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第十章 禁断の森
第64話 ウソだけど
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「よし! じゃあ出発するか!」
おれとセリア、グラは荷物を整理してクランの門前に立った。もちろん荷物はおれの空間収納に入れてある。久しぶりの荷物持ちだ。
「じゃあフリナ、留守番よろしくね。ユリハもいい子にしてるのよ」
「うん! 行ってらっしゃい! おじちゃんもまたね!」
「こっちは任せておいて。みんなはちゃんとしてくるんだぞ!」
フリナとユリハに手を振っておれ達は出発した。ラルド、団長達にも挨拶を済ませてヘルダルムを後にし、東に向かった。
……よしッ! 久しぶりの旅だ! …………何か面白いことでも起きねぇかなぁ……。
「エスト、あなた今トラブルでも起こらないかなって思ったでしょ」
「えっ!? そんなことねーよ!」
「お前は分かりやすいんじゃから隠しても無駄じゃぞ」
「まぁ……いくつか街を経由していくからそこで何か起こるか期待するといいわ。街の外じゃ何も起こらないだろうし」
セリアは少し微笑みながらそう言った。おれと同じような、何かを期待するような顔をして。
「おい、セリア。なんでお前はエスト側なんだ?」
「え? だって何か起こった方が面白いじゃない」
セリアも退屈なのは嫌いなんだな。その後はおれ達は3人で東の方向に進んでいった。正面に輝く太陽が眩しく、手で目元を隠しながら歩いた。
日差しはあるものの季節的に暑くはない。逆に夜は寒いから昼間のうちに進んでおかないとな。今日は街に着けるのか、野宿になるのか……。まぁどっちでもいいかな。
「そういえばエストがおじいさんと住んでたのって東大陸よね? せっかくなら行ってみない? 住んでた山の名前とか近くの街の名前を知ってれば分かると思うけど」
「そういやそうだったな……。街の名前……は分かんないけど……山はポラスリ山って名前だった気がするな。多分おれの住んでた家しかないけどな」
「ポラスリ山ね。街に着いたら調べてみよっか。私も東大陸の地理にはそこまで詳しくないから分からないけど、調べれば分かるでしょ」
「そうだなぁ……そうするか!」
そしておれ達は半日ほど歩き続け、日が暮れ始めたのでテントを張った。火を起こし焚き火を作る。パチパチと鳴る火の上で、鍋を加熱した。今回はセリアが料理を作ってくれた。
グラは3年間努力したものの、料理の腕は伸びなかったようだ。……つまり犠牲になったヤツがいるってことだな。もしかしたら自分でちゃんと片付けたのかも知れないが……率先してセリアが作っていたのを見るに、彼女も犠牲になったのかも知れない。可哀想に。
地獄で不味いものを食い続けたおれでも、あのときのグラの飯は食べたくないからな。本当に危険だ。
「さ! 出来たわよ」
セリアはそう言って鍋の中身を器によそった。野菜や肉がゴロゴロと入ったスープだ。そしておれはセリアに頼まれ、空間収納からパンを取り出した。
焚き火を中心にして3人で向き合って飯を食べる。寒い空気に触れながらも、火やスープの熱で温まってジンジンとする。湯気と吐息がどちらも白い。おれ達は3人で談笑しながら食事を終えた。満足感のある一食であった。
朝、おれは目を覚ました。………結界を張ってたから見張もせずに寝られたんだっけか。飯を食って眠くなったからそのまま寝て……今はまだ朝だな。外はまだ少し薄暗い。セリアやグラもまだ起きてなさそうだしな……もう少し寝るか。そう思って体を後ろ側に捻ったときだ。
「…………うわッ!」
「ふぁ…………えすと……おはよぉ………はやいね…………」
おれの後ろではセリアが寝ていた。しかも振り返ると顔がくっつくくらいに近かったので流石に驚いた。
