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第六章 航海
番外編 グラの昔話
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……時は少し遡り、エルフの里・ユラトラへ向かう途中の話である……
世界樹の森から少し離れた地点、3人の人影が並んで話ながら歩いていた。
「そういえばグラ、お前かつての契約者に力を封じられてるだのなんだの言ってたよな?あれの詳しい話聞かせてくれよ。おれ気になる」
「そういえばそんなことも言ってたわね。そもそもあなたって何歳なの?」
エストとセリアが儂にそんなことを聞いてきた。そういえば話していなかったか?何かとこれまで忙しかったからな……。
「儂は今年で……1900……何歳じゃったかな?」
「1900!? くそじじーじゃねぇか!」
「ジジイなんて言うな! お前達人間とは寿命が違うんじゃ。まだまだ老人といえるような歳じゃない!」
「うーん。まぁカメは万年生きるらしいからな。それと比べたらまだまだか……」
少年は1人うんうんと頷き納得していた。エストよ……それは例えであって事実ではないのじゃぞ……。儂は普段見るエストの強さに反する、妙に純粋な思考のギャップに少し困惑していた。コイツはこんなにアホなのか……?
「あと儂の契約者の話か……。随分昔じゃから顔とか名前はイマイチ覚えてないんじゃが……」
契約者は昔は若い男じゃったんじゃがな、最期は老人になってたな。まぁ人間の成長速度は儂らとは違うから……本来儂と同じくらいの歳じゃったのにな。
まだ儂が子供の頃にジジイなりおって……そのときは寂しかったな。契約者は魔法使いじゃったかな?魔法を主体とした戦闘スタイルじゃったから能力が無かったか、能力が戦闘向けじゃなかったんじゃろうな。その辺も覚えてないが……。
それでも恐ろしく強い男じゃったよ。晩年の奴でも今の儂じゃ相手にならんほどに。少なくとも先代よりは強かったな。
契約者は元々先代竜帝と契約しててな、そのついでに儂とも契約してくれてたんじゃ。よくアイツの肩に乗っていたな……。
最期の会話は……確か魔族との戦いに向かうときじゃったかな……
***
「おい! ——! オレも連れてってくれよ!」
「お前はまだガキじゃろうが……。わしはこれから死にに行くようなもの。お前は来るべきじゃあない」
「でもよ! オレだって強いんだぞ!!」
そう言って仔竜、かつてのグラダルオは口から火を吹いて見せた。それを見た老人は口を緩ませ、グラダルオの頭をわしゃわしゃと撫でた。それに対しグラダルオは嬉しそうに舞っていた。
「でもダメじゃ。今のわしじゃ三界には敵わん。勝てたとしても………じゃな。止めるために行くんじゃ。奴らはわしを危険視しとるから、わしが死ねば少しは落ち着くじゃろうて」
「……」
「とは言え今のお前が強いのも事実。現竜帝・ジルダ=バーバントの子として奴らに狙われるかも知れん」
「え!!どうせ殺されるならやっぱりオレも行くよ!」
「じゃからな。お前の力を少し封印することにしよう。恐らく2,000年程じゃろうか……お前の力が復活する時代は恐らく……いや、確実に世界の命運を分ける時代になるはずじゃ。……わしは知っているんじゃ。何が起こるのかは分からんが、確実に時代が動く……!そのときにお前も好きにすればいい。今はわしのワガママを聞いてくれ」
「……分かったよ……。オレが時代を変えてやるよ……!」
グラダルオは笑顔でそう言った。悲しさを隠すような笑顔で。老人はその心内を理解し、申し訳なさそうに微笑んで仔竜の頭に手を乗せた。
「悪いな……じゃあ力が戻るまで…耐えてくれ」
***
「それが最期の会話じゃったかな。それで儂の力が封印されたって訳じゃ。まぁ奴を一言で表すならとにかく強くて優しい男じゃった」
「……お、おぉ……。なんか感動する話だな……」
「あなたにも色々あったのね……」
「うぅーん…………。ああ! そうじゃ! アイツはアレじゃ! お前達が大英雄と呼んでる男じゃよ!」
「……ええ! まじか!? 大物じゃねーかよ!」
「グラ、ホントなの!? ユリオス様と知り合いなの!? いいなぁーー!」
セリアは目を輝かせながら聞いてきた。そう言えばこの子は大英雄の弟子の子孫だって話をしていた。憧れのようなものがあるのじゃろうか。いや、この顔は間違いなく憧れを見る子供の目だ。考えるまでもないことであった。
「お前達はアイツによく似とるよ。強く優しい。セリアは縁があるだけのことはあるし……エストはどことなく似ておるな」
「なんかおれに対しては適当じゃない? まぁ良いけどよ」
3人は再びくだらない話を始めた。笑い合う仲間がいること、それはその3人にとってはかけがえのないものだった。
そしてこの数時間後、この3人、いや、グラダルオとエストの被害に遭う哀れな盗賊団が誕生する。
世界樹の森から少し離れた地点、3人の人影が並んで話ながら歩いていた。
「そういえばグラ、お前かつての契約者に力を封じられてるだのなんだの言ってたよな?あれの詳しい話聞かせてくれよ。おれ気になる」
「そういえばそんなことも言ってたわね。そもそもあなたって何歳なの?」
エストとセリアが儂にそんなことを聞いてきた。そういえば話していなかったか?何かとこれまで忙しかったからな……。
「儂は今年で……1900……何歳じゃったかな?」
「1900!? くそじじーじゃねぇか!」
「ジジイなんて言うな! お前達人間とは寿命が違うんじゃ。まだまだ老人といえるような歳じゃない!」
「うーん。まぁカメは万年生きるらしいからな。それと比べたらまだまだか……」
少年は1人うんうんと頷き納得していた。エストよ……それは例えであって事実ではないのじゃぞ……。儂は普段見るエストの強さに反する、妙に純粋な思考のギャップに少し困惑していた。コイツはこんなにアホなのか……?
