婚約者を殺してざまぁの展開にするために……

焼かやか

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私の婚約者は最高で最低です

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「ネミ!!まだ掃除をしてないの?」

「えっあっお母さま、私さっき掃除しました」

「嘘つきなさい!これが掃除をした後の状態?まだホコリがたくさん残ってるじゃない!」


 お母様はそう言いながらスッーと棚を指でなぞった。


「掃除はもう良いわ。私がやる。ネミは夕飯の準備をしてちょうだい」

「はい、分かりましたお母様」


 最近は、お母様に何を言われても『苦』ではなくなってきた。

 そんな心の変化を感じながら、部屋を出るとルトが待っていた。


「大丈夫かい?僕の母親が毎日強く言ってすまない。僕と無理に一緒に居なくても良いんだよ」

「ううん、無理なんかしてないよ。いつか絶対お母さんに認めてもらう。あとなにより、ルトのことが好きだし」

「ありがとうネミ。もちろん僕も大好きだよ」


 そう言うと彼は、微笑みながら部屋に戻った。

 私が彼と出会ったのは、1年前。私は親に結婚を急かされていた。しかし、親が用意するのは金目当ての男性ばかり。というのも私の家は大富豪というわけではないが、裕福な家庭ではあった。

 そんな金目当ての男性たちに呆れていたある日。外を見るとこの地域には珍しく雪が積もっていたので、私は外に出た。家の周りを歩きはじめると、道の真ん中に何かがあった。近づいてみるとそれは、倒れている男の人だった。これが私とルトの出会いだ。

 それから、私はルトを家に入れ数日間看病をした。数日間彼と色々な話をしている内に、私は彼の笑顔、性格、仕草、全てが好きになっていた。

 そして事は順調に進み、結婚をすることになった。しかし、親は大反対。そして私は半ば家を飛び出すようにして、ルトの家でルトとお母様と暮らすことになった。そして、今に至る。

 ふと時計を見ると、12時を示していた。私はお風呂に入ろうと、バスルームに向かった。廊下を歩いていると、突き当りの方からルトの怒鳴り声が聞こえた。良くない事だとは分かりながらも、部屋の扉に近づき聞き耳を立てた。


「母さん、あいつにもっと強く言える?言えるよね?ね?」

「ルト、もう辞めて!ネミちゃんはいい子よ。私にあんなに強く言われても、嫌な顔ひとつ見せず家事をこなすんですもの」

「母さん目的忘れてないかい?僕は別にあいつ目当てじゃない。あいつの金目当てだ。未だにあいつの親が心配して金をこの家に送ってくる。信じられない額だ。だけどあいつは親には頼りたくないとか言う理由で貯金する。それなら、いっそのことあいつをこの家に居づらくさせてしまえば、金は全部僕のものってわけ」

「やっぱりルト間違ってる!こんな方法でお金を・・・」

「バン!!!」

「どうしたの母さん?ほら僕になにか言いたいんでしょ。言ってみなよ。あっでも、僕がイラつくことだったらもう一回殴るけどね。あれ?何も言わないの?じゃあ明日もあいつに強く言ってね」


 助けなきゃいけないのは分かっていた。しかし、私はベッドルームに向かって走り出した。

 私がベッドに入り5分ほどが経った時、ルトもベッドに入ってきた。そして一言言った。


「ネミもう寝た?」


 怖くて何も言葉を発することが出来ない。今ルトの方を向いたら殺されるのではないか。そうとまで考えた。一晩中恐怖が体にまとわりつき眠ることが出来ず気づくと、いつもの起きる時間になっていた。まだベッドで寝ているルトの横を通り過ぎ、リビングに向かうとお母様は起きていた。

 

「おはようございます。あのー、いきなりなんですけど一つお話したいことがありまして」

「それより朝ごはんを作っちゃいなさい!もう何回行ったら分かるの!」

「お母様、もう無理しなくて良いんですよ」

「えっ?」

「あの私、実は昨日お母様とルトさんの会話を聞いてしまって・・・。私ずっとお母様が苦手でした。でもあんな悩みを抱えていたなんて・・・。ごめんなさい」

「ネミちゃんは謝らないで。謝るのは私の方。あんなひどい言葉をたくさん言って・・・」


 そう言うとお母様は泣き出してしまった。相当辛かったのだろ。そして涙が止まった頃お母様はこう言った。


「息子を殺してほしい」

「えっ?」

「私も何回も殺そうとした。でも一回失敗してから警戒されてるの。ネミちゃんにしか頼めないのお願い!」


 私はルトに裏切られた怒りと、お母様への同情心で、気づいたら『コクリ』とうなずいていた。

 そしてその日の夜、私はルトを家のテラスへ連れ出した。


「こんな時間に外に連れ出してどうしたの?ネミと一緒に居られるなら僕はどこにでも行くけど」

「ルトに伝えたいことがあるの」

「なんだい?」

「今までありがとう」

「え?」


 その言葉と同時に私はルトを強く押した。そしてルトは、テラスの柵を超えて下の崖へ落ちていった。

 

「これでいい、これでいい、これでいい・・・」


 私は家に戻ると何もしたくなかった。そのままベッドルームに向かい今日は寝た。

 次の日の朝起きると、私は走り出した。そしてテラスの柵を越え崖に落ちていった。

 私は愛していた。彼のことを。
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