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第七章 地獄の主
第47話 魔神の末裔 ユリハ
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「フリナ、もう歩けるか?」
「ああ……済まない」
「いや、構わないよ」
おれは背中からフリナを降ろした。目が覚めたばかりで足取りがまだ覚束ないようだが、辛うじて歩くことはできるらしい。
2体の魔族を相手するとなると、流石に守りながらではキツいからな。歩けるなら自分で離れてもらった方が安全だ。フリナと簡単に話を終え、今度は少女の方に向き合った。
「ところで君、名前は? なんであんなとこにいたんだ?」
「名前は……ない……。お父様に逃げないように無理やり座らされてて……」
「名前がないのか。じゃあ今日から君はユリハだ。これから君のことはおれ達が守るよ」
この子は魔族の子だ。ここから助け出したからといってその後の安全が保障される訳ではない。
おれ達の冒険に着いて来させるのは気が引けるが、そうでもしないとそれこそ人間に殺される可能性もある。とにかくこの子の味方になってあげなくては。
「ユリハ……? うん! ユリハね!」
「それと、君の父さんを倒すけど、いいか?まぁ嫌と言われてもやるけどな」
「ううん、父様悪い人だもん。おじちゃんがユリハを助けてくれるならいいよ」
おじちゃんではないのだが……。でも名前を気に入ってくれているようで良かった。聞きたいことはまだあるが、長話をする暇はない。すぐにヤツらが来るはずだ。
「フリナ! 一旦身の安全を最優先にしろ。ユリハを連れて逃げられるか!?」
「悪いが走れはしなさそうだ」
「じゃあ足止めするから出来るだけ離れてくれ。安全第一だ。分かったな?」
「承知した。ありがとう」
フリナとユリハが後ろへ行くのを見守っておれは教会の方を向いた。ゆっくりと魔族の気配が上へと昇ってくる。そして太陽を背に長い陰を地面に落とした。
「まずはコイツを片付けるか。いいな? シーシャ」
「それが良いと思うッスよ。デュール様」
「部屋を無茶苦茶にされて……せっかく集めた魔力も無駄になっちまったしよぉ……! 俺はムカついてんだ!」
「来い! 『地獄召喚』!」
「……!? な……なんだ!?」
魔族は地面に手をつけると、そこに大きな赤い魔法陣が出現した。そこから無数の魔族が召喚された。どいつもなんだか暗い雰囲気だ。いや、魔族は大抵そんなものなのだが。
「あの人にばっかり気を付けて……私のこと忘れてない!?」
「……ぐッ!」
女の方、シーシャに高い蹴りを喰らわされた。おれは両腕でガードしたが……重い……! またもや受けただけで腕の骨にヒビが入ったようだ。
何なんだ……こいつの能力は……!? 疑問に思う暇もなく、おれは数十メートル蹴り飛ばされた。複数の家を破壊し、背中を強く打ち付けた。
「不思議そうな顔してるわね。私は九月の八、いや、今は六番だったわね。“成長”のシーシャ。あなたに触れただけでも身体を成長、つまり老化させることができるのよ」
「痛てて……。じゃあ触らなければいいのか……」
「『部分身体強化』『天昇』!」
「うわッ!」
脚を強化し、超高速でシーシャに近づき下から上に蹴り上げた。とにかく脚と腕だけに魔素を集中し、反応されない速度で攻撃を繰り出す。
反撃しようと手をおれに伸ばしてくるが、掌には触れずそれをいなす。目が九月の速度に慣れているのを実感した。
「ん? ……うおッ!?」
後ろから召喚された魔族が手刀でおれを突き刺そうとしてきた。すんでのところで躱し、回し蹴りで撃退した。
だが、1体追いやっても、まだ何体もいる。流石に事が大きくなって、街もパニックになり始めていた。
「うッ……クソッ!」
「どうした!? ちゃんと私と踊ってくれよ!!」
何よりシーシャの相手が厳しい。複数の相手をしながら攻撃をいなさなければいけない。
「俺がいるのも忘れるなよ!?」
召喚を終えた男、デュールも加わっておれを攻撃する。その腕には何やら不気味な物を纏っている。炎のようだが、ドス黒い紫色だ。だがそんな事を考えている余裕はない。
「喰らえ!」
「『進掌』!」
「う”ッ……!」
シーシャの手がおれの隙を突いて顎を打った。直前で魔素を纏ってガードしたものの、それでも顎が外れてしまうようだった。
「避けなくていいのか!」
「『滅打!」
続けざまに蹴りを繰り出そうとしていた。マズイ……避けなくては……。 だが間に合わない……!
「!? なッ!」
「……!?」
瞬間、おれの横を巨大な竜が飛んできて、シーシャを咥えて飛び去っていった。グラだ。おれの合図に気づいて駆けつけてくれたようだ。
「シーシャ!? 大丈夫か!?」
「……お気になさらず!」
「エスト!」
「セリア! 来てくれたか!」
一旦デュールを蹴り飛ばし、おれは走ってくるセリアと合流した。“白天”にちゃんと気づいてくれたようだ。
「一緒に戦う? あっちはとりあえずグラに任せて……」
「いや、コイツはおれ一人で充分だ。むしろあっち、グラの方がどうやら九月だそうだ。グラの手伝いを頼む!」
「えっ? でもエストには何が起こるか分からないから……」
「いや、今はおれよりグラの方が危険だ。でもセリアと2人なら勝てるだろ」
「……分かったわ。出来るだけ早くこっちに来るからね!」
そう言ってセリアはグラの方へと走って行った。
「なんだ? 俺の相手は1人か……舐めてんのか!?」
「幼い子を拘束するような小物には1人でいいだろ」
「ああ、アイツのことか。アイツは俺の娘でな、能力で魔力が無限にあるんだ。いずれ魔神様……つまり父上様を蘇らせるのに欠かせない存在なのさ」
……コイツら邪教は魔神の復活を求めてるとか言ったな。“蘇らせる”ってことは魔神が封印されてるってことは知らないのか。というか、封印されてることを知ってるヤツはどれくらいいるんだ?
「お前……魔王なのか?」
「ん? 言わなかったか? 俺は魔王デュール、地獄の魔王だ」
「地獄……やっぱりそうか。変な召喚かと思ったが……地獄から呼び出してんだな?」
「そうだ! 俺より弱い奴なら無制限に召喚できる! 行け! お前ら!!」
そう号令をかけると、召喚された大量の魔族がおれに突進してきた。全部薙ぎ倒してアイツをぶん殴ってやる……!
「ああ……済まない」
「いや、構わないよ」
おれは背中からフリナを降ろした。目が覚めたばかりで足取りがまだ覚束ないようだが、辛うじて歩くことはできるらしい。
2体の魔族を相手するとなると、流石に守りながらではキツいからな。歩けるなら自分で離れてもらった方が安全だ。フリナと簡単に話を終え、今度は少女の方に向き合った。
「ところで君、名前は? なんであんなとこにいたんだ?」
「名前は……ない……。お父様に逃げないように無理やり座らされてて……」
「名前がないのか。じゃあ今日から君はユリハだ。これから君のことはおれ達が守るよ」
この子は魔族の子だ。ここから助け出したからといってその後の安全が保障される訳ではない。
おれ達の冒険に着いて来させるのは気が引けるが、そうでもしないとそれこそ人間に殺される可能性もある。とにかくこの子の味方になってあげなくては。
「ユリハ……? うん! ユリハね!」
「それと、君の父さんを倒すけど、いいか?まぁ嫌と言われてもやるけどな」
「ううん、父様悪い人だもん。おじちゃんがユリハを助けてくれるならいいよ」
おじちゃんではないのだが……。でも名前を気に入ってくれているようで良かった。聞きたいことはまだあるが、長話をする暇はない。すぐにヤツらが来るはずだ。
「フリナ! 一旦身の安全を最優先にしろ。ユリハを連れて逃げられるか!?」
「悪いが走れはしなさそうだ」
「じゃあ足止めするから出来るだけ離れてくれ。安全第一だ。分かったな?」
「承知した。ありがとう」
フリナとユリハが後ろへ行くのを見守っておれは教会の方を向いた。ゆっくりと魔族の気配が上へと昇ってくる。そして太陽を背に長い陰を地面に落とした。
「まずはコイツを片付けるか。いいな? シーシャ」
「それが良いと思うッスよ。デュール様」
「部屋を無茶苦茶にされて……せっかく集めた魔力も無駄になっちまったしよぉ……! 俺はムカついてんだ!」
「来い! 『地獄召喚』!」
「……!? な……なんだ!?」
魔族は地面に手をつけると、そこに大きな赤い魔法陣が出現した。そこから無数の魔族が召喚された。どいつもなんだか暗い雰囲気だ。いや、魔族は大抵そんなものなのだが。
「あの人にばっかり気を付けて……私のこと忘れてない!?」
「……ぐッ!」
女の方、シーシャに高い蹴りを喰らわされた。おれは両腕でガードしたが……重い……! またもや受けただけで腕の骨にヒビが入ったようだ。
何なんだ……こいつの能力は……!? 疑問に思う暇もなく、おれは数十メートル蹴り飛ばされた。複数の家を破壊し、背中を強く打ち付けた。
「不思議そうな顔してるわね。私は九月の八、いや、今は六番だったわね。“成長”のシーシャ。あなたに触れただけでも身体を成長、つまり老化させることができるのよ」
「痛てて……。じゃあ触らなければいいのか……」
「『部分身体強化』『天昇』!」
「うわッ!」
脚を強化し、超高速でシーシャに近づき下から上に蹴り上げた。とにかく脚と腕だけに魔素を集中し、反応されない速度で攻撃を繰り出す。
反撃しようと手をおれに伸ばしてくるが、掌には触れずそれをいなす。目が九月の速度に慣れているのを実感した。
「ん? ……うおッ!?」
後ろから召喚された魔族が手刀でおれを突き刺そうとしてきた。すんでのところで躱し、回し蹴りで撃退した。
だが、1体追いやっても、まだ何体もいる。流石に事が大きくなって、街もパニックになり始めていた。
「うッ……クソッ!」
「どうした!? ちゃんと私と踊ってくれよ!!」
何よりシーシャの相手が厳しい。複数の相手をしながら攻撃をいなさなければいけない。
「俺がいるのも忘れるなよ!?」
召喚を終えた男、デュールも加わっておれを攻撃する。その腕には何やら不気味な物を纏っている。炎のようだが、ドス黒い紫色だ。だがそんな事を考えている余裕はない。
「喰らえ!」
「『進掌』!」
「う”ッ……!」
シーシャの手がおれの隙を突いて顎を打った。直前で魔素を纏ってガードしたものの、それでも顎が外れてしまうようだった。
「避けなくていいのか!」
「『滅打!」
続けざまに蹴りを繰り出そうとしていた。マズイ……避けなくては……。 だが間に合わない……!
「!? なッ!」
「……!?」
瞬間、おれの横を巨大な竜が飛んできて、シーシャを咥えて飛び去っていった。グラだ。おれの合図に気づいて駆けつけてくれたようだ。
「シーシャ!? 大丈夫か!?」
「……お気になさらず!」
「エスト!」
「セリア! 来てくれたか!」
一旦デュールを蹴り飛ばし、おれは走ってくるセリアと合流した。“白天”にちゃんと気づいてくれたようだ。
「一緒に戦う? あっちはとりあえずグラに任せて……」
「いや、コイツはおれ一人で充分だ。むしろあっち、グラの方がどうやら九月だそうだ。グラの手伝いを頼む!」
「えっ? でもエストには何が起こるか分からないから……」
「いや、今はおれよりグラの方が危険だ。でもセリアと2人なら勝てるだろ」
「……分かったわ。出来るだけ早くこっちに来るからね!」
そう言ってセリアはグラの方へと走って行った。
「なんだ? 俺の相手は1人か……舐めてんのか!?」
「幼い子を拘束するような小物には1人でいいだろ」
「ああ、アイツのことか。アイツは俺の娘でな、能力で魔力が無限にあるんだ。いずれ魔神様……つまり父上様を蘇らせるのに欠かせない存在なのさ」
……コイツら邪教は魔神の復活を求めてるとか言ったな。“蘇らせる”ってことは魔神が封印されてるってことは知らないのか。というか、封印されてることを知ってるヤツはどれくらいいるんだ?
「お前……魔王なのか?」
「ん? 言わなかったか? 俺は魔王デュール、地獄の魔王だ」
「地獄……やっぱりそうか。変な召喚かと思ったが……地獄から呼び出してんだな?」
「そうだ! 俺より弱い奴なら無制限に召喚できる! 行け! お前ら!!」
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