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第五章 エルフの里・ユラトラ
第31話 夜の景色
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「先に言っておくが長老様は1万を越えるお歳のハイエルフだ。意識や記憶のはっきりしないところがあるが気にしないでくれ」
「1万!? 1万年前なんてどれだけ昔だよ!?」
魔族が現れたのが2000年前だということを考えると、とんでもなく大昔の人物だ。1万年前といえば人類の文明もまだ発展していない時代じゃないか。というか生命としての限界を越えてないか?
「長老様、森にいた3人を連れて来ました」
「ああ、入りなさい」
家の中から掠れた声が微かに聞こえてきた。いかにも老人の声という感じだ。
おれ達はフリナに従って家の中へ入っていった。そこには白い髪と髭を伸ばした、仙人のような老人がいた。
「いらっしゃい……。人族の子らよ……」
「お、お邪魔します」
「フリナ……君は外に出ていなさい……。私は彼らと少し話をするよ……」
「分かりました。何かあればお呼び下さい」
そう言うとフリナは扉の向こう側へ戻っていった。長老さんは初めて見た人を警戒していないようだ。
「ああ……君達を呼んだのはね……何か不思議な感じがしたからだ……」
「……と仰いますと……?」
珍しくグラの口調が丁寧だ。いつもは竜の王だと威張っていたりするのだが、1万年も生きているようなエルフの王には頭が上がらないといった感じか。
「確定した未来ではないから断言はできないのだが……君達が魔界……今は魔神と言うんだったか……そいつを討つ未来が見えたのだ……」
「魔神? 魔神は大英雄様が2000年前に倒したはずですよね?」
「……今の子は知らないか……昔の話だからな……。君達の言う英雄は魔神を封印しただけらしい……。三界は奴の封印を解こうとしているのだ……」
「魔神は死んでないのか!? ってことは魔神の復活よりも先に三界を倒さなきゃいけないってことか? ……ですか?」
「そういうことだ……。それで少し……君達の未来を覗きたくてな……」
「ええ、それくらいなら構いません」
「すまないね……。…………」
長老さんは目を瞑った。一見ただ寝ているようにも見えなくないが、研ぎ澄まされた魔力が巡っている様はまさに仙人のようであった。流石に1万年も生きているだけあって、単純な魔力操作だけでも遥かにおれを超えている。
「……そこの少年……君は少し出ていなさい……」
「え……おれですか……? わかりました……」
おれなんか未来で何かやっちまうのか……?いや、単純に都合の悪いことでもあるのだろうか。
「ん? なんだエスト君、出てきたのか」
「ああ。少し出とけって」
「そうか。なんだろうな」
外で少しばかり待機していた。フリナとも話すことは特になかったからただ黙って待っていたが、それほど気まずい時間でもなかった。
「エスト、もう入ってきていいわよ」
「お? いいのか?」
家の中から声がしたのでおれは中へ再び戻った。何だったのだろうか。別に長話という訳でもなかったようだし……。
「えーっと、何を話してたのかは聞いても……?」
「……それは君達に委ねるよ……。確定した未来ではない……。……はずだ……」
「後でまた話すわ。グラもいいわね」
「ああ」
少し空気が重く感じた。なんだ?話してもいいってことはそこまで重大という訳でもないのか……?いや、でもそれならおれを外した理由がないか……。
「もう一つ……伝えておく……」
「なんですか?」
「詳しくは分からないが……近いうちに三界と出会うはずだ……。君達の目標は分かっているが……焦ってはいけないぞ……。絶対に手を出してはいけない……」
「……? でもそれより先の未来が見えてるなら死ぬことは無いんですよね?」
「いや……未来は大きな可能性というだけだ……。見た内容が変わる可能性は低いが……途中で未来が消える可能性はある……。だから絶対に無茶をしてはならない……。君達は死んではならないのだよ……」
「……分かりました。力をつけるまではまだ三界とは接触しないよう心掛けます」
「うむ……。それでいい……。では後は自由にしてくれ……。聞きたいことがあればいつでも来てくれて構わんぞ……。もっとも魔神のことも英雄のこともほとんど覚えていないがの…………」
「ありがとうございます」
話を終えておれ達は外へ出た。1万年も生きているからだろうか、生物と話しているというよりも、それを超越した神だとか世界そのものと話しているような気分だった。威圧感はないけれど、ものすごく“重い”、そんな人物だった。
「それで何を話してたんだ? 結局」
「いや、本当に後で話すから、今は気にしないで。私達も少し動揺してて……」
「そうか……まぁいつでもいいけど」
「エスト君、精霊と契約する前に精霊王様に会わないか? 世界樹の中に住まれてるのだ。せっかくだから会いに行った方がいいぞ」
エルフの長老と来て次は精霊の王か……。短時間にそう偉大な方達に会っていると疲れてしまうのだが……。とはいえせっかくの機会だ。普通の人には見れない精霊王にも会ってみよう。
「ああ、行くよ。どこに行けばいいんだ?」
「私が案内しよう。セリア殿とグラダルオ殿はどうする?」
「儂らは行っても見れんじゃろ。今日泊まるところを探しておく」
「私もそうするわ。ここらへんに戻ってくるから帰ってきたらここで待ってて」
「おう、分かった。よろしくな」
そしておれはフリナに着いて行き、世界樹の裏側へと回った。そこには大きな空洞、とは言っても世界樹から見たら小さな穴なのだが、暗い空洞が広がっていた。
ただ、点々と精霊が光っており、エルフの里を昼の幻想と言うならば、この空間は夜の幻想といった感じだ。
「奥に行けば精霊王様がおられる。足元に注意して着いてこい」
おれはフリナの後ろに着いて行った。
「1万!? 1万年前なんてどれだけ昔だよ!?」
魔族が現れたのが2000年前だということを考えると、とんでもなく大昔の人物だ。1万年前といえば人類の文明もまだ発展していない時代じゃないか。というか生命としての限界を越えてないか?