「あと儂の契約者の話か……。随分昔じゃから顔とか名前はイマイチ覚えてないんじゃが……」
契約者は昔は若い男じゃったんじゃがな、最期は老人になってたな。まぁ人間の成長速度は儂らとは違うから……本来儂と同じくらいの歳じゃったのにな。
まだ儂が子供の頃にジジイなりおって……そのときは寂しかったな。契約者は魔法使いじゃったかな?魔法を主体とした戦闘スタイルじゃったから能力が無かったか、能力が戦闘向けじゃなかったんじゃろうな。その辺も覚えてないが……。
それでも恐ろしく強い男じゃったよ。晩年の奴でも今の儂じゃ相手にならんほどに。少なくとも先代よりは強かったな。
契約者は元々先代竜帝と契約しててな、そのついでに儂とも契約してくれてたんじゃ。よくアイツの肩に乗っていたな……。
最期の会話は……確か魔族との戦いに向かうときじゃったかな……
***
「おい! ——! オレも連れてってくれよ!」
「お前はまだガキじゃろうが……。わしはこれから死にに行くようなもの。お前は来るべきじゃあない」
「でもよ! オレだって強いんだぞ!!」
そう言って仔竜、かつてのグラダルオは口から火を吹いて見せた。それを見た老人は口を緩ませ、グラダルオの頭をわしゃわしゃと撫でた。それに対しグラダルオは嬉しそうに舞っていた。
「でもダメじゃ。今のわしじゃ三界には敵わん。勝てたとしても………じゃな。止めるために行くんじゃ。奴らはわしを危険視しとるから、わしが死ねば少しは落ち着くじゃろうて」
「……」
「とは言え今のお前が強いのも事実。現竜帝・ジルダ=バーバントの子として奴らに狙われるかも知れん」
「え!!どうせ殺されるならやっぱりオレも行くよ!」
「じゃからな。お前の力を少し封印することにしよう。恐らく2,000年程じゃろうか……お前の力が復活する時代は恐らく……いや、確実に世界の命運を分ける時代になるはずじゃ。……わしは知っているんじゃ。何が起こるのかは分からんが、確実に時代が動く……!そのときにお前も好きにすればいい。今はわしのワガママを聞いてくれ」
「……分かったよ……。オレが時代を変えてやるよ……!」
グラダルオは笑顔でそう言った。悲しさを隠すような笑顔で。老人はその心内を理解し、申し訳なさそうに微笑んで仔竜の頭に手を乗せた。
「悪いな……じゃあ力が戻るまで…耐えてくれ」
***
「それが最期の会話じゃったかな。それで儂の力が封印されたって訳じゃ。まぁ奴を一言で表すならとにかく強くて優しい男じゃった」
「……お、おぉ……。なんか感動する話だな……」
「あなたにも色々あったのね……」
「うぅーん…………。ああ! そうじゃ! アイツはアレじゃ! お前達が大英雄と呼んでる男じゃよ!」
「……ええ! まじか!? 大物じゃねーかよ!」
「グラ、ホントなの!? ユリオス様と知り合いなの!? いいなぁーー!」
セリアは目を輝かせながら聞いてきた。そう言えばこの子は大英雄の弟子の子孫だって話をしていた。憧れのようなものがあるのじゃろうか。いや、この顔は間違いなく憧れを見る子供の目だ。考えるまでもないことであった。
「お前達はアイツによく似とるよ。強く優しい。セリアは縁があるだけのことはあるし……エストはどことなく似ておるな」
「なんかおれに対しては適当じゃない? まぁ良いけどよ」
3人は再びくだらない話を始めた。笑い合う仲間がいること、それはその3人にとってはかけがえのないものだった。
そしてこの数時間後、この3人、いや、グラダルオとエストの被害に遭う哀れな盗賊団が誕生する。
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