ざまぁでちゅね〜ムカつく婚約者をぶっ倒す私は、そんなに悪役令嬢でしょうか?〜

ぬこまる

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  第四章 婚約破棄された人を助けない私は、そんなに悪役令嬢でしょうか?

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「え~それでは、本日の魔道具研究サークルを始めたいと思いまーす!」

 右手をあげた私は、オタクたちに宣言をしました。
 左手に抱いているイヴは、

「あうっー!」

 と叫びます。

「ウッヒョいでやんす!」
「これは尊いですなぁ!」
「嬉しいんごぉぉ!」

 などと、オタクたちが歓喜の声をあげると、校庭にいた生徒たちから、

「なにあれ?」
 
 と言われ、白い目で見られました。
 
 ……ううう、まぁ、いいでしょう。
 
 と言うのも、放課後の学園にアルト先輩もお兄様もいないので、オタサーの姫である私が、本日のサークルを仕切るしかなくなったのです。
 今頃ふたりは、宮殿にて何やらやんごとない話をしているらしいのですが……。
 いったい、どんな話なのでしょうか?
 うーん、とても気になりますねぇ。
 ああ、それにしてもまったく!
 私にサークルのオタクたちをまとめろだなんて、お兄様もむちゃ言いますよね?
 
「メルルちゃん、今日はこんなものを用意したでやんす」

 おチビ様は、そのように言うと、ドン! と魔道具を置きました。
 
「なんですか、これは?」
「妖精の息をもっとパワーが出せるように改良したんごぉ!」

 おデブ様は、自慢げにそう言いやがりますが、パンパンの顔がニヤけており、エッチなことを考えているのが見え見えです。
 
「あのぉ、また私で何か試そうとしてます?」
「拙者たちは、これで空を飛べるか研究したいんですな~ポチッとな!」
 
 おハゲ様が、ボタンを押しました。
 すると、いきおいよく風が魔道具から放たれます。
 どうやら、風の魔石を入れた箱に、プロペラをつけたようですね。
 前世で言うなら、これはサーキュレーターでしょう。
 ですが……ちょっと強すぎまーす!
 
「いやぁぁぁん!」
「バァブブブー!」

 はい、お決まりですね。
 強烈な風によってスカートがめくれるので、私は必死になって手で抑えます。
 イヴも飛ばされないように、私の胸にしがみつきました。
 
「うーん、もっと強くないと飛べませんなぁ、一旦止めるでござる、ポチッとな」

 魔道具から風がなくなり、私とイヴは一安心です。
 っていうか、なぜ私がこんな目に? バブぅ!?
 
「赤ちゃんを抱っこしていると、重くなるから飛べないんご?」
「それなら、あっしが赤ちゃんを抱っこしてあげるでやんす!」

 突然、おチビ様が両手を広げて私に迫ります。
 いや、ふつうに無理!
 イヴを抱っこさせるなんて、冗談ではありません。
 私は、三人組に向かって言いました。
 
「あのぉ、論理的に考えて風で人間を飛ばすには風速がもっと必要ですし、何より安全ではないので商品として成り立ちませんよ! それよりも人間が乗って操縦できるような魔道具を開発したほうがいいと思います」

 ……はっ!?
 
 三人組の頭に、衝撃が走ったようです。
 この人たち、私が前世の知識を言ってあげると、面白いようにびっくりしますね。
 どれどれ、もっと教えてあげましょうか……。
 あら、ちょうど運よく、花壇のほうにある倉庫に例のものがありますゆえ。

「おチビ様、ちょっと走って倉庫から箒を一本持ってきてくださいませ」
「おっけーでやんす」

 タタタタ、とまるで子どものように走るおチビ様は、すぐに箒を持ってきました。
 ぽかん、としているおデブ様とおハゲ様に向かって、私は説明をします。
 
「このように箒の穂先へ魔道具をつけます。もちろん、風向きの角度を変えられるように柄の部分に捜査レバーをつくってくださいね。そして、こうやって箒にまたがります……んっしょ」

 おおおお! と歓喜するオタクたちは、飛び跳ねました。
 
「メルルちゃん、天才ですなぁ!」
「足が綺麗でやんすぅ」
「箒になりたいんごぉ」
「……あはは、じゃ、じゃあ、改良してくださいね~」

 はーい、と返事をするオタクたちは、その場で工具を取り出して、ガチャガチャとやり始めました。
 夢中になって作業する彼らの表情は真剣で、純粋に魔道具をつくることが好きなのだな、と感じます。
 一生懸命に物事に取り組む人は好きなので、私は心から応援したいと思いました。
 さてと、ベンチに座ってイヴをあやすことにしましょう。

