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第2章 漂流、相互干渉多世界
22: 怪談 女装女
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真亜子からのメールによると、今度は宋に車で迎えに来て欲しいと言う事だった。
某高級スーパーマーケットの地下駐車場という待ち合わせ場所まで指定されていた。
宋は腹を括っていた。
今度で、総てを明らかにするつもりだった。
「この前は無理だったけど、今はとてもこれでしたいんです。今、ここから被せてくれますか?」
真亜子が助手席に着くなり、バックから黒いゴム布の固まりを取り出した。
宋には、それがSMビデオ等に時々、登場するラバーマスクだという事はすぐに判った。
「えっ、今、ここでか?こんなもの被って、誰かに見られて恥ずかしくないのか?」
ビデオはビデオ、現実は現実、宋はその違いを知っていたし、逆に創作では届かない、もっとえげつない快楽の世界も知っていた。
ただ、目の前のこの女は、そこまで届くような女ではないという気がした。
「・・・恥ずかしいからいいんです。私、前からこんなことをして見たかった。」
真亜子は大人しい目のスーツを着てるから、こんな真っ黒な異形のマスクを頭から被って、衆目の目に晒されたならば注目の的になるだろう。
と言うよりも、同乗している宋の方が、好奇の目で見られるかもしれない。
宋の躊躇いをよそに、真亜子は自分のセミロングの髪をマスクを装着しやすくするために纏め上げている。
真亜子のうなじが青白く輝いていた。
「あんた、本当にこんなのが好きなのかい?」と思わず口から出そうになったが、宋はそれを我慢した。
宋の手によって、むちむちとラバーマスクが真亜子の頭部全体を侵略していく。
車に充満する科学的なゴムの甘い匂い。
完全にそのマスクを被り終えた時、真亜子の身体が少し震えた。
「○○のホテルでどうかな、、びびってるわけじゃないけど、あそこまでなら信号も少ないし、渋滞だってめったに起こらない。」
宋は真亜子の熱くなった身体を横に感じながらそう言った。
「それに車で最後まで行けて、ホテルの従業員にも会わないし、、、、真亜子には物足りないだろうけど、それでいいだろ。お遊びで道草をしてしまって本番に辿り着かないと、お互いに困るだろ?」
「ありがとうございます。」
宋は自分の余裕を見せるつもりで、冗談めかせて真亜子のゴムで覆われた頭の天辺に軽くキスをした。
宋の尻に真亜子のゴム手袋の指先が進入してくる。
ひやりと冷たい。
真亜子がゴムの指先に塗ったローションのせいだ。
しかし何故この女は、前回もそうだったが、宋の尻に拘るのだろう?
まるで親の仇が、この穴の奧に隠れているかのように執拗に責めてくる。
その癖、自分からの尻に対するサービスは絶対にしようとしない。
・・・アナルセックスに拘ったあのブログ記事は、一体何だったんだ?
そんなことを考えている内に、宋は猛烈に眠くなって来た・・・。
やられたのだ、やはり、、、。
『痔には、軟膏、ボ○ギノール、、』
宋は非常にまずい状況にあるにも関わらず、彼の目覚めに頭の中で鳴ったバックグランドミュージックは、実に間の抜けたものだった。
軟膏を塗り込んで痔が治るなら、睡眠薬の類を同じ手口で、体内に注入することも可能だ。
痛み止めの座薬だってある、そんな推測と連想が意識の回復と共に浮かんだ。
しかし、もっと間抜けだったのは、このバックグラウンドミュージックより、彼自身の姿だった。
太いロープで雁字搦め、、それはいい、何故、裸の上にパンティストッキングを穿いているのか。
おまけに胸には、ぺたんこのブラジャーがへばりついている。
口にはホテルのタオルを使った猿轡、、。
「お目覚め?」
真亜子の声が、宋の頭の背後から響いた。
宋は全身を雁字搦めに縛られた上、仰向けにベッドに寝かされているので身動きが容易ではない。
それを察したのか、真亜子が覗き込んでくる。
まだラバーマスクを被ったままなので、目尻が吊り上がり、いつのも気弱げな彼女とは違う印象がある。
「こふぇは、ふぉんなフレイなんた?」
真亜子のゴム手袋が、宋の頭上から伸びてきて彼の猿轡を外す。
「申し訳ないが、俺は女装趣味もなければ、縄にも興味がなくてね。まあ、縛る方なら多少はやってもいいと思ってるがね。」
宋はそう言いながら、なけなしの注意力を喚起して、真亜子以外の人の気配を探ってみる。
意識を失った大の男の身体を、こんな風に縛り上げたり、女の力だけで出来るとは思えなかったからだ。
真亜子にバックがいるなら、相当やばい状況だ。
ヤクザの宋をこんな風に出来るのは、ヤクザしか考えられない。
神代組とは最近、争いごとはない。
では箱根の山の向こうか、海外シンジケートか?
「減らず口ばかり、、そんな格好させられても強気なのね。私が本気だと思ってないの?」
初めて聞く、真亜子の自信に満ちた声色。
ラバーマスクに空いた口の穴から飛び出した真亜子の唇が充血して厚みを帯びている。
「本気ってなんだ。・・・この際、はっきりさせておこうじゃないか。あんた何故、俺の名を知ってる。おまけになんの積もりでイニシャルとはいえ、俺の名をブログで晒したんだ。」
「、、、ああ、あの記事ね。あれは私の夫が残したモノをそのまま流用したの。」
真亜子はそう言い終わると、口のなかをクチュクチュさせ始める。
顔はラバーで覆われているから、頬の部分の表面だけを見ていると、黒いゴム風船が少し膨らんだように見えた。
天井の照明がラバーマスクの真ん丸の黒い輪郭線にそって後光のように光っている。
こいつ、都市のSMラブホテルに住み着いている女妖怪か。と宋は思った。
「、、、あんたの夫?、、意味が分からないんだが、」
真亜子の唇から唾液が垂れ落ちてくる。
首を振ってそれを避けようとしたが、頭が動かなかった。
動きが鈍いのは、宋を縛っている縄だけのせいではないようだ。
今も喋ることは可能なのだが、口周辺意外の顔面の筋肉は、クタッと今にも下に向かって流れ落ちそうだ。
睡眠剤だけではなく、筋肉弛緩剤の類も投与されているのかも知れない。
それでも宋は、自分の鼻の横に垂れ落ちた真亜子の唾液を、不潔なモノとして意思表示するだけの顔のゆがみは確保できたように思った。
「ふん、夫が秘密にしてた日記には、あんたの唾液を口で受けて興奮したって書いてあったけど、、、あんた自身は、そうじゃないのね。」
「おい!一体、誰の事を言ってるんだ!、、それは人ちが、、」
突然、記憶が繋がって、総ての事が理解できた。
宋は真亜子の言う「夫」を知っていた。
寝た、のは三十代前半の完全女装した優男だった。
宋に、汚装子や珍装を抱く趣味はない、男は素顔でも相当なハンサムだった。
問うたことはなかったが、彼が妻帯者であっても不思議ではない。
女が彼の美貌をほって置かないだろう。
偽装結婚、あるいは単に度の過ぎた異性装者のアバンチュールという、どちらかのケース、、。
「思い出したみたい?馬鹿ね、、こんな薄情なヤクザ男に、、、あのね、あの人は本気だったみたいよ。」
「馬鹿を言うな。男同士だぞ、恋愛感情なんか生まれるもんか、、。」
「あんたにはね。」
拳を軽く丸めた真亜子のゴム手袋の中指が、親指から弾かれて宋のホーデンを弾いた。
息が止まるような痛みが身体の中を突き抜ける。
「・・・だから、、俺に復讐してるのか。」
某高級スーパーマーケットの地下駐車場という待ち合わせ場所まで指定されていた。
宋は腹を括っていた。
今度で、総てを明らかにするつもりだった。
「この前は無理だったけど、今はとてもこれでしたいんです。今、ここから被せてくれますか?」
真亜子が助手席に着くなり、バックから黒いゴム布の固まりを取り出した。
宋には、それがSMビデオ等に時々、登場するラバーマスクだという事はすぐに判った。
「えっ、今、ここでか?こんなもの被って、誰かに見られて恥ずかしくないのか?」
ビデオはビデオ、現実は現実、宋はその違いを知っていたし、逆に創作では届かない、もっとえげつない快楽の世界も知っていた。
ただ、目の前のこの女は、そこまで届くような女ではないという気がした。
「・・・恥ずかしいからいいんです。私、前からこんなことをして見たかった。」
真亜子は大人しい目のスーツを着てるから、こんな真っ黒な異形のマスクを頭から被って、衆目の目に晒されたならば注目の的になるだろう。
と言うよりも、同乗している宋の方が、好奇の目で見られるかもしれない。
宋の躊躇いをよそに、真亜子は自分のセミロングの髪をマスクを装着しやすくするために纏め上げている。
真亜子のうなじが青白く輝いていた。
「あんた、本当にこんなのが好きなのかい?」と思わず口から出そうになったが、宋はそれを我慢した。
宋の手によって、むちむちとラバーマスクが真亜子の頭部全体を侵略していく。
車に充満する科学的なゴムの甘い匂い。
完全にそのマスクを被り終えた時、真亜子の身体が少し震えた。
「○○のホテルでどうかな、、びびってるわけじゃないけど、あそこまでなら信号も少ないし、渋滞だってめったに起こらない。」
宋は真亜子の熱くなった身体を横に感じながらそう言った。
「それに車で最後まで行けて、ホテルの従業員にも会わないし、、、、真亜子には物足りないだろうけど、それでいいだろ。お遊びで道草をしてしまって本番に辿り着かないと、お互いに困るだろ?」
「ありがとうございます。」
宋は自分の余裕を見せるつもりで、冗談めかせて真亜子のゴムで覆われた頭の天辺に軽くキスをした。
宋の尻に真亜子のゴム手袋の指先が進入してくる。
ひやりと冷たい。
真亜子がゴムの指先に塗ったローションのせいだ。
しかし何故この女は、前回もそうだったが、宋の尻に拘るのだろう?
