3 / 3
もう一度、あの甘さを知りたい。
③
しおりを挟む
僕らは付き合うことになった。
言葉上、関係は変わったが僕らの日常は変わらなかった。
一緒に勉強をして模試を受けに行ったり勉強三昧だ。
一般的なカップルのようにキスをしたりイチャついたりすることは無かった。
だって、目の前にあるゴールは受験に合格なのだから。
あの告白からの2ヶ月僕は相当努力した。
2ヶ月で変われるはずがないと思われただろう。だけど、僕は少しずつ点数が良くなった。これは、神奈のおかげだろう。
そして、共通テストが来る。
この日まで神奈と共に真剣に勉強と向き合ってきた。まずは第一関門。ここを突破できなければ第二関門の志望校受験には難しいだろう。
冷える朝、挨拶を交しいつも通り神奈と向かう。今日はいつもと違って真剣な顔をしていて笑顔が見えなかった。僕も緊張をしていた。
会話はほぼ無く静かな時間がただ流れていく。お互い参考書などを目をやり必死に詰め込んでいた。
電車に揺られ、降りる。
降りた途端に雪が迎えてくれた。
「うう、寒いね。」
「そうだね。」
せっせと2人は歩く。
会場を目の前にして脈拍が早くなった。
よしっ。という顔をして入る。
大きな受験会場には想像以上の人がいた。自分の席を探す。
「私こっちだ。」
「僕はあっち。」
「頑張ろうね。」
「うん。頑張ろう。」
2人は別々の席へ向かう。
座った途端この空間に仲間入りしたことを実感した。緊張とか、そういう問題じゃない。少しでもなにか復習しよう。そう参考書を開く。
時間がたち。
「試験を始めてください。」
パサッパサッ。
今始まった。
問題に目を通して大凡の時間配分を考える。
この問題は要注意。ここは計算ミスしがち。
この問題はなんだ?
ダメだ。こんな所で落としたら、受かるはずがない。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
一旦飛ばそう。
まずは落ち着く。
問題を解いている時に感じる。神奈の声を。
試験を受けているはずなのに、神奈に勉強を教えて貰っているような感覚。緊張がほぐれていく。
「感謝しきれない。」
ずっとずっと、そう感じていた。
「ペンを置いてください。試験終了です。お疲れ様でした。」
全て終わった。
「朔お疲れ様!」
「お疲れ様。」
「じゃあ、自己採点会始めるよ。」
「ええ。」
2人はいつもの喫茶店に向かう。
丸つけを始める。
神奈からは丸の音しかしなくて僕は採点する勇気が出ない。
「なんで採点しないの。」
「ほら見せて私やる。」
ずっと丸の音しかしない。神奈すごいな。
丸の解答用紙が横にある。さすが、
でも僕は...
あれ。それは、僕の解答用紙だ。
「すごい、朔私より出来てる。」
「そんな...わけないよ。」
「いや本当だよ...もう...」
神奈が下を向く。
「凄いよ。」
大粒の涙を流して僕の胸に向かって泣きつく。
「これなら共通テスト利用に使えるよ。全然受かる。私もほぼ同じ点数だから目指してたとこ行けるよ。嬉しい。」
僕も泣き出した。
ずっと負の連鎖だった人生が、パッと明るくなった。これまでの神奈の努力、励まし全てがもう...なんというか…とにかく嬉しかった。こういう風に形に出て本当に良かった。頑張ってよかった。本当にありがとう。
時が経ち。
4月。
街には桜で満ち溢れている。
僕は家を出る。
電車に乗って店に向かう。
ここ最近ずっと悩んでいることがある。
でも、幸せだ。まさかこうなるとは…
店の席に腰掛けて店員さんが資料を持ってくる。
「あ、ごめん。遅くなっちゃった。」
息を切らしながら店に入ってくる神奈。
「では、お客様のご希望にそった物件を探したのですがいかがでしょうか。」
「ありがとうございます。」
僕らは2人で住む家を探していた。
「訪問の日を決めたいのですが …」
「まって、朔。講義もう始まる!」
「え。そんな。すみません、明日の13:00でお願いします!その他は後ほど電話します。」
「え、お、お客様。そんな、、」
桜並木。花びらが落ちる。
この暖かい気温。花のいい香り。
僕らは手を繋いで走る。
1年前が嘘だったかのように。
僕らは幸せです。
「本当にありがとう。神奈好きだよ。」
「え。もぉ、今?」
2人で笑いながら大学に向かう。
もう、ゴールした。
その先には何がある?
「神奈、絶対結婚しようね。」
「え。ちょっと、え??」
結婚だ。
--------完----------
言葉上、関係は変わったが僕らの日常は変わらなかった。
一緒に勉強をして模試を受けに行ったり勉強三昧だ。
一般的なカップルのようにキスをしたりイチャついたりすることは無かった。
だって、目の前にあるゴールは受験に合格なのだから。
あの告白からの2ヶ月僕は相当努力した。
2ヶ月で変われるはずがないと思われただろう。だけど、僕は少しずつ点数が良くなった。これは、神奈のおかげだろう。
そして、共通テストが来る。
この日まで神奈と共に真剣に勉強と向き合ってきた。まずは第一関門。ここを突破できなければ第二関門の志望校受験には難しいだろう。
冷える朝、挨拶を交しいつも通り神奈と向かう。今日はいつもと違って真剣な顔をしていて笑顔が見えなかった。僕も緊張をしていた。
会話はほぼ無く静かな時間がただ流れていく。お互い参考書などを目をやり必死に詰め込んでいた。
電車に揺られ、降りる。
降りた途端に雪が迎えてくれた。
「うう、寒いね。」
「そうだね。」
せっせと2人は歩く。
会場を目の前にして脈拍が早くなった。
よしっ。という顔をして入る。
大きな受験会場には想像以上の人がいた。自分の席を探す。
「私こっちだ。」
「僕はあっち。」
「頑張ろうね。」
「うん。頑張ろう。」
2人は別々の席へ向かう。
座った途端この空間に仲間入りしたことを実感した。緊張とか、そういう問題じゃない。少しでもなにか復習しよう。そう参考書を開く。
時間がたち。
「試験を始めてください。」
パサッパサッ。
今始まった。
問題に目を通して大凡の時間配分を考える。
この問題は要注意。ここは計算ミスしがち。
この問題はなんだ?
ダメだ。こんな所で落としたら、受かるはずがない。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
一旦飛ばそう。
まずは落ち着く。
問題を解いている時に感じる。神奈の声を。
試験を受けているはずなのに、神奈に勉強を教えて貰っているような感覚。緊張がほぐれていく。
「感謝しきれない。」
ずっとずっと、そう感じていた。
「ペンを置いてください。試験終了です。お疲れ様でした。」
全て終わった。
「朔お疲れ様!」
「お疲れ様。」
「じゃあ、自己採点会始めるよ。」
「ええ。」
2人はいつもの喫茶店に向かう。
丸つけを始める。
神奈からは丸の音しかしなくて僕は採点する勇気が出ない。
「なんで採点しないの。」
「ほら見せて私やる。」
ずっと丸の音しかしない。神奈すごいな。
丸の解答用紙が横にある。さすが、
でも僕は...
あれ。それは、僕の解答用紙だ。
「すごい、朔私より出来てる。」
「そんな...わけないよ。」
「いや本当だよ...もう...」
神奈が下を向く。
「凄いよ。」
大粒の涙を流して僕の胸に向かって泣きつく。
「これなら共通テスト利用に使えるよ。全然受かる。私もほぼ同じ点数だから目指してたとこ行けるよ。嬉しい。」
僕も泣き出した。
ずっと負の連鎖だった人生が、パッと明るくなった。これまでの神奈の努力、励まし全てがもう...なんというか…とにかく嬉しかった。こういう風に形に出て本当に良かった。頑張ってよかった。本当にありがとう。
時が経ち。
4月。
街には桜で満ち溢れている。
僕は家を出る。
電車に乗って店に向かう。
ここ最近ずっと悩んでいることがある。
でも、幸せだ。まさかこうなるとは…
店の席に腰掛けて店員さんが資料を持ってくる。
「あ、ごめん。遅くなっちゃった。」
息を切らしながら店に入ってくる神奈。
「では、お客様のご希望にそった物件を探したのですがいかがでしょうか。」
「ありがとうございます。」
僕らは2人で住む家を探していた。
「訪問の日を決めたいのですが …」
「まって、朔。講義もう始まる!」
「え。そんな。すみません、明日の13:00でお願いします!その他は後ほど電話します。」
「え、お、お客様。そんな、、」
桜並木。花びらが落ちる。
この暖かい気温。花のいい香り。
僕らは手を繋いで走る。
1年前が嘘だったかのように。
僕らは幸せです。
「本当にありがとう。神奈好きだよ。」
「え。もぉ、今?」
2人で笑いながら大学に向かう。
もう、ゴールした。
その先には何がある?
「神奈、絶対結婚しようね。」
「え。ちょっと、え??」
結婚だ。
--------完----------
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる