22 / 81
第一章 森の生活と孤児院改革:孤児院のニューフェイス
第22話 衛兵さんに保護されました。記憶喪失の迷子(設定)です
しおりを挟む
「……名前は、コトリ、です。でも、どこから来たのかは……気づいたら、森の中に、ひとりで……」
私の迫真の演技に、衛兵さん二人は顔を見合わせた。
「おい、まさか……記憶がないのか?」
「……そのようだな。どこかのお貴族様か、商人の子かね。身なりは綺麗だが」
「ああ。少なくとも、この辺の村の子じゃなさそうだ」
ふむふむ。どうやら、私の演技と、魔法で常に清潔に保たれたこの格好のおかげで、「どこか育ちの良いお嬢さんが、何らかのトラブルに巻き込まれて記憶を失った」というストーリーで納得してもらえたらしい!
「して、そっちの白いのは、まさか魔物か? 珍しい犬っころのようにも見えるが……」
強面の衛兵さんの視線が、私の足元で不安げにしているコロに向けられる。コロは、大きな衛兵さんを前にして少しだけ緊張しているのか、私の足にぴとっとくっついている。
「この子はコロです! 森で、危ないところを助けてくれました! 魔物じゃありません、とっても、とってもいい子なんです!」
私はコロをぎゅっと抱きしめた。
私の腕の中で、コロが「クゥン」と、子犬のような甘い鳴き声を出す。
ナイスアシスト、コロ! 演技派だね、君!
優しい方の衛兵さんが、屈んでコロの頭をそっと撫でた。
「ほう、人懐っこいじゃないか。確かに、悪い生き物には見えんな」
最初の衛兵さんが、ふむ、と頷く。
「分かった。まあ、詳しい話は中で聞こう。まずは街に入りなさい。通行税は、子供一人と犬一匹で銅貨7枚だ」
……通行税!
うん、知ってた! 前の人達がお金みたいなものを渡してたし!
でも犬もカウントされるの!?
私はこの世界の通貨なんて、当然一枚も持っていない。
ポイントなら死ぬほどあるけど、ここでいきなり「ポイントで払えますか?」なんて言ったら、一発で不審者確定だ!
記憶喪失の少女設定ならお金払わずに保護してもらえるかもと思ったけど、現実はいつだって、つらく厳しいもんだな!
私が固まっていると、衛兵さんが怪訝な顔をする。
「どうした? お金、持ってないのか?」
「あ……う、はい。何も……」
しゅん、とうつむく私。これも演技だ!
衛兵さん二人は、顔を見合わせて困ったように唸った。
「うーむ、金なしか……」
「規則は規則だ。タダで入れるわけにはいかねぇぞ」
まずい、このままじゃ門前払いだ!
何か、何か手は……!
私が必死で打開策を考えていると、優しい方の衛兵さんが、もう一人に耳打ちする。
「おい、隊長に掛け合ってみろよ。記憶喪失の迷子だ。特例で通してやれねぇか?」
「……それもそうだな。よし、ちょっと待ってな、嬢ちゃん」
最初の衛兵さんが、門の脇にある小さな詰所に駆け込んでいく。
しばらくすると、少し恰幅のいい、隊長さんらしき人が出てきて、私をじろじろと見た後、部下の衛兵さんに何かを頷く。
最初の衛兵さんが、明るい顔で戻ってくる。
「よし、隊長の許可が出た! 今回は特別に通してやる! その代わり、真っ直ぐ衛兵の詰所まで来てもらう。迷子として正式に保護しなきゃならんからな。文句はないな?」
願ったり叶ったりだ!
むしろ、そっちの方が安全で助かる!
「はい! ありがとうございます!」
ぺこりと頭を下げると、衛兵さんは「おう」と少し照れ臭そうに頷く。
そしてこじんまりした衛兵の詰所に連れていかれる。
そこで、名前と、記憶がないこと、森で目を覚ましたことなどを正直に(フリをして)話す。
衛兵さんたちは、私の話をもとに「迷子保護届」のような書類を作成し、「この街に、お前さんを探してるっつー届け出は今のところないな」と教えてくれた。
さて、問題はこれからどうするかだ。
隊長さんが、腕を組んで言う。
「さて、お嬢ちゃん。あんたの身元が分かるまで、どこかに預かってもらわんとならん」
「行くべき場所がある、ということですか?」
「ああ。俺たちみたいなのが、あんたみたいな子を見つけたら、真っ先に連れて行く場所さ」
隊長さんが指差した窓の外。そこには、どんな素晴らしい場所が待っているというのだろうか!
優しい衛兵さんが、記憶喪失の迷子の少女を預ける場所。
それはもう、一つしかない。ふかふかのベッド! 温かいスープ! そして、天使のようなシスターたちがお出迎えしてくれる、愛に満ちた場所!
「孤児院だな」
キターーー! 異世界ファンタジー小説で100回は見たやつ!
私の異世界ライフ、いよいよテンプレ展開の王道を突き進み始めたようだ!
私の迫真の演技に、衛兵さん二人は顔を見合わせた。
「おい、まさか……記憶がないのか?」
「……そのようだな。どこかのお貴族様か、商人の子かね。身なりは綺麗だが」
「ああ。少なくとも、この辺の村の子じゃなさそうだ」
ふむふむ。どうやら、私の演技と、魔法で常に清潔に保たれたこの格好のおかげで、「どこか育ちの良いお嬢さんが、何らかのトラブルに巻き込まれて記憶を失った」というストーリーで納得してもらえたらしい!
「して、そっちの白いのは、まさか魔物か? 珍しい犬っころのようにも見えるが……」
強面の衛兵さんの視線が、私の足元で不安げにしているコロに向けられる。コロは、大きな衛兵さんを前にして少しだけ緊張しているのか、私の足にぴとっとくっついている。
「この子はコロです! 森で、危ないところを助けてくれました! 魔物じゃありません、とっても、とってもいい子なんです!」
私はコロをぎゅっと抱きしめた。
私の腕の中で、コロが「クゥン」と、子犬のような甘い鳴き声を出す。
ナイスアシスト、コロ! 演技派だね、君!
優しい方の衛兵さんが、屈んでコロの頭をそっと撫でた。
「ほう、人懐っこいじゃないか。確かに、悪い生き物には見えんな」
最初の衛兵さんが、ふむ、と頷く。
「分かった。まあ、詳しい話は中で聞こう。まずは街に入りなさい。通行税は、子供一人と犬一匹で銅貨7枚だ」
……通行税!
うん、知ってた! 前の人達がお金みたいなものを渡してたし!
でも犬もカウントされるの!?
私はこの世界の通貨なんて、当然一枚も持っていない。
ポイントなら死ぬほどあるけど、ここでいきなり「ポイントで払えますか?」なんて言ったら、一発で不審者確定だ!
記憶喪失の少女設定ならお金払わずに保護してもらえるかもと思ったけど、現実はいつだって、つらく厳しいもんだな!
私が固まっていると、衛兵さんが怪訝な顔をする。
「どうした? お金、持ってないのか?」
「あ……う、はい。何も……」
しゅん、とうつむく私。これも演技だ!
衛兵さん二人は、顔を見合わせて困ったように唸った。
「うーむ、金なしか……」
「規則は規則だ。タダで入れるわけにはいかねぇぞ」
まずい、このままじゃ門前払いだ!
何か、何か手は……!
私が必死で打開策を考えていると、優しい方の衛兵さんが、もう一人に耳打ちする。
「おい、隊長に掛け合ってみろよ。記憶喪失の迷子だ。特例で通してやれねぇか?」
「……それもそうだな。よし、ちょっと待ってな、嬢ちゃん」
最初の衛兵さんが、門の脇にある小さな詰所に駆け込んでいく。
しばらくすると、少し恰幅のいい、隊長さんらしき人が出てきて、私をじろじろと見た後、部下の衛兵さんに何かを頷く。
最初の衛兵さんが、明るい顔で戻ってくる。
「よし、隊長の許可が出た! 今回は特別に通してやる! その代わり、真っ直ぐ衛兵の詰所まで来てもらう。迷子として正式に保護しなきゃならんからな。文句はないな?」
願ったり叶ったりだ!
むしろ、そっちの方が安全で助かる!
「はい! ありがとうございます!」
ぺこりと頭を下げると、衛兵さんは「おう」と少し照れ臭そうに頷く。
そしてこじんまりした衛兵の詰所に連れていかれる。
そこで、名前と、記憶がないこと、森で目を覚ましたことなどを正直に(フリをして)話す。
衛兵さんたちは、私の話をもとに「迷子保護届」のような書類を作成し、「この街に、お前さんを探してるっつー届け出は今のところないな」と教えてくれた。
さて、問題はこれからどうするかだ。
隊長さんが、腕を組んで言う。
「さて、お嬢ちゃん。あんたの身元が分かるまで、どこかに預かってもらわんとならん」
「行くべき場所がある、ということですか?」
「ああ。俺たちみたいなのが、あんたみたいな子を見つけたら、真っ先に連れて行く場所さ」
隊長さんが指差した窓の外。そこには、どんな素晴らしい場所が待っているというのだろうか!
優しい衛兵さんが、記憶喪失の迷子の少女を預ける場所。
それはもう、一つしかない。ふかふかのベッド! 温かいスープ! そして、天使のようなシスターたちがお出迎えしてくれる、愛に満ちた場所!
「孤児院だな」
キターーー! 異世界ファンタジー小説で100回は見たやつ!
私の異世界ライフ、いよいよテンプレ展開の王道を突き進み始めたようだ!
27
あなたにおすすめの小説
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる