5 / 8
By sweets (前編)
しおりを挟む
みんなが見た瞬間、顔を綻ばせずにはいられないスイーツ。口に入れれば頬が落ちてしまいそうなほどに甘く美味であり、とろーりとしたクリームを中に蓄えた洋菓子の中の洋菓子。それが私、シュークリームなのです。
「………………」
私を包んでいる袋みたいのがそう言ってました。よく分からないけど、とりあえず私は気品のあるスイーツだということは分かりました。もしかしたら希少な、偉ーい存在なのかもしれませんね。
しかし私が希少な存在でないことはすぐに分かりました。袋と一緒に私が詰められた箱には、私と同じ外見をした方が既にいらしたのです。それも7個。
よく見れば他にも同じ箱がたくさんあり、その全てにシュークリームが詰め込まれていました。大量生産されとるんですね……。そして箱に入った私はというと、
「あ、新入りだー」「ブサイク」「その見た目じゃ頬は落とせないわね」
などと熱烈に歓迎されていました。みんな同じだというのに、ご自身のお顔を見たことがないのでしょうか。私もないですが……。まあ、言い合っても仕方がないですね。
ガタンゴトンと大きな音と揺れが続いている。恐らく箱づめが終わって輸送されているのでしょう。
「あのー、皆さんこれからどこへ向かうかご存知ですか?」
「スーパーよ」「ハイパー」「ウルトラに決まってるわ」
後の二つは聞かなかった事にして……やっぱり袋から聞いた通りスーパーへ向かっているみたいです。私を作ってくれた人間たちに喜んでもらうために。そして永遠の命を手にするために。
「あれ、聞かされてなかったの?ーーうっかり話を聞き漏らしちゃった新入りさんに、あたしが説明してあげるね?」
唯一のノークレイジーなシュークリームさんが丁寧に講釈。話が通じる相手がいて嬉しかったのでしょう。実は私もです。彼女は続けます。
「あたしたちは高尚なスイーツ、シュークリーム。とても甘くて美味しいお菓子よ。人間に美味しさを伝えるためにスーパーへ行くの。あ、スーパーっていうのは人間が集まって買い物する所。で、食べてもらって美味しさを伝えるのがあたしたちの役目ってわけ」
一度聞いた話ですが、あまりにも気持ちよさそうに喋るので止めないであげます。
「でもさ、役目とはいえそれでおしまいって儚すぎるよね?だから人間に食べられる必要があるの」
「どういう繋がりが?」もちろん既に聞いていますが……
「人間はね、食べた物の魂を心に宿すことができる。つまりあたしたちは永遠の魂を手に入れられるの!」
「永遠、退屈そうじゃないですか?」
「色んな魂と出会えるんだから、退屈なわけないでしょ?人間はなんでも食べるから、もしかしたらこの袋にも会えるかもね」
「それは楽しみですね……って、美味しさを広めるのはもはやついでなのでは?」
「どっちでもいいじゃんそんなの」
あー楽しみだーーとウキウキしている彼女を微笑ましく眺めていたところ、ある異変が起こりました。
「皆さん、なんだか暑くありません?それに音がしなくなりましたよ?」
「ブサイク」「バカね、ウルトラは熱が大事なのよ」「$$*^(&*#@!」「ホモサピエンスは3年前にさつまいもで発見されてーー」
なんか、喋る子増えてる。そしてやっぱり……
「あたし以外話通じないから。確かにおかしいね。スーパーに着いたんだろうけど、あたしたちは要冷蔵のはず。こんな暖かいところに置かれるなんて……」
その時、ザクっという音とともにウルトラな彼女の悲鳴が響きました。
「うあああああ!いっっっっっったあーい!」
箱の上部から何かが侵入し、ウルトラさんを突きました。隙間から漏れた光を頼りに彼女を見ると、なんとウルトラな皮が破れ、中のクリームが飛び出していたのです。
「食べられるって、こういう事なんですか……?」
そう口にした私は震えていました。おかしい。何かがおかしい……
