86 / 132
第二章 ヤマネコ商会、爆誕!:新たな拠点探し
第86話 理想の宿を発見! 優しそうな女将さんと交渉開始
しおりを挟む
そして、ついに、その宿は、私の目の前に現れた。
メインストリートに面した、一番地価の高そうな一等地。
そこに、その宿は、まるで絵本の中から抜け出してきたかのように、静かに佇んでいた。
『木漏れ日の宿』。
その名の通り、建物の壁を覆うツタの葉の間から、柔らかな日の光が差し込んでいる。
白く塗られた壁は清潔で、窓辺には、色とりどりの花が植えられたプランターが飾られている。
入口の扉は、重厚な木製だが、磨き上げられていて、温かみのある光沢を放っている。
(……ここだ)
直感が、告げていた。
ここが、私の求めていた場所だと。
建物の中からは、騒がしい声は一切聞こえてこない。
代わりに、食器の触れ合う心地よい音と、人々の穏やかな話し声が、かすかに漏れ聞こえてくるだけ。
出入りしている客層も、高価そうな服を来た商人や、小さな子供を連れた家族連れがほとんどだ。
うん、客層の質は、企業の信用度と直結する。これなら安心だ。
私は、ごくりと唾を飲み込むと、少しだけ緊張しながら、その美しい扉に手をかけた。
カランコロン、と。
ドアベルの、軽やかで、可愛らしい音が鳴る。
「はい、いらっしゃいませ」
カウンターの奥から現れたのは、ふくよかで、人の良さそうな笑顔を浮かべた、年配の女性だった。
白髪を綺麗に結い上げ、清潔な白いエプロンをつけている。
その、あまりにも完璧な「優しい女将さん」像に、私は内心で拍手喝采を送っていた。
(キター! これよ、これ! 私が求めていたのは、この安心感!)
「あらあら、可愛いお客さん。どうかなさったのかしら?」
女将さんは、カウンターから身を乗り出すようにして、私の目線に合わせて、優しく微笑みかけてくれる。
その、温かい眼差しに、私の心の緊張が、すーっと溶けていく。
「あの、一人なんですけど、泊まれますか?」
「まあ、一人で旅をしているの? 大変だったでしょう。ええ、もちろん、お部屋は空いていますよ」
彼女は、私の事情を根掘り葉掘り聞くことなく、当たり前のように受け入れてくれた。
その、さりげない配慮が、とても心地よい。
「それで、あの……この子も、一緒なんですけど……」
私が、おそるおそる、足元のコロを示す。
すると、女将さんは、ぱあっと、さらに顔を輝かせた。
「まあ! なんて賢そうで、可愛いわんちゃんでしょう!」
彼女は、カウンターから出てくると、私の前にしゃがみ込み、コロと視線を合わせる。
「こんにちは。お名前はなんていうのかしら?」
「コロと言います」
私が答えると、女将さんは優しく目を細めた。
「そう、コロちゃんっていうのね。よろしくね」
その、あまりに自然な振る舞いに、コロもすっかり警戒心を解いたらしい。嬉そうに尻尾をぱたぱたと振り、女将さんの手に、自分の鼻をすり寄せていく。
「あらあら、人懐っこいのね。もちろん、一緒のお部屋で大丈夫ですよ。こんなに可愛い子を、外で寝かせるなんて、可哀想なこと、できるもんですか」
女将さんは、そう言って、コロの頭を優しく撫でてくれた。
その手つきは、本当に動物が好きな人の、愛情に満ちた手つきだった。
(……満点だ。いや、満点どころか、120点だ!)
安全、清潔、客層良し、そして何より、この神対応の女将さん。
もう、ここに決めた。
いや、ここに決めさせてください! お願いします!
「ありがとうございます。……あの、申し遅れました。私、コトリと言います。ヤマネ・コトリです」
「コトリちゃんね。可愛いお名前。よろしくね、コトリちゃん」
女将さんの温かい笑顔に、私はもう一度心の中でガッツポーズをする。
よし、好感度はバッチリだ。
私は、財布の紐を握りしめ、最後の交渉(ビジネス)に挑む。
「あの、女将さん。料金は、一泊大銅貨5枚で朝食付き、で合ってますか?」
「ええ、そうですとも。うちの朝食は、焼きたてのパンが自慢なんですよ」
「実は、私、これからこの街で、少し商売を始めようと思っているんです。なので、拠点として、しばらく、まとまった期間お世話になりたいな、と考えていまして」
メインストリートに面した、一番地価の高そうな一等地。
そこに、その宿は、まるで絵本の中から抜け出してきたかのように、静かに佇んでいた。
『木漏れ日の宿』。
その名の通り、建物の壁を覆うツタの葉の間から、柔らかな日の光が差し込んでいる。
白く塗られた壁は清潔で、窓辺には、色とりどりの花が植えられたプランターが飾られている。
入口の扉は、重厚な木製だが、磨き上げられていて、温かみのある光沢を放っている。
(……ここだ)
直感が、告げていた。
ここが、私の求めていた場所だと。
建物の中からは、騒がしい声は一切聞こえてこない。
代わりに、食器の触れ合う心地よい音と、人々の穏やかな話し声が、かすかに漏れ聞こえてくるだけ。
出入りしている客層も、高価そうな服を来た商人や、小さな子供を連れた家族連れがほとんどだ。
うん、客層の質は、企業の信用度と直結する。これなら安心だ。
私は、ごくりと唾を飲み込むと、少しだけ緊張しながら、その美しい扉に手をかけた。
カランコロン、と。
ドアベルの、軽やかで、可愛らしい音が鳴る。
「はい、いらっしゃいませ」
カウンターの奥から現れたのは、ふくよかで、人の良さそうな笑顔を浮かべた、年配の女性だった。
白髪を綺麗に結い上げ、清潔な白いエプロンをつけている。
その、あまりにも完璧な「優しい女将さん」像に、私は内心で拍手喝采を送っていた。
(キター! これよ、これ! 私が求めていたのは、この安心感!)
「あらあら、可愛いお客さん。どうかなさったのかしら?」
女将さんは、カウンターから身を乗り出すようにして、私の目線に合わせて、優しく微笑みかけてくれる。
その、温かい眼差しに、私の心の緊張が、すーっと溶けていく。
「あの、一人なんですけど、泊まれますか?」
「まあ、一人で旅をしているの? 大変だったでしょう。ええ、もちろん、お部屋は空いていますよ」
彼女は、私の事情を根掘り葉掘り聞くことなく、当たり前のように受け入れてくれた。
その、さりげない配慮が、とても心地よい。
「それで、あの……この子も、一緒なんですけど……」
私が、おそるおそる、足元のコロを示す。
すると、女将さんは、ぱあっと、さらに顔を輝かせた。
「まあ! なんて賢そうで、可愛いわんちゃんでしょう!」
彼女は、カウンターから出てくると、私の前にしゃがみ込み、コロと視線を合わせる。
「こんにちは。お名前はなんていうのかしら?」
「コロと言います」
私が答えると、女将さんは優しく目を細めた。
「そう、コロちゃんっていうのね。よろしくね」
その、あまりに自然な振る舞いに、コロもすっかり警戒心を解いたらしい。嬉そうに尻尾をぱたぱたと振り、女将さんの手に、自分の鼻をすり寄せていく。
「あらあら、人懐っこいのね。もちろん、一緒のお部屋で大丈夫ですよ。こんなに可愛い子を、外で寝かせるなんて、可哀想なこと、できるもんですか」
女将さんは、そう言って、コロの頭を優しく撫でてくれた。
その手つきは、本当に動物が好きな人の、愛情に満ちた手つきだった。
(……満点だ。いや、満点どころか、120点だ!)
安全、清潔、客層良し、そして何より、この神対応の女将さん。
もう、ここに決めた。
いや、ここに決めさせてください! お願いします!
「ありがとうございます。……あの、申し遅れました。私、コトリと言います。ヤマネ・コトリです」
「コトリちゃんね。可愛いお名前。よろしくね、コトリちゃん」
女将さんの温かい笑顔に、私はもう一度心の中でガッツポーズをする。
よし、好感度はバッチリだ。
私は、財布の紐を握りしめ、最後の交渉(ビジネス)に挑む。
「あの、女将さん。料金は、一泊大銅貨5枚で朝食付き、で合ってますか?」
「ええ、そうですとも。うちの朝食は、焼きたてのパンが自慢なんですよ」
「実は、私、これからこの街で、少し商売を始めようと思っているんです。なので、拠点として、しばらく、まとまった期間お世話になりたいな、と考えていまして」
168
あなたにおすすめの小説
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる