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幸せのオムライス

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第一章 森の生活と孤児院改革:胃袋を掴め!

第34話 院長との交渉成立! 今日の昼食は私が作ります

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 マーサ院長は、深い深いため息をついた。そのため息には、「なんで私の周りには面倒な奴しかいないんだ」という宇宙レベルの諦観が込められている。

「料理? あんたみたいなチビにかい? 悪いことは言わないから、やめときな。ここの厨房の鍋は、あんたの体くらい重いんだよ。火傷でもしたらどうするんだい」

 またしても、鼻で笑われた。
 ぐぬぬ……! 見た目で判断するとは、これだから(以下略)!

 でも、ここで引き下がる私ではない。むしろ、こういう逆境の方が燃えるタイプなのだ、元社畜は!
 ……いや、待てよ。私、定時で帰るタイプのホワイト社員だったわ。給料もたぶん平均的だったし、社畜じゃないじゃん。でもまあ、理不尽な上司とか、無意味な会議とか、そういう社会の逆境にはさんざん耐えてきたんだから、広義の意味では社畜と言っても過言ではないはず! うん、そういうことにしておこう!

「大丈夫です! 重い鍋は持ちませんし、火も使いません!」

「火を使わずに、どうやって料理するんだい?」

「私の魔法があれば、もっと安全で、もっと美味しいものが作れます!」

 私が胸を張って言い切ると、マーサさんの眉がピクリと動いた。
 そうだ、この世界は魔法がある世界。そして、昨日の『お掃除革命』で、私がただの子供ではないことは、ここにいる全員が知っているはず。

「試しに一度、お昼ご飯を作らせてください。もし、みんなが『不味い』って言ったら、もう二度と厨房には立ちませんから!」

 私は、交渉のテーブルに、自分のプライド(と、今後の料理当番権)を賭けた。
 前世で学んだ交渉術の一つ。「相手に『断る理由』を与えない提案をする」。

「試しに一度」なら、マーサ院長も断りにくいだろう。しかも、失敗したら二度とやらない、というリスクヘッジ付き。どうだ!

 マーサ院長は、しばらく腕を組んで私を睨みつけていたが、やがて、諦めたように大きく息を吐いた。

「……ふん。面白いじゃないか。そこまで言うなら、やらせてやろうじゃないか」

(よっしゃ、食いついた!)

「ただし!」

 マーサ院長は、人差し指をビシッと私に突きつける。

「食材を無駄にしたら、承知しないよ。うちには、あんたの遊びに付き合うほどの余裕はないんだからね!」

「はい! お任せください!」

 私は、満面の笑みで敬礼してみせた。
 こうして、私は孤児院の厨房の使用権と、子供たちのお腹を満たすという、重大なミッションを手に入れたのだった。

 よし、見てなさい。
 私の料理で、君たちの胃袋をがっちり掴んでやるから!

 ◇

 マーサ院長から厨房の使用許可という名の「言質」をゲットした私は、昼食の時間が来るのを今か今かと待ちわびていた。
 子供たちの視線が、なんだかいつもより私に突き刺さっている気がする。「本当に料理なんてできるのかよ?」という疑いの視線と、「もしかしたら、また何かすごいことしてくれるかも?」という期待の視線。それがちょうど半々くらい。うん、プレッシャーがすごい!

 そして、運命のお昼前。
 マーサ院長が「コトリ、あんた、本当にやるんだね?」と最後の確認をしてくる。もちろん、やる気は満々だ。

「はい! 今日のお昼は、私に任せてください!」

「……ふん。まあ、せいぜい頑張りな」

 そう言って、マーサ院長は厨房の入り口にドンと椅子を置き、腕を組んで仁王立ちならぬ仁王座り。完全に「お前のやることを一部始終見張っててやるからな」という強い意志を感じる。
 うわ、監視付きかよ! これじゃ、こっそり通販で買ったものを持ち込めないじゃない!

「あの、マーサさん……?」

「なんだい。言っとくが、手伝う気はないよ。あんたが一人でやるって言ったんだからね」

「いえ、そうじゃなくて……。その、一人で集中したいので、終わるまで外で待っててもらえませんか……?」

 私の言葉に、マーサ院長の眉間の皺が、さらに深さを増した。

「ほう? この私を厨房から追い出すってのかい。生意気な口をきくじゃないか」

 ひえっ! こわい!
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