「長老様、森にいた3人を連れて来ました」
「ああ、入りなさい」
家の中から掠れた声が微かに聞こえてきた。いかにも老人の声という感じだ。
おれ達はフリナに従って家の中へ入っていった。そこには白い髪と髭を伸ばした、仙人のような老人がいた。
「いらっしゃい……。人族の子らよ……」
「お、お邪魔します」
「フリナ……君は外に出ていなさい……。私は彼らと少し話をするよ……」
「分かりました。何かあればお呼び下さい」
そう言うとフリナは扉の向こう側へ戻っていった。長老さんは初めて見た人を警戒していないようだ。
「ああ……君達を呼んだのはね……何か不思議な感じがしたからだ……」
「……と仰いますと……?」
珍しくグラの口調が丁寧だ。いつもは竜の王だと威張っていたりするのだが、1万年も生きているようなエルフの王には頭が上がらないといった感じか。
「確定した未来ではないから断言はできないのだが……君達が魔界……今は魔神と言うんだったか……そいつを討つ未来が見えたのだ……」
「魔神? 魔神は大英雄様が2000年前に倒したはずですよね?」
「……今の子は知らないか……昔の話だからな……。君達の言う英雄は魔神を封印しただけらしい……。三界は奴の封印を解こうとしているのだ……」
「魔神は死んでないのか!? ってことは魔神の復活よりも先に三界を倒さなきゃいけないってことか? ……ですか?」
「そういうことだ……。それで少し……君達の未来を覗きたくてな……」
「ええ、それくらいなら構いません」
「すまないね……。…………」
長老さんは目を瞑った。一見ただ寝ているようにも見えなくないが、研ぎ澄まされた魔力が巡っている様はまさに仙人のようであった。流石に1万年も生きているだけあって、単純な魔力操作だけでも遥かにおれを超えている。
「……そこの少年……君は少し出ていなさい……」
「え……おれですか……? わかりました……」
おれなんか未来で何かやっちまうのか……?いや、単純に都合の悪いことでもあるのだろうか。
「ん? なんだエスト君、出てきたのか」
「ああ。少し出とけって」
「そうか。なんだろうな」
外で少しばかり待機していた。フリナとも話すことは特になかったからただ黙って待っていたが、それほど気まずい時間でもなかった。
「エスト、もう入ってきていいわよ」
「お? いいのか?」
家の中から声がしたのでおれは中へ再び戻った。何だったのだろうか。別に長話という訳でもなかったようだし……。
「えーっと、何を話してたのかは聞いても……?」
「……それは君達に委ねるよ……。確定した未来ではない……。……はずだ……」
「後でまた話すわ。グラもいいわね」
「ああ」
少し空気が重く感じた。なんだ?話してもいいってことはそこまで重大という訳でもないのか……?いや、でもそれならおれを外した理由がないか……。
「もう一つ……伝えておく……」
「なんですか?」
「詳しくは分からないが……近いうちに三界と出会うはずだ……。君達の目標は分かっているが……焦ってはいけないぞ……。絶対に手を出してはいけない……」
「……? でもそれより先の未来が見えてるなら死ぬことは無いんですよね?」
「いや……未来は大きな可能性というだけだ……。見た内容が変わる可能性は低いが……途中で未来が消える可能性はある……。だから絶対に無茶をしてはならない……。君達は死んではならないのだよ……」
「……分かりました。力をつけるまではまだ三界とは接触しないよう心掛けます」
「うむ……。それでいい……。では後は自由にしてくれ……。聞きたいことがあればいつでも来てくれて構わんぞ……。もっとも魔神のことも英雄のこともほとんど覚えていないがの…………」
「ありがとうございます」
話を終えておれ達は外へ出た。1万年も生きているからだろうか、生物と話しているというよりも、それを超越した神だとか世界そのものと話しているような気分だった。威圧感はないけれど、ものすごく“重い”、そんな人物だった。
「それで何を話してたんだ? 結局」
「いや、本当に後で話すから、今は気にしないで。私達も少し動揺してて……」
「そうか……まぁいつでもいいけど」
「エスト君、精霊と契約する前に精霊王様に会わないか? 世界樹の中に住まれてるのだ。せっかくだから会いに行った方がいいぞ」
エルフの長老と来て次は精霊の王か……。短時間にそう偉大な方達に会っていると疲れてしまうのだが……。とはいえせっかくの機会だ。普通の人には見れない精霊王にも会ってみよう。
「ああ、行くよ。どこに行けばいいんだ?」
「私が案内しよう。セリア殿とグラダルオ殿はどうする?」
「儂らは行っても見れんじゃろ。今日泊まるところを探しておく」
「私もそうするわ。ここらへんに戻ってくるから帰ってきたらここで待ってて」
「おう、分かった。よろしくな」
そしておれはフリナに着いて行き、世界樹の裏側へと回った。そこには大きな空洞、とは言っても世界樹から見たら小さな穴なのだが、暗い空洞が広がっていた。
ただ、点々と精霊が光っており、エルフの里を昼の幻想と言うならば、この空間は夜の幻想といった感じだ。
「奥に行けば精霊王様がおられる。足元に注意して着いてこい」
おれはフリナの後ろに着いて行った。
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