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19 クラフト⑤
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[ コーデリア草原地帯 北 ]
ふわふわと無数の種が空を舞っている。
タンポポの綿毛は気流に乗れば数キロも飛ぶらしいが、俺たちが目指す場所には生えていないだろう。
「ツッチーさん、この草原を北に進めばクルクル砂漠っすか?」
「シムクル砂漠な」
マーキングで飛んできた俺、ミルク、そして新しくフレンドになった戦士マクドは道を歩いていた。するとそこへ……。
「こんばんわ~」
「きゃあ、小さいエルフよ、かわいい~!」
他の冒険者たちだ。
ミルクは人気キャラだけあってよく声をかけられており、まるでアイドルのように手を振っている。逆に、俺とマクドは空気だった。
「いやぁ、可愛くてごめんっす」
「少女エルフ……いったいいくら課金ガチャしたんや?」
「ん~3万くらいっすかね」
「あほい!」
「あんただって、斧にいくら課金してるんすか?」
「5万!」
「えぐいっすね!」
キミたち太客すぎ!!
それにしても、他の冒険者たちの向かう方向が同じだな。しかも人数が多い。砂漠地方は人気スポットなのだろうか。おまけに魔物の出現率も高い。
グギギャー!
10体のゴブリンが現れた。
俺、ミルク、マクドは余裕の顔で戦闘体制にはいる。
「また魔物っすね」
「よっしゃ! ワイが攻撃を受けとるときに例の魔法をよろしく師匠ぉ」
「はい」
ミルクは後方で弓を構え、俺は詠唱をはじめた。
マクドはゴブリンたちに堂々と近づき、やがて囲まれ、いっせいに攻撃を受ける。だが、盾で完璧に防御していた。よし、今だ!
「 石を砂に変える魔法 サブルム ドーナツ型 」
マクドの位置を抜いた地面が円形に砂と化す。
ゴブリンたちは穴にハマり、苦しくもがいた。
「いっけー! トリプルアロー!」
ミルクは三本の矢を三連続で放つ。
合計で九発の矢が飛んでいき、見事、ゴブリンの頭に命中。クリティカルヒットを与えて倒した。
「うおりゃぁぁああ!」
残りのゴブリンはマクドが斧で一閃。
ガォーと獅子王のエフェクトが発生し、魔物はホログラムの粒子となって消えていく。経験値と戦利品[ゴブリンの牙]を得た。俺のレベルが8にあがる。
「ツッチーさん……この強さで8っすか!?」
「師匠ぉぉおお! 伸びしろですねぇぇぇええ!!」
これって褒められてんのか。
ミルクは、やれやれと肩をすくめた。
「ツッチーさんの受注しているサブクエストの推奨レベル14っすけど、心配なさそうっすね、ちなみに僕のレベルは19っす」
「ワイは30やで! 何度か砂漠地方にもいったことあるわ」
「ふーん、じゃあ案内してよ」
「ええで~!」
キミたち、めっちゃ楽しそうだね。
ゲームとは言え、他人の目標のために付き合ってくれるなんて……友情に年齢なんて関係ないんだな。ちょっと泣きそうだわ、俺。
「ありがとうございます、ミルクさん、マクドさん」
するとミルクの様子が変だ。
顔を赤く染めてもじもじしている。
「どうしました?」
「いや~その~そろそろ、敬語とかやめてほしいっす……あと、あと……」
「?」
「呼び捨てにしてほしいな~なんて……ああ、くそっっ!!」
「??」
「ミルクって呼んでほしいっす!!」
か、可愛い……。
こくりとマクドもうなずいている。
「同感やで! 師匠から敬語とかさん付けで呼ばれたくないわ~マクドでよろしくやで!」
キ、キミたち……超いいやつらじゃん!
俺は仮面のしたで、いや、ゴーグルのしたで泣いていた。
「じゃあ……ミルク、マクド、シムクル砂漠までいくぞ!」
おおー!
と、俺たちは天高く拳をかかげて叫ぶのであった。
一方、そのころモツナベの現実世界では……。
「明日はプロテルをやる……明日はプロテルをやる……ぶつぶつ……」
ここは駅前の学習塾。
熱弁をふるう講師を集中して見つめる学生たち。そのなかにモツナベはいた。彼のノートには綺麗な図式と数式が書かれてある。
「明日はプロテルをやる……明日はプロテルをやる……ぶつぶつ……」
まるで念仏を唱えるごとく学習に励む。
しかしながら学習を頑張れる原動力は、ゲームをすること。つまりプロジェクト・テルースをやることなのだ。彼の希望は現実世界にはない。仮想世界にあるのだった。
「明日はプロテルをやる……明日はプロテルをやる……ぶつぶつ……」
ふわふわと無数の種が空を舞っている。
タンポポの綿毛は気流に乗れば数キロも飛ぶらしいが、俺たちが目指す場所には生えていないだろう。
「ツッチーさん、この草原を北に進めばクルクル砂漠っすか?」
「シムクル砂漠な」
マーキングで飛んできた俺、ミルク、そして新しくフレンドになった戦士マクドは道を歩いていた。するとそこへ……。
「こんばんわ~」
「きゃあ、小さいエルフよ、かわいい~!」
他の冒険者たちだ。
ミルクは人気キャラだけあってよく声をかけられており、まるでアイドルのように手を振っている。逆に、俺とマクドは空気だった。
「いやぁ、可愛くてごめんっす」
「少女エルフ……いったいいくら課金ガチャしたんや?」
「ん~3万くらいっすかね」
「あほい!」
「あんただって、斧にいくら課金してるんすか?」
「5万!」
「えぐいっすね!」
キミたち太客すぎ!!
それにしても、他の冒険者たちの向かう方向が同じだな。しかも人数が多い。砂漠地方は人気スポットなのだろうか。おまけに魔物の出現率も高い。
グギギャー!
10体のゴブリンが現れた。
俺、ミルク、マクドは余裕の顔で戦闘体制にはいる。
「また魔物っすね」
「よっしゃ! ワイが攻撃を受けとるときに例の魔法をよろしく師匠ぉ」
「はい」
ミルクは後方で弓を構え、俺は詠唱をはじめた。
マクドはゴブリンたちに堂々と近づき、やがて囲まれ、いっせいに攻撃を受ける。だが、盾で完璧に防御していた。よし、今だ!
「 石を砂に変える魔法 サブルム ドーナツ型 」
マクドの位置を抜いた地面が円形に砂と化す。
ゴブリンたちは穴にハマり、苦しくもがいた。
「いっけー! トリプルアロー!」
ミルクは三本の矢を三連続で放つ。
合計で九発の矢が飛んでいき、見事、ゴブリンの頭に命中。クリティカルヒットを与えて倒した。
「うおりゃぁぁああ!」
残りのゴブリンはマクドが斧で一閃。
ガォーと獅子王のエフェクトが発生し、魔物はホログラムの粒子となって消えていく。経験値と戦利品[ゴブリンの牙]を得た。俺のレベルが8にあがる。
「ツッチーさん……この強さで8っすか!?」
「師匠ぉぉおお! 伸びしろですねぇぇぇええ!!」
これって褒められてんのか。
ミルクは、やれやれと肩をすくめた。
「ツッチーさんの受注しているサブクエストの推奨レベル14っすけど、心配なさそうっすね、ちなみに僕のレベルは19っす」
「ワイは30やで! 何度か砂漠地方にもいったことあるわ」
「ふーん、じゃあ案内してよ」
「ええで~!」
キミたち、めっちゃ楽しそうだね。
ゲームとは言え、他人の目標のために付き合ってくれるなんて……友情に年齢なんて関係ないんだな。ちょっと泣きそうだわ、俺。
「ありがとうございます、ミルクさん、マクドさん」
するとミルクの様子が変だ。
顔を赤く染めてもじもじしている。
「どうしました?」
「いや~その~そろそろ、敬語とかやめてほしいっす……あと、あと……」
「?」
「呼び捨てにしてほしいな~なんて……ああ、くそっっ!!」
「??」
「ミルクって呼んでほしいっす!!」
か、可愛い……。
こくりとマクドもうなずいている。
「同感やで! 師匠から敬語とかさん付けで呼ばれたくないわ~マクドでよろしくやで!」
キ、キミたち……超いいやつらじゃん!
俺は仮面のしたで、いや、ゴーグルのしたで泣いていた。
「じゃあ……ミルク、マクド、シムクル砂漠までいくぞ!」
おおー!
と、俺たちは天高く拳をかかげて叫ぶのであった。
一方、そのころモツナベの現実世界では……。
「明日はプロテルをやる……明日はプロテルをやる……ぶつぶつ……」
ここは駅前の学習塾。
熱弁をふるう講師を集中して見つめる学生たち。そのなかにモツナベはいた。彼のノートには綺麗な図式と数式が書かれてある。
「明日はプロテルをやる……明日はプロテルをやる……ぶつぶつ……」
まるで念仏を唱えるごとく学習に励む。
しかしながら学習を頑張れる原動力は、ゲームをすること。つまりプロジェクト・テルースをやることなのだ。彼の希望は現実世界にはない。仮想世界にあるのだった。
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