……前から野宿するときは一つのテントだったが、普段おれが起きるときには既にセリアは起きてたからな。寝起きのセリアはなんだか新鮮な感じがした。
「た……たまたま目が覚めただけだから! 無理して起きなくていいからな!」
おれは少し焦った口調でそう言った。悪いことをしたわけでもないのに、と心の中では思いつつも、動揺しているのは分かっていた。
一回整えるために近くの川まで行き、そこで顔を洗った。……ちゃんと朝起きるのはスッキリするものだな。かと言ってこれからは早起きをするというわけでもないが。
それからおれは10分ほど川の声を聞いて心を落ち着かせた後、テントへ戻った。そこには既にグラやセリアの姿があった。たまたまおれは今日起きるのが早かったのだが、2人はいつもこれくらいに起きてるのか……。まぁ人それぞれだよな。
それからテントを片付けておれ達はまた歩き始めた。3時間ほど歩いた頃だろうか、目の前に巨大な森が現れた。何やら禍々しい気配を放っている森が。
「森を横断すんのか?」
「いいえ。遠回りになるけど森には入らないわ。この森は“禁断の森”っていってね。この森に入った人は誰一人として帰ってこれないのよ」
「…………本当……?」
「本当よ。帰ってきた人が言ってたもの」
「帰ってきてんじゃねぇかよ」
「まぁ帰ってこれないっていうのはウソなんだけどね、抜けられないのよ。戻ってきちゃうの。だから横断が出来ないってわけ。どういう訳か分からないけどね」
へー。“帰ってこれない”じゃなくて“必ず帰ってくる”ってことか。なんでなんだろうな。………でも気になるよな。せっかくなら入ってみてぇし。
「行っちまおうよ。困ったら走ればいいし、グラに飛んでってもらえばいいしよ」
「それもそうね」
「儂は乗り物じゃないと言っとるじゃろうが! ……おい! 聞け! ……おい!」
おれとセリアはグラの話を聞かずに中に入っていった。当然、グラもおれ達についてくる。薄暗く不気味な森だが、どこか神聖な感じさえする。分からないが、何かある。それだけは肌で理解できた。
おれとセリア、グラは荷物を整理してクランの門前に立った。もちろん荷物はおれの空間収納に入れてある。久しぶりの荷物持ちだ。
「じゃあフリナ、留守番よろしくね。ユリハもいい子にしてるのよ」
「うん! 行ってらっしゃい! おじちゃんもまたね!」
「こっちは任せておいて。みんなはちゃんとしてくるんだぞ!」
フリナとユリハに手を振っておれ達は出発した。ラルド、団長達にも挨拶を済ませてヘルダルムを後にし、東に向かった。
……よしッ! 久しぶりの旅だ! …………何か面白いことでも起きねぇかなぁ……。
「エスト、あなた今トラブルでも起こらないかなって思ったでしょ」
「えっ!? そんなことねーよ!」
「お前は分かりやすいんじゃから隠しても無駄じゃぞ」
「まぁ……いくつか街を経由していくからそこで何か起こるか期待するといいわ。街の外じゃ何も起こらないだろうし」
セリアは少し微笑みながらそう言った。おれと同じような、何かを期待するような顔をして。
「おい、セリア。なんでお前はエスト側なんだ?」
「え? だって何か起こった方が面白いじゃない」
セリアも退屈なのは嫌いなんだな。その後はおれ達は3人で東の方向に進んでいった。正面に輝く太陽が眩しく、手で目元を隠しながら歩いた。
日差しはあるものの季節的に暑くはない。逆に夜は寒いから昼間のうちに進んでおかないとな。今日は街に着けるのか、野宿になるのか……。まぁどっちでもいいかな。
「そういえばエストがおじいさんと住んでたのって東大陸よね? せっかくなら行ってみない? 住んでた山の名前とか近くの街の名前を知ってれば分かると思うけど」
「そういやそうだったな……。街の名前……は分かんないけど……山はポラスリ山って名前だった気がするな。多分おれの住んでた家しかないけどな」
「ポラスリ山ね。街に着いたら調べてみよっか。私も東大陸の地理にはそこまで詳しくないから分からないけど、調べれば分かるでしょ」
「そうだなぁ……そうするか!」
そしておれ達は半日ほど歩き続け、日が暮れ始めたのでテントを張った。火を起こし焚き火を作る。パチパチと鳴る火の上で、鍋を加熱した。今回はセリアが料理を作ってくれた。
グラは3年間努力したものの、料理の腕は伸びなかったようだ。……つまり犠牲になったヤツがいるってことだな。もしかしたら自分でちゃんと片付けたのかも知れないが……率先してセリアが作っていたのを見るに、彼女も犠牲になったのかも知れない。可哀想に。
地獄で不味いものを食い続けたおれでも、あのときのグラの飯は食べたくないからな。本当に危険だ。
「さ! 出来たわよ」
セリアはそう言って鍋の中身を器によそった。野菜や肉がゴロゴロと入ったスープだ。そしておれはセリアに頼まれ、空間収納からパンを取り出した。
焚き火を中心にして3人で向き合って飯を食べる。寒い空気に触れながらも、火やスープの熱で温まってジンジンとする。湯気と吐息がどちらも白い。おれ達は3人で談笑しながら食事を終えた。満足感のある一食であった。
朝、おれは目を覚ました。………結界を張ってたから見張もせずに寝られたんだっけか。飯を食って眠くなったからそのまま寝て……今はまだ朝だな。外はまだ少し薄暗い。セリアやグラもまだ起きてなさそうだしな……もう少し寝るか。そう思って体を後ろ側に捻ったときだ。
「…………うわッ!」
「ふぁ…………えすと……おはよぉ………はやいね…………」
おれの後ろではセリアが寝ていた。しかも振り返ると顔がくっつくくらいに近かったので流石に驚いた。
……前から野宿するときは一つのテントだったが、普段おれが起きるときには既にセリアは起きてたからな。寝起きのセリアはなんだか新鮮な感じがした。
「た……たまたま目が覚めただけだから! 無理して起きなくていいからな!」
おれは少し焦った口調でそう言った。悪いことをしたわけでもないのに、と心の中では思いつつも、動揺しているのは分かっていた。
一回整えるために近くの川まで行き、そこで顔を洗った。……ちゃんと朝起きるのはスッキリするものだな。かと言ってこれからは早起きをするというわけでもないが。
それからおれは10分ほど川の声を聞いて心を落ち着かせた後、テントへ戻った。そこには既にグラやセリアの姿があった。たまたまおれは今日起きるのが早かったのだが、2人はいつもこれくらいに起きてるのか……。まぁ人それぞれだよな。
それからテントを片付けておれ達はまた歩き始めた。3時間ほど歩いた頃だろうか、目の前に巨大な森が現れた。何やら禍々しい気配を放っている森が。
「森を横断すんのか?」
「いいえ。遠回りになるけど森には入らないわ。この森は“禁断の森”っていってね。この森に入った人は誰一人として帰ってこれないのよ」
「…………本当……?」
「本当よ。帰ってきた人が言ってたもの」
「帰ってきてんじゃねぇかよ」
「まぁ帰ってこれないっていうのはウソなんだけどね、抜けられないのよ。戻ってきちゃうの。だから横断が出来ないってわけ。どういう訳か分からないけどね」
へー。“帰ってこれない”じゃなくて“必ず帰ってくる”ってことか。なんでなんだろうな。………でも気になるよな。せっかくなら入ってみてぇし。
「行っちまおうよ。困ったら走ればいいし、グラに飛んでってもらえばいいしよ」
「それもそうね」
「儂は乗り物じゃないと言っとるじゃろうが! ……おい! 聞け! ……おい!」
おれとセリアはグラの話を聞かずに中に入っていった。当然、グラもおれ達についてくる。薄暗く不気味な森だが、どこか神聖な感じさえする。分からないが、何かある。それだけは肌で理解できた。
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