「べろべろ、ばー!」
「あううっー!」
 
 すると、そのとき。
 
「ヒロインきどってんじゃないわよ!」

 ん? どこからか、女子たちの怒鳴り声が聞こえてきますね。
 探してみると、花壇のベンチに人だかりができていました。
 どうやら女子たちが、ひとりの女子をいじめているようです。
 これはいけませんね。
 
 ボワっ!
 
 私のなかにある、強い者を倒し弱き者を守って世直しをする志“ざまぁ”に火がつきました。
 
「ちょっと、ぬけます!」

 私は、オタクたちにそう告げると、いじめの現場に急ぎました。
 オタクたちは、私に向かって何か言ってやがりますが、もはやどうでもいいですね。
 
「メルルちゃん、足速いっすなぁ……」
「美しいでやんす……」
「あの足で蹴られたいんご……」

 急に走り出したので、私のスカートがひるがえり、黒タイツの太ももを見られたかもしれませんが、何も減るものはないので気にしません。
 そんなことより、早くいじめっ子たちをぶっ倒して、ざまぁしたい!
 さっそく私は、まるで忍者のように腰を曲げて歩き、スッと花壇に身を隠しつつ、いじめの現場をのぞきました。
 いじめっ子は、全部でさんにんいました。
 
「あら?」
 
 いじめられているのは……なんと、ナルシェ様の新しい婚約者、モニカさん!

「公爵のパシュレミオン様は、平民のあなたとは身分が違うのよ!」

 そう怒鳴っているのは、いじめっ子のリーダなのでしょう。
 あらあら、よく漫画などで見る、金髪ドリルの令嬢ですね。
 化粧が濃すぎて、悪魔にも見えます。
 
「それに何、この絵は? 風景をそのまま写しただけじゃない」
「あ! 返してっ!」

 金髪ドリル様は、モニカさんの描いていた絵画をかっさらうと、花壇に投げ捨てました。
 おっと! その絵画が私の目に前に飛んできます。
 どれどれ……。
 拝見したところ、とても素晴らしい風景画でした。
 まるで、美の巨匠フェルメールが描いたような作品ですね。
 
「……すごい」

 透き通るような青空、それでいて学園の建物や木々とのコントラストが、しっかりと写実的に描かれています。
 この絵画は、ひかえめに言っても大傑作ですよ!
 しかし金髪ドリル様は、残念なことに美的感覚が欠如しているらしく、モニカさんへの悪口を続けました。
 
「こんな風景を丸写した絵など最低です! しかも絵を描くのは男性の仕事ですよ! 特待生か知りませんけど、男子生徒たちに混じって授業を受けるなんて気持ち悪いですわ」

 そうよそうよ、と取り巻きたちが騒ぎます。
 
「ハーレム気取りですか? ヒロインさん」
「みんな言ってるわよ、あんたは男子に媚を売る商売女だって!」
「きっとナルシェ様にも、色気を使ったに決まってる!」
「平民なら下々らしく働いてなさい!」

 あらあら、言葉の暴力がすごい。
 しかしもっとすごいのは、モニカさんのほうです。
 これだけ暴言を吐かれていても、眉ひとつ動かさず、じっと金髪ドリル様を見据えていました。
 そして、手を後ろに回し、何やら呪文を唱えていますね。
 あ、殺される……あの金髪ドリル様!
 誰も気づいていませんが、金髪ドリル様の頭上には、ある物体が浮いていたのです。
 それは、青く光る氷の刃!
 モニカさんのお尻にあてられている手は、キラキラと輝いており、何やら魔法を使ったことがわかりました。
 人を殺してはいけません、モニカさん!
 魔法を使った攻撃は、相手にダメージを与えたあと、すぐに回復魔法をしてあげないと殺人罪になりますよ。
 
 シュッ!
 
「おやめなさいっ!」
 
 風のように私は、いじめっ子たちの前に現れました。
 
「誰?」

 金髪ドリル様は、びっくりしたブサイクな顔で私に質問します。
 うふふ、と私は不敵に笑って見せました。
 
「私はメルル・アクティオス、悪者をぶっ倒す者です!」
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