間が増えるのは嬉しいからな」

「……いや、ここを出るつもりにはならないかな。旅もしてみたいけど、それは私がそういう気分になったときだ」

 まぁどうするも個人の自由か。それに関してはおれが口を出すことでもない。旅をしたいと思ったときにすればいいのだから。気分の赴くままが一番いい。

「………あぁ、そっか……」

「どうしたんだ?」

 何を迷っていたんだ、おれは。分からないなら考える必要などないではないか。なんとなく、ビビッとくる精霊と契約を結べばいいじゃないか。適当な考えだが、多分これが最善だ。

 そう思い、辺りを見回してみた。赤、黄、緑といろんな色の光が宙を舞っている。そんな中一際目立っている光、というよりも、特有の光を放っているにも関わらずあまり目立っていない光を見つけた。

「お前にしよう。いいか?」

 そいつは黒く光っている精霊だった。黒いのか光っているのか、何が何だか分からないが、この感覚は前にもあった気がする。矛盾が成立しているこの不思議な感覚。多分おれとこいつはどこか似たような存在なんだ。

「エスト君、その子とは契約できないぞ」

「え、何で?」

「その子は闇の精霊だからだ。純粋な者しか精霊と契約は結べないから、“闇”という混沌の属性の精霊は相性的に契約が不可能なんだ」

 なんてことだ……。せっかくいいと思った精霊が契約できないだって……? ……いや、待て。おれの純粋というのは能力スキルのことだ。つまりおれは純粋という要素を持っているだけで完全に純粋な人物というわけではない。だったら…もしかしたら……!

「……は!?」

「へへっ。やっぱりな」

 闇の精霊はおれに近寄り強く光を放つと、おれの身体の中に入っていった。そうして、イヤリングとして出てきた。なんとなく分かる。これで契約成功だ。

「闇の精霊と契約するなんて……。しかもイヤリングの形をとるなんて……!」

「イヤリングってのに意味があるのか?」

「親和性が高いほど物体として、そして脳に近い部分に宿るんだ。普通の人だと紋章が出来たりするんだけど、アクセサリーとして宿るってことは相当親和性が高いんだ。それが耳に出てくるとは……。しかも闇の精霊が……」

「ふーん。まぁ世の中広しっつーことだろ」

「まぁ考えても無駄なのは分かってるけど。凄い衝撃的なんだよ。……契約も終わったし外に戻るか。セリア殿達も待っているだろ」

 そうしておれとフリナは来た道を帰っていった。外はもうすっかり日が暮れていた。

「あの小僧、闇の精霊と契約しよったか。……良くも悪くもの子というわけか……」
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