婚約破棄された転生悪役令嬢は`七大天使´に選ばれた

東 るるる

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1章 婚約破棄という名の終わり、出会いという名の始まり

8-アリエルさんの正体

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「今日の任務はアリエルさんと同じでしたか。
まだまだですが、どうぞ宜しくお願いします!」
「ええ、よろしくね」
大人の余裕というか、色気が半端ない。
その笑みで、男女問わず何人を惚れさせたのだろうか。
「今日の標的は…確か…」
「マインドドラゴン、でしたっけ…?」
「そうそう、その子。」
「ええと、その名の通りマインド精神を操るんですよね」
「そうなのよ。だからすごく厄介なのよね」
と、悩ましげにため息を吐く。
「へえ」
「ああ、あっちにいるでしょ?」
黒いもやに包まれた地帯がある。そこがマインドドラゴンか。…強そう。
「行くわよ」
「はい!」


「っ!」
「ッチ、しくじった」
「あっ、あの…アリエルさん?」
「ああ、ごめんなさいね。
地声が出ちゃったわ」
「いえ。わざわざ気を使って頂かなくても大丈夫です。
そこそこ精神が頑丈にできているので。
そんなことより…ここは一体?」
「閉じ込められたみたいだ。
外からの救援を待つしかない。
…ちょうど良い。過去の話を聞いてくれるか」
「はい。いくらでも聞きます」
アリエルさんに向き合って、目を見て話を聞く。
「アタシは、アラキル・サーベージという名前なのよ」
「アラキル…サーベージ侯爵子息ですよね。
あの今は行方不明の王子の…」
「そうそう。それがアタシなんだけど。
とってもクズでね。
男であるアタシに、見た目が女っぽいからっていう理由でを強要したの」
「…」
思わず沈黙をしてしまう。
それにも構わず、アリエルさんは遠い眼をして話を続ける。
「一介の侯爵子息ごときが王太子だったソイツの命令に背ける訳もなく、ただそれに従った。
心が音を立てて壊れていくのを見てみぬふりをしながらね」
眉をしかめる。
当時のアリエルさんにとって、それはとてもキツい出来事だっただろうに…私と同じ、或いはそれ以下の年齢でそれに耐えていたなんて、私には到底できない。
「両親は王太子派。アタシがなにを言おうが、
「我慢しろ」
の一点張り。流石に辟易したわ。
こんなに家族の情が感じられないのは初めてで。きっと両親にとってアタシはただの道具だったのよね。
辛すぎて家に閉じ籠っていたわ。
誰にも共有できないのが………、…悲しくて、辛くて、苦しくて。」
「…」
思わず出かかった手を急いで引っ込める。
「けどね、そんなときにアタシが「七大天使」であるという報せが来たの。
これだけが救いだった。
それをダシに婚約解消できたときの解放感はすごかったわ。
そしてアタシに無関心な両親はそれから二月後に連絡を寄越してきたの。
「婚約は」だとか、「早く戻れ、命令だ」だとか。
本当に鬱陶しかった。
だからただ一言、「七大天使だから」と手紙を認めたの。
そしたら媚びてきてね。
なけなしの金をはたいて色んなものを貢がれたわ。
あのときの愉快な気持ちといったらもう…!
それで最終的に断ったら、すごく絶望してたの。
スッキリしたわ。
んで、そのときの名残でこういう口調なわけ。」
「………あの、ぶしつけかもしれないですけど、とっても格好いいですね、それ。
私なら耐えきれなくて自ら命を絶ってると思います。自分の不運さを呪うのはやめにして、それをバネに、踏みつけにしてやるっていう気迫が感じられる話でした。
話してくれて、ありがとうございました。
アリエルさんのことが、より一層知れたので少し嬉しいです」
にこりと微笑むと、アリエルさんが顔を少し赤らめる。
「そう、か。」
「あと…その、その口調の方がナチュラルで好きです。
………私個人の意見ですから、最終的にどう思うかはアリエルさんの自由ですからね!」
釘をしておく。
「…ああ、そうだな。
そろそろ直さないといけないと思っていたから、しばらくはこれで頑張ってみるよ」
「頑張ってください!
ああ、あと。
なにかあれば、どんなに小さくてもいいので私に吐き出して下さいよ」
目を見て真摯に伝えると、アリエルさんは少し驚いた表情だった。
「…ああ、頼りにしてる」

ーーー
そのころの本部

「は?アリエルとラファエルがマインドドラゴンに閉じ込められた?」
アズラーイールが驚いて声を出す。
鴉が頷く。
すると、アズラーイールは急に焦燥した顔を見せる。
「駄目だ、早く行かないと。
あのアリエルとラファエルを二人きりにはできない」
「どうかしたのか?」
「ああ、ミカエル。
たった今アリエルとラファエルがマインドドラゴンに閉じ込められたという報せがあってな」
「は?
俺も行く。急げ、アズラーイール」
「はいはい、今行くから待ってろ」
どうして後から報告を聞いたお前がリーダー気取りなんだよ、と突っ込みたくなったが今はそれどころではない。
二人が真っ先に案じるのは「純真な天使ラファエルアリエルに喰われていないか」ということだけだった。

ーーー
「ラファエル!アリエル!大丈夫?」
「取り敢えずマインドドラゴンは駆除した。もうすぐでその領域もほどける」
アズラーイールさんとミカエルの声を聞いて安心した。
「よかった。
アリエルさん、もう大丈夫みたいです」
「そうか。
…身体に異常が出る前に助けが来て良かった」
「ほんとですよね」
くすくすと笑う。
間もなくぱらぱらと音を立てて領域が崩れ出した。
ど、どうすれば…!?
落ちるよ?!
「よっ、と」
そんな私の焦りを感知したのか、アリエルさんが私を抱き止めてくれた。
「よ、よかった…落ちるかと思って焦りました。
ありがとうございます」
お礼を言うと、アリエルさんは嬉しそうに笑んだ。
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