気づけば全員がウルトラさんを見ていました。ガタガタと震えていて、恐怖に満ちた表情を浮かべて。
「………………」
私を包んでいる袋みたいのがそう言ってました。よく分からないけど、とりあえず私は気品のあるスイーツだということは分かりました。もしかしたら希少な、偉ーい存在なのかもしれませんね。
しかし私が希少な存在でないことはすぐに分かりました。袋と一緒に私が詰められた箱には、私と同じ外見をした方が既にいらしたのです。それも7個。
よく見れば他にも同じ箱がたくさんあり、その全てにシュークリームが詰め込まれていました。大量生産されとるんですね……。そして箱に入った私はというと、
「あ、新入りだー」「ブサイク」「その見た目じゃ頬は落とせないわね」
などと熱烈に歓迎されていました。みんな同じだというのに、ご自身のお顔を見たことがないのでしょうか。私もないですが……。まあ、言い合っても仕方がないですね。
ガタンゴトンと大きな音と揺れが続いている。恐らく箱づめが終わって輸送されているのでしょう。
「あのー、皆さんこれからどこへ向かうかご存知ですか?」
「スーパーよ」「ハイパー」「ウルトラに決まってるわ」
後の二つは聞かなかった事にして……やっぱり袋から聞いた通りスーパーへ向かっているみたいです。私を作ってくれた人間たちに喜んでもらうために。そして永遠の命を手にするために。
「あれ、聞かされてなかったの?ーーうっかり話を聞き漏らしちゃった新入りさんに、あたしが説明してあげるね?」
唯一のノークレイジーなシュークリームさんが丁寧に講釈。話が通じる相手がいて嬉しかったのでしょう。実は私もです。彼女は続けます。
「あたしたちは高尚なスイーツ、シュークリーム。とても甘くて美味しいお菓子よ。人間に美味しさを伝えるためにスーパーへ行くの。あ、スーパーっていうのは人間が集まって買い物する所。で、食べてもらって美味しさを伝えるのがあたしたちの役目ってわけ」
一度聞いた話ですが、あまりにも気持ちよさそうに喋るので止めないであげます。
「でもさ、役目とはいえそれでおしまいって儚すぎるよね?だから人間に食べられる必要があるの」
「どういう繋がりが?」もちろん既に聞いていますが……
「人間はね、食べた物の魂を心に宿すことができる。つまりあたしたちは永遠の魂を手に入れられるの!」
「永遠、退屈そうじゃないですか?」
「色んな魂と出会えるんだから、退屈なわけないでしょ?人間はなんでも食べるから、もしかしたらこの袋にも会えるかもね」
「それは楽しみですね……って、美味しさを広めるのはもはやついでなのでは?」
「どっちでもいいじゃんそんなの」
あー楽しみだーーとウキウキしている彼女を微笑ましく眺めていたところ、ある異変が起こりました。
「皆さん、なんだか暑くありません?それに音がしなくなりましたよ?」
「ブサイク」「バカね、ウルトラは熱が大事なのよ」「$$*^(&*#@!」「ホモサピエンスは3年前にさつまいもで発見されてーー」
なんか、喋る子増えてる。そしてやっぱり……
「あたし以外話通じないから。確かにおかしいね。スーパーに着いたんだろうけど、あたしたちは要冷蔵のはず。こんな暖かいところに置かれるなんて……」
その時、ザクっという音とともにウルトラな彼女の悲鳴が響きました。
「うあああああ!いっっっっっったあーい!」
箱の上部から何かが侵入し、ウルトラさんを突きました。隙間から漏れた光を頼りに彼女を見ると、なんとウルトラな皮が破れ、中のクリームが飛び出していたのです。
「食べられるって、こういう事なんですか……?」
そう口にした私は震えていました。おかしい。何かがおかしい……
気づけば全員がウルトラさんを見ていました。ガタガタと震えていて、恐怖に満ちた表情を浮かべて。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる