土魔法で無双するVRMMO 〜おっさんの遅れてきた青春物語〜

ぬこまる

文字の大きさ
20 / 38

19 クラフト⑤

しおりを挟む
[ コーデリア草原地帯 北 ]

 ふわふわと無数の種が空を舞っている。
 タンポポの綿毛は気流に乗れば数キロも飛ぶらしいが、俺たちが目指す場所には生えていないだろう。

「ツッチーさん、この草原を北に進めばクルクル砂漠っすか?」
「シムクル砂漠な」

 マーキングで飛んできた俺、ミルク、そして新しくフレンドになった戦士マクドは道を歩いていた。するとそこへ……。

「こんばんわ~」
「きゃあ、小さいエルフよ、かわいい~!」

 他の冒険者たちだ。
 ミルクは人気キャラだけあってよく声をかけられており、まるでアイドルのように手を振っている。逆に、俺とマクドは空気だった。

「いやぁ、可愛くてごめんっす」
「少女エルフ……いったいいくら課金ガチャしたんや?」
「ん~3万くらいっすかね」
「あほい!」
「あんただって、斧にいくら課金してるんすか?」
「5万!」
「えぐいっすね!」

 キミたち太客すぎ!!
 それにしても、他の冒険者たちの向かう方向が同じだな。しかも人数が多い。砂漠地方は人気スポットなのだろうか。おまけに魔物の出現率も高い。

 グギギャー!

 10体のゴブリンが現れた。
 俺、ミルク、マクドは余裕の顔で戦闘体制にはいる。
 
「また魔物っすね」
「よっしゃ! ワイが攻撃を受けとるときに例の魔法をよろしく師匠ぉ」
「はい」

 ミルクは後方で弓を構え、俺は詠唱をはじめた。
 マクドはゴブリンたちに堂々と近づき、やがて囲まれ、いっせいに攻撃を受ける。だが、盾で完璧に防御していた。よし、今だ!

「 石を砂に変える魔法 サブルム ドーナツ型 」

 マクドの位置を抜いた地面が円形に砂と化す。
 ゴブリンたちは穴にハマり、苦しくもがいた。

「いっけー! トリプルアロー!」

 ミルクは三本の矢を三連続で放つ。
 合計で九発の矢が飛んでいき、見事、ゴブリンの頭に命中。クリティカルヒットを与えて倒した。

「うおりゃぁぁああ!」

 残りのゴブリンはマクドが斧で一閃。
 ガォーと獅子王のエフェクトが発生し、魔物はホログラムの粒子となって消えていく。経験値と戦利品[ゴブリンの牙]を得た。俺のレベルが8にあがる。

「ツッチーさん……この強さで8っすか!?」
「師匠ぉぉおお! 伸びしろですねぇぇぇええ!!」

 これって褒められてんのか。
 ミルクは、やれやれと肩をすくめた。

「ツッチーさんの受注しているサブクエストの推奨レベル14っすけど、心配なさそうっすね、ちなみに僕のレベルは19っす」
「ワイは30やで! 何度か砂漠地方にもいったことあるわ」
「ふーん、じゃあ案内してよ」
「ええで~!」

 キミたち、めっちゃ楽しそうだね。
 ゲームとは言え、他人の目標のために付き合ってくれるなんて……友情に年齢なんて関係ないんだな。ちょっと泣きそうだわ、俺。

「ありがとうございます、ミルクさん、マクドさん」

 するとミルクの様子が変だ。
 顔を赤く染めてもじもじしている。

「どうしました?」
「いや~その~そろそろ、敬語とかやめてほしいっす……あと、あと……」
「?」
「呼び捨てにしてほしいな~なんて……ああ、くそっっ!!」
「??」
「ミルクって呼んでほしいっす!!」

 か、可愛い……。
 こくりとマクドもうなずいている。

「同感やで! 師匠から敬語とかさん付けで呼ばれたくないわ~マクドでよろしくやで!」

 キ、キミたち……超いいやつらじゃん!
 俺は仮面のしたで、いや、ゴーグルのしたで泣いていた。

「じゃあ……ミルク、マクド、シムクル砂漠までいくぞ!」

 おおー!

 と、俺たちは天高く拳をかかげて叫ぶのであった。



 一方、そのころモツナベの現実世界では……。


「明日はプロテルをやる……明日はプロテルをやる……ぶつぶつ……」

 ここは駅前の学習塾。
 熱弁をふるう講師を集中して見つめる学生たち。そのなかにモツナベはいた。彼のノートには綺麗な図式と数式が書かれてある。


「明日はプロテルをやる……明日はプロテルをやる……ぶつぶつ……」

 まるで念仏を唱えるごとく学習に励む。
 しかしながら学習を頑張れる原動力は、ゲームをすること。つまりプロジェクト・テルースをやることなのだ。彼の希望は現実世界にはない。仮想世界にあるのだった。

「明日はプロテルをやる……明日はプロテルをやる……ぶつぶつ……」
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...