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幸せのオムライス

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第二章 ヤマネコ商会、爆誕!:激安の幽霊屋敷と二人の看板娘

第117話 破格の金貨2枚! でもそこは『出る』と噂の幽霊屋敷でした

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 泣き声? 家具の移動? 人魂?
 全部、科学的に説明がつくやつ。
 泣き声は隙間風。家具が動くのは床が傾いているか、ネズミの仕業。人魂は……まあ、よくわからないけど、リンが燃えたとか、プラズマ現象とかそんなところでしょ!

 いわゆる事故物件じゃないのに、単にオカルト現象のせいで安くなっている物件。
 それは私にとって「恐怖」ではなく「バーゲンセール」の代名詞だ!

「その物件、家賃はおいくらですか?」

 私が尋ねると、職員さんは首を横に振った。

「いえ、ヤマネコ会長。あそこはもう賃貸ではありません。ギルドとしても、これ以上管理コストをかけたくないので、土地建物ごと売り払ってしまいたいのです。いわゆる、投げ売りですね」

「売却……ですか。それだと、高くなるんじゃ……」

「いいえ。土地と建物、残っている什器備品も全て込みで、金貨2枚です。これ以上下げるとギルドの手数料も出ないので、これが底値ですが……」

 金貨2枚。
 つまり、銀貨20枚。

(……えっ?)

 私は思わず耳を疑った。
 さっき聞いた、普通の物件の「一ヶ月分の家賃」と同じ値段で、土地と建物が買えるってこと!?
 20ヶ月じゃない。たった1ヶ月分で、マイホームが手に入る!?
 それも、ハルモニアの一等地に近い場所で!?

(……これは、買いね!)

 私の脳内稟議書に、ほぼ「承認」のハンコが押されかける。
 だが、そこは元社会人。現物を見ずに契約書にハンコを押すような真似はしない。

「内見をお願いします。今すぐ」

「は、はい……。では、こちらの地図と鍵をどうぞ。くれぐれも、気をつけて……」

 職員さんは、本当に心配そうな顔で、錆びついた鍵と地図を渡してくれた。
 私はそれを受け取ると、コロに目配せをする。

「さあコロ、行こう! 現場視察だ!」

『わふっ!(探検だ!)』

 私はギルドを後にし、地図に記された市場の裏通りへと向かって歩き出した。

 ◇

 ギルドから歩くこと、数分。
 市場のメイン通りから一本入った、少し静かな路地の突き当たりに、その物件はあった。

「……ここね」

 私は地図と目の前の建物を交互に見る。
 そこにあったのは、建物というよりは、巨大な粗大ゴミと呼ぶ方が相応しい代物だった。

 二階建ての煉瓦(レンガ)造りの建築。かつては鮮やかだったであろう赤茶色の壁は黒ずみ、蔦が妖怪のように絡まりついている。
 窓ガラスは割れ、入り口のドアは蝶番が外れて傾き、風が吹くたびにキーキーと悲鳴のような音を立てている。
 そして何より、全体から漂う「どんより」としたオーラ。

「……すごいわね。お化け屋敷?」

 8年も放置されれば、こうもなるか。ご近所さんが寄り付かないのも納得の佇まいだ。
 私は、足元のコロに視線を送る。

「コロ、どう? 何かいる?」

『……んー?』

 コロは、分からないといった様子で首をかしげている。
 少なくとも、何かを警戒して唸ったりはしていない。コロが平気なら、危険な獣や悪人はいないってことだわ。

(幽霊物件、上等だ! それで安くなるなら!)

 とはいえ、念には念を入れておこう。
 私は【異世界インターネット接続 Lv.2】を起動し、チャット画面を開く。

『緊急確認! 幽霊とかいませんよね? この世界、科学法則生きてますよね? もしいるなら物件購入キャンセルします!』

 送信。
 ……しかし、既読がつかない。

「……ま、遅いのはいつものことか」

 待っている間に、他の人に買われてしまったら元も子もない。
 どうせネズミが走り回る音か、隙間風の音でしょ! 現代知識を持つ私が、そんな非科学的なオカルトに怯えるわけないわ!

 私はギルドで借りた鍵を使おうとしたが、ドアが傾いて半開きになっていたため、そのまま押し開けて中へと足を踏み入れた。
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