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第十二章 人魔大戦
第80話 大開戦
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夜の黒い森、視界は最悪。魔力探知を意識していないと危ないかな。
「よし、では三手に分かれて……バンリューはもう行ってしまったから……ギルバート、セリア、リンシャ、エスト。武運を祈る」
「そっちこそな。ドーラン。グラも頑張れよ!」
おれ達はそこから2つの班に分かれて走り出した。最も大きな魔力がある方にグラ達、その次におれ達、バンリューは既に嗅ぎつけているようだ。どれもおれ達が全力で走っても10分以上はかかるだろう。
ただおれ達の進む先にもう一つ、大きな魔力が存在した。いや、これは一つしか存在しないと言った方が正しいだろうか。
なぜ三界とその部下1体の魔力しか感知できないのか。なぜ魔族の住む土地で、そいつら以外の魔族がいないのか。……幸か不幸か他の魔族は人間界の方に行ってるのだな。
「見えたな……アイツの相手はおれだな!?」
「うん。頼んだよ!」
「お気をつけて!」
おれはみんなに確認をして目の前、といっても1キロほど離れたところにいる魔族の方へ向かった。数十秒ほど飛ぶと、剣を携えた魔族が向かって来ていた。
「む?」
「へっ! テメェには邪魔させねぇぞ!」
相手の剣を蹴りで受け止めた。結構力強い……というか確実に九月なんかよりはよっぽど強い。これが我界直属の部下、我金隊隊長か。蹴りと剣の衝撃に押され、おれとこの魔族は5メートルほどの距離を取った。
「思ったよりも強ぇな……。名前は?」
「これは……驚きましたね。エスト様は死んだと聞いていたのですが……。主が喜びそうです」
「私は我金隊隊長・バルファード。貴方のことは知っています」
「おれって人気者なのか。そりゃ嬉しいな。よろしく」
***
エストと分かれてから10分ほど、グランデュース班の残りの3人は敵の前に到着していた。侵界・クロワールだ。魔族は圧のある老人の姿であった。生気は感じられない。
「……3人……その内グランデュースの人間が2人か。……俺はハズレか? たった3人なんてよぉ……テメェら舐めてんのか?」
顔を合わせて人数を確かめるや否や、クロワールはそう言った。既に死んだ大英雄の身体で。
その姿というだけで、人類の怒りを買うというのは言うまでもないだろう。対峙した3人は皆、腹の中で沸々と怒りを沸かせていた。
「大英雄の身体を乗っ取るような小物を僕らが警戒するとでも?」
「ホント、その身体で喋らないでもらいたいわ。侮辱にも程がある」
「死者を愚弄するのは許されるものではありませんからね」
「あぁ? ……そうか、そういうのは俺に勝ってから言ってくれ。負け犬の声は聞いてて苦しいぞ。」
***
グランデュース班がクロワールと出会ったのとほとんど同時に、このイリア班もまた敵と対峙していた。
丁寧に切り倒された巨木の山に、少年は堂々と座っていた。それは地の利も関係ないような、真っ平らな戦場をわざわざ用意していたということだ。そしてそれは、言葉を発さずとも“かかって来い”とただ一言、そう言っているものだった。
「…………来たね。愚かな人間達よ」
月明かりを背景に少年はそう言った。圧倒的な圧と魔力の籠った言葉に、その場にいた挑戦者は一瞬、一切の声を、息を発することが出来なかった。まさに、この世界の王を相手にしているようだった。
「…………テメーよー、こっちは6人いるんだ。ちょっとは焦るのが礼儀ってもんじゃねーのか!?」
「……ははっ! 確かにそうだね。悪かったよ。……でもね、僕の相手がバンリューじゃないってのは悪手じゃないか? 別に僕らは全員で君達を殲滅しようなんて思ってないんだから。順番に来ればよかったのに」
「舐めやがって……!」
「落ち着け、イリア。儂らが奴のペースに乗ったら時間も稼げんぞ」
「まぁいい。おいで。生き残れたら……いいね……!」
***
誰よりも早く魔界を駆け出したバンリューは、当然誰よりも早く敵の元に到着した。崩界・ダンディールは他の2体よりも圧倒的に遠い地点に居たものの、雷になって移動するバンリューはものの数秒でダンディールの元に到着していた。
「…………我の相手はまたお前か……。全く……クロワールさんに怒られるじゃないか」
「……とっとと……貴様を殺して……手伝いに行かなければならない……。始めるぞ……。構えろ……!」
「よし、では三手に分かれて……バンリューはもう行ってしまったから……ギルバート、セリア、リンシャ、エスト。武運を祈る」
「そっちこそな。ドーラン。グラも頑張れよ!」
おれ達はそこから2つの班に分かれて走り出した。最も大きな魔力がある方にグラ達、その次におれ達、バンリューは既に嗅ぎつけているようだ。どれもおれ達が全力で走っても10分以上はかかるだろう。
ただおれ達の進む先にもう一つ、大きな魔力が存在した。いや、これは一つしか存在しないと言った方が正しいだろうか。
なぜ三界とその部下1体の魔力しか感知できないのか。なぜ魔族の住む土地で、そいつら以外の魔族がいないのか。……幸か不幸か他の魔族は人間界の方に行ってるのだな。
「見えたな……アイツの相手はおれだな!?」
「うん。頼んだよ!」
「お気をつけて!」
おれはみんなに確認をして目の前、といっても1キロほど離れたところにいる魔族の方へ向かった。数十秒ほど飛ぶと、剣を携えた魔族が向かって来ていた。
「む?」
「へっ! テメェには邪魔させねぇぞ!」
相手の剣を蹴りで受け止めた。結構力強い……というか確実に九月なんかよりはよっぽど強い。これが我界直属の部下、我金隊隊長か。蹴りと剣の衝撃に押され、おれとこの魔族は5メートルほどの距離を取った。
「思ったよりも強ぇな……。名前は?」
「これは……驚きましたね。エスト様は死んだと聞いていたのですが……。主が喜びそうです」
「私は我金隊隊長・バルファード。貴方のことは知っています」
「おれって人気者なのか。そりゃ嬉しいな。よろしく」
***
エストと分かれてから10分ほど、グランデュース班の残りの3人は敵の前に到着していた。侵界・クロワールだ。魔族は圧のある老人の姿であった。生気は感じられない。
「……3人……その内グランデュースの人間が2人か。……俺はハズレか? たった3人なんてよぉ……テメェら舐めてんのか?」
顔を合わせて人数を確かめるや否や、クロワールはそう言った。既に死んだ大英雄の身体で。
その姿というだけで、人類の怒りを買うというのは言うまでもないだろう。対峙した3人は皆、腹の中で沸々と怒りを沸かせていた。
「大英雄の身体を乗っ取るような小物を僕らが警戒するとでも?」
「ホント、その身体で喋らないでもらいたいわ。侮辱にも程がある」
「死者を愚弄するのは許されるものではありませんからね」
「あぁ? ……そうか、そういうのは俺に勝ってから言ってくれ。負け犬の声は聞いてて苦しいぞ。」
***
グランデュース班がクロワールと出会ったのとほとんど同時に、このイリア班もまた敵と対峙していた。
丁寧に切り倒された巨木の山に、少年は堂々と座っていた。それは地の利も関係ないような、真っ平らな戦場をわざわざ用意していたということだ。そしてそれは、言葉を発さずとも“かかって来い”とただ一言、そう言っているものだった。
「…………来たね。愚かな人間達よ」
月明かりを背景に少年はそう言った。圧倒的な圧と魔力の籠った言葉に、その場にいた挑戦者は一瞬、一切の声を、息を発することが出来なかった。まさに、この世界の王を相手にしているようだった。
「…………テメーよー、こっちは6人いるんだ。ちょっとは焦るのが礼儀ってもんじゃねーのか!?」
「……ははっ! 確かにそうだね。悪かったよ。……でもね、僕の相手がバンリューじゃないってのは悪手じゃないか? 別に僕らは全員で君達を殲滅しようなんて思ってないんだから。順番に来ればよかったのに」
「舐めやがって……!」
「落ち着け、イリア。儂らが奴のペースに乗ったら時間も稼げんぞ」
「まぁいい。おいで。生き残れたら……いいね……!」
***
誰よりも早く魔界を駆け出したバンリューは、当然誰よりも早く敵の元に到着した。崩界・ダンディールは他の2体よりも圧倒的に遠い地点に居たものの、雷になって移動するバンリューはものの数秒でダンディールの元に到着していた。
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