HAMA

わらびもち

文字の大きさ
80 / 100
第十一章 作戦会議

第77話 それまでの1週間

しおりを挟む
「エストー! 起きなー!」

「起きてるよ。ちょっと待ってて!」

 朝日が昇り、コンコンと扉を叩くセリアに対しおれは返事を返した。日の傾き具合からするにちゃんと朝だな。昼まで寝坊とかにならなくてよかった。おれは着替えを済ませ、水分補給だけして部屋を出た。扉の向こう側では、セリアとグラが待っていた。

「お前、今日は起きるの早いんじゃな」

「でもちゃんと起きれて偉いわよ」

 顔を合わせるなりそんなことを言う2人であったが……なんか子供みたいに見られてないか? おれだって早起きしてるときもあるだろ。珍しいっちゃ珍しいけどよ。

「エスト様! おはようございます」

「え……お、おはよう……」

 おれ達のやり取りを聞いてか、デモンゲートがどこからともなく現れた。本当に……気味の悪いヤツだな。

 おれはデモンゲートには先に大聖堂にでも行っておくように伝え、セリア達と軽く朝食を済ませてからおれ達も大聖堂へ向かった。バンリューはまだ来ていないようだ。

「エスト様、どうぞこちらにお掛けになって下さい。何かご所望ございますか?」

「い、いや。大丈夫だ」

「承知しました」

「な、なぁ。……本当にアイツ大丈夫かな? なんというか……頭おかしいんじゃないか?」

 デモンゲートが離れるのを見た後、おれは隣に座ったセリアに話しかけた。昨日おれが承諾してしまったのは早計だったのかも知れない。もっと慎重になるべきだったかな。

「………まぁ変なのは否定出来ないけど……いや、本当に変ではあるんだけど、別にいいんじゃない? 害はないんだし」

「儂はちょっと気味が悪いがな。あんな性格キャラではなかったじゃろ。………まぁ面白いからいいんじゃけど」

 グラめ……コイツは本当に……! いや、グラがこんな目に遭ってたらおれも面白がるだろうけどよ。もう少しおれの心配とかはないのか。

「……よし……。始めるか……」

 すると、バチバチと鳴る音と共にバンリューが現れた。コイツはこういう登場の仕方しか出来ないのか? もっとこう……普通に来いよ。………まぁこっちの方が早く来れるんだろうけど……急に話しかけられるとビビるからな。

「…………お前達も……一緒にやるか……?」

「いえ、せっかくだけど私達はいいわ。今日は兄様が来るから。エストをしごいてあげて」

「……そうか……」

 セリアとグラはギルバートさんとやるのか。そう言えば3年間鍛えてくれたらしいしな。すっかり師弟関係といった感じか。

「……まず……いや……お前の昇華は……一旦諦めるか……」

「えっ!? なんでだよ! 昇華した方がいいだろ!」

「お前が……強いのは……理解している……。それこそ……昇華している八法帝はっぽうてい以上に……。その上で昇華していないとなると……求められている次元レベルが高いのだろう……。そもそも……固有能力者ネームドは……昇華が難しいと言うしな……」

 ……そうか……。なんか残念だな。なんとか1週間で仕上げられないものか……。昇華って能力スキルを熟知した上で自身の能力が一定まで高まったらなるもんだと思ってたんだけど……ちょっと違うのかな?

 その後、おれはバンリューととにかく打ち込みをしまくった。途中水分補給や飯を食うために休憩を取ったりしたが、それ以外はとにかく身体強化ブーストを使って身体を動かしまくった。

 もちろん、どれだけやってもおれの攻撃は届かず、逆にバンリューの攻撃はほとんど全て受けてしまった。とはいえ、後半は動きが洗練されて流したり受け止めたり出来ることが多くなっていた。それでもまだ圧倒的に押されていたのだが。

 日が暮れる4時間ほど前、つまり午後の2~3時頃、イリアがやってきた。バンリューの気配を感じ取って来たそうだ。俺の相手もしろ、と。

 イリアの能力スキルは“想像イメージを具現化する能力スキル”だ。……かなりぶっ飛んだ能力スキルだが、本人曰く自然の摂理には干渉できない、想像イメージを超える力は引き出せないとのことだ。

 自然の摂理というのはどこまでのことを言うのか、重力を無視して空を飛んでいるが……物理法則は無視できるのか? それこそ神様が干渉するようなものには干渉できないってことだろうか。……でもイリアがバンリューの力を想像イメージ出来たらそれだけの力が出せるんだもんな……。やっぱりぶっ飛んでんだろ。

 イリアは一通りバンリューとやり合って満足したのか、さっさと帰っていった。その後は日が暮れるまでおれとバンリューで打ち合った。雷の力で速いってのもあるが、やっぱり彼の動きには無駄がない。

 それこそ洗練されていたと思っていたおれの動きが霞んでしまうほどに。魔力の操作だって繊細でそれでいて豪快で………だが真似できないほどではない。

 バンリューは鍛えるという割にはアドバイスも少なく、ただ殴り殴られを繰り返しているだけだ。当然そこには身体を鍛えるというのも、敵の速度スピードに慣れるという理由もあるだろうが、何よりもバンリューの技術を奪えということなのだろう。……単純に教えるのが下手という可能性も捨てきれないが……。

 おれ達は1週間ずっとそんな感じであった。たまにこの場に来たギルバートさんや他の法帝ほうおう達とは何回か手合わせしたが、ほとんどの時間はバンリューと一対一だったし……3日目くらいか、寝坊して遅れたときはとにかくボコボコにされた……。

 そのおかげか、ほんの少し身体が頑丈になった気がしないでもない。………まぁ気のせいだろうな。

「エスト、明日はちゃんと起きるのよ」

「あぁ。分かってるよ」

 おれはそう返事をして宿の部屋の中に入っていった。明日はいよいよ魔界に向けて出発する日だ。朝に大聖堂へと行き、そこからアールデント様がグリセラ大陸南端の港へと転移させてくれるようだ。

 アールデント様はもう大規模な魔法は使えないようだが、随分と前から魔法陣を準備していたらしい。今は……10時か。もう寝といた方がいいかな。おれはカーテンを閉め、明かりを落としベッドに入った。

 明日……ついに明日だ。ワクワクするような、ドキドキするような、そういう感情に支配されてなかなか眠りにつけなかった。しかし、瞼を下ろして長い間闇を見つめているうちに、気づけば夢に落ちていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界異話 天使降臨

yahimoti
ファンタジー
空から天使が降って来た。 落ちたんだよ。転生かと思ったらいきなりゲームの世界「ロストヒストリーワールド」の設定をもとにしたような剣と魔法の世界にね。 それも面白がってちょっとだけ設定してみたキャラメイクのせいで天使族って。こんなのどうすんの?なんの目的もなければ何をしていいかわからないまま、巻き込まれるままにストーリーは進んでいく。

【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。 クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

処理中です...