まるで親の仇が、この穴の奧に隠れているかのように執拗に責めてくる。
その癖、自分からの尻に対するサービスは絶対にしようとしない。
・・・アナルセックスに拘ったあのブログ記事は、一体何だったんだ?
そんなことを考えている内に、宋は猛烈に眠くなって来た・・・。
やられたのだ、やはり、、、。
『痔には、軟膏、ボ○ギノール、、』
宋は非常にまずい状況にあるにも関わらず、彼の目覚めに頭の中で鳴ったバックグランドミュージックは、実に間の抜けたものだった。
軟膏を塗り込んで痔が治るなら、睡眠薬の類を同じ手口で、体内に注入することも可能だ。
痛み止めの座薬だってある、そんな推測と連想が意識の回復と共に浮かんだ。
しかし、もっと間抜けだったのは、このバックグラウンドミュージックより、彼自身の姿だった。
太いロープで雁字搦め、、それはいい、何故、裸の上にパンティストッキングを穿いているのか。
おまけに胸には、ぺたんこのブラジャーがへばりついている。
口にはホテルのタオルを使った猿轡、、。
「お目覚め?」
真亜子の声が、宋の頭の背後から響いた。
宋は全身を雁字搦めに縛られた上、仰向けにベッドに寝かされているので身動きが容易ではない。
それを察したのか、真亜子が覗き込んでくる。
まだラバーマスクを被ったままなので、目尻が吊り上がり、いつのも気弱げな彼女とは違う印象がある。
「こふぇは、ふぉんなフレイなんた?」
真亜子のゴム手袋が、宋の頭上から伸びてきて彼の猿轡を外す。
「申し訳ないが、俺は女装趣味もなければ、縄にも興味がなくてね。まあ、縛る方なら多少はやってもいいと思ってるがね。」
宋はそう言いながら、なけなしの注意力を喚起して、真亜子以外の人の気配を探ってみる。
意識を失った大の男の身体を、こんな風に縛り上げたり、女の力だけで出来るとは思えなかったからだ。
真亜子にバックがいるなら、相当やばい状況だ。
ヤクザの宋をこんな風に出来るのは、ヤクザしか考えられない。
神代組とは最近、争いごとはない。
では箱根の山の向こうか、海外シンジケートか?
「減らず口ばかり、、そんな格好させられても強気なのね。私が本気だと思ってないの?」
初めて聞く、真亜子の自信に満ちた声色。
ラバーマスクに空いた口の穴から飛び出した真亜子の唇が充血して厚みを帯びている。
「本気ってなんだ。・・・この際、はっきりさせておこうじゃないか。あんた何故、俺の名を知ってる。おまけになんの積もりでイニシャルとはいえ、俺の名をブログで晒したんだ。」
「、、、ああ、あの記事ね。あれは私の夫が残したモノをそのまま流用したの。」
真亜子はそう言い終わると、口のなかをクチュクチュさせ始める。
顔はラバーで覆われているから、頬の部分の表面だけを見ていると、黒いゴム風船が少し膨らんだように見えた。
天井の照明がラバーマスクの真ん丸の黒い輪郭線にそって後光のように光っている。
こいつ、都市のSMラブホテルに住み着いている女妖怪か。と宋は思った。
「、、、あんたの夫?、、意味が分からないんだが、」
真亜子の唇から唾液が垂れ落ちてくる。
首を振ってそれを避けようとしたが、頭が動かなかった。
動きが鈍いのは、宋を縛っている縄だけのせいではないようだ。
今も喋ることは可能なのだが、口周辺意外の顔面の筋肉は、クタッと今にも下に向かって流れ落ちそうだ。
睡眠剤だけではなく、筋肉弛緩剤の類も投与されているのかも知れない。
それでも宋は、自分の鼻の横に垂れ落ちた真亜子の唾液を、不潔なモノとして意思表示するだけの顔のゆがみは確保できたように思った。
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「おい!一体、誰の事を言ってるんだ!、、それは人ちが、、」
突然、記憶が繋がって、総ての事が理解できた。
宋は真亜子の言う「夫」を知っていた。
寝た、のは三十代前半の完全女装した優男だった。
宋に、汚装子や珍装を抱く趣味はない、男は素顔でも相当なハンサムだった。
問うたことはなかったが、彼が妻帯者であっても不思議ではない。
女が彼の美貌をほって置かないだろう。
偽装結婚、あるいは単に度の過ぎた異性装者のアバンチュールという、どちらかのケース、、。
「思い出したみたい?馬鹿ね、、こんな薄情なヤクザ男に、、、あのね、あの人は本気だったみたいよ。」
「馬鹿を言うな。男同士だぞ、恋愛感情なんか生まれるもんか、、。」
「あんたにはね。」
拳を軽く丸めた真亜子のゴム手袋の中指が、親指から弾かれて宋のホーデンを弾いた。
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