AI設計投資 ── 50万から始めて毎月5万円利確。生活が静かに楽になる投資の話

ぬこまる

文字の大きさ
3 / 13

2章 日中はノイズだった ――俺たちは、いちばん間違った場所で戦っていた

しおりを挟む
昼休憩。
給湯室のテーブルで、俺はいつものようにおにぎりを食べていた。

鮭と昆布。238円。

スマホはテーブルの上に置いてある。画面にはチャートじゃない。ChatGPT、つまりAIが起動している。

「なあ」
「はい」

俺は小さな声でスマホに話しかけていた。周りから見れば、どう見ても独り言だ。

「……日中の値動きって、意味あるのか?」

少し間があって、返事が来る。

ほとんどありません。日中は、ノイズです。

「やっぱりな……」

俺は一人で小さくうなずいた。

そのときだった。

「……先輩?」

声がした。

顔を上げると、コーヒーを持ったあやちゃんが立っていた。少し首をかしげて、俺のスマホを見ている。

「今、誰と話してたんですか?」

一瞬、言葉に詰まった。



スマホと話す男

「えっと……」

正直、誤魔化そうと思えばできた。でも、なぜかそうしなかった。

「AI」

「……AI?」

あやちゃんの眉が、少しだけ上がる。

「仕事の相談ですか?」

「いや……株」

「株?」

向かいでは高橋がスマホを連打している。赤。緑。また赤。

あやちゃんは、高橋の画面と俺のスマホを見比べた。

「……全然、雰囲気違いますね」
「そう?」
「はい。高橋さん、すごく疲れてそうです」

高橋が苦笑いする。

「正直、めちゃくちゃ疲れてます……」




あやちゃんは俺の方を見た。

「先輩は……どうして株やってるんですか?」

一瞬、頭の中で言葉を選んだ。でも、答えはすぐに出た。

「家族」

あやちゃんが、少し驚いた顔をする。

「家族?」
「娘が中二でさ。そのうち塾とか、進学とか、いろいろ金かかるだろ」
「妻も、パートで頑張ってくれてる」
「だから……」

俺は少しだけ間を置いて言った。

「家族を守るために株を始めたんだ」

その言葉に、あやちゃんの表情が変わった。笑顔じゃない。でも、ちゃんと聞いている顔だ。

「当てたいとか、一発逆転とか、そういうのじゃない……ただ、ちゃんと守りたかった」

その瞬間、あやちゃんは何も言わなかった。でも、コーヒーを持つ手が少しだけ止まった。



日中ノイズの正体

「なあ」
「はい」

俺は、もう一度スマホに話しかけた。

「日中の株価って、なんでこんなに人を疲れさせる?」

あやちゃんも、自然と聞く側に回っている。

日中の市場には、個人、機関、アルゴリズムなど、多様な参加者が同時に存在します。
それぞれの目的が異なるため、価格は意味のない上下を繰り返します。
これを、ノイズと呼びます。

高橋が思わず言った。

「……だから、こんなに疲れるのか」

はい。人間は、ノイズを処理するように設計されていません。



市場が止まる時間

重要なのは、市場が止まる時間です。

「止まる?」

引けから翌朝の寄りまで。この間、人の感情は行動に変換されず、溜まります。その結果、翌朝、一気に価格に現れます。

「……GU(ギャップアップ)とかGD(ギャップダウン)、次の日に急に飛んで上がったり下がったりする、あれか!」

その通りです。

あやちゃんが、ぽつりと言った。

「株価って……感情の後始末なんですね」

その一言で、すべてがつながった。



あやちゃんの視線

休憩終了のチャイムが鳴る。

高橋はスマホをポケットにしまった。

「……俺、昼はもう見ないようにします」

「それが、正解だ」

あやちゃんは立ち去り際に振り返って言った。

「先輩」
「はい」

「……そのやり方」

少しだけ間を置いてから、続けた。

「安心しますね」

それだけ言って、去っていった。

俺は何も言えなかった。でも、胸の奥で何かが静かに